313 / 354
312 解散!
しおりを挟む
「幻狼ってなんっすかね?」
「あれだよ。『霧の森と聖女』に出てくる魔狼だよ」
「深い霧で姿が見えない魔物だったわね」
「そうじゃないですぅ……周りの風景と同化して……見えない魔物ですぅ」
騎士の四人が話しているように、一般的に知られている聖女の物語に出てくる魔物だ。
ただ、物語以外に実際に遭遇したという話は聞いたことがない。
そもそも本当に幻狼なのだろうか?目に見えないと言うには、鬼の二人は普通に対処しているように話していた。
「なんだ?また小賢しい幻影を使っていると思ったのだけどなぁ。あれは幻影じゃねぇのか?」
「中々良い術でしたね」
酒吞は小賢しいと言っているけど、茨木は褒めている。きっと楽しめたのだろう。
「幻狼って確か、火であぶり出すと良いとあったわね」
「それ、森が燃えるやつ。聖騎士が王都の近くで、それやっちゃうと、他の騎士団からクレームが絶対に来るよ」
リザ姉が言うように、物語では森を燃やして、幻狼を森の外に追い出して倒したとあった。けれど、それをするとさっきから何度も問題になっている他の騎士団との確執が上がってくる。
ロゼが言うぐらいだから、ロゼが聖騎士団に入った数年間の間だけでも、色々あったのだろう。
「シュテンとイバラキはどうやって見分けたのだ?」
第十二部隊長さんも気になったらしい。どうやって二人が幻狼を見極めて、倒したのか。
「あ?そんなものここにいるぜって、わかるじゃねぇか」
うん。酒吞は直感的に行くタイプだから、理由なんてあってないようなものなのだろう。
すると必然的に茨木の方に視線が集中する。酒吞よりはまともな返答が返ってくるだろうという期待も込められていた。
「なんと言いますか、幻影を使うモノの特有の違和感があるのですよ」
駄目だった。歴戦の戦士のように、剣を奮えば敵に攻撃が当たるだろうと言われているような答えだった。
経験が物を言う戦い方ではなく、今はどうすれば幻狼を発見できて、対処できるかが知りたいのだ。
まぁ、結局実物を見てみない限りわからないというもの。
「この中で戦えるのは俺とヴァルトルクス第十二部隊長ぐらいか」
ルディが話を聞いたところで、幻狼を倒せるのは、ルディと第十二部隊長さんだけと言った。力技のゴリ押しで戦うという意味なのだろう。
え?私も戦えるよ。
「騎士ヴィオーラ」
「ふぇ……は、はい!」
「騎士三名と共に、団長に報告しろ。王都の北部に幻狼出現。第十三部隊長の名において討伐を遂行すると」
「り……了きゃいしましゅた……」
ヴィオはカミカミだ。こういうのはミレーの方がしっかりしていると思うのだけど、貴族という意味でヴィオが四人の中で、地位が高いことになっているのだろう。
そして騎士の四人は来た道を戻って行った。次にこの場に残ったリザ姉とロゼにルディは命じた。
「将校ロゼは移動型の結界を張って、リザネイエ第十二副部隊長とファルークスと共に外壁内を調査。結界があれば、不意打ちをくらっても対処できるだろう」
「「了解!」」
「おい、シュレイン。この森の広さから言えば、夕暮れまでに終わらないぞ」
ファルはルディの命令に異議を唱えた。
空を見れば既に太陽は傾いてしまっている。それに冬の時間帯は日の入りが早いため、あと三時間で森の調査を終わらせなければならない。
「ファルークス。王都の外には幻狼がいると想定されているが、ここの常闇から同じ幻狼が出てきたとは限らない。今日の夜半ぐらいに常闇を閉じる予定だが、空を飛んで移動する魔物がいないと確証が得られれば、それでいいだけだ」
確かにルディの言う通り、王都の内側にある常闇からは何が出てきたのかまだ確認されていない。
それに地上を移動するモノであるなら、そのまま常闇に呑まれていくだろう。気をつけるべきは、ドラゴンのように空を飛ぶ魔物だ。
「まぁ、それぐらいなら、将校ロゼが対処するだろう」
「ファルークス第十三副部隊長。それは無理です!」
「無理じゃないぞ。やるしかない」
ロゼはファルに腕を掴まれて連行されていった。そして、その後をリザ姉がニコニコと笑みを浮かべてついて行っている。
ファル。地下のダンジョンで散々働いたから、ロゼに押し付けようとしていない?まぁ、リザ姉がついて行っているから、大丈夫だろう。
「オボロはこのことをリュミエール神父に報告をしてくれ」
「はい」
朧は神父様に報告するために、この場から消えて行った。残りは、私とルディと第十二部隊長さんと酒吞と茨木だ。
「残りは王都の外側にいる幻狼の討伐だ」
「おう!俺が全部犬っころをブチのめす!」
「酒吞。独り占めは駄目ですよ」
鬼の二人はルディが言い終わる前に駆け出して行き、既にその姿は森の中に消えてしまった。
「ちょっと待って!私もその幻狼っていうのと戦ってみたい!」
このままだと酒吞に全部討伐されてしまう!
私はルディの腕から飛び降りて、二人の後を追っていく。
「アンジュ!」
「あっ!ルディ!手分けしたほうが早いから解散!」
日が暮れるまで、後三時間ほどだからね。その間に討伐できるなら、しておいたほうが良いよね。
最近、冒険者ギルドからの討伐依頼を受けなくなったから、集団の魔物の討伐なんて久しぶり!……いや、ルディに捕獲されていることが多かったからだった。
「あれだよ。『霧の森と聖女』に出てくる魔狼だよ」
「深い霧で姿が見えない魔物だったわね」
「そうじゃないですぅ……周りの風景と同化して……見えない魔物ですぅ」
騎士の四人が話しているように、一般的に知られている聖女の物語に出てくる魔物だ。
ただ、物語以外に実際に遭遇したという話は聞いたことがない。
そもそも本当に幻狼なのだろうか?目に見えないと言うには、鬼の二人は普通に対処しているように話していた。
「なんだ?また小賢しい幻影を使っていると思ったのだけどなぁ。あれは幻影じゃねぇのか?」
「中々良い術でしたね」
酒吞は小賢しいと言っているけど、茨木は褒めている。きっと楽しめたのだろう。
「幻狼って確か、火であぶり出すと良いとあったわね」
「それ、森が燃えるやつ。聖騎士が王都の近くで、それやっちゃうと、他の騎士団からクレームが絶対に来るよ」
リザ姉が言うように、物語では森を燃やして、幻狼を森の外に追い出して倒したとあった。けれど、それをするとさっきから何度も問題になっている他の騎士団との確執が上がってくる。
ロゼが言うぐらいだから、ロゼが聖騎士団に入った数年間の間だけでも、色々あったのだろう。
「シュテンとイバラキはどうやって見分けたのだ?」
第十二部隊長さんも気になったらしい。どうやって二人が幻狼を見極めて、倒したのか。
「あ?そんなものここにいるぜって、わかるじゃねぇか」
うん。酒吞は直感的に行くタイプだから、理由なんてあってないようなものなのだろう。
すると必然的に茨木の方に視線が集中する。酒吞よりはまともな返答が返ってくるだろうという期待も込められていた。
「なんと言いますか、幻影を使うモノの特有の違和感があるのですよ」
駄目だった。歴戦の戦士のように、剣を奮えば敵に攻撃が当たるだろうと言われているような答えだった。
経験が物を言う戦い方ではなく、今はどうすれば幻狼を発見できて、対処できるかが知りたいのだ。
まぁ、結局実物を見てみない限りわからないというもの。
「この中で戦えるのは俺とヴァルトルクス第十二部隊長ぐらいか」
ルディが話を聞いたところで、幻狼を倒せるのは、ルディと第十二部隊長さんだけと言った。力技のゴリ押しで戦うという意味なのだろう。
え?私も戦えるよ。
「騎士ヴィオーラ」
「ふぇ……は、はい!」
「騎士三名と共に、団長に報告しろ。王都の北部に幻狼出現。第十三部隊長の名において討伐を遂行すると」
「り……了きゃいしましゅた……」
ヴィオはカミカミだ。こういうのはミレーの方がしっかりしていると思うのだけど、貴族という意味でヴィオが四人の中で、地位が高いことになっているのだろう。
そして騎士の四人は来た道を戻って行った。次にこの場に残ったリザ姉とロゼにルディは命じた。
「将校ロゼは移動型の結界を張って、リザネイエ第十二副部隊長とファルークスと共に外壁内を調査。結界があれば、不意打ちをくらっても対処できるだろう」
「「了解!」」
「おい、シュレイン。この森の広さから言えば、夕暮れまでに終わらないぞ」
ファルはルディの命令に異議を唱えた。
空を見れば既に太陽は傾いてしまっている。それに冬の時間帯は日の入りが早いため、あと三時間で森の調査を終わらせなければならない。
「ファルークス。王都の外には幻狼がいると想定されているが、ここの常闇から同じ幻狼が出てきたとは限らない。今日の夜半ぐらいに常闇を閉じる予定だが、空を飛んで移動する魔物がいないと確証が得られれば、それでいいだけだ」
確かにルディの言う通り、王都の内側にある常闇からは何が出てきたのかまだ確認されていない。
それに地上を移動するモノであるなら、そのまま常闇に呑まれていくだろう。気をつけるべきは、ドラゴンのように空を飛ぶ魔物だ。
「まぁ、それぐらいなら、将校ロゼが対処するだろう」
「ファルークス第十三副部隊長。それは無理です!」
「無理じゃないぞ。やるしかない」
ロゼはファルに腕を掴まれて連行されていった。そして、その後をリザ姉がニコニコと笑みを浮かべてついて行っている。
ファル。地下のダンジョンで散々働いたから、ロゼに押し付けようとしていない?まぁ、リザ姉がついて行っているから、大丈夫だろう。
「オボロはこのことをリュミエール神父に報告をしてくれ」
「はい」
朧は神父様に報告するために、この場から消えて行った。残りは、私とルディと第十二部隊長さんと酒吞と茨木だ。
「残りは王都の外側にいる幻狼の討伐だ」
「おう!俺が全部犬っころをブチのめす!」
「酒吞。独り占めは駄目ですよ」
鬼の二人はルディが言い終わる前に駆け出して行き、既にその姿は森の中に消えてしまった。
「ちょっと待って!私もその幻狼っていうのと戦ってみたい!」
このままだと酒吞に全部討伐されてしまう!
私はルディの腕から飛び降りて、二人の後を追っていく。
「アンジュ!」
「あっ!ルディ!手分けしたほうが早いから解散!」
日が暮れるまで、後三時間ほどだからね。その間に討伐できるなら、しておいたほうが良いよね。
最近、冒険者ギルドからの討伐依頼を受けなくなったから、集団の魔物の討伐なんて久しぶり!……いや、ルディに捕獲されていることが多かったからだった。
53
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿の両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない
たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。
何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる