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305 銀の鎖
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「問題はここからですね。獣人の王は民を虐殺し、獣人の王妃は民を連れて別の地に逃げようとした。既に世界は不安定でしたので、転移を行うことは世界に風穴を開けてしまう結果となり、これが……まさか王城の地下の迷宮の元だったとは……恐ろしいものです」
そう、恐ろしい。常闇が開きっぱなしの状態で王城の地下にあり続けているということだ。ただ、これは色々と意志が絡み合って存在しているため、そこから異形が溢れ出してはいない。
「常闇を閉じようとしても閉じなかった。これはアンジュが聞いたという『聖王』の言葉が答えですね。異界と繋がっている闇は一つだけ。恐らく王城の地下の常闇を閉じないと全ての常闇を閉じたことはならず、二十年ごとの『宴』が繰り返させられることになっているのですよね」
「リュミエール神父。その今までに閉じられている常闇すら問題だ。全部アンジュに再度閉じてもらうべきだ」
ファルが凄く面倒くさいことを言ってきた。はっきり言って全部は無理だと思う。どこに常闇があるかわからないし、一旦強引に開いてから、閉じなければならない。実に面倒くさい。
「現実的に無理だね。正確に場所がわからないと閉じることができないし、それだと私の存在が公になってしまうから、絶対に嫌だ」
「ファルークスの言い分もわかりますが、アンジュの存在が貴族共にみつかる危険性があります。そして閉じられなかった常闇から出てきた獣人の王妃。アンジュはそれを思念のようなものだと言いましたね」
「そうじゃないのかなぁという予想。結局言葉がわからないから、何かは不明……あっ!でも黒狐の王妃の言葉がわかったんだよね」
すると神父様とファルからガン見された。え?何故にガン見されるわけ?
だって黒狐の王妃の声が聞こえたとき、皆は反応していたよね。
「え?アンジュ。ウギャウギャウギャって怪しい声しか聞こえて来なかったぞ」
「何その怪しい生物の鳴き声!」
また私だけが聞こえていた!
「正確には言葉としては意味をなさない声ですね」
「なんだろうなぁ『うるいあ』っていう感じの言葉を繰り返していたようにしか聞こえなかったな」
ん?神父様は意味をなさない言葉で、ルディには『うるいあ』……って聞こえたと。で、ファルにはウギャウギャウギャと聞こえたと。
なにこれ!
「ああ?普通に許さねぇって言っていただけだろう?」
「そうですね許さないと言っていましたね」
鬼の二人には普通に聞こえているじゃないか!そこにも違いが出てきている!話が噛み合わないって本当に困る!
ちょっと待て、ルディが言った言葉って微妙な感じの日本語の発音のようにも聞こえた。日本語の発音って独特だからね……ってことは、あれは日本語だった?
「ああ、そうか……黒狐の王妃が転移しようとして、日ノ本に落ちていったのか。で、獣人たちは妖怪と呼ばれる存在となり、その国に定着した。そして異界に繋がっている穴は一つだけ。深い常闇は必然的に王妃が開けた転移の穴に繋がる。だから異形と呼ばれる者たちが顕れるのか」
しかしそこから自力で戻って来る黒狐の王妃は凄いな。それこそ執念というべきものだね。
まぁ、時間軸がどのような感じかはわからないけれど。
「おや?アンジュ様は、我々の祖がここに居た者たちだとおっしゃるのですか?」
「茨木たちがそうとは言わないし、全てじゃないと思うけど、結局あの国って色々受け入れる体質だからね……ルディ……何故にお腹を締めてくるの!」
私が考えられることを口にしていると、ルディがお腹を締めてきた。ここで締めてくる意味がわからない。
「確かにそう考えられますよね。獣人の王妃と黒狼の者たちはどことなく似ていますね」
「神父様。種としては同じだよ。同じ黒狐だから」
その黒狐の朧は空気のような雰囲気をまとって、神父様の背後に立っている。
「しかし、尾の数が違いますが?」
「朧より格上だからね。それは違うだろうね」
朧がソワソワしている。皆の視線が集中してしまっているからだろう。
今回も、聖女の彼女の監視をしてくれていたらしい。とは言っても、私の魔力はほぼ枯渇状態だったから、気絶させることはあまりなかったと報告を受けた。
あまりということは、何回かは気絶させたんだね。
「異形のことの報告書はあっても、そのようなことを書かれたことはありませんでした。流石、聖女様ですね」
「さむっ!」
神父様から『聖女様』って言われると、背筋に寒気が襲ってくる。
「アンジュ!暖炉の火を強めるか!」
「いや、神父様から聖女と言われると鳥肌が立つって話」
「聖女に変わりはないですよ。それで二十九階層のことですが」
認めたくないけど、私の右目には収納された天使の聖痕があるのに変わりはない。それで神父様は一番謎の二十九階層の話に移った。
「一番の理由はアンジュが鎖を取り込んだことでしょうね」
「なんの理由?」
「獣人の王が言っていたのですよね。二階層で鎖に干渉されていたら、言葉の件は解消されていたと言っていたのですよね」
「ああ、これ」
私は右手を出して、手の平から銀色の鎖を床に出す。
そう!鎖の能力を手に入れたのだ!
なぜか銀色の鎖になっているけどね。
「その鎖は精神にも干渉できるということですよね」
「こわっ」
私は銀の鎖を手放す。すると空気に溶けるように鎖が消えていったのだった。
そう、恐ろしい。常闇が開きっぱなしの状態で王城の地下にあり続けているということだ。ただ、これは色々と意志が絡み合って存在しているため、そこから異形が溢れ出してはいない。
「常闇を閉じようとしても閉じなかった。これはアンジュが聞いたという『聖王』の言葉が答えですね。異界と繋がっている闇は一つだけ。恐らく王城の地下の常闇を閉じないと全ての常闇を閉じたことはならず、二十年ごとの『宴』が繰り返させられることになっているのですよね」
「リュミエール神父。その今までに閉じられている常闇すら問題だ。全部アンジュに再度閉じてもらうべきだ」
ファルが凄く面倒くさいことを言ってきた。はっきり言って全部は無理だと思う。どこに常闇があるかわからないし、一旦強引に開いてから、閉じなければならない。実に面倒くさい。
「現実的に無理だね。正確に場所がわからないと閉じることができないし、それだと私の存在が公になってしまうから、絶対に嫌だ」
「ファルークスの言い分もわかりますが、アンジュの存在が貴族共にみつかる危険性があります。そして閉じられなかった常闇から出てきた獣人の王妃。アンジュはそれを思念のようなものだと言いましたね」
「そうじゃないのかなぁという予想。結局言葉がわからないから、何かは不明……あっ!でも黒狐の王妃の言葉がわかったんだよね」
すると神父様とファルからガン見された。え?何故にガン見されるわけ?
だって黒狐の王妃の声が聞こえたとき、皆は反応していたよね。
「え?アンジュ。ウギャウギャウギャって怪しい声しか聞こえて来なかったぞ」
「何その怪しい生物の鳴き声!」
また私だけが聞こえていた!
「正確には言葉としては意味をなさない声ですね」
「なんだろうなぁ『うるいあ』っていう感じの言葉を繰り返していたようにしか聞こえなかったな」
ん?神父様は意味をなさない言葉で、ルディには『うるいあ』……って聞こえたと。で、ファルにはウギャウギャウギャと聞こえたと。
なにこれ!
「ああ?普通に許さねぇって言っていただけだろう?」
「そうですね許さないと言っていましたね」
鬼の二人には普通に聞こえているじゃないか!そこにも違いが出てきている!話が噛み合わないって本当に困る!
ちょっと待て、ルディが言った言葉って微妙な感じの日本語の発音のようにも聞こえた。日本語の発音って独特だからね……ってことは、あれは日本語だった?
「ああ、そうか……黒狐の王妃が転移しようとして、日ノ本に落ちていったのか。で、獣人たちは妖怪と呼ばれる存在となり、その国に定着した。そして異界に繋がっている穴は一つだけ。深い常闇は必然的に王妃が開けた転移の穴に繋がる。だから異形と呼ばれる者たちが顕れるのか」
しかしそこから自力で戻って来る黒狐の王妃は凄いな。それこそ執念というべきものだね。
まぁ、時間軸がどのような感じかはわからないけれど。
「おや?アンジュ様は、我々の祖がここに居た者たちだとおっしゃるのですか?」
「茨木たちがそうとは言わないし、全てじゃないと思うけど、結局あの国って色々受け入れる体質だからね……ルディ……何故にお腹を締めてくるの!」
私が考えられることを口にしていると、ルディがお腹を締めてきた。ここで締めてくる意味がわからない。
「確かにそう考えられますよね。獣人の王妃と黒狼の者たちはどことなく似ていますね」
「神父様。種としては同じだよ。同じ黒狐だから」
その黒狐の朧は空気のような雰囲気をまとって、神父様の背後に立っている。
「しかし、尾の数が違いますが?」
「朧より格上だからね。それは違うだろうね」
朧がソワソワしている。皆の視線が集中してしまっているからだろう。
今回も、聖女の彼女の監視をしてくれていたらしい。とは言っても、私の魔力はほぼ枯渇状態だったから、気絶させることはあまりなかったと報告を受けた。
あまりということは、何回かは気絶させたんだね。
「異形のことの報告書はあっても、そのようなことを書かれたことはありませんでした。流石、聖女様ですね」
「さむっ!」
神父様から『聖女様』って言われると、背筋に寒気が襲ってくる。
「アンジュ!暖炉の火を強めるか!」
「いや、神父様から聖女と言われると鳥肌が立つって話」
「聖女に変わりはないですよ。それで二十九階層のことですが」
認めたくないけど、私の右目には収納された天使の聖痕があるのに変わりはない。それで神父様は一番謎の二十九階層の話に移った。
「一番の理由はアンジュが鎖を取り込んだことでしょうね」
「なんの理由?」
「獣人の王が言っていたのですよね。二階層で鎖に干渉されていたら、言葉の件は解消されていたと言っていたのですよね」
「ああ、これ」
私は右手を出して、手の平から銀色の鎖を床に出す。
そう!鎖の能力を手に入れたのだ!
なぜか銀色の鎖になっているけどね。
「その鎖は精神にも干渉できるということですよね」
「こわっ」
私は銀の鎖を手放す。すると空気に溶けるように鎖が消えていったのだった。
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