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301 私だけ聞こえるし!見えるし!
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「言おうと思っていたけど、巨大生物の方が気になるよね!」
「鎖のことを言うべきだ」
「鎖の方が大事です」
何故に二人から否定されるのだ!あんな巨大生物の方が、おかしいってなるよね!
「おい、アンジュ。それは大丈夫なのか?色がおかしいけど」
ファルが私の左手を指している。何だろうと視線を向けると、途中で切れた銀色の鎖が腕に絡まっていた。
あれ? これって消えないわけ?
細い黒い鎖は引きちぎると灰のように形を崩して消えていったし、太い鎖は剣で切るとそのまま空気に溶けるように消えていった。だけど、私の聖力で侵食した部分は残っている。
何故だろう?
腕を振ってみる。取れない。
鎖を引っ張ってみる。あ、取れた。
どれが右手の手の平に溶けるように消えてしまった。
こわっ!
ふと気になって銀髪の聖王の姿を探す。すると彼は、常闇が存在していた側からこちらを見ていた。
そして本来の常闇がある方向を指す。それは獅子王の城があった場所だ。今はただの高台の姿。
そこのある場所に向って金色の鎖を撃ち放つ。あれ?鎖が出ている。
何!この鎖って!
『異界に通じる穴はただ一つ』
ん?言葉がわかる。
『俺の命をもって閉じようとしたが、シュマリがそれを邪魔をした。シュマリは全ての穴を閉じなければ意味がないと』
……何のことだ!全然意味がわからない!その前後の話はないわけ!
「アンジュ?どうした?」
「どうしたもこうしたも。あの聖王の言っている意味が、さっぱりわからないじゃない!」
「意味不明な言葉なのには変わりないが?」
ルディには、この言葉が聞こえていない?
私は視線を巡らせてみるけど、誰もわかっているような感じではない。
また、私だけ!
『そしてシュマリは自ら闇に呑み込まれた。シュマリは力を持つ者の命を取り込み、世界を生かそうとしている』
「だから誰だよシュマリって!」
『全ての闇を閉じるまで、シュマリは人々を取り込み続けるだろう』
意味がわからないと、口を開こうとしたところで、銀髪の聖王の背後に真っ黒い女性が立っていることに気がついた。
『この場にいる者たちに選択肢を与える。このまま世界の糧になるか、全ての闇を閉じ、異界に通じる穴を閉じるか』
聖王の言葉を聞きながら、女性を観察する。皮膚も髪も何もかも黒に塗りつぶされた女性は見覚えがあるような顔立ちだった。そう、月の聖女の女性……いや黒狐の王妃。違う。二人を混ぜたような顔立ちだった。
頭上には黒い丸い皿が掲げられ、黒い三角の耳が生えている。
そして一番目を引くのが、血のように真っ赤な瞳だ。他が黒いため、瞳の赤が異様に目立つ。
混ざっている。二人の女性が混じっているのだ。
『ここで俺達は決めたのだ。世界の崩壊を防ぐために、力を持つ者を取り込むシュマリと、異界からの侵略から人々を守るために戦う組織を作り上げた俺。それがレイグラーシア国の始まりだ』
「いや、その前の事を説明し……」
何か、おかしな事を言っていたよね。このまま世界の糧になるか、全ての常闇を閉じるか……ヤバイ、聖王の後ろの黒い女性が動き出した。
「ここの出口ってどこ!このままだと世界に食べられる!」
って誰も黒い女性が現れたことを口に出していない。
もぉぉぉぉ!!私にしか見えていないことが多すぎる!
「アンジュには何を話しているのか理解できるのか?」
「何かわかったのですか?」
「見た感じ次の階層への入口が見当たらないから、考えられるのはあの金色の鎖の先じゃないのか」
三人が一斉に話してきた。混乱するから一人ひとり話して欲しいって叫びたいけど、それどころじゃない。
ファルが金色の鎖が指し示す高台が最後の階層へ行く入口だと言ったけれど、そんな曖昧な情報を信じて行動を起こすほど、愚かじゃない。
「『黒白微塵!』」
力を惜しんている場合じゃない。私は何もかも区別なく壊す魔術を施行する。この幻影を投影している空間に向かって。
すると石の床と石の壁に囲まれた空間が現れた。それは今までと同じようで全く違う構造をしていた。
正方形の部屋の中央はすり鉢状に凹んでおり、その中央には黒い闇が口を開けている。
常闇かと一瞬思ったが、常闇のような禍々しさは感じられず、ただの穴だ。
その穴の前にひとり佇む人影が存在している。先程からいる赤い瞳以外が闇に侵食されたかのような女性だ。
その女性はこちらに向けて手を掲げている。
『世界のために、命を力を捧げよ』
温度を感じさせない声が聞こえてくる。しかし、それにかまっていると本当に命を世界に食われてしまうだろう。
私は視線をめぐらし、最後の階層に行ける階段を探す。
「あれですかね」
茨木の声に視線をむければ、茨木は前方を指していた。前方、それは黒い女性を超えてすり鉢状の床を超えた先の正反対側。私の太陽の聖痕の光が届かないこの階層の端。
……無理ゲーすぎる。
「鎖のことを言うべきだ」
「鎖の方が大事です」
何故に二人から否定されるのだ!あんな巨大生物の方が、おかしいってなるよね!
「おい、アンジュ。それは大丈夫なのか?色がおかしいけど」
ファルが私の左手を指している。何だろうと視線を向けると、途中で切れた銀色の鎖が腕に絡まっていた。
あれ? これって消えないわけ?
細い黒い鎖は引きちぎると灰のように形を崩して消えていったし、太い鎖は剣で切るとそのまま空気に溶けるように消えていった。だけど、私の聖力で侵食した部分は残っている。
何故だろう?
腕を振ってみる。取れない。
鎖を引っ張ってみる。あ、取れた。
どれが右手の手の平に溶けるように消えてしまった。
こわっ!
ふと気になって銀髪の聖王の姿を探す。すると彼は、常闇が存在していた側からこちらを見ていた。
そして本来の常闇がある方向を指す。それは獅子王の城があった場所だ。今はただの高台の姿。
そこのある場所に向って金色の鎖を撃ち放つ。あれ?鎖が出ている。
何!この鎖って!
『異界に通じる穴はただ一つ』
ん?言葉がわかる。
『俺の命をもって閉じようとしたが、シュマリがそれを邪魔をした。シュマリは全ての穴を閉じなければ意味がないと』
……何のことだ!全然意味がわからない!その前後の話はないわけ!
「アンジュ?どうした?」
「どうしたもこうしたも。あの聖王の言っている意味が、さっぱりわからないじゃない!」
「意味不明な言葉なのには変わりないが?」
ルディには、この言葉が聞こえていない?
私は視線を巡らせてみるけど、誰もわかっているような感じではない。
また、私だけ!
『そしてシュマリは自ら闇に呑み込まれた。シュマリは力を持つ者の命を取り込み、世界を生かそうとしている』
「だから誰だよシュマリって!」
『全ての闇を閉じるまで、シュマリは人々を取り込み続けるだろう』
意味がわからないと、口を開こうとしたところで、銀髪の聖王の背後に真っ黒い女性が立っていることに気がついた。
『この場にいる者たちに選択肢を与える。このまま世界の糧になるか、全ての闇を閉じ、異界に通じる穴を閉じるか』
聖王の言葉を聞きながら、女性を観察する。皮膚も髪も何もかも黒に塗りつぶされた女性は見覚えがあるような顔立ちだった。そう、月の聖女の女性……いや黒狐の王妃。違う。二人を混ぜたような顔立ちだった。
頭上には黒い丸い皿が掲げられ、黒い三角の耳が生えている。
そして一番目を引くのが、血のように真っ赤な瞳だ。他が黒いため、瞳の赤が異様に目立つ。
混ざっている。二人の女性が混じっているのだ。
『ここで俺達は決めたのだ。世界の崩壊を防ぐために、力を持つ者を取り込むシュマリと、異界からの侵略から人々を守るために戦う組織を作り上げた俺。それがレイグラーシア国の始まりだ』
「いや、その前の事を説明し……」
何か、おかしな事を言っていたよね。このまま世界の糧になるか、全ての常闇を閉じるか……ヤバイ、聖王の後ろの黒い女性が動き出した。
「ここの出口ってどこ!このままだと世界に食べられる!」
って誰も黒い女性が現れたことを口に出していない。
もぉぉぉぉ!!私にしか見えていないことが多すぎる!
「アンジュには何を話しているのか理解できるのか?」
「何かわかったのですか?」
「見た感じ次の階層への入口が見当たらないから、考えられるのはあの金色の鎖の先じゃないのか」
三人が一斉に話してきた。混乱するから一人ひとり話して欲しいって叫びたいけど、それどころじゃない。
ファルが金色の鎖が指し示す高台が最後の階層へ行く入口だと言ったけれど、そんな曖昧な情報を信じて行動を起こすほど、愚かじゃない。
「『黒白微塵!』」
力を惜しんている場合じゃない。私は何もかも区別なく壊す魔術を施行する。この幻影を投影している空間に向かって。
すると石の床と石の壁に囲まれた空間が現れた。それは今までと同じようで全く違う構造をしていた。
正方形の部屋の中央はすり鉢状に凹んでおり、その中央には黒い闇が口を開けている。
常闇かと一瞬思ったが、常闇のような禍々しさは感じられず、ただの穴だ。
その穴の前にひとり佇む人影が存在している。先程からいる赤い瞳以外が闇に侵食されたかのような女性だ。
その女性はこちらに向けて手を掲げている。
『世界のために、命を力を捧げよ』
温度を感じさせない声が聞こえてくる。しかし、それにかまっていると本当に命を世界に食われてしまうだろう。
私は視線をめぐらし、最後の階層に行ける階段を探す。
「あれですかね」
茨木の声に視線をむければ、茨木は前方を指していた。前方、それは黒い女性を超えてすり鉢状の床を超えた先の正反対側。私の太陽の聖痕の光が届かないこの階層の端。
……無理ゲーすぎる。
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