298 / 374
267 奪えばいい
しおりを挟む
私が目にしたものは、黒い鎖が私の『反転の盾』に弾かれて、金色に輝いている姿だった。
それも鎖自体は繋がっているため、術者の意志によって再び『反転の盾』に向かって伸びてきている。
黒い鎖と金色の鎖が同時に、向かってきているのだ。
流石にすべてを跳ね返すように作った盾だけれども、手のひらサイズの六角形の透明な盾に、同時に二属性から攻撃されるとバグる。いや、属性の変換が出来ずにヒビが入っている。
まさかそんな小さな範囲で、二属性攻撃される想定なんてしていない。
「『樹海!』」
ファルが復活したらしい。私の盾が壊れる前に、聖剣で再び木を生やして蓋をしてくれたため事なきを得たが、それも一時のことだ。
そして私の両手が、ガクンと引っ張っていた鎖から解放された。視線を上に向けると何やら怒っている魔王様が降臨されている。
あれ? 私、何かしでかした?
「アンジュ。優先順位を間違えてはいけませんよ」
視線を横に向けると目が笑っていない笑顔を浮かべた神父様がいる。……これは怒っている神父様だ。
私は自分の身の危険を感じて、神父様とルディから距離を取る……取れなかった。
私が動くより早くルディに捕まってしまったのだ。
へらりと笑って私は、ここは怒っている場合ではないと先手を打つ。
「背後からバキバキと音が鳴っているから、早くここから移動した方がいいと思う」
そう、既に私の反転の盾を突破して、鎖がファルが出した木の壁を攻撃してきているのだ。こんなところに留まっている場合ではない。
「ファルークス。先程、回復したので、力は万全ですよね。もっと強固な結界を作り出しなさい」
神父様。流石に無茶振りだと思う。そこまでここに留まる必要はないよね。
「『堅牢絶駕』」
……全く聞き取れない言葉が、ファルから聞こえてきた。いや、二人からの圧力が酷くて、ファルの言葉なんて聞く余裕がないという状況だ。
すると後方の石の階段から茨の蔦が生えてきたのだ。
一瞬私は何もしていないぞと思ったけど、ファルは緑の手の聖痕を持っているから、私の茨の聖痕の力も含まれているのだろう。
その茨が互いが互いに絡みつくように伸びて行き、隙間なく埋め尽くされたと思えば、枯れた植物のように色を無くした。いや、金属のような強固さをもった壁になった。
……ナニコレ? 私の聖痕でこれできる? 茨で壁は作れても、この金属のような強固さを作り出せないと思う。
「アンジュ。言っておくが、いざとなれば、リュミエール神父は捨てておけ」
ルディが酷いことを言う。いや、それは駄目だ。全属性を使える神父様は戦力として大事だ。
「アンジュ。聖騎士は聖女を守ってこその聖騎士です。誰が犠牲になろうとも、聖女が聖騎士をかばうことはありません」
神父様も酷いことを言う。誰かを犠牲にしてここから出られても、それはきっと私は後悔するだろう。
なぜ、私はダンジョンに行きたいと言ってしまったのかと。
「ふん! 今までの聖女はそうかも知れないけど、私自身も聖騎士なんだからね! こんなところで、誰かを犠牲になんて絶対にしないからね!」
私を捕獲している魔王化しているルディに、そして怒っている神父様に向かって言った。
今までの聖騎士を頼るしかない聖女と同じ様な扱いはしないで欲しいと。
そして、誰かを犠牲にすることは、絶対にないと。
「それに、さっきのでわかったけど、死の鎖は元々太陽の聖痕に付随するものだった」
そう、反転の盾で黒い鎖が変換された姿は、金色の鎖だった。あの私と同じ太陽の聖痕を掲げた、聖王が使っていた金色の鎖だ。
「術の譲渡か略奪が、可能だってことだよね!」
「アンジュ……まさか」
「それは仮説であって、ここで検証することは駄目ですよ」
「いつも思うが、アンジュの発想は飛びすぎているんだよな」
「クククッ。やっぱりおもしれぇーなぁ。アマテラスは」
「良いですね。流石はアンジュ様です」
口々に好き勝手に言ってくれるけど、現状的に一番問題なのが、黒い鎖に絡まれて、死に誘われることだ。これは避けないといけない。
だったら、その鎖を奪ってしまえば、何もかも解決するということだ。
いや根本的な解決にはならないけど、現状での対策としては絶対的に有効だ。鎖を奪ってしまえば、手が出せなくなるはずだから。
「鎖を奪って私の物にしてもいいよね!」
「止めるんだ。アンジュ」
「止めなさい。アンジュ」
何故に二人して止める。とても良い案んではないか。
「アンジュが、鎖に囚われるのが先だと思う」
……その辺は運任せっということで。神父様、何故にルディの言葉に頷いているの!
それも鎖自体は繋がっているため、術者の意志によって再び『反転の盾』に向かって伸びてきている。
黒い鎖と金色の鎖が同時に、向かってきているのだ。
流石にすべてを跳ね返すように作った盾だけれども、手のひらサイズの六角形の透明な盾に、同時に二属性から攻撃されるとバグる。いや、属性の変換が出来ずにヒビが入っている。
まさかそんな小さな範囲で、二属性攻撃される想定なんてしていない。
「『樹海!』」
ファルが復活したらしい。私の盾が壊れる前に、聖剣で再び木を生やして蓋をしてくれたため事なきを得たが、それも一時のことだ。
そして私の両手が、ガクンと引っ張っていた鎖から解放された。視線を上に向けると何やら怒っている魔王様が降臨されている。
あれ? 私、何かしでかした?
「アンジュ。優先順位を間違えてはいけませんよ」
視線を横に向けると目が笑っていない笑顔を浮かべた神父様がいる。……これは怒っている神父様だ。
私は自分の身の危険を感じて、神父様とルディから距離を取る……取れなかった。
私が動くより早くルディに捕まってしまったのだ。
へらりと笑って私は、ここは怒っている場合ではないと先手を打つ。
「背後からバキバキと音が鳴っているから、早くここから移動した方がいいと思う」
そう、既に私の反転の盾を突破して、鎖がファルが出した木の壁を攻撃してきているのだ。こんなところに留まっている場合ではない。
「ファルークス。先程、回復したので、力は万全ですよね。もっと強固な結界を作り出しなさい」
神父様。流石に無茶振りだと思う。そこまでここに留まる必要はないよね。
「『堅牢絶駕』」
……全く聞き取れない言葉が、ファルから聞こえてきた。いや、二人からの圧力が酷くて、ファルの言葉なんて聞く余裕がないという状況だ。
すると後方の石の階段から茨の蔦が生えてきたのだ。
一瞬私は何もしていないぞと思ったけど、ファルは緑の手の聖痕を持っているから、私の茨の聖痕の力も含まれているのだろう。
その茨が互いが互いに絡みつくように伸びて行き、隙間なく埋め尽くされたと思えば、枯れた植物のように色を無くした。いや、金属のような強固さをもった壁になった。
……ナニコレ? 私の聖痕でこれできる? 茨で壁は作れても、この金属のような強固さを作り出せないと思う。
「アンジュ。言っておくが、いざとなれば、リュミエール神父は捨てておけ」
ルディが酷いことを言う。いや、それは駄目だ。全属性を使える神父様は戦力として大事だ。
「アンジュ。聖騎士は聖女を守ってこその聖騎士です。誰が犠牲になろうとも、聖女が聖騎士をかばうことはありません」
神父様も酷いことを言う。誰かを犠牲にしてここから出られても、それはきっと私は後悔するだろう。
なぜ、私はダンジョンに行きたいと言ってしまったのかと。
「ふん! 今までの聖女はそうかも知れないけど、私自身も聖騎士なんだからね! こんなところで、誰かを犠牲になんて絶対にしないからね!」
私を捕獲している魔王化しているルディに、そして怒っている神父様に向かって言った。
今までの聖騎士を頼るしかない聖女と同じ様な扱いはしないで欲しいと。
そして、誰かを犠牲にすることは、絶対にないと。
「それに、さっきのでわかったけど、死の鎖は元々太陽の聖痕に付随するものだった」
そう、反転の盾で黒い鎖が変換された姿は、金色の鎖だった。あの私と同じ太陽の聖痕を掲げた、聖王が使っていた金色の鎖だ。
「術の譲渡か略奪が、可能だってことだよね!」
「アンジュ……まさか」
「それは仮説であって、ここで検証することは駄目ですよ」
「いつも思うが、アンジュの発想は飛びすぎているんだよな」
「クククッ。やっぱりおもしれぇーなぁ。アマテラスは」
「良いですね。流石はアンジュ様です」
口々に好き勝手に言ってくれるけど、現状的に一番問題なのが、黒い鎖に絡まれて、死に誘われることだ。これは避けないといけない。
だったら、その鎖を奪ってしまえば、何もかも解決するということだ。
いや根本的な解決にはならないけど、現状での対策としては絶対的に有効だ。鎖を奪ってしまえば、手が出せなくなるはずだから。
「鎖を奪って私の物にしてもいいよね!」
「止めるんだ。アンジュ」
「止めなさい。アンジュ」
何故に二人して止める。とても良い案んではないか。
「アンジュが、鎖に囚われるのが先だと思う」
……その辺は運任せっということで。神父様、何故にルディの言葉に頷いているの!
50
お気に入りに追加
534
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

【完結】私を裏切った前世の婚約者と再会しました。
Rohdea
恋愛
ファルージャ王国の男爵令嬢のレティシーナは、物心ついた時から自分の前世……200年前の記憶を持っていた。
そんなレティシーナは非公認だった婚約者の伯爵令息・アルマンドとの初めての顔合わせで、衝撃を受ける。
かつての自分は同じ大陸のこことは別の国……
レヴィアタン王国の王女シャロンとして生きていた。
そして今、初めて顔を合わせたアルマンドは、
シャロンの婚約者でもあった隣国ランドゥーニ王国の王太子エミリオを彷彿とさせたから。
しかし、思い出すのはシャロンとエミリオは結ばれる事が無かったという事実。
何故なら──シャロンはエミリオに捨てられた。
そんなかつての自分を裏切った婚約者の生まれ変わりと今世で再会したレティシーナ。
当然、アルマンドとなんてうまくやっていけるはずが無い!
そう思うも、アルマンドとの婚約は正式に結ばれてしまう。
アルマンドに対して冷たく当たるも、当のアルマンドは前世の記憶があるのか無いのか分からないが、レティシーナの事をとにかく溺愛してきて……?
前世の記憶に囚われた2人が今世で手にする幸せとはーー?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる