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292 欠けていたピースが揃った

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「ということで、ここは黒狐の王妃が落ちた常闇だと思うんだよね」

 私はそう結論づけた。
 ということはだ。王都の中心に常闇があるという恐ろしい事実がここで発覚したのだ。

「常闇なら今まで閉じられなかったのが疑問だ。こんな王都の中心に常闇があるとわかれば、歴代の聖女が閉じているはすだろう?」

 ルディが当たり前の疑問を口にした。この答えは恐らくこの先にあると思う。

「知らなかったのだと思うよ。だって神父様もルディも知らなかったということは、ここに常闇があるって知らなかったのだと思う」

 それか。閉じることが出来なかったか。どちらかだ。

「それでは、この先をどう進むか、作戦を立てましょうか」

 神父様がこの先をどう進むか決めると言ってきた。ということは、結界の中の危険性を危惧したのだろう。守りに長けているけど、行動の制限がされてしまう結界。

 黒い鎖によって結界にヒビが入ったということは、固まって行動することで危険性が増すことになってしまう。

 それに、神父様の聖痕の力が回復したと言っても、半分ほどだ。そこに頼り切るのも違うだろう。

「私はこのまま普通に進むことを提案するね。恐らく先程の二十五階層で聖女以外を殺す場だと予想したのだけど?」
「あとの四階層は聖女だけでも進める階層と言いたいのか?」
「ルディ。それもあるけど行動の自由性が必要だと思った」
「黒い鎖がまた襲ってくると?」

 予想でしか無いけど、アレには何かしらの意思を感じた。そう、私達の場所を的確に判断して鎖で攻撃してきたのだ。

「可能性の話しだけどね」
「ではそれでいきましょう」

 神父様。これは作戦というものでは全くないし、私しか意見してない。それで即決しないで欲しい。



 ということで、二十六階層に入った。私の魔力は半分ほど回復したものの、身体強化を使い続けるよりも、重力の聖痕で浮いて移動することを選択した。
 私一人だけなら、そこまで聖痕の力は消費しない。

 私はルディの肩を掴んで進み、青空が広がる二十六階層を進んでいく。

 今回も獅子王の背を追う形で二十六階層を進むらしい。

「また南側だ」

 ファルが言うように、遠くに見える風景がキルクスがある国の南側の地域だ。だけど、これは予想範囲内。
 そして、緑の手を持つ女性が命がけで創った巨大樹が見える。

 獅子王は以前ボコボコにされたにも関わらず、またしても人と話し合いの場を持ちたいらしい。

「あっ!」

 私は思わず声を上げてしまった。予想はしていた。けれど、実際にこの映像を見せられてしまうと、やはりそうだったのかと、納得してしまう。

太陽ソールの聖女。いや、聖王か……これはどういうことだ?」

 私達が見せられたものは、巨大樹の前に獅子王を迎え撃つのか、迎え入れるためかわからないが、銀髪の男性と女性が立っていた。

 銀髪の女性の頭上には光った皿が浮いている。ルーナの聖痕だ。
 そして、銀髪の男性の頭上には王冠のような金色に光る輪が浮いていた。太陽ソールの聖痕を掲げていたのだ。

「多分ルディたちが見つけた古文書の聖王と聖女は一人ひとりのことを指していたのじゃなくて、獣人族の聖王と聖女。人族の聖王と聖女を意味していたのじゃないのかな?」
「ややこしすぎるだろう!」

 ファルが突っ込んできた。私に言われてもねぇ。それを書いた人に文句を言って欲しい。

「これでピースが揃いましたね」

 神父様が太陽ソールの聖痕を持つ者の登場で役者は揃ったと言った。
 きっと銀髪の人は願ったのだろう。暗闇には月ではなく太陽が必要だと。だから、彼は太陽ソールの聖痕の力を具現化した。

 ん?そう言えば、私も思ったなぁ。一ヶ月ぐらい極夜が続いたときに、いい加減に太陽昇れと。その極夜はルディの所為だったらしいけど。

 もしかして、太陽ソールの聖痕を持ってしまったのは私がそう願った所為か!


 獅子王は攻撃する意思は無いということを見せつけるために、両腕を上にあげて、頭上に聖痕を掲げた二人に近づいていく。

『υφοοτφζζονμκυ』

 相変わらず言葉がバグっている。獅子王が何を言っているのかわからない。

『υφοοτφ? ∑θιεορπφκυφξΗΕφΗνλψ?』

 力を戻した?だから俺達にも力を手放せと? と太陽ソールの聖痕を掲げた男性が言っている。

『ρλλοψ∝Γ‼』

 馬鹿にするな!……か。まぁそうだろうね。今まで獣人たちは人に理不尽を強いてきたのだ。力を手放すことを強要することは、人として反感を覚えるだろう。

 そこに第三者の声が響き渡った。

『ユルシマセヌユルシマセヌユルシマセヌ』

 怖いよ。なぜ、黒狐の王妃の声だけ聞き取れるんだよ。

 そして、三人がいる頭上に黒い穴が口を開いたのだった。

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