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284 転移ができる理由
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私は教会にいる時に何度か遠くに移動する方法は無いのかと、試行錯誤していた。勿論これは教会や貴族の手から逃れるためだ。
その候補して最有力だったのが、転移移動だ。瞬間的に別の場所に移動する。魔素に満ちた世界であるなら、できると確信していた。
だけど、何度挑戦しても途中で発動を止めてしまう自分がいた。近場を移動するのはできた。だけど、遠くに行こうとするとできない。
だから、これは何かが妨害していると考えて止めた。だって自分の身体から黒い鎖が生えている世界だよ。ヤバイなっていうことぐらいは理解できた。
「アンジュ。転移が出来ないってどういうことだ?転移はできるだろう?」
ファルが転移はできるはずだと言ってきたけど、私にとってはそれがとても不可解だった。
転移の腕輪は転移できる範囲が決められている。
王都から各都市に転移をしようと思えば、多くの術師を動員して大掛かりな転移陣を用いてる。そして転移ができる人数が片手ほどという制限がある。どちらも、ゴリ押しで転移をしていると私は思っている。
「ファル様、言っていたよね。大掛かりな陣を用いて転移できるのが5人程だって」
「ああ、転移できているじゃないか」
出来ていると言えば出来ている。だけど、それには決まりがあるはずだ。
「例えばさぁ、私の腕輪はルディのところにしか転移できないよね」
「当たり前だろう」
ファルは当たり前だというけど、なぜ固定されているのかの問題だ。
「大掛かりな陣も決められた場所にしか設置されていないよね」
「それはそうだろう」
きっと決められたところに転移するという既成概念が思考するのを阻んでいるのだ。
「多分、転移の入口と出口が引き合うように設定されているんじゃないのかな?」
「……」
私の言葉にファルは答えない。知らないのだろうね。
強引に転移ができてしまう理由はこれだ。どこから飛んでどこに出てくる。その場所が互いに引き合うように陣を組んでいるとすれば、可能なのだろう。
私に付けられた『束縛の腕輪』は正にそれを表している。ルディのところに転移するばかりか、私の意思が関係なくルディのところに引き寄せられる様に転移したこともあった。
こういう転移はできるんだよ。でもそれは私が望んだ形では無かった。
私が望んだ形は、記憶にある場所に飛ぶことだった。いくらなんでも知らないところには転移は出来無いだろうとわかる。けれど、知っている場所に瞬時に転移ができれば、教会だろうが貴族だろうが逃げ切れる自信があった。あったのに……世界の裏側にいる何かに身体が拒否反応を示したのだ。
これ以上事を進めると死ぬと。
獣人たちと黒狐の王妃が落ちていった常闇は地面に綺麗な円を描いたまま存在している。その前で獅子王は呆然と立っていた。
きっと何が起こったのか理解していないのだろう。
しかし、これで獅子王以外は世界に力を還す為に死んでしまった。だったら、世界は飢える必要はない。
何か見落としている?
すると常闇の縁に黒い異物が現れた。いや、なに者かの手が常闇の縁を掴んでいる。そして黒い塊が常闇から這い出てこようとしていた。
「ありゃ、黒狐が獣化しているなぁ」
「あの穴から出られるのですね」
私の目には大きな黒い塊しか見えないけど、あれが黒狐の王妃?
「ねぇ、ルディ。私には黒い塊にしか見えないけど、どう見えているの?」
「黒い獣だな。それも尾が複数本ある」
そうか普通はあれが黒いケモノ……狐にみえているのか。私には獅子王より大きな黒くてモヤモヤしている物体にしか見えない。
その黒くてモヤモヤした物体が獅子王に向かって行った。獅子王はそれに対して剣を構えて戦う姿勢だ。
『ξ……ザーッッッッザー』
ん?言葉に砂嵐のようなノイズがまじり始めた。この幻影、壊れ始めた?
『わ…わたくしはあなたをゆるしませぬ』
あっ!言葉が聞き取れるようになった。今更感はある。
『φθζιοοοαθΗι!』
「王様の声はそのままだし!」
思わず突っ込んでしまった。黒狐の王妃の言葉が聞こえて獅子王の言葉がそのままって、バグにも程がある。
「どうした?アンジュ」
「ルディ、何がどうしたなの?これ酷くない?王妃の言葉はわかるようになったのに、王様の言葉はそのままって!」
私はバグが酷いことをルディに言うも、ルディは何の事を言っているのかわからない顔をしてる。
「アンジュ。何も変わっていないが?」
「え?王妃が王様に向かって許さないって言っているのに?」
私は神父様とファルを見るも二人共、わからないという表情をしている。え?聞こえているの私だけ?
「確かに他の者たちを別のところに移動させたと言っていますね」
「あいつの事が許せねぇから戻ってきたと言っているな」
あれ?茨木と酒吞には聞こえている。なぜだろう?
その候補して最有力だったのが、転移移動だ。瞬間的に別の場所に移動する。魔素に満ちた世界であるなら、できると確信していた。
だけど、何度挑戦しても途中で発動を止めてしまう自分がいた。近場を移動するのはできた。だけど、遠くに行こうとするとできない。
だから、これは何かが妨害していると考えて止めた。だって自分の身体から黒い鎖が生えている世界だよ。ヤバイなっていうことぐらいは理解できた。
「アンジュ。転移が出来ないってどういうことだ?転移はできるだろう?」
ファルが転移はできるはずだと言ってきたけど、私にとってはそれがとても不可解だった。
転移の腕輪は転移できる範囲が決められている。
王都から各都市に転移をしようと思えば、多くの術師を動員して大掛かりな転移陣を用いてる。そして転移ができる人数が片手ほどという制限がある。どちらも、ゴリ押しで転移をしていると私は思っている。
「ファル様、言っていたよね。大掛かりな陣を用いて転移できるのが5人程だって」
「ああ、転移できているじゃないか」
出来ていると言えば出来ている。だけど、それには決まりがあるはずだ。
「例えばさぁ、私の腕輪はルディのところにしか転移できないよね」
「当たり前だろう」
ファルは当たり前だというけど、なぜ固定されているのかの問題だ。
「大掛かりな陣も決められた場所にしか設置されていないよね」
「それはそうだろう」
きっと決められたところに転移するという既成概念が思考するのを阻んでいるのだ。
「多分、転移の入口と出口が引き合うように設定されているんじゃないのかな?」
「……」
私の言葉にファルは答えない。知らないのだろうね。
強引に転移ができてしまう理由はこれだ。どこから飛んでどこに出てくる。その場所が互いに引き合うように陣を組んでいるとすれば、可能なのだろう。
私に付けられた『束縛の腕輪』は正にそれを表している。ルディのところに転移するばかりか、私の意思が関係なくルディのところに引き寄せられる様に転移したこともあった。
こういう転移はできるんだよ。でもそれは私が望んだ形では無かった。
私が望んだ形は、記憶にある場所に飛ぶことだった。いくらなんでも知らないところには転移は出来無いだろうとわかる。けれど、知っている場所に瞬時に転移ができれば、教会だろうが貴族だろうが逃げ切れる自信があった。あったのに……世界の裏側にいる何かに身体が拒否反応を示したのだ。
これ以上事を進めると死ぬと。
獣人たちと黒狐の王妃が落ちていった常闇は地面に綺麗な円を描いたまま存在している。その前で獅子王は呆然と立っていた。
きっと何が起こったのか理解していないのだろう。
しかし、これで獅子王以外は世界に力を還す為に死んでしまった。だったら、世界は飢える必要はない。
何か見落としている?
すると常闇の縁に黒い異物が現れた。いや、なに者かの手が常闇の縁を掴んでいる。そして黒い塊が常闇から這い出てこようとしていた。
「ありゃ、黒狐が獣化しているなぁ」
「あの穴から出られるのですね」
私の目には大きな黒い塊しか見えないけど、あれが黒狐の王妃?
「ねぇ、ルディ。私には黒い塊にしか見えないけど、どう見えているの?」
「黒い獣だな。それも尾が複数本ある」
そうか普通はあれが黒いケモノ……狐にみえているのか。私には獅子王より大きな黒くてモヤモヤしている物体にしか見えない。
その黒くてモヤモヤした物体が獅子王に向かって行った。獅子王はそれに対して剣を構えて戦う姿勢だ。
『ξ……ザーッッッッザー』
ん?言葉に砂嵐のようなノイズがまじり始めた。この幻影、壊れ始めた?
『わ…わたくしはあなたをゆるしませぬ』
あっ!言葉が聞き取れるようになった。今更感はある。
『φθζιοοοαθΗι!』
「王様の声はそのままだし!」
思わず突っ込んでしまった。黒狐の王妃の言葉が聞こえて獅子王の言葉がそのままって、バグにも程がある。
「どうした?アンジュ」
「ルディ、何がどうしたなの?これ酷くない?王妃の言葉はわかるようになったのに、王様の言葉はそのままって!」
私はバグが酷いことをルディに言うも、ルディは何の事を言っているのかわからない顔をしてる。
「アンジュ。何も変わっていないが?」
「え?王妃が王様に向かって許さないって言っているのに?」
私は神父様とファルを見るも二人共、わからないという表情をしている。え?聞こえているの私だけ?
「確かに他の者たちを別のところに移動させたと言っていますね」
「あいつの事が許せねぇから戻ってきたと言っているな」
あれ?茨木と酒吞には聞こえている。なぜだろう?
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