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267 闇の中の朝
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ふと、意識が眠りから覚めた。まぶたの裏側に感じる光は無く、ただ闇があるのみ。
私の中では朝だと思ったのだけど、違うのだろうか。
目を開けて見ると……うん。ルディが私を抱えて寝ているのはいつもと変わらない。けど、いつもより窮屈に感じる。
視線を巡らすと暗闇にどこからか光が差し込む。どう考えても光源が私にしか思えない光り具合。
天使の聖痕か!右目だけを閉じると、中は暗闇に戻った。この天使の聖痕ヤバイな。いや、ヤバいのはこの場所か。
だんだんと意識がはっきりしてくると、自分がどこにいるか理解してきた。ダンジョンの二十階層で、仮眠を取っていたのだった。
私は仮眠じゃなくて爆睡していたけど。
テントの布地の向こう側で、人の動く気配がする。誰かは起きているみたい。恐らくそろそろ起きて行動をしなければならない時間なのだろう。
私は身を捩ってルディの腕の中から抜け出そうとすると、ガシッと圧迫感が増した。
ルディ。起きているのなら、既に誰かが行動をしているのは、気がついているよね。気配から神父様だと思うんだよ。
これは最後に起きてくると怒られるパターンだと思う。
「ルディ。おはよう。起きているのなら起きよう」
「嫌だ」
何故に!睡眠時間はいつもと変わらないと思うから、寝たりないとかは無いはず。もしかして、あれか?直ぐに行動できるように隊服のまま寝たから、眠りが浅かったとか?
私は爆睡していたけどね。
「神父様が起きて行動しているから、一番最後だと怒られるヤツだよ。説教部屋に連れて行かれて、反省文かされるヤツだよ」
「……アンジュ。説教部屋なんて無いはずだが?」
そう言ってルディは目を開けて、呆れた視線を私に向けてきた。
説教部屋イコール神父様の執務室だね。トイレも室内にあるから、絶対に逃げれない部屋だ。
「アンジュ。シュレイン。起きているなら、朝食を作ってください」
起きているのが神父様にバレバレなのは仕方がない。そして、朝食を作る任務を言い渡されてしまった。
爆睡していたから、それぐらい作るよ。酒吞と茨木とファルとで交代で見張りをしていた。魔物は出ない区域と神父様たちが言っていたけど、ダンジョンだからね。
私は見張りを免除してもらったから、ご飯は作るよ。
「はぁ。兄上に聖女のお披露目パーティーを披露宴にできないか、相談しよう」
……ルディ。それは駄目だって言ったはず。
ため息を吐きながらルディは渋々私を解放してくれた。身なりを整えて、テントの外に出ると、まだ夜だった。いや、ここの二十階層は夜の階層なのだろう。きっといつまで経っても夜のままなのだと思う。
「神父様。おはようございます」
「おはよう。アンジュ。食事の材料は袋の中に入っていますからね」
神父様は明かり取りのランプの前に座って何やら作業をしながら言ってきた。食事を作ると言っても作るものは、教会の水の様なスープだ。
「リュミエール神父。おはようございます」
「シュレイン。おはよう。お披露目パーティーはシスター・マリアも楽しみにしているのですから、潰してしまったら、八つ当たりされますよ」
神父様はルディのため息混じりの呟きが聞こえていたのか、釘を差してきた。それもシスター・マリアの名前を出して。
神父様。シスター・マリアは楽しみにしているのは、聖騎士としての仕事ができるからだよ。蓋を開けてみれば神父様に騙されたことに気がついて、八つ当たりされるのは神父様の方だと思います。
「しかし、リュミエール神父。一緒に暮らしているのですから、籍を入れてもいいと思うのです」
一緒に暮らしているというか、暮らしているのは聖騎士団の宿舎だから、そのような言い方をすると、宿舎に住んでいる人たちも一緒に暮らしていることになると思う。
「シュレイン。まだ駄目ですよ。せめてお披露目パーティーが終わってからにしなさい」
「え?」
お披露目パーティーが終わってから?誓約書より半年早まっているけど?
「神父様。どういうこと?誓約書に書かれている期間はあと半年はあるのに?」
「私は貴方達の間で取り交わされた誓約の内容は知りませんが、スラヴァールが水面下で動いていますからね。お披露目パーティーの機に乗じて画策しているようですから」
白銀の王様は何をしでかす気なのだろう。貴族を根絶やしにしてもおかしくはないと内心思っているけど、そこまではしないだろうし……いや、何とか第2部隊長の退団に一枚噛んているらしいし、その一族を根絶やしにしたかったって言っていたから、あり得ないことも無い。
「わかりました。兄上と相談して来ます」
そう言ってルディは、袋の中から朝食の材料を取り出している私を抱きかかえて、ここから立ち去ろうとする。
「シュレイン。勝手な行動は規律違反になりますよ」
その神父様の言葉と向けられた殺気で、ルディは足を止め、大きくため息を吐いた。
だから、今日は上ではなくて、下に向かうって言ったじゃない。
私の中では朝だと思ったのだけど、違うのだろうか。
目を開けて見ると……うん。ルディが私を抱えて寝ているのはいつもと変わらない。けど、いつもより窮屈に感じる。
視線を巡らすと暗闇にどこからか光が差し込む。どう考えても光源が私にしか思えない光り具合。
天使の聖痕か!右目だけを閉じると、中は暗闇に戻った。この天使の聖痕ヤバイな。いや、ヤバいのはこの場所か。
だんだんと意識がはっきりしてくると、自分がどこにいるか理解してきた。ダンジョンの二十階層で、仮眠を取っていたのだった。
私は仮眠じゃなくて爆睡していたけど。
テントの布地の向こう側で、人の動く気配がする。誰かは起きているみたい。恐らくそろそろ起きて行動をしなければならない時間なのだろう。
私は身を捩ってルディの腕の中から抜け出そうとすると、ガシッと圧迫感が増した。
ルディ。起きているのなら、既に誰かが行動をしているのは、気がついているよね。気配から神父様だと思うんだよ。
これは最後に起きてくると怒られるパターンだと思う。
「ルディ。おはよう。起きているのなら起きよう」
「嫌だ」
何故に!睡眠時間はいつもと変わらないと思うから、寝たりないとかは無いはず。もしかして、あれか?直ぐに行動できるように隊服のまま寝たから、眠りが浅かったとか?
私は爆睡していたけどね。
「神父様が起きて行動しているから、一番最後だと怒られるヤツだよ。説教部屋に連れて行かれて、反省文かされるヤツだよ」
「……アンジュ。説教部屋なんて無いはずだが?」
そう言ってルディは目を開けて、呆れた視線を私に向けてきた。
説教部屋イコール神父様の執務室だね。トイレも室内にあるから、絶対に逃げれない部屋だ。
「アンジュ。シュレイン。起きているなら、朝食を作ってください」
起きているのが神父様にバレバレなのは仕方がない。そして、朝食を作る任務を言い渡されてしまった。
爆睡していたから、それぐらい作るよ。酒吞と茨木とファルとで交代で見張りをしていた。魔物は出ない区域と神父様たちが言っていたけど、ダンジョンだからね。
私は見張りを免除してもらったから、ご飯は作るよ。
「はぁ。兄上に聖女のお披露目パーティーを披露宴にできないか、相談しよう」
……ルディ。それは駄目だって言ったはず。
ため息を吐きながらルディは渋々私を解放してくれた。身なりを整えて、テントの外に出ると、まだ夜だった。いや、ここの二十階層は夜の階層なのだろう。きっといつまで経っても夜のままなのだと思う。
「神父様。おはようございます」
「おはよう。アンジュ。食事の材料は袋の中に入っていますからね」
神父様は明かり取りのランプの前に座って何やら作業をしながら言ってきた。食事を作ると言っても作るものは、教会の水の様なスープだ。
「リュミエール神父。おはようございます」
「シュレイン。おはよう。お披露目パーティーはシスター・マリアも楽しみにしているのですから、潰してしまったら、八つ当たりされますよ」
神父様はルディのため息混じりの呟きが聞こえていたのか、釘を差してきた。それもシスター・マリアの名前を出して。
神父様。シスター・マリアは楽しみにしているのは、聖騎士としての仕事ができるからだよ。蓋を開けてみれば神父様に騙されたことに気がついて、八つ当たりされるのは神父様の方だと思います。
「しかし、リュミエール神父。一緒に暮らしているのですから、籍を入れてもいいと思うのです」
一緒に暮らしているというか、暮らしているのは聖騎士団の宿舎だから、そのような言い方をすると、宿舎に住んでいる人たちも一緒に暮らしていることになると思う。
「シュレイン。まだ駄目ですよ。せめてお披露目パーティーが終わってからにしなさい」
「え?」
お披露目パーティーが終わってから?誓約書より半年早まっているけど?
「神父様。どういうこと?誓約書に書かれている期間はあと半年はあるのに?」
「私は貴方達の間で取り交わされた誓約の内容は知りませんが、スラヴァールが水面下で動いていますからね。お披露目パーティーの機に乗じて画策しているようですから」
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「わかりました。兄上と相談して来ます」
そう言ってルディは、袋の中から朝食の材料を取り出している私を抱きかかえて、ここから立ち去ろうとする。
「シュレイン。勝手な行動は規律違反になりますよ」
その神父様の言葉と向けられた殺気で、ルディは足を止め、大きくため息を吐いた。
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