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264 世界の力は一つだけだった
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「はぁ。最悪」
20階層まで来て、入り口のところで夜空を見上げながら出た私の言葉だ。
「だいたいわかった。もう馬鹿としか言えない」
あれから15階層から19階層まで戦乱が広がっていく様子を見せつけられた。魔術という力を得た人々は、今まで虐げていた獣人に対して攻撃を仕掛けたのだ。そして、魔術という武器を得た人々は魔術を上達させる速度が早く、戦禍は国中に広がっていった。それを北側西側王都、最後に再び隔離された場所であるキルクスの地域に戻った。
そこは白髪の男性が先頭に立ち、人々を戦いへと導いていた。
「アンジュの意見を聞きましょうか?」
神父様に私の意見を聞かれたけど、まだ半分はあるはずだから、ここまでの見解でしかない。
「11階層から19階層までは戦いの広がり方を見せられたと思う。そもそもキルクス以外の地域がおかしい。19階層を見て確認できたし」
「アンジュ。具体的にはどうおかしんだ?俺にはアンジュが言っていたように魔物が居なくても争いごとが起こることしか理解できなかった」
ルディの言う通り、それを見せるためでもあったと思う。どれだけ人と獣人の争いが無惨で残酷かを見せつけたのだ。
「気になったのは空かな?」
私は漆黒の星空を見上げて言う。すると、皆の視線も上に向けられる。何も変哲がない夜空だ。
「なんというか、ヒュー様とアスト様の聖痕の力に似ているなって思ったの」
別空間を作り上げるが、その空間は違和感を感じさせないほど完璧だった。永遠の夕刻を作り上げるも外は夜。逆も然り。昼間だが、外は夜。しかし誰もその事には気が付かない。
そして、一番気になったことは、この幻影は世界の力ではなく、人から搾取した魔術で構成されている。聖痕の力といえば、この場所では波のような揺れがある。なぜ、波のように揺れがある?
「聖王は楽園を作ろうと世界の力を使って、国を覆った。勿論この国は山脈の向こう側を除くだけどね。これはすごく世界の力を奪っていった」
ただ、ここで誤算が生まれたのだと思う。
「多分ね。世界の力は一つだったのだろうけど、世界は失った力を補うために、別の力を生み出したか、得たのだと思う。それが魔素。魔素は人族と相性が良かった。今度は魔素を人々が搾取を始めたから、これから、世界の崩壊が始まるんだろうなって予想ができる」
「アンジュの意見は我々も悪いということですか?」
神父様は人族が悪いのかと言ってきたけど、それはなんとも言えない。
「悪いというか。世界の誤算かな?うーん。なんというか。今見たことは突然、人は魔力を得たって感じだった。戸惑いと復讐と傲慢が合わさって、戦乱が広がったっていうことだね」
「おい、アンジュ。傲慢はいるのか?」
「ファル様。傲慢さが無ければ、得た力を使って獣人に復讐しようだなんて思わないよね」
「そうですか。今日はここまでにしましょう。あと10階層は色々負担でしょうから」
負担。これは心情的にということだ。神父様も思うことがあったのだろう。
まぁ、いち日で20階層までいったのだから十分だと思う。そして、酒吞と茨木はテントの用意をしてくれているけれど、彼らは今回のことはどう思って、見ていたのだろう。
ちょっと気になって、神父様作拡張機能付き収納袋から、絶対に入らないだろうと思う木の棒を取り出している鬼の二人に近づいていく。
「ねぇ、酒吞と茨木は何か感じたことはある?」
「あ?あんなもんよくあることだろう?」
よくあるか。それはそうか。小さな島国の中で千年以上戦いを繰り返していたからね。彼らからすれば、大したことはないということだ。
「私はあの犬族の娘の動きですね。なぜあの娘は祈れば、あのようなことになると知っていたのでしょう」
茨木は犬獣人の少女が天に祈った行動に疑問を覚えたらしい。あれね。でもこれって私の予想なんだけど……。
「うーん。例えばさぁ、楽園を創るにあたって、民の命の危機というのは護るべきもので、祈れば何かしらの救済が得られるとすれば、結果がどうなるかわからないけど祈るのではないのかな?」
「ああ、神や仏に祈るという感じですか?私にはわかりませんが」
結果がどうなるかは予想外だけど、助かる可能性があるとすれば、王という神に祈るのだろう。自分を危機的状況から助けてくださいと。しかし、世界の力は思っていた以上に大きかったという結末だ。
「神も仏もクソだクソ。ああ、アマテラスは違うぞ。おもしれーもんを与えてくれるからな」
いや、だから私を神と同列視しないで欲しい。
鬼である彼らにとって神も仏も崇める存在でも、縋る存在でも無いということだった。そして、この幻影もありふれたものだった。
20階層まで来て、入り口のところで夜空を見上げながら出た私の言葉だ。
「だいたいわかった。もう馬鹿としか言えない」
あれから15階層から19階層まで戦乱が広がっていく様子を見せつけられた。魔術という力を得た人々は、今まで虐げていた獣人に対して攻撃を仕掛けたのだ。そして、魔術という武器を得た人々は魔術を上達させる速度が早く、戦禍は国中に広がっていった。それを北側西側王都、最後に再び隔離された場所であるキルクスの地域に戻った。
そこは白髪の男性が先頭に立ち、人々を戦いへと導いていた。
「アンジュの意見を聞きましょうか?」
神父様に私の意見を聞かれたけど、まだ半分はあるはずだから、ここまでの見解でしかない。
「11階層から19階層までは戦いの広がり方を見せられたと思う。そもそもキルクス以外の地域がおかしい。19階層を見て確認できたし」
「アンジュ。具体的にはどうおかしんだ?俺にはアンジュが言っていたように魔物が居なくても争いごとが起こることしか理解できなかった」
ルディの言う通り、それを見せるためでもあったと思う。どれだけ人と獣人の争いが無惨で残酷かを見せつけたのだ。
「気になったのは空かな?」
私は漆黒の星空を見上げて言う。すると、皆の視線も上に向けられる。何も変哲がない夜空だ。
「なんというか、ヒュー様とアスト様の聖痕の力に似ているなって思ったの」
別空間を作り上げるが、その空間は違和感を感じさせないほど完璧だった。永遠の夕刻を作り上げるも外は夜。逆も然り。昼間だが、外は夜。しかし誰もその事には気が付かない。
そして、一番気になったことは、この幻影は世界の力ではなく、人から搾取した魔術で構成されている。聖痕の力といえば、この場所では波のような揺れがある。なぜ、波のように揺れがある?
「聖王は楽園を作ろうと世界の力を使って、国を覆った。勿論この国は山脈の向こう側を除くだけどね。これはすごく世界の力を奪っていった」
ただ、ここで誤算が生まれたのだと思う。
「多分ね。世界の力は一つだったのだろうけど、世界は失った力を補うために、別の力を生み出したか、得たのだと思う。それが魔素。魔素は人族と相性が良かった。今度は魔素を人々が搾取を始めたから、これから、世界の崩壊が始まるんだろうなって予想ができる」
「アンジュの意見は我々も悪いということですか?」
神父様は人族が悪いのかと言ってきたけど、それはなんとも言えない。
「悪いというか。世界の誤算かな?うーん。なんというか。今見たことは突然、人は魔力を得たって感じだった。戸惑いと復讐と傲慢が合わさって、戦乱が広がったっていうことだね」
「おい、アンジュ。傲慢はいるのか?」
「ファル様。傲慢さが無ければ、得た力を使って獣人に復讐しようだなんて思わないよね」
「そうですか。今日はここまでにしましょう。あと10階層は色々負担でしょうから」
負担。これは心情的にということだ。神父様も思うことがあったのだろう。
まぁ、いち日で20階層までいったのだから十分だと思う。そして、酒吞と茨木はテントの用意をしてくれているけれど、彼らは今回のことはどう思って、見ていたのだろう。
ちょっと気になって、神父様作拡張機能付き収納袋から、絶対に入らないだろうと思う木の棒を取り出している鬼の二人に近づいていく。
「ねぇ、酒吞と茨木は何か感じたことはある?」
「あ?あんなもんよくあることだろう?」
よくあるか。それはそうか。小さな島国の中で千年以上戦いを繰り返していたからね。彼らからすれば、大したことはないということだ。
「私はあの犬族の娘の動きですね。なぜあの娘は祈れば、あのようなことになると知っていたのでしょう」
茨木は犬獣人の少女が天に祈った行動に疑問を覚えたらしい。あれね。でもこれって私の予想なんだけど……。
「うーん。例えばさぁ、楽園を創るにあたって、民の命の危機というのは護るべきもので、祈れば何かしらの救済が得られるとすれば、結果がどうなるかわからないけど祈るのではないのかな?」
「ああ、神や仏に祈るという感じですか?私にはわかりませんが」
結果がどうなるかは予想外だけど、助かる可能性があるとすれば、王という神に祈るのだろう。自分を危機的状況から助けてくださいと。しかし、世界の力は思っていた以上に大きかったという結末だ。
「神も仏もクソだクソ。ああ、アマテラスは違うぞ。おもしれーもんを与えてくれるからな」
いや、だから私を神と同列視しないで欲しい。
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