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263 流れ星
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「崩壊が始まっている?アンジュ。まだ何も起こっていないだろう?同じ用に空にヒコウセンが飛んでいるし、人々は農作業をしている。11階層目と変わらない」
ルディは私が何を言っているのかわからないらしい。だけど、おかしいのだ。
「今気がついたのだけど、作物がおかしい。今の季節かわからない」
私は農作業なんてしたことはないけれど、季節ごとに並ぶ作物が違うことぐらいはわかる。色んな仕事を小遣い稼ぎでやってきたからね。見たことある作物なのだけど、絶対に同じ季節にならない作物が目の前にあるのだ。
そう目の前には木になる果実があるのだけど、どうみても桃だ。その隣には林檎がある。これは冬にとれる果実だ。そして畑もかなり多種多様の作物が植えられていた。
「神父様の話では、人々が飢えないように作物が成るようにしたって言っていたよね。その人々は獣人ってことなのかな?」
これは神父様の聖王の話の中であった。人々が飢えないように作物が実り続ける昼の大地を作ったと。
「山脈を越えた向こう側はこんなに緑豊かじゃなかった。ということは、キルクスがある地域は聖王の力の領域外ってことだよね」
「言われてみれば、桃と林檎が同じ時期に収穫はできませんね。これは一番深部にあった古文書の通りの状況のようです」
「おい!次はアレを追いかけるんじゃねぇのか?」
私の言葉に神父様が同意していると、酒吞が前方を差しながら、次のダンジョンが見せたい人物を示した。後ろ姿を見る限り、犬系の獣人の女の子だ。
その女の子が怯えるように走っていっている。いったい何に怯えている?その女の子は田畑に身を隠すように逃げ込んだ。
私は追いかけるように重力の聖痕を操作する。
「人から逃げているようですね」
「魔術っていうやつか?使っているな」
茨木と酒吞が言うように、犬獣人の少女は人族から逃げるように走っている。その背後から数人の人族の男性が追いかけている。田畑を燃やし少女を追い詰めている。
「なぁ、このダンジョンのヤツ。性格悪いよな」
ファルが何かに耐えるような声で言っている。確かに性が悪い。ただの幻影のため、彼女を助けることは誰にもできない。ただ指を加えて彼女の死を見せつけられるしかないのだ。
しかし、わかることもある。
「やはり、魔術というには拙いな」
ルディの言う通り、ただの火の塊を少女に投げているのだ。そこに形状変化も速度変化も見られない。あと、皆が火の魔術だけを使っているのが気になる。火は確かに恐ろしいけれど、雨で打ち消され、強風に吹き飛ばされる。火に特化するなら、酒吞ほどの力が無いと、使い勝手が悪いだろう。
「これは人が新たな力を得て、ジュウジンに反旗を翻したということですね」
そして少女は川べりに追い詰められてしまった。山脈からの川の水によって、大地を削られ深い谷となっている場所にだ。少女はこのまま人族に殺されるか、川に落ちて荒れ狂う水に殺されるかのどちらしか選択肢が無くなってしまった。
すると少女は天に祈るような仕草をする。自分の死を悟ったという行動というよりも、天に助けを求めたという感じだ。
少女が天に祈るポーズをすると、人族は一斉に踵を返して逃げ出した。
「え?逃げた?」
一目散に逃げ出したのだ。そう思った瞬間、空が暗転する。空を見上げるとそこには満天が存在していた。星が漆黒の空に輝いているのだ。
「夜になった?一瞬にして?意味がわからない」
その夜空の星の一つが煌めく。
「メテオってこと!」
星が降ってくる。え?なにそれ!確かに命の危機に瀕しているけれど、ここまでの大技を使うわけ?
「アンジュ。メテオとは何ですか?」
「え?神父様。メテオの魔術は存在しないって……あ、言い方が違う?流れ星。星が落ちてくる魔術」
「アンジュ。そんな危険な魔術あったとしても、普通は禁呪に指定されるだろう」
ルディは知らないらしい。それに流れ星が降っている魔術は危険に認定されるのか。あ……うん。使わないよ。
私の横に一筋の光が通り過ぎる。いや、次々に星のカケラが落ちてくる。炎に焼かれた畑も逃げ惑う人族も祈りを捧げた少女も全てが、降り注ぐ星に呑み込まれていく。
これは自爆攻撃だ。私は未だに星が落ち続ける空を見上げる。ん?あれ?何かおかしい。
夜は確か人々の安寧を願っただったかな?
そして、星が落ちてくることが無くなった空は、何事もなかったかのように、青い空が頭上に広がり、飛行船が飛び交う状態に戻った。ただ足元は巨大なクレーターが出来上がり、止め処無くそこに山からの水が注がれている。
「ああ、あの泉はこのようにして出来上がったのですか」
犬獣人の少女の祈りで出来上がったクレーターは、現在もその姿を残しているらしい。その水が溜まり続けている空間の中央に浮かぶように次の階層に行く階段が口を開けたのだった。
ルディは私が何を言っているのかわからないらしい。だけど、おかしいのだ。
「今気がついたのだけど、作物がおかしい。今の季節かわからない」
私は農作業なんてしたことはないけれど、季節ごとに並ぶ作物が違うことぐらいはわかる。色んな仕事を小遣い稼ぎでやってきたからね。見たことある作物なのだけど、絶対に同じ季節にならない作物が目の前にあるのだ。
そう目の前には木になる果実があるのだけど、どうみても桃だ。その隣には林檎がある。これは冬にとれる果実だ。そして畑もかなり多種多様の作物が植えられていた。
「神父様の話では、人々が飢えないように作物が成るようにしたって言っていたよね。その人々は獣人ってことなのかな?」
これは神父様の聖王の話の中であった。人々が飢えないように作物が実り続ける昼の大地を作ったと。
「山脈を越えた向こう側はこんなに緑豊かじゃなかった。ということは、キルクスがある地域は聖王の力の領域外ってことだよね」
「言われてみれば、桃と林檎が同じ時期に収穫はできませんね。これは一番深部にあった古文書の通りの状況のようです」
「おい!次はアレを追いかけるんじゃねぇのか?」
私の言葉に神父様が同意していると、酒吞が前方を差しながら、次のダンジョンが見せたい人物を示した。後ろ姿を見る限り、犬系の獣人の女の子だ。
その女の子が怯えるように走っていっている。いったい何に怯えている?その女の子は田畑に身を隠すように逃げ込んだ。
私は追いかけるように重力の聖痕を操作する。
「人から逃げているようですね」
「魔術っていうやつか?使っているな」
茨木と酒吞が言うように、犬獣人の少女は人族から逃げるように走っている。その背後から数人の人族の男性が追いかけている。田畑を燃やし少女を追い詰めている。
「なぁ、このダンジョンのヤツ。性格悪いよな」
ファルが何かに耐えるような声で言っている。確かに性が悪い。ただの幻影のため、彼女を助けることは誰にもできない。ただ指を加えて彼女の死を見せつけられるしかないのだ。
しかし、わかることもある。
「やはり、魔術というには拙いな」
ルディの言う通り、ただの火の塊を少女に投げているのだ。そこに形状変化も速度変化も見られない。あと、皆が火の魔術だけを使っているのが気になる。火は確かに恐ろしいけれど、雨で打ち消され、強風に吹き飛ばされる。火に特化するなら、酒吞ほどの力が無いと、使い勝手が悪いだろう。
「これは人が新たな力を得て、ジュウジンに反旗を翻したということですね」
そして少女は川べりに追い詰められてしまった。山脈からの川の水によって、大地を削られ深い谷となっている場所にだ。少女はこのまま人族に殺されるか、川に落ちて荒れ狂う水に殺されるかのどちらしか選択肢が無くなってしまった。
すると少女は天に祈るような仕草をする。自分の死を悟ったという行動というよりも、天に助けを求めたという感じだ。
少女が天に祈るポーズをすると、人族は一斉に踵を返して逃げ出した。
「え?逃げた?」
一目散に逃げ出したのだ。そう思った瞬間、空が暗転する。空を見上げるとそこには満天が存在していた。星が漆黒の空に輝いているのだ。
「夜になった?一瞬にして?意味がわからない」
その夜空の星の一つが煌めく。
「メテオってこと!」
星が降ってくる。え?なにそれ!確かに命の危機に瀕しているけれど、ここまでの大技を使うわけ?
「アンジュ。メテオとは何ですか?」
「え?神父様。メテオの魔術は存在しないって……あ、言い方が違う?流れ星。星が落ちてくる魔術」
「アンジュ。そんな危険な魔術あったとしても、普通は禁呪に指定されるだろう」
ルディは知らないらしい。それに流れ星が降っている魔術は危険に認定されるのか。あ……うん。使わないよ。
私の横に一筋の光が通り過ぎる。いや、次々に星のカケラが落ちてくる。炎に焼かれた畑も逃げ惑う人族も祈りを捧げた少女も全てが、降り注ぐ星に呑み込まれていく。
これは自爆攻撃だ。私は未だに星が落ち続ける空を見上げる。ん?あれ?何かおかしい。
夜は確か人々の安寧を願っただったかな?
そして、星が落ちてくることが無くなった空は、何事もなかったかのように、青い空が頭上に広がり、飛行船が飛び交う状態に戻った。ただ足元は巨大なクレーターが出来上がり、止め処無くそこに山からの水が注がれている。
「ああ、あの泉はこのようにして出来上がったのですか」
犬獣人の少女の祈りで出来上がったクレーターは、現在もその姿を残しているらしい。その水が溜まり続けている空間の中央に浮かぶように次の階層に行く階段が口を開けたのだった。
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