255 / 374
255 聖痕の合わせ技
しおりを挟む
私は今、宙に浮いて毒蜘蛛がはびこる空間を進んでいる。いや、私だけではなく、神父様も鬼の二人もルディもファルもだ。
この状態を説明すると、神父様の空間断絶の結界で覆い、その結界ごと私の重力の聖痕で浮かして進んでいるという状況。
そして、空間断絶はただ空間を切り裂くのではなく、空間と空間の間に別の空間を存在させるという、チートな神父様の聖痕仕様だった。あの天上天下っていう聖痕。本当になんでもありだよね。
だから、空間を分け隔てているものの、本来存在する空間のスキマに作った空間という認識で、何モノにも干渉されない空間だった。ということは、こちらも普通の空間には干渉できないというものだった。
「じゃぁ、魔ねずみをヤッていた結界は別だったってこと?」
後方で見る限り、結界に押しつぶされていたように見えたのだけど?
「それですか?この結界を二枚張って、結界の共鳴を使っただけですよ」
私の重力の聖痕の力で無重力を楽しんでいる神父様が、逆さまになった姿で答えた。言葉の端からは大したことはないという雰囲気だけど、共鳴という部分に嫌な感じがする。普通の空間が異空間に挟まれて共鳴という状態になれば、どうなるのか。それが、魔ねずみが結界に押しつぶされたように見えた状態なのだろう。恐ろしくて、それ以上は聞きたくない。
「これ、おもしれーな!」
酒吞はこの状況を楽しんでいるようだ。
「どうやって、この状態で刀を振るうんだ?力が入んね―ぞ」
いや、この状態で大太刀を鞘から抜こうとしないでほしい。酒吞が暴れるほどの空間はない。
「踏ん張るというより。体の力を上手く使わないと難しいでしょうね」
鬼の二人は戦うことしか頭にないようだ。
「アンジュ。本当にこのまま進むのか?今なら引きかえしてもいいのだぞ」
相変わらず私を締め付けているルディが心配そうに言ってきた。私が術の中心だから、そんなに締め付けてもどこかに飛んでいくことはないよ。
「これ楽だな。このまま進めば、明日には最下層に行けそうだ」
ファルは自力で歩かなくていい楽さを知ってしまったらしい。これは中毒になる。現に身体強化を使えない私がこうなっているのだから。
それにしても明日にはって、普通じゃない?元々五日をみていたのだったら、二日目で最下層にたどり着いて、三日目で探索するという感じの予定だったのでは?そして、二日掛けて戻るという予定だと思ったのだけど?
「本来なら、いつ付く予定だったわけ?」
「三日後だ」
「ん?」
ファルの返答に首を傾げる。計算が合わない。いや、二日目じゃなくて三日目につく予定だと言われれば、ファルの先程の言葉と相違はない。だけど、迎えの馬車が五日後には来る予定だとしたら、戻る時間が考慮されていないことになる。
もしかして、帰りは帰り専用の道があるとか?
……有り得そうだ。
「帰りの日程が合わないのは、行きと帰りのルートが別ってこと?」
「流石アンジュだな。そこに気付いたのか」
ルディが褒めてくれたけど、どう考えても日が合わなければ、必然的に答えは導き出される。
「ダンジョンだなんて、初めてだろう?よく気がついたな」
「あっ!」
そう言えば、今まで私はダンジョンがあるとは耳にしたことはあっても、キルクス周辺にダンジョンは存在しないし、ダンジョンという物は初めてだった。知識は色々もっているけれどね。さっきの階段の手前に色の違う壁があったけど、そこは隠し部屋か隠し通路がありそうとか思ってしまうとか。
「あっとは何ですか?私の目を盗んでダンジョンに行ったとは言わないですよね。あそこは普通では入口の扉は開きませんからね」
「え?キルクス周辺にダンジョンがあったの?どこどこ!どんなダンジョン?」
「という感じに問い詰められますので、場所は教えませんよ」
いや、問い詰めているのだから、教えてほしい。
「さて、十階層まできましたので、小休憩をとってから、残りの十階層に行きましょう」
と言って神父様は突然、結界を解いた。私は結界というモノを重力の聖痕で浮かしていたため、結界が解かれれば、必然的に私の聖痕の力は私にか作用することはなくなり、私以外の人は重力に引っ張られる形で下に落ちていく。いや、私は私を締め付けていたルディの所為で、一緒に落ちていくこととなった。
戦闘もなく、ただ人が走るぐらいの速さで各階層を通り抜けていったのだから、それは一時間もかかってはいない。別に休憩はしなくてもいいのだけど、目の前の風景を見てしまうと、ここで休息を取るべきだろうと思った。
そこは、何処かの風景だった。私が見たことが無い風景なので、きっとキルクス以外の風景なのだろう。
「ふーん。今度のフィールドは広いってことなんだね」
見渡す限り緑の自然が溢れたダンジョン内を見て、少しワクワクしたのだった。
______________
いつも読んでいただきましてありがとうございます。。
今日は新しく投稿した作品の宣伝をさせてください。
『執着心が強い皇帝に捕まってしまった私の話~あのさぁ、平民が皇帝と結婚できるわけないって馬鹿でもわかるよね~』
題名そのままです。既に完結まで書いているので、1週間ほどで終わります。
11時と20時の投稿です。
興味がありましたら、あらすじと注意事項を確認の上、読んでいただけたらと思います。
よろしくお願いします。
↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/192304031/354852790
この状態を説明すると、神父様の空間断絶の結界で覆い、その結界ごと私の重力の聖痕で浮かして進んでいるという状況。
そして、空間断絶はただ空間を切り裂くのではなく、空間と空間の間に別の空間を存在させるという、チートな神父様の聖痕仕様だった。あの天上天下っていう聖痕。本当になんでもありだよね。
だから、空間を分け隔てているものの、本来存在する空間のスキマに作った空間という認識で、何モノにも干渉されない空間だった。ということは、こちらも普通の空間には干渉できないというものだった。
「じゃぁ、魔ねずみをヤッていた結界は別だったってこと?」
後方で見る限り、結界に押しつぶされていたように見えたのだけど?
「それですか?この結界を二枚張って、結界の共鳴を使っただけですよ」
私の重力の聖痕の力で無重力を楽しんでいる神父様が、逆さまになった姿で答えた。言葉の端からは大したことはないという雰囲気だけど、共鳴という部分に嫌な感じがする。普通の空間が異空間に挟まれて共鳴という状態になれば、どうなるのか。それが、魔ねずみが結界に押しつぶされたように見えた状態なのだろう。恐ろしくて、それ以上は聞きたくない。
「これ、おもしれーな!」
酒吞はこの状況を楽しんでいるようだ。
「どうやって、この状態で刀を振るうんだ?力が入んね―ぞ」
いや、この状態で大太刀を鞘から抜こうとしないでほしい。酒吞が暴れるほどの空間はない。
「踏ん張るというより。体の力を上手く使わないと難しいでしょうね」
鬼の二人は戦うことしか頭にないようだ。
「アンジュ。本当にこのまま進むのか?今なら引きかえしてもいいのだぞ」
相変わらず私を締め付けているルディが心配そうに言ってきた。私が術の中心だから、そんなに締め付けてもどこかに飛んでいくことはないよ。
「これ楽だな。このまま進めば、明日には最下層に行けそうだ」
ファルは自力で歩かなくていい楽さを知ってしまったらしい。これは中毒になる。現に身体強化を使えない私がこうなっているのだから。
それにしても明日にはって、普通じゃない?元々五日をみていたのだったら、二日目で最下層にたどり着いて、三日目で探索するという感じの予定だったのでは?そして、二日掛けて戻るという予定だと思ったのだけど?
「本来なら、いつ付く予定だったわけ?」
「三日後だ」
「ん?」
ファルの返答に首を傾げる。計算が合わない。いや、二日目じゃなくて三日目につく予定だと言われれば、ファルの先程の言葉と相違はない。だけど、迎えの馬車が五日後には来る予定だとしたら、戻る時間が考慮されていないことになる。
もしかして、帰りは帰り専用の道があるとか?
……有り得そうだ。
「帰りの日程が合わないのは、行きと帰りのルートが別ってこと?」
「流石アンジュだな。そこに気付いたのか」
ルディが褒めてくれたけど、どう考えても日が合わなければ、必然的に答えは導き出される。
「ダンジョンだなんて、初めてだろう?よく気がついたな」
「あっ!」
そう言えば、今まで私はダンジョンがあるとは耳にしたことはあっても、キルクス周辺にダンジョンは存在しないし、ダンジョンという物は初めてだった。知識は色々もっているけれどね。さっきの階段の手前に色の違う壁があったけど、そこは隠し部屋か隠し通路がありそうとか思ってしまうとか。
「あっとは何ですか?私の目を盗んでダンジョンに行ったとは言わないですよね。あそこは普通では入口の扉は開きませんからね」
「え?キルクス周辺にダンジョンがあったの?どこどこ!どんなダンジョン?」
「という感じに問い詰められますので、場所は教えませんよ」
いや、問い詰めているのだから、教えてほしい。
「さて、十階層まできましたので、小休憩をとってから、残りの十階層に行きましょう」
と言って神父様は突然、結界を解いた。私は結界というモノを重力の聖痕で浮かしていたため、結界が解かれれば、必然的に私の聖痕の力は私にか作用することはなくなり、私以外の人は重力に引っ張られる形で下に落ちていく。いや、私は私を締め付けていたルディの所為で、一緒に落ちていくこととなった。
戦闘もなく、ただ人が走るぐらいの速さで各階層を通り抜けていったのだから、それは一時間もかかってはいない。別に休憩はしなくてもいいのだけど、目の前の風景を見てしまうと、ここで休息を取るべきだろうと思った。
そこは、何処かの風景だった。私が見たことが無い風景なので、きっとキルクス以外の風景なのだろう。
「ふーん。今度のフィールドは広いってことなんだね」
見渡す限り緑の自然が溢れたダンジョン内を見て、少しワクワクしたのだった。
______________
いつも読んでいただきましてありがとうございます。。
今日は新しく投稿した作品の宣伝をさせてください。
『執着心が強い皇帝に捕まってしまった私の話~あのさぁ、平民が皇帝と結婚できるわけないって馬鹿でもわかるよね~』
題名そのままです。既に完結まで書いているので、1週間ほどで終わります。
11時と20時の投稿です。
興味がありましたら、あらすじと注意事項を確認の上、読んでいただけたらと思います。
よろしくお願いします。
↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/192304031/354852790
20
お気に入りに追加
534
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる