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255 聖痕の合わせ技
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私は今、宙に浮いて毒蜘蛛がはびこる空間を進んでいる。いや、私だけではなく、神父様も鬼の二人もルディもファルもだ。
この状態を説明すると、神父様の空間断絶の結界で覆い、その結界ごと私の重力の聖痕で浮かして進んでいるという状況。
そして、空間断絶はただ空間を切り裂くのではなく、空間と空間の間に別の空間を存在させるという、チートな神父様の聖痕仕様だった。あの天上天下っていう聖痕。本当になんでもありだよね。
だから、空間を分け隔てているものの、本来存在する空間のスキマに作った空間という認識で、何モノにも干渉されない空間だった。ということは、こちらも普通の空間には干渉できないというものだった。
「じゃぁ、魔ねずみをヤッていた結界は別だったってこと?」
後方で見る限り、結界に押しつぶされていたように見えたのだけど?
「それですか?この結界を二枚張って、結界の共鳴を使っただけですよ」
私の重力の聖痕の力で無重力を楽しんでいる神父様が、逆さまになった姿で答えた。言葉の端からは大したことはないという雰囲気だけど、共鳴という部分に嫌な感じがする。普通の空間が異空間に挟まれて共鳴という状態になれば、どうなるのか。それが、魔ねずみが結界に押しつぶされたように見えた状態なのだろう。恐ろしくて、それ以上は聞きたくない。
「これ、おもしれーな!」
酒吞はこの状況を楽しんでいるようだ。
「どうやって、この状態で刀を振るうんだ?力が入んね―ぞ」
いや、この状態で大太刀を鞘から抜こうとしないでほしい。酒吞が暴れるほどの空間はない。
「踏ん張るというより。体の力を上手く使わないと難しいでしょうね」
鬼の二人は戦うことしか頭にないようだ。
「アンジュ。本当にこのまま進むのか?今なら引きかえしてもいいのだぞ」
相変わらず私を締め付けているルディが心配そうに言ってきた。私が術の中心だから、そんなに締め付けてもどこかに飛んでいくことはないよ。
「これ楽だな。このまま進めば、明日には最下層に行けそうだ」
ファルは自力で歩かなくていい楽さを知ってしまったらしい。これは中毒になる。現に身体強化を使えない私がこうなっているのだから。
それにしても明日にはって、普通じゃない?元々五日をみていたのだったら、二日目で最下層にたどり着いて、三日目で探索するという感じの予定だったのでは?そして、二日掛けて戻るという予定だと思ったのだけど?
「本来なら、いつ付く予定だったわけ?」
「三日後だ」
「ん?」
ファルの返答に首を傾げる。計算が合わない。いや、二日目じゃなくて三日目につく予定だと言われれば、ファルの先程の言葉と相違はない。だけど、迎えの馬車が五日後には来る予定だとしたら、戻る時間が考慮されていないことになる。
もしかして、帰りは帰り専用の道があるとか?
……有り得そうだ。
「帰りの日程が合わないのは、行きと帰りのルートが別ってこと?」
「流石アンジュだな。そこに気付いたのか」
ルディが褒めてくれたけど、どう考えても日が合わなければ、必然的に答えは導き出される。
「ダンジョンだなんて、初めてだろう?よく気がついたな」
「あっ!」
そう言えば、今まで私はダンジョンがあるとは耳にしたことはあっても、キルクス周辺にダンジョンは存在しないし、ダンジョンという物は初めてだった。知識は色々もっているけれどね。さっきの階段の手前に色の違う壁があったけど、そこは隠し部屋か隠し通路がありそうとか思ってしまうとか。
「あっとは何ですか?私の目を盗んでダンジョンに行ったとは言わないですよね。あそこは普通では入口の扉は開きませんからね」
「え?キルクス周辺にダンジョンがあったの?どこどこ!どんなダンジョン?」
「という感じに問い詰められますので、場所は教えませんよ」
いや、問い詰めているのだから、教えてほしい。
「さて、十階層まできましたので、小休憩をとってから、残りの十階層に行きましょう」
と言って神父様は突然、結界を解いた。私は結界というモノを重力の聖痕で浮かしていたため、結界が解かれれば、必然的に私の聖痕の力は私にか作用することはなくなり、私以外の人は重力に引っ張られる形で下に落ちていく。いや、私は私を締め付けていたルディの所為で、一緒に落ちていくこととなった。
戦闘もなく、ただ人が走るぐらいの速さで各階層を通り抜けていったのだから、それは一時間もかかってはいない。別に休憩はしなくてもいいのだけど、目の前の風景を見てしまうと、ここで休息を取るべきだろうと思った。
そこは、何処かの風景だった。私が見たことが無い風景なので、きっとキルクス以外の風景なのだろう。
「ふーん。今度のフィールドは広いってことなんだね」
見渡す限り緑の自然が溢れたダンジョン内を見て、少しワクワクしたのだった。
______________
いつも読んでいただきましてありがとうございます。。
今日は新しく投稿した作品の宣伝をさせてください。
『執着心が強い皇帝に捕まってしまった私の話~あのさぁ、平民が皇帝と結婚できるわけないって馬鹿でもわかるよね~』
題名そのままです。既に完結まで書いているので、1週間ほどで終わります。
11時と20時の投稿です。
興味がありましたら、あらすじと注意事項を確認の上、読んでいただけたらと思います。
よろしくお願いします。
↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/192304031/354852790
この状態を説明すると、神父様の空間断絶の結界で覆い、その結界ごと私の重力の聖痕で浮かして進んでいるという状況。
そして、空間断絶はただ空間を切り裂くのではなく、空間と空間の間に別の空間を存在させるという、チートな神父様の聖痕仕様だった。あの天上天下っていう聖痕。本当になんでもありだよね。
だから、空間を分け隔てているものの、本来存在する空間のスキマに作った空間という認識で、何モノにも干渉されない空間だった。ということは、こちらも普通の空間には干渉できないというものだった。
「じゃぁ、魔ねずみをヤッていた結界は別だったってこと?」
後方で見る限り、結界に押しつぶされていたように見えたのだけど?
「それですか?この結界を二枚張って、結界の共鳴を使っただけですよ」
私の重力の聖痕の力で無重力を楽しんでいる神父様が、逆さまになった姿で答えた。言葉の端からは大したことはないという雰囲気だけど、共鳴という部分に嫌な感じがする。普通の空間が異空間に挟まれて共鳴という状態になれば、どうなるのか。それが、魔ねずみが結界に押しつぶされたように見えた状態なのだろう。恐ろしくて、それ以上は聞きたくない。
「これ、おもしれーな!」
酒吞はこの状況を楽しんでいるようだ。
「どうやって、この状態で刀を振るうんだ?力が入んね―ぞ」
いや、この状態で大太刀を鞘から抜こうとしないでほしい。酒吞が暴れるほどの空間はない。
「踏ん張るというより。体の力を上手く使わないと難しいでしょうね」
鬼の二人は戦うことしか頭にないようだ。
「アンジュ。本当にこのまま進むのか?今なら引きかえしてもいいのだぞ」
相変わらず私を締め付けているルディが心配そうに言ってきた。私が術の中心だから、そんなに締め付けてもどこかに飛んでいくことはないよ。
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ファルは自力で歩かなくていい楽さを知ってしまったらしい。これは中毒になる。現に身体強化を使えない私がこうなっているのだから。
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「ん?」
ファルの返答に首を傾げる。計算が合わない。いや、二日目じゃなくて三日目につく予定だと言われれば、ファルの先程の言葉と相違はない。だけど、迎えの馬車が五日後には来る予定だとしたら、戻る時間が考慮されていないことになる。
もしかして、帰りは帰り専用の道があるとか?
……有り得そうだ。
「帰りの日程が合わないのは、行きと帰りのルートが別ってこと?」
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ルディが褒めてくれたけど、どう考えても日が合わなければ、必然的に答えは導き出される。
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「あっ!」
そう言えば、今まで私はダンジョンがあるとは耳にしたことはあっても、キルクス周辺にダンジョンは存在しないし、ダンジョンという物は初めてだった。知識は色々もっているけれどね。さっきの階段の手前に色の違う壁があったけど、そこは隠し部屋か隠し通路がありそうとか思ってしまうとか。
「あっとは何ですか?私の目を盗んでダンジョンに行ったとは言わないですよね。あそこは普通では入口の扉は開きませんからね」
「え?キルクス周辺にダンジョンがあったの?どこどこ!どんなダンジョン?」
「という感じに問い詰められますので、場所は教えませんよ」
いや、問い詰めているのだから、教えてほしい。
「さて、十階層まできましたので、小休憩をとってから、残りの十階層に行きましょう」
と言って神父様は突然、結界を解いた。私は結界というモノを重力の聖痕で浮かしていたため、結界が解かれれば、必然的に私の聖痕の力は私にか作用することはなくなり、私以外の人は重力に引っ張られる形で下に落ちていく。いや、私は私を締め付けていたルディの所為で、一緒に落ちていくこととなった。
戦闘もなく、ただ人が走るぐらいの速さで各階層を通り抜けていったのだから、それは一時間もかかってはいない。別に休憩はしなくてもいいのだけど、目の前の風景を見てしまうと、ここで休息を取るべきだろうと思った。
そこは、何処かの風景だった。私が見たことが無い風景なので、きっとキルクス以外の風景なのだろう。
「ふーん。今度のフィールドは広いってことなんだね」
見渡す限り緑の自然が溢れたダンジョン内を見て、少しワクワクしたのだった。
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