251 / 358
251 無限大に呑み込む小銭入れ
しおりを挟む
小休憩が終わり、第二階層を進むことになった。え?神父様を怒らせて大丈夫だったかって?
いつものように、グチグチ言われたよ。聞くふりをして、スープの中の干し肉を噛むことに集中していたけれどね。
言われ慣れているので、痛くも痒くもない。
そして、何故かルディが食後の果物を剥いて切り分けてくれた。勿論食べたけれど……いやルディに食べさせられたの間違いだった。
そのあと、酒吞と茨木が片付けているところを見て、思わず叫んでしまった。
「その袋ってなに!」
大きさは酒吞が肩に担ぐ大きさだ。いうなれば、米俵ぐらいありそう。その革製の袋の中に座っていた椅子やら、大きめの鍋やら魔導式コンロなどが、次々に吸い込まれていった。
もしかして、収納拡張袋ってやつ!私も作ろうと試してみたものの、無限大に物が入っていき、取り出せない物体に成り下がった記憶しかない。
「ええ、リュミエール殿からこの革袋に必要な物を入れて持っていくようにと、言われたのですよ」
「不思議袋だ!いろんな物が入っているぞ」
どうやら、荷物持ちの鬼の二人に神父様が渡したようだけど……。
「神父様!あの袋は何処に売っているのですか!」
あれ、欲しい。絶対に欲しい。もう少し小さいものはないのだろうか。
「何処にも売っていませんよ。私が作成したものですから」
悪魔神父は人の良さそうな笑顔で、大したことはないと言わんばかりの態度だった。
くぅー!何気に神父様がチート過ぎる。私頑張ったのに、全然思った物が作れなかったのに!
「因に参考にしたのは、アンジュがゴミとして捨てていた、恐ろしい小銭入れですよ」
「え?無限大に物を飲み込むしか能力がない袋……あれ、焼却炉のゴミの山に紛れ込ませていたのに?」
あの底なしに物を飲み込んでいく小袋は、この世から消去しなければならないと、燃やす為に溜められていたゴミ置き場にこっそりと、紛れ込ませたはずだった。まさか、神父様に見つかってしまっていたとは!
「アンジュ。恐ろしい言葉が聞こえたが、何を作ったんだ?」
私の言葉にファルが突っ込んできた。まぁ、流石の私もヤバいと思ったからね。入れた物が取り出せない袋だなんて。
「無限大に物を飲み込んでいく小銭入れ」
「そんなに小銭を持ち歩こうとしていたのか?」
いや、小銭入れで試しに作ってみたのは、簡単に作れて口が閉まる入れ物だっただけで、小銭入れにこだわったわけではない。
「布の端切れで作れるからで、本当は肩掛けカバンぐらいの大きさにするつもりだった」
「良かったですね。始めからカバンにしないで」
なんか、神父様の言葉の裏に嫌味を感じる。
「どういう意味ですか?」
「あれ、焼却炉の炎まで飲み込んでいましたよ」
何だって!火まで飲み込むって……あ、焼却炉に火を入れては見たものの、燃えないから何事かと思って調べられたのか。いや、ちょっと待って。
「それはおかしい!私は袋の入口は開かないように縫い付けたから、外から燃やされれば普通に燃えたはず!」
私は絶対に袋の口が開かないように、何重にも糸で縫い付けたのだから、ちょっとやそっとでは取れるはずもない。その糸が外れるときは、袋自体が燃やされているはずだった。
「シスター・グレーシアがアンジュがコソコソしているのを気になって、観察していましてね。あのアンジュが小銭入れを、燃やすゴミに捨てているというので、どんな怪しいものを捨てているのかと気になったと、袋を覗いて見たそうですよ。中は真っ暗で何も入っていなかったと言っていましたね」
ドジっ子シスター!いらないところに気を使わなくていいよ。しかし、生き物が入らないように術式を組んでいて良かった。覗き込んだ時点でシスターは袋の中に吸い込まれていっていたよ。
「現物を見て驚きましたね。袋の容量を大幅に超えてものを収納できる魔道具だなんて、世の中に出れば、犯罪を増長させること間違いありませんね」
「いや、あれは物が取り出せないから、破棄したんだけど?」
すると神父様は私の言葉に笑みを深めた。なんだか、とても嫌な予感がする。いや、私が作った収納拡張の袋を参考にしたという時点で嫌な予感はしていた。
「まぁ、所詮布地ですからね。縫製している箇所を焼き切れば、魔道具としての形はなさないですよね」
いやぁぁぁ!まさか、袋を解体されていたなんて!袋自体には強化の魔術を掛けていたので、多少の衝撃は絶えるものだった。しかし、縫ってある糸に絞って攻撃されれば、簡単に袋は布地へと変化する。
「まぁ、よくあれだけゴブリンを殺したなという死骸がでてきましたね。それも皮膚が爛れたように変色して、どれだけ強力な毒を使ったのかという躯でしたね。あんな物を焼却しようとしたなんて、焼却炉が壊れるではないですか」
あ、そっちで怒られるわけね。容量が多い過ぎて壊れると……てっきり私は毒のことで怒られると思ったよ。
「アンジュ。あの恐ろし毒で、いったいどれほどのゴブリンを倒したんだ?」
私の毒を薄めた栄養剤を飲んだファルは、寒いのか腕をさすりながら聞いてきた。
「さぁ?キングのいるコロニーだったからどれぐらいだろう?」
いちいち数なんて数えてはいないよ。
いつものように、グチグチ言われたよ。聞くふりをして、スープの中の干し肉を噛むことに集中していたけれどね。
言われ慣れているので、痛くも痒くもない。
そして、何故かルディが食後の果物を剥いて切り分けてくれた。勿論食べたけれど……いやルディに食べさせられたの間違いだった。
そのあと、酒吞と茨木が片付けているところを見て、思わず叫んでしまった。
「その袋ってなに!」
大きさは酒吞が肩に担ぐ大きさだ。いうなれば、米俵ぐらいありそう。その革製の袋の中に座っていた椅子やら、大きめの鍋やら魔導式コンロなどが、次々に吸い込まれていった。
もしかして、収納拡張袋ってやつ!私も作ろうと試してみたものの、無限大に物が入っていき、取り出せない物体に成り下がった記憶しかない。
「ええ、リュミエール殿からこの革袋に必要な物を入れて持っていくようにと、言われたのですよ」
「不思議袋だ!いろんな物が入っているぞ」
どうやら、荷物持ちの鬼の二人に神父様が渡したようだけど……。
「神父様!あの袋は何処に売っているのですか!」
あれ、欲しい。絶対に欲しい。もう少し小さいものはないのだろうか。
「何処にも売っていませんよ。私が作成したものですから」
悪魔神父は人の良さそうな笑顔で、大したことはないと言わんばかりの態度だった。
くぅー!何気に神父様がチート過ぎる。私頑張ったのに、全然思った物が作れなかったのに!
「因に参考にしたのは、アンジュがゴミとして捨てていた、恐ろしい小銭入れですよ」
「え?無限大に物を飲み込むしか能力がない袋……あれ、焼却炉のゴミの山に紛れ込ませていたのに?」
あの底なしに物を飲み込んでいく小袋は、この世から消去しなければならないと、燃やす為に溜められていたゴミ置き場にこっそりと、紛れ込ませたはずだった。まさか、神父様に見つかってしまっていたとは!
「アンジュ。恐ろしい言葉が聞こえたが、何を作ったんだ?」
私の言葉にファルが突っ込んできた。まぁ、流石の私もヤバいと思ったからね。入れた物が取り出せない袋だなんて。
「無限大に物を飲み込んでいく小銭入れ」
「そんなに小銭を持ち歩こうとしていたのか?」
いや、小銭入れで試しに作ってみたのは、簡単に作れて口が閉まる入れ物だっただけで、小銭入れにこだわったわけではない。
「布の端切れで作れるからで、本当は肩掛けカバンぐらいの大きさにするつもりだった」
「良かったですね。始めからカバンにしないで」
なんか、神父様の言葉の裏に嫌味を感じる。
「どういう意味ですか?」
「あれ、焼却炉の炎まで飲み込んでいましたよ」
何だって!火まで飲み込むって……あ、焼却炉に火を入れては見たものの、燃えないから何事かと思って調べられたのか。いや、ちょっと待って。
「それはおかしい!私は袋の入口は開かないように縫い付けたから、外から燃やされれば普通に燃えたはず!」
私は絶対に袋の口が開かないように、何重にも糸で縫い付けたのだから、ちょっとやそっとでは取れるはずもない。その糸が外れるときは、袋自体が燃やされているはずだった。
「シスター・グレーシアがアンジュがコソコソしているのを気になって、観察していましてね。あのアンジュが小銭入れを、燃やすゴミに捨てているというので、どんな怪しいものを捨てているのかと気になったと、袋を覗いて見たそうですよ。中は真っ暗で何も入っていなかったと言っていましたね」
ドジっ子シスター!いらないところに気を使わなくていいよ。しかし、生き物が入らないように術式を組んでいて良かった。覗き込んだ時点でシスターは袋の中に吸い込まれていっていたよ。
「現物を見て驚きましたね。袋の容量を大幅に超えてものを収納できる魔道具だなんて、世の中に出れば、犯罪を増長させること間違いありませんね」
「いや、あれは物が取り出せないから、破棄したんだけど?」
すると神父様は私の言葉に笑みを深めた。なんだか、とても嫌な予感がする。いや、私が作った収納拡張の袋を参考にしたという時点で嫌な予感はしていた。
「まぁ、所詮布地ですからね。縫製している箇所を焼き切れば、魔道具としての形はなさないですよね」
いやぁぁぁ!まさか、袋を解体されていたなんて!袋自体には強化の魔術を掛けていたので、多少の衝撃は絶えるものだった。しかし、縫ってある糸に絞って攻撃されれば、簡単に袋は布地へと変化する。
「まぁ、よくあれだけゴブリンを殺したなという死骸がでてきましたね。それも皮膚が爛れたように変色して、どれだけ強力な毒を使ったのかという躯でしたね。あんな物を焼却しようとしたなんて、焼却炉が壊れるではないですか」
あ、そっちで怒られるわけね。容量が多い過ぎて壊れると……てっきり私は毒のことで怒られると思ったよ。
「アンジュ。あの恐ろし毒で、いったいどれほどのゴブリンを倒したんだ?」
私の毒を薄めた栄養剤を飲んだファルは、寒いのか腕をさすりながら聞いてきた。
「さぁ?キングのいるコロニーだったからどれぐらいだろう?」
いちいち数なんて数えてはいないよ。
10
お気に入りに追加
518
あなたにおすすめの小説
もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。
そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。
そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。
「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」
そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。
かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが…
※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。
ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。
よろしくお願いしますm(__)m
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
【完結】きみの騎士
*
恋愛
村で出逢った貴族の男の子ルフィスを守るために男装して騎士になった平民の女の子が、おひめさまにきゃあきゃあ言われたり、男装がばれて王太子に抱きしめられたり、当て馬で舞踏会に出たりしながら、ずっとすきだったルフィスとしあわせになるお話です。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結済】呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。
まりぃべる
恋愛
異世界に来てしまった女性。自分の身に起きた事が良く分からないと驚きながらも王宮内の問題を解決しながら前向きに生きていく話。
その内に未知なる力が…?
完結しました。
初めての作品です。拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。
これでも一生懸命書いてますので、誹謗中傷はお止めいただけると幸いです。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる