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231 モテモテ……?
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きっと死屍累々は剣山の様に矢が突き刺さって魔力の枯渇状態になっているだろう。
人は多かれ少なかれ何れにしろ、魔力を持って生まれてくる。この魔素が満ち溢れた世界は魔力がないと生きられないのだ。
ということは、魔力が足りなければ、身体は何処から魔力を供給しようとするか。そう、人の身体は世界の魔素を己の力にしようと取り込みだす。
幼い頃、魔法使いになるぞっとはしゃいでいて、魔力を使いすぎてぶっ倒れたときに、気がついた。人は世界に満ちている魔素を取り込むことができると。
しかし、ある一定のところまでくると、取り込むことはできなくなってしまった。おそらくそれが、この身体の魔力の最大保有量だったのだ。おかげで私は使いすぎるとぶっ倒れて意識がなくなる物体に成り下がってしまった。
私を抱えているルディの膨大な魔力も世界の魔素で底上げされている。私が教会に来た頃はよく倒れている姿を目にしていた。だから、ルディはここまで強くなったのだと思う。
そう、先程しれっと第12部隊長さんの殺害宣言したルディがだ。
別に私は意地が悪いわけではない。お仕置きはお仕置きだけれども、利点はあるようにしていたのだ。好きで騎士になる者もいるだろうが、私のように嫌々騎士になる者もいる。そんな決められてしまった未来で、実力不足で息絶えるのは、理不尽ではないのか。そんな反抗心があった。
どことなく理解はしていた。貴族でも望んで聖騎士になるべく教会にいるのではないと。平民は言わずもがな、金の欲しさに親に売られてきた者たちばかり。そんな理不尽ばかりの人の世で生き抜くために、私は彼らの魔力の底上げをしていたのだ。
光が収まった光景は、黄金の麦ば……黄金の矢で埋め尽くされた訓練場だった。
「し……しすたー・……まり……あ」
そして、少し離れたところにハリネズミが地面に転がっていた。その光の矢にまみれた背後にはランスの柄で光の矢で埋まった物体を押さえつけているシスター・マリアがいた。
「ファルークス。貴方も自分の未熟さを痛感しなさい」
どうやら、ハリネズミの正体はファルらしい。
おそらく、シスター・マリアがファルが聖痕の力を発動させようとした瞬間にランスでぶっ叩いて、邪魔をしたのだろう。光の矢が落ちてくる直前に馬鹿なことを言って、シスター・マリアの癪に障ったのだと思う。ランスの柄でガンガンと地面を突き刺していたからね。
そして、第12部隊長さんは何事もなくその場に立っていた。これはきっと、全てを砂のようにしてしまう、聖痕を発動させたのだろう。何の聖痕かは、さっぱりわからないけど、恐ろしい聖痕だよね。
視線を巡らせば、酒吞と茨木も普通にその場に立っていた。うーん?これは妖力だから、効かなかったということなのかな?
「さて、時間もいい頃合いですから、朝食にしましょうか」
人の良さそうな笑顔の悪魔神父が言った。これはきっと思いっきり放置するつもりだ。
まぁ、ここにいても仕方がないので、放置一択なのだけどね。
「すまぬが、私の部下たちの矢を解除してくださらないだろうか」
何故かとても丁寧な言葉で第12部隊長さんが私に話しかけてきた。ここは神父様の許可がでないとできないかな?
「ヴァルトルクス第12部隊長。気安くアンジュに話しかけるな」
ふぉっ!何故か、魔王様が降臨したルディが、第12部隊長さんに向かって殺気立っている。
今のはただ単に、部下を思いやる上官の言葉であって、私はどちらかというと、敵視されても文句は言えない立場なんだけど?
「シュレイン第13部隊長。もう少し寛容になったらどうだ?私が将校アンジュから褒められたぐらいで、殺気を向けてくるとは」
ん?私、第12部隊長さんを褒めた?……正解って言っただけだよ。
「ああ?」
更に殺気立ったルディは、私を地面に下ろして、漆黒の剣を抜く。
え?それは人に向けるものじゃないよ。
すると第12部隊長さんも腰に佩いている剣を抜いて、暁の空のような剣身を顕にした。
「ちょっと……」
私が聖剣を抜いた二人を止めようと声を上げると、肩を叩かれ止められてしまった。
「アンジュ。ほら、モテモテですよね」
シスター・マリアが聖母のような微笑みを浮かべて、おかしなことを言っている。表情と言葉が合っていないと思うのは私だけだろうか。
「シスター・マリア。あれはルディが暴走しているだけで、第12部隊長さんは、とばっちりを受けているだけです」
「そうかしら?アンドレイヤー公爵家もね。厳しいらしいと聞いたわ」
全然シスター・マリアと話が噛み合わない。アンド家の何が厳しいわけ?王様殺害未遂した公爵家だよね。
「彼の見た目で、おかしなところがあるでしょ?アンジュ、答えなさい」
いきなり教育者の顔になったシスター・マリアから、第12部隊長さんのことを質問された。それ今、答えること?
人は多かれ少なかれ何れにしろ、魔力を持って生まれてくる。この魔素が満ち溢れた世界は魔力がないと生きられないのだ。
ということは、魔力が足りなければ、身体は何処から魔力を供給しようとするか。そう、人の身体は世界の魔素を己の力にしようと取り込みだす。
幼い頃、魔法使いになるぞっとはしゃいでいて、魔力を使いすぎてぶっ倒れたときに、気がついた。人は世界に満ちている魔素を取り込むことができると。
しかし、ある一定のところまでくると、取り込むことはできなくなってしまった。おそらくそれが、この身体の魔力の最大保有量だったのだ。おかげで私は使いすぎるとぶっ倒れて意識がなくなる物体に成り下がってしまった。
私を抱えているルディの膨大な魔力も世界の魔素で底上げされている。私が教会に来た頃はよく倒れている姿を目にしていた。だから、ルディはここまで強くなったのだと思う。
そう、先程しれっと第12部隊長さんの殺害宣言したルディがだ。
別に私は意地が悪いわけではない。お仕置きはお仕置きだけれども、利点はあるようにしていたのだ。好きで騎士になる者もいるだろうが、私のように嫌々騎士になる者もいる。そんな決められてしまった未来で、実力不足で息絶えるのは、理不尽ではないのか。そんな反抗心があった。
どことなく理解はしていた。貴族でも望んで聖騎士になるべく教会にいるのではないと。平民は言わずもがな、金の欲しさに親に売られてきた者たちばかり。そんな理不尽ばかりの人の世で生き抜くために、私は彼らの魔力の底上げをしていたのだ。
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「し……しすたー・……まり……あ」
そして、少し離れたところにハリネズミが地面に転がっていた。その光の矢にまみれた背後にはランスの柄で光の矢で埋まった物体を押さえつけているシスター・マリアがいた。
「ファルークス。貴方も自分の未熟さを痛感しなさい」
どうやら、ハリネズミの正体はファルらしい。
おそらく、シスター・マリアがファルが聖痕の力を発動させようとした瞬間にランスでぶっ叩いて、邪魔をしたのだろう。光の矢が落ちてくる直前に馬鹿なことを言って、シスター・マリアの癪に障ったのだと思う。ランスの柄でガンガンと地面を突き刺していたからね。
そして、第12部隊長さんは何事もなくその場に立っていた。これはきっと、全てを砂のようにしてしまう、聖痕を発動させたのだろう。何の聖痕かは、さっぱりわからないけど、恐ろしい聖痕だよね。
視線を巡らせば、酒吞と茨木も普通にその場に立っていた。うーん?これは妖力だから、効かなかったということなのかな?
「さて、時間もいい頃合いですから、朝食にしましょうか」
人の良さそうな笑顔の悪魔神父が言った。これはきっと思いっきり放置するつもりだ。
まぁ、ここにいても仕方がないので、放置一択なのだけどね。
「すまぬが、私の部下たちの矢を解除してくださらないだろうか」
何故かとても丁寧な言葉で第12部隊長さんが私に話しかけてきた。ここは神父様の許可がでないとできないかな?
「ヴァルトルクス第12部隊長。気安くアンジュに話しかけるな」
ふぉっ!何故か、魔王様が降臨したルディが、第12部隊長さんに向かって殺気立っている。
今のはただ単に、部下を思いやる上官の言葉であって、私はどちらかというと、敵視されても文句は言えない立場なんだけど?
「シュレイン第13部隊長。もう少し寛容になったらどうだ?私が将校アンジュから褒められたぐらいで、殺気を向けてくるとは」
ん?私、第12部隊長さんを褒めた?……正解って言っただけだよ。
「ああ?」
更に殺気立ったルディは、私を地面に下ろして、漆黒の剣を抜く。
え?それは人に向けるものじゃないよ。
すると第12部隊長さんも腰に佩いている剣を抜いて、暁の空のような剣身を顕にした。
「ちょっと……」
私が聖剣を抜いた二人を止めようと声を上げると、肩を叩かれ止められてしまった。
「アンジュ。ほら、モテモテですよね」
シスター・マリアが聖母のような微笑みを浮かべて、おかしなことを言っている。表情と言葉が合っていないと思うのは私だけだろうか。
「シスター・マリア。あれはルディが暴走しているだけで、第12部隊長さんは、とばっちりを受けているだけです」
「そうかしら?アンドレイヤー公爵家もね。厳しいらしいと聞いたわ」
全然シスター・マリアと話が噛み合わない。アンド家の何が厳しいわけ?王様殺害未遂した公爵家だよね。
「彼の見た目で、おかしなところがあるでしょ?アンジュ、答えなさい」
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