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228 悪魔だ。悪魔がここにいる。
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結局、この訓練場に立っているには8人だけだった。8人とは私、ルディ、ファル、神父様、シスター・マリア、酒吞、茨木……最後はこのことに一切動かなかった第12部隊長。
リザ姉とロゼが第12部隊長に助けを求めたのだけど、第12部隊長は一言を命令を言っただけだった。
『動ける者はリザネイエとロゼの援護にまわれ』と。
まぁ、第12部隊長さんがその力を奮ったら、全てが砂塵に変わってしまうのだから仕方がないのかもしれない。
「そうですね。まぁ、部隊長クラスは良いでしょう」
神父様の評価が始まった。部隊長は今のままの地位でいいということなのだろう。そして、神父様の評価基準を満たした者の名を上げていく。
「スゴイね。神父様、聖騎士団に所属している人の名前を覚えているんだ」
私は名前というモノが聞き取れないという欠陥があるから、人の名前を全て覚えている神父様を素直に尊敬できる。
「アンジュ。何を言っているんだ?」
ファルが私に呆れたように言ってきた。ん?何?
「名を上げている者たちは、全てキルクス出身者ですよ」
ファルの言葉をルディが引き継いだ。あっ……そもそも神父様の威圧に耐えていた人たちが少なかった。でも、死屍累々に言っても聞こえているのだろうか。
「やっぱり隊長クラスでも神父様に一撃入れられないんだね」
隊長三人揃っても一撃すら入らなかったことに、神父様が強すぎるのか隊長クラスが弱すぎるのかと首を捻ってしまう。
「アンジュ。恐らく12人揃っても無理だぞ。シュレインにすら勝てなかったんだからな」
ファルに言われてハッと思い出す。1対13の構図でも魔王様はピンピンしていた。ルディに勝てない時点で、神父様にも勝てないことは、決まっていたということか。
そして、第12部隊長さんはここ2回ほど神父様と行動しているので、神父様の実力を理解して刃を向けることはなかったということだね。同じく、酒吞と茨木の実力も理解していた。
「なぁ、アマテラス。空間に刺す矢ってどんなやつだ?」
約100人の聖騎士を相手にしても余裕な感じで戻ってきた酒吞が私に聞いてきた。うーん。相手にした100人ってそれなりに強い人だったのだけど、鬼という存在を見せつけた感じになってしまった。姿は人のままだけれどね。
これだと本当に聖女の彼女が言っていたように第10部隊と第3部隊は壊滅していてもおかしくはない。
「酒吞は磔にされたいってこと?」
「なんだ?それは?」
ああ、私の魔術がお仕置きの技だと知らないってことか。
「その技は、馬鹿しているヤツらを空中に宙吊りにして、お仕置きするためのものだから、攻撃性はないよ」
「じゃ、あの坊主の奴を磔にできるのか?」
酒吞は神父様に視線を向けて言った。
「それは無理。矢が弾かれておしまいだから」
神父様に遠距離攻撃は基本的に通じない。攻撃が神父様に届く前に叩き落されるからだ。唯一攻撃が当たるとすれば、近接戦の一択。しかし、それすらも当たらない。
「アンジュ様。空間に刺さる矢という物に興味があるのですが、見せていただけませんか?」
茨木まで聞いてきた。そんな面白いものじゃないのに。
私は魔力で一本の矢を作る。そして、そのまま矢を投擲するように構え、鏃を壁に打ち付けるように空間に突き刺す。
「別に大したことはしていないよ。世界は魔素に満ちている。ならば、その魔素に打ち付ける様に、自分の魔力で穿つってこと。空間の上に立つのと同じ要領だね」
見た感じは宙に魔力で作った棒が浮いているように見える。けれど私がさっき作ったのは矢。鏃は空間の中に刺さっている。
「くっ……はははははっ!流石、アマテラスは面白いなぁ。空間の上に立つのと同じか」
「さて、マソとは如何な物なのでしょうか」
酒吞は面白いと大声で笑い。茨木は空間に刺さった矢をまじまじと観察している。そこに今回の事を画策した神父様がニコニコと人の良さそうな笑顔を浮かべて近づいてきた。
「アンジュ。丁度良いですね」
何が良いのだろう。
「お仕置きの矢を放ってください。そうですね。この聖騎士団の敷地にくまなく撃つように」
悪魔だ。ここに悪魔がいる。時間通りに来なかった者たちへのお仕置きを私にさせようと、この悪魔神父はしているのだ。
「光の矢は建物には侵入しません」
今はまだ始業時間前だ。宿舎の中にいる者も居るはず。そして、私の光の矢は無機物に当たると消える仕組みだ。正確には魔力を宿していない物にということ。
「ええ、知っていますよ。ですから、フリーデンハイドに聖騎士団に所属している全ての者に、今すぐ建物から出るようにと指示を出しています」
侍従が命じたとしても、直属の上司という立場ではない侍従の命令を聞く人ってどれぐらいいるのだろう。私は初めて会った侍従に対して、いけ好かない澄ましたヤツっとしか思わなかった。
「侍従って人前にあまり出てないし、偉い人っていう感じがしないから、命令を聞かない人もいるんじゃないのかな?」
リザ姉とロゼが第12部隊長に助けを求めたのだけど、第12部隊長は一言を命令を言っただけだった。
『動ける者はリザネイエとロゼの援護にまわれ』と。
まぁ、第12部隊長さんがその力を奮ったら、全てが砂塵に変わってしまうのだから仕方がないのかもしれない。
「そうですね。まぁ、部隊長クラスは良いでしょう」
神父様の評価が始まった。部隊長は今のままの地位でいいということなのだろう。そして、神父様の評価基準を満たした者の名を上げていく。
「スゴイね。神父様、聖騎士団に所属している人の名前を覚えているんだ」
私は名前というモノが聞き取れないという欠陥があるから、人の名前を全て覚えている神父様を素直に尊敬できる。
「アンジュ。何を言っているんだ?」
ファルが私に呆れたように言ってきた。ん?何?
「名を上げている者たちは、全てキルクス出身者ですよ」
ファルの言葉をルディが引き継いだ。あっ……そもそも神父様の威圧に耐えていた人たちが少なかった。でも、死屍累々に言っても聞こえているのだろうか。
「やっぱり隊長クラスでも神父様に一撃入れられないんだね」
隊長三人揃っても一撃すら入らなかったことに、神父様が強すぎるのか隊長クラスが弱すぎるのかと首を捻ってしまう。
「アンジュ。恐らく12人揃っても無理だぞ。シュレインにすら勝てなかったんだからな」
ファルに言われてハッと思い出す。1対13の構図でも魔王様はピンピンしていた。ルディに勝てない時点で、神父様にも勝てないことは、決まっていたということか。
そして、第12部隊長さんはここ2回ほど神父様と行動しているので、神父様の実力を理解して刃を向けることはなかったということだね。同じく、酒吞と茨木の実力も理解していた。
「なぁ、アマテラス。空間に刺す矢ってどんなやつだ?」
約100人の聖騎士を相手にしても余裕な感じで戻ってきた酒吞が私に聞いてきた。うーん。相手にした100人ってそれなりに強い人だったのだけど、鬼という存在を見せつけた感じになってしまった。姿は人のままだけれどね。
これだと本当に聖女の彼女が言っていたように第10部隊と第3部隊は壊滅していてもおかしくはない。
「酒吞は磔にされたいってこと?」
「なんだ?それは?」
ああ、私の魔術がお仕置きの技だと知らないってことか。
「その技は、馬鹿しているヤツらを空中に宙吊りにして、お仕置きするためのものだから、攻撃性はないよ」
「じゃ、あの坊主の奴を磔にできるのか?」
酒吞は神父様に視線を向けて言った。
「それは無理。矢が弾かれておしまいだから」
神父様に遠距離攻撃は基本的に通じない。攻撃が神父様に届く前に叩き落されるからだ。唯一攻撃が当たるとすれば、近接戦の一択。しかし、それすらも当たらない。
「アンジュ様。空間に刺さる矢という物に興味があるのですが、見せていただけませんか?」
茨木まで聞いてきた。そんな面白いものじゃないのに。
私は魔力で一本の矢を作る。そして、そのまま矢を投擲するように構え、鏃を壁に打ち付けるように空間に突き刺す。
「別に大したことはしていないよ。世界は魔素に満ちている。ならば、その魔素に打ち付ける様に、自分の魔力で穿つってこと。空間の上に立つのと同じ要領だね」
見た感じは宙に魔力で作った棒が浮いているように見える。けれど私がさっき作ったのは矢。鏃は空間の中に刺さっている。
「くっ……はははははっ!流石、アマテラスは面白いなぁ。空間の上に立つのと同じか」
「さて、マソとは如何な物なのでしょうか」
酒吞は面白いと大声で笑い。茨木は空間に刺さった矢をまじまじと観察している。そこに今回の事を画策した神父様がニコニコと人の良さそうな笑顔を浮かべて近づいてきた。
「アンジュ。丁度良いですね」
何が良いのだろう。
「お仕置きの矢を放ってください。そうですね。この聖騎士団の敷地にくまなく撃つように」
悪魔だ。ここに悪魔がいる。時間通りに来なかった者たちへのお仕置きを私にさせようと、この悪魔神父はしているのだ。
「光の矢は建物には侵入しません」
今はまだ始業時間前だ。宿舎の中にいる者も居るはず。そして、私の光の矢は無機物に当たると消える仕組みだ。正確には魔力を宿していない物にということ。
「ええ、知っていますよ。ですから、フリーデンハイドに聖騎士団に所属している全ての者に、今すぐ建物から出るようにと指示を出しています」
侍従が命じたとしても、直属の上司という立場ではない侍従の命令を聞く人ってどれぐらいいるのだろう。私は初めて会った侍従に対して、いけ好かない澄ましたヤツっとしか思わなかった。
「侍従って人前にあまり出てないし、偉い人っていう感じがしないから、命令を聞かない人もいるんじゃないのかな?」
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