聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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222 焼き鳥にしよう

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『ウッキョゥゥゥゥーー!!!』

・・・

『ウッキャァァァァーー!!!』

・・・

『ウッキョゥゥゥゥーー!!!』

「ぶっ殺す……」

 ここ最近、雨が続いていたので、とても静かな朝を迎えていたのに、雨が降っていないと、騒音という問題が発生するのは、一番の問題だと思う。

 それに神父様がここに滞在しているので、騒音が増々うるさくなっている。そろそろ焼き鳥にして食べるべきだと思う。

「焼き鳥……タレか塩か」

 タレが食べたいけれど、調味料が足りない。塩一択か。いや、塩でもいい。炭焼きがいい。じわじわと火が通り、余分な油はにじみ出て下に落ちていき、焼かれた油の香りが辺りを満たす。
 うん。これがいい、焼き鳥にしよう。

「よし!今からシメて焼き鳥にしよう」

 意を決した私が目を開けると、クスクスという笑いが耳をかすめた。

「相変らず、諦めていないのか?」

 ルディが笑いながら、私を抱きしめてきた。声でルディだとわかるけれど、日の出が遅くなっており、室内はまだ暗い。天蓋の分厚いカーテンの所為で余計に暗いのだけれど。

「今日は焼き鳥にしようと思う」

 私は焼き鳥を食べる決意を口にする。そして、私はウキョー鳥を始末する為に身を起こそうとするけれど、ルディに抱かれているので、全く身動きが取れない。

「アンジュ。今日はそんなことをしている暇はない」

 そんな暇……すっかり忘れていた。シスター・マリアが既にこの王都に来ていたのだ。

 昨日、あれからワイバーンを騎獣舎に帰して、宿舎に戻ろうとしたところで、ファルがものすごい勢いで、こちらに向かって駆けてきた。本当に何があったのかと言わんばかりに。
 すると、私を捕獲しているルディの背中に隠れるという、よくわからない行動を取った。今までに見たこともないファルの行動だ。

「まぁ?私の質問に答えられないからといって、シュレインを盾にするとは、アイレイーリス家の者としてどうなのでしょうか?ファルークス」

 見慣れた白いシスターの衣服。教会でも身にまとうことが許されたのは、シスターたちをまとめ上げるシスター・マリアだけ。

「シスター・マリア。別に単独行動をしていたわけではなく……そう!部下の者たちに帰還の報告をしようと……」

「そんな言い訳で、私が騙されるとでも思っているのでしょうか?」

 首を傾げるシスター・マリアは笑顔であるものの、その目は笑ってはいない。

「シスター・マリア!」

 シスター・マリアの姿を見た私はルディの手を振りほどいて、シスターの元に駆けていく。

「ドラゴンのお肉、美味しかった?」

 私は以前お土産に持っていったドラゴンのお肉の感想を聞く。結局あの後バタバタして出ていったので、シスターたちに会えなかったのだ。彼女たちは子どもたちの教育者であるため、色々忙しいのだ。

「美味しかったですよ。シスター・グレイシアなんて、泣きながら食べていましたよ」

 ああ、色々パニックになって凡ミスをするシスターね。そうなんだ。泣くほど美味しかったんだ。

「吹き飛ばされて、生きていることを実感していましたよ」

 これはあれだ。私は第12部隊の騎士たちだけを吹き飛ばしたと思っていたけれど、森の中にいた冒険者やシスターたちも吹き飛ばしていたらしい。

「はぁ。ファルークス。反省文を書いて提出しなさい」

 私が割り込んで、怒る気が失せてしまったのか、シスター・マリアがファルに反省文を書くように言う。

「シスター・マリア。俺はもう教会を出て、聖騎士として一人前になっているのですが?」

 するとシスター・マリアは何もない空間に手を伸ばして、剣より短いショートソードを手に取った。
 何がどうなってショートソードが出てきたのか不明なのだけど?

「聖騎士ですか?聖剣もろくに扱えないひよっこが、よく大口叩けますね。姉の聖騎士として生きることを決めた私に向かって」

 ……ちょっとよくわからない事を言われた。『姉の聖騎士』とは?シスター・マリアの歳は40歳ぐらい。この歳の聖女と言えば……私は振り返り神父様を見る。

 うん。相変らず人の良さそうな笑顔を浮かべた神父様が立っている。

 神父様の婚約者だった公爵令嬢。ファルの叔母に当たる人がこの時代の唯一のルーナの聖女。ということは、シスター・マリアもファルの叔母に当たるということ。
 だからさっきアイレイ何とかという家名を出したのか。

 これで納得できた。シスター・マリアが強いことも、一人だけ白い衣服を身にまとっていることも。

 恐らくシスター・マリアの年齢からいくと十代半ばには姉の聖騎士に成ることを決意したのだろう。
 貴族にいいように使われる姉の剣と盾に成るために、聖騎士となったシスター・マリアは、聖女の自死という形で聖騎士としての役割を終えたのだ。

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