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217 無茶を言っているよね
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神父様の言葉に、誰もがうつむいてしまった。いや、正確にはルディは私の後ろにいるので、うかがい知ることはできない。酒吞と茨木は我関せずという感じだ。
そもそも彼らは聖騎士を装っているだけで、神父様の話など興味もないのだろう。
「ですので、騎士の再選別を同時に行います」
ん?騎士の再選別というのは、規定に満たない場合は今の地位を剥奪すると言っている?それに将校は当てはまらない?
「安心しているようですが、将校も同じですよ。未熟者はその地位にいる資格はありません」
これは相当荒れるのではないのだろうか。神父様を知っている人達は、神父に勝てないことを理解しているので、このふるい落としに従うと思う。だけど、それ以外の人達は神父様のことなんて知らないので、この意見に意を唱えるだろう。
頭を抱えているファルと笑顔のまま固まってるリザ姉と涙目になっているロゼの姿を見ると、神父様の定めた基準を満たせないという悲壮感が漂っている。
第12部隊長は表情が変わっていないので、内心どう思っているかは、私にはわからない。
「勿論、私の教え子が今の地位より、落ちることはないと、思っていますよ。なんせ、私が決めた日課をこなしているのであれば、問題はないのですから」
「いやあぁぁぁぁぁ!!あんな朝練毎日はムリぃぃぃぃ!!」
ロゼが叫びだした。リザ姉の目からハイライトが消え、虚無の境地にいるようだ。ファルは座り込んでしまって微動だにしていない。
でも、日課と言われても聖水作りが無いだけましだと思う。教会では日が昇る前から街で売る用の聖水を作っていたけれど、聖騎士には聖水は必要ないので、その分は楽になっている。
「どこが無理なのかな?柔軟して走り込みをして剣術の訓練して、終わりだよね?」
「それアンジュ仕様だから。アンジュはその後、日雇いのバイトに行くからと免除になっていたよね」
確かに、小銭稼ぎのために訓練の免除をされていた。その分怪しい論文を書かされたりもしたけどね。
「言っとくけど、その剣術訓練の後、障害物の訓練して、走り込んで、魔術訓練して、索敵訓練して、また走り込んで、そこに魔術攻撃されるからパンパンになった足でなんとか避けて、その後集団訓練に入って……あれは毎日は無理」
ロゼは毎日は無理と言っているけど、16歳になるまでやってきたのに、何を言っているのだろう。
因みに障害物訓練の中にそびえ立つ壁を駆け上がることが含まれている。そう、王都や中核都市になると街を外壁で囲っているため、緊急出撃時には外壁を越えて行くことが求められているけど、本当に壁を越えて行くことがあるのか、私は疑問に思ってしまう。
「君たちは訓練をサボっていたということですか」
「ヒッ!」
「そそそれは……」
「サボっていたわけではないです」
ファルがサボっていたわけではないと言っているけど、そもそも第13部隊で訓練しているところを見たことがない。ファルは時間があると書類にサインしているところしか私は見ていない。
これをサボっていると言わずになんというのだろう。
「一つ質問をよろしいか?」
今までだんまりを決め込んでいた第12部隊長が突然言葉を発した。
「なんですかね」
話に割り込んできた第12部隊長に神父様はいつも通り人の良さそうなニコニコとした笑顔で聞き返す。内心は今から説教をしようと思っていたのにとか考えているのだろう。
「何故、彼女は訓練を免除されていたのですか?彼女が特別だからですか?」
え?私が問題視されている?それも誓約がかかっているから、曖昧な表現をされているけど、私が聖女だから特別扱いされていたのかと言われている。
私は初めから天使の聖痕があったわけではないので、特別扱いはされていないよ。
「そうですね。例えば聖騎士300人と戦って勝てますか?」
何?その質問。聖騎士300人って、一対多数ってことだよね。勝てないことはないけれど、聖騎士は聖痕を使うから、聖痕を使われる前に瞬殺をしないと、厳しいよね。
「聖騎士300人ですか。騎士クラスならいけますが、隊長クラスが交じると無理ですね」
「アンジュなら隊長クラス300人でも勝てるでしょうね」
「神父様。むちゃくちゃ言うよね。私、そこまで強くないよ」
神父様の言葉に思わず突っ込んでしまった。隊長クラス300人は流石に無理だよ。
「そうですか?『聖花の狂乱』をもってすれば、簡単に息の根を止めることができますよね」
……なんか聞いたことがない言葉が聞こえた。『セイカノキョウラン』ってなに?私そんなもの持っていないよ。それに隊長クラスの息の根を止めたら駄目だよね。
「まぁ、これは聖痕の力を使えばということですが、教会に来た3歳の時点で大人の魔力量と遜色がない量を保有していれば、わざわざ鍛えて魔力量の底上げをする必要もないということです。この場で一番魔力を保有しているのは、アンジュなのですから」
そもそも彼らは聖騎士を装っているだけで、神父様の話など興味もないのだろう。
「ですので、騎士の再選別を同時に行います」
ん?騎士の再選別というのは、規定に満たない場合は今の地位を剥奪すると言っている?それに将校は当てはまらない?
「安心しているようですが、将校も同じですよ。未熟者はその地位にいる資格はありません」
これは相当荒れるのではないのだろうか。神父様を知っている人達は、神父に勝てないことを理解しているので、このふるい落としに従うと思う。だけど、それ以外の人達は神父様のことなんて知らないので、この意見に意を唱えるだろう。
頭を抱えているファルと笑顔のまま固まってるリザ姉と涙目になっているロゼの姿を見ると、神父様の定めた基準を満たせないという悲壮感が漂っている。
第12部隊長は表情が変わっていないので、内心どう思っているかは、私にはわからない。
「勿論、私の教え子が今の地位より、落ちることはないと、思っていますよ。なんせ、私が決めた日課をこなしているのであれば、問題はないのですから」
「いやあぁぁぁぁぁ!!あんな朝練毎日はムリぃぃぃぃ!!」
ロゼが叫びだした。リザ姉の目からハイライトが消え、虚無の境地にいるようだ。ファルは座り込んでしまって微動だにしていない。
でも、日課と言われても聖水作りが無いだけましだと思う。教会では日が昇る前から街で売る用の聖水を作っていたけれど、聖騎士には聖水は必要ないので、その分は楽になっている。
「どこが無理なのかな?柔軟して走り込みをして剣術の訓練して、終わりだよね?」
「それアンジュ仕様だから。アンジュはその後、日雇いのバイトに行くからと免除になっていたよね」
確かに、小銭稼ぎのために訓練の免除をされていた。その分怪しい論文を書かされたりもしたけどね。
「言っとくけど、その剣術訓練の後、障害物の訓練して、走り込んで、魔術訓練して、索敵訓練して、また走り込んで、そこに魔術攻撃されるからパンパンになった足でなんとか避けて、その後集団訓練に入って……あれは毎日は無理」
ロゼは毎日は無理と言っているけど、16歳になるまでやってきたのに、何を言っているのだろう。
因みに障害物訓練の中にそびえ立つ壁を駆け上がることが含まれている。そう、王都や中核都市になると街を外壁で囲っているため、緊急出撃時には外壁を越えて行くことが求められているけど、本当に壁を越えて行くことがあるのか、私は疑問に思ってしまう。
「君たちは訓練をサボっていたということですか」
「ヒッ!」
「そそそれは……」
「サボっていたわけではないです」
ファルがサボっていたわけではないと言っているけど、そもそも第13部隊で訓練しているところを見たことがない。ファルは時間があると書類にサインしているところしか私は見ていない。
これをサボっていると言わずになんというのだろう。
「一つ質問をよろしいか?」
今までだんまりを決め込んでいた第12部隊長が突然言葉を発した。
「なんですかね」
話に割り込んできた第12部隊長に神父様はいつも通り人の良さそうなニコニコとした笑顔で聞き返す。内心は今から説教をしようと思っていたのにとか考えているのだろう。
「何故、彼女は訓練を免除されていたのですか?彼女が特別だからですか?」
え?私が問題視されている?それも誓約がかかっているから、曖昧な表現をされているけど、私が聖女だから特別扱いされていたのかと言われている。
私は初めから天使の聖痕があったわけではないので、特別扱いはされていないよ。
「そうですね。例えば聖騎士300人と戦って勝てますか?」
何?その質問。聖騎士300人って、一対多数ってことだよね。勝てないことはないけれど、聖騎士は聖痕を使うから、聖痕を使われる前に瞬殺をしないと、厳しいよね。
「聖騎士300人ですか。騎士クラスならいけますが、隊長クラスが交じると無理ですね」
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「神父様。むちゃくちゃ言うよね。私、そこまで強くないよ」
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「そうですか?『聖花の狂乱』をもってすれば、簡単に息の根を止めることができますよね」
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「まぁ、これは聖痕の力を使えばということですが、教会に来た3歳の時点で大人の魔力量と遜色がない量を保有していれば、わざわざ鍛えて魔力量の底上げをする必要もないということです。この場で一番魔力を保有しているのは、アンジュなのですから」
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