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215 技術の差が酷い
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朝からルディに絞め殺されかけたけれど、お腹が空いたと言えば、解放された。その後、ルディに手を繋がれ、朝食を食べに第1部隊の駐屯地に行ってみると、食堂内は閑散としており、見慣れた顔ぶれしか居なかった。
そう言えば、昨日の夜にここに来たときも誰もいなかったね。第1部隊の人たちはどこで食事を取っているのだろう?
「アンジュ!なんで昨日は途中で消えちゃったのよ!」
私の姿を見つけたロゼが文句を言ってきた。
「私は部屋に戻っただけで、消えたわけじゃないよ」
「でも、食事もまだだったのに」
昨日、途中で部屋に戻った理由の一つは夕食が中々出てこなかったというのもある。疲れているのに、お腹も満たせず、木の枝だった物を見せ合いをしている声にイライラしてくれば、ふて寝するしかないよね。
「全然出てこなかったよ」
「それはそうでしょ!私達が持ってきた保存食を食べられるように調理してもらっていたのだから」
ロゼは当たり前だという風に言いきったのだけど、保存食ってどういうこと?それは何かあったときの野宿用の保存食だったはず。
「アンジュちゃん。それは仕方がないわよ。食料が足りないのですもの。冬の保存食を切り崩していたって聞いたのよ」
リザ姉がそう言うけれど……食料が足りない?雪が降り続いたから?でも、雪が降っているのはこの周辺だけで、王都は雨が降っていたけれど、他の地域はそこまでの被害はないと聞いていた。どこに食糧不足の危機が起こるのだろう。
「何故、食料不足になるのかわからないのだけど?」
「アンジュ。雪が降り続いていたら、移動もままらないし、物なんて運べないでしょ!」
ロゼが腰に手を当てて偉そうに言っている。この国には救援物資を配るという概念が無いのだろうか。そのためには国の機関が動かなければならないという意識は無いのだろうか。
「私達はここまでどうやって来たと思っているの?確か騎士は一人一頭の騎獣を充てがわれているのだったら、周辺地域から食料の調達もできるし、ワイバーンなら、多くの物資を運ぶことができる。なんで陸路にこだわったわけ?」
「あっ」
「あら?」
「言われてみれば」
「確かに」
……誰も気がついて居なかった。流通路線が陸路しかないという固定概念か。
「そもそも、食料や物資が足りないのなら、国が動くべきではないの?王様って暇そうにしているんだから、対策ぐらいとれたと思うけど」
「それは難しいな。領地を治める貴族からの要請があれば動けるが、国が手を出せるのは直轄地だけだ」
私の隣にいるルディが教えてくれた。そうか、封建社会では各地を諸侯たちが治めているため、色々派閥やプライドとか、くだらないものが邪魔をするってこと。
「ふーん。で、ここ住む人達は領主さまから食料は配られたってことでいいのかな?」
「残念ながら、そうではなさそうですね」
神父様が食堂に入ってきた。その瞬間、ロゼとリザ姉と今まで空気のように気配が無かったファルが姿勢を正して、神父様の前に整列した。
ルディは私の手を繋いでいるので、視線だけを向けている。この手はきっと私を勝手な行動をさせないためなのだろう。指を絡めて、私が振り切れない握り方をされていた。
「社交シーズンに入りますからね。この地の領主は王都にいて現状の把握はしていないでしょう」
「え?貴族の人は将校が持っているような通信機は無いってこと?」
「ああ。これですか?」
神父様は首元から、聖騎士たちが持っているタグと同じような物を取り出した。聖騎士たちは銀色のタグなのに対して、神父様のタグは金色。
大将校だったから、特別仕様なのだろうか。
「これは、聖魔術が使えないと発動しません。貴族であるなら使えるでしょうが、報告する者が使えるとは限りません。ですから、普通は用いませんね」
身分証のタグは聖騎士専用の通信機だった。ということは、聖騎士意外の騎士たちはこのタグの通信機が使えないということ、じゃどうやって連絡をとっているのだろう?
「普通はどうやって連絡をとっているわけ?」
「これ程の中核都市なら、通信施設がありますので、通信施設間のやり取りをして個人に伝えますね。それも使用料が必要ですので、あまり用いませんね」
電話交換所?いや、もっと劣化して電報に近いかも。これだと、方や携帯で方や電報で連絡を取っていることになる。なんて技術の乖離の差が酷い。
それともこのタグを開発した人が凄いっていうこと?
「ねぇ。聖騎士が使っているタグと一般的に使われている通信手段の差が酷いのだけど、このタグは誰が作ったの?」
「私ですよ」
……神父様だった。恐ろしいと言えばいいのか。流石と言えばいいのかわからないけれど、これだけは言える。
それは一人だけ特別仕様の金のタグかもしれない。
そう言えば、昨日の夜にここに来たときも誰もいなかったね。第1部隊の人たちはどこで食事を取っているのだろう?
「アンジュ!なんで昨日は途中で消えちゃったのよ!」
私の姿を見つけたロゼが文句を言ってきた。
「私は部屋に戻っただけで、消えたわけじゃないよ」
「でも、食事もまだだったのに」
昨日、途中で部屋に戻った理由の一つは夕食が中々出てこなかったというのもある。疲れているのに、お腹も満たせず、木の枝だった物を見せ合いをしている声にイライラしてくれば、ふて寝するしかないよね。
「全然出てこなかったよ」
「それはそうでしょ!私達が持ってきた保存食を食べられるように調理してもらっていたのだから」
ロゼは当たり前だという風に言いきったのだけど、保存食ってどういうこと?それは何かあったときの野宿用の保存食だったはず。
「アンジュちゃん。それは仕方がないわよ。食料が足りないのですもの。冬の保存食を切り崩していたって聞いたのよ」
リザ姉がそう言うけれど……食料が足りない?雪が降り続いたから?でも、雪が降っているのはこの周辺だけで、王都は雨が降っていたけれど、他の地域はそこまでの被害はないと聞いていた。どこに食糧不足の危機が起こるのだろう。
「何故、食料不足になるのかわからないのだけど?」
「アンジュ。雪が降り続いていたら、移動もままらないし、物なんて運べないでしょ!」
ロゼが腰に手を当てて偉そうに言っている。この国には救援物資を配るという概念が無いのだろうか。そのためには国の機関が動かなければならないという意識は無いのだろうか。
「私達はここまでどうやって来たと思っているの?確か騎士は一人一頭の騎獣を充てがわれているのだったら、周辺地域から食料の調達もできるし、ワイバーンなら、多くの物資を運ぶことができる。なんで陸路にこだわったわけ?」
「あっ」
「あら?」
「言われてみれば」
「確かに」
……誰も気がついて居なかった。流通路線が陸路しかないという固定概念か。
「そもそも、食料や物資が足りないのなら、国が動くべきではないの?王様って暇そうにしているんだから、対策ぐらいとれたと思うけど」
「それは難しいな。領地を治める貴族からの要請があれば動けるが、国が手を出せるのは直轄地だけだ」
私の隣にいるルディが教えてくれた。そうか、封建社会では各地を諸侯たちが治めているため、色々派閥やプライドとか、くだらないものが邪魔をするってこと。
「ふーん。で、ここ住む人達は領主さまから食料は配られたってことでいいのかな?」
「残念ながら、そうではなさそうですね」
神父様が食堂に入ってきた。その瞬間、ロゼとリザ姉と今まで空気のように気配が無かったファルが姿勢を正して、神父様の前に整列した。
ルディは私の手を繋いでいるので、視線だけを向けている。この手はきっと私を勝手な行動をさせないためなのだろう。指を絡めて、私が振り切れない握り方をされていた。
「社交シーズンに入りますからね。この地の領主は王都にいて現状の把握はしていないでしょう」
「え?貴族の人は将校が持っているような通信機は無いってこと?」
「ああ。これですか?」
神父様は首元から、聖騎士たちが持っているタグと同じような物を取り出した。聖騎士たちは銀色のタグなのに対して、神父様のタグは金色。
大将校だったから、特別仕様なのだろうか。
「これは、聖魔術が使えないと発動しません。貴族であるなら使えるでしょうが、報告する者が使えるとは限りません。ですから、普通は用いませんね」
身分証のタグは聖騎士専用の通信機だった。ということは、聖騎士意外の騎士たちはこのタグの通信機が使えないということ、じゃどうやって連絡をとっているのだろう?
「普通はどうやって連絡をとっているわけ?」
「これ程の中核都市なら、通信施設がありますので、通信施設間のやり取りをして個人に伝えますね。それも使用料が必要ですので、あまり用いませんね」
電話交換所?いや、もっと劣化して電報に近いかも。これだと、方や携帯で方や電報で連絡を取っていることになる。なんて技術の乖離の差が酷い。
それともこのタグを開発した人が凄いっていうこと?
「ねぇ。聖騎士が使っているタグと一般的に使われている通信手段の差が酷いのだけど、このタグは誰が作ったの?」
「私ですよ」
……神父様だった。恐ろしいと言えばいいのか。流石と言えばいいのかわからないけれど、これだけは言える。
それは一人だけ特別仕様の金のタグかもしれない。
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