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211 木の枝は所詮木だ
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「あの……その剣が本当にこの木の枝なのですか?」
ファルが持っているただの木の枝と相対する剣と見比べて聞いている。それは疑問にも思うよね。
「そうですよ。ただ力が不安定で下手に使うと暴走しそうになるので、普段には使えませんね」
ああ、それで二人して危険だと言っていたのか。剣の力が暴走するということね。
突然まばゆい光が視界の端に映り込み、光の元をたどれば、そこには第12部隊長さんがいた。
「こういうことか」
そう言っている第12部隊長さんの手には、夜空と明けの空の狭間のような暁の空の色の剣身を手にしていた。掲げるように持たれた剣は光を受けると微妙に赤く染まっている。不思議な剣だ。
私は心なしか誇らしげな顔をしている第12部隊長さんの元に浮遊しながら向う。
「ヴァルト様。この度も来ていただいてありがとうございました。第12部隊の方もまだ落ち着いていないと思いますが、とても助かりました」
そう言ってニコリと笑いかけます。すると突然ピキリと第12部隊長さんが固まってしまいました。
「い……いや、大してお役に立てず、すまなかった」
なんとか振り絞ったような声で謝って来たけれど、そもそも他の部隊長がここにいる時点でおかしいのだ。第12部隊の被害は第9部隊や第4部隊ほどでもないけれど、私が吹き飛ばした所為でけが人が出たことは本当のことだ。
私がフォローの言葉を言おうとすれば、別の声が被さってきた。
「そうですね。雪女で手間取っているようでは駄目ですよね」
茨木がグサッとくる言葉を言っている。確かに見た目は美人な女性と幼女だったから戸惑うかもしれないよね。
「それは私も同じ意見ですね。聖騎士団の弱体化は重要視すべきです。フリーデンハイドに言って一度、絞め上げたほうがいいですね」
なんかついでに侍従も絞められそうだけど、一応外部の人の扱いの神父様がそこまで口出し?手出し?してもいいのだろうか。
「そういうことは、王都に戻ってからでいいんじゃない?それでそろそろ私は倒れていいかな?」
難しいことはお偉方で話し合って欲しい。それに、私は第1部隊の駐屯地に戻るまでに“天使の聖痕”を隠さなければならない……あれ?今思ったら、ここに第1部隊長がいなかった?
ふと第1部隊長に視線を向けると、木の枝をガン見していた。まぁ、あとは神父様に任せておけば、説教と共に口止めしてくれるだろう。
私は頭の上の光輝く輪を手にとって右目の虹彩の中に戻す。……あれ?あまり魔力が減っていない。
「あ……今は謹慎しているから、力を使っていないのか」
私は意識を失うことなく宙に立っていた。やっぱり月の聖女が問題か。
「アンジュ、大丈夫なのか?」
ルディが抱き寄せて聞いてきた。
「多分、彼女が何もしようとしていなかったのかな?私の魔力は私が使った分しか減っていない」
しかし、抜身の剣を片手に持ったまま私を抱き寄せないで欲しい。その剣、魔剣と言っていいほど、力が溢れているのだけど、これ普通に持っていて大丈夫なのかな?
あ……これは
「ファル様。まだ大木の残骸がその辺に散らばっているよね。それで鞘を3つ作ってくれない?」
大木自体は常闇に呑まれしまったけれど、所々に枝の残骸が残っているので、鞘ぐらい作れると思う。
「アンジュ。簡単に言ってくれるが、直ぐにできるようなものじゃない。っていうか。何で俺の枝は何も変化しないんだ?ヴァルトルクス第12部隊長、どうやって剣に変化したんだ?」
ファルは簡単にできないと言っているけれど、恐らく一振りごとに微妙に調整が必要なのだろう。ルディの剣と神父様の剣は微妙に形と大きさが違う。これは各自の一番使いやすい形になっているのかもしれない。
それから、先程からファルが唸っていると思ったら、木の枝を剣にできないか頑張っていたようだ。しかし、木は所詮木だ。それが剣になるなんて非現実的なことを、するなんて無駄な努力だと思う。
「ファル様。木は所詮木ですよ。ただ、世界の力と神の力を得て成長した木というだけです。ファル様の手にあるのはなんですか?よく見てください」
「木の枝だ。見ればわかるし、俺の聖痕の力で創られて、神の力を栄養にしたというのも理解している。だが……」
ファルはルディの剣を指して言った。
「神の力が宿った剣って欲しいじゃないか!」
ああ、なんとか心をくすぐられるという物ってことか。私は諦めきれないでいるファルにトドメの一言を言う。
「ファル様。よく言うではないですか。剣は斬るものを選びませんが、持ち手を選ぶと」
「ぐふっ!」
ファルが持っているただの木の枝と相対する剣と見比べて聞いている。それは疑問にも思うよね。
「そうですよ。ただ力が不安定で下手に使うと暴走しそうになるので、普段には使えませんね」
ああ、それで二人して危険だと言っていたのか。剣の力が暴走するということね。
突然まばゆい光が視界の端に映り込み、光の元をたどれば、そこには第12部隊長さんがいた。
「こういうことか」
そう言っている第12部隊長さんの手には、夜空と明けの空の狭間のような暁の空の色の剣身を手にしていた。掲げるように持たれた剣は光を受けると微妙に赤く染まっている。不思議な剣だ。
私は心なしか誇らしげな顔をしている第12部隊長さんの元に浮遊しながら向う。
「ヴァルト様。この度も来ていただいてありがとうございました。第12部隊の方もまだ落ち着いていないと思いますが、とても助かりました」
そう言ってニコリと笑いかけます。すると突然ピキリと第12部隊長さんが固まってしまいました。
「い……いや、大してお役に立てず、すまなかった」
なんとか振り絞ったような声で謝って来たけれど、そもそも他の部隊長がここにいる時点でおかしいのだ。第12部隊の被害は第9部隊や第4部隊ほどでもないけれど、私が吹き飛ばした所為でけが人が出たことは本当のことだ。
私がフォローの言葉を言おうとすれば、別の声が被さってきた。
「そうですね。雪女で手間取っているようでは駄目ですよね」
茨木がグサッとくる言葉を言っている。確かに見た目は美人な女性と幼女だったから戸惑うかもしれないよね。
「それは私も同じ意見ですね。聖騎士団の弱体化は重要視すべきです。フリーデンハイドに言って一度、絞め上げたほうがいいですね」
なんかついでに侍従も絞められそうだけど、一応外部の人の扱いの神父様がそこまで口出し?手出し?してもいいのだろうか。
「そういうことは、王都に戻ってからでいいんじゃない?それでそろそろ私は倒れていいかな?」
難しいことはお偉方で話し合って欲しい。それに、私は第1部隊の駐屯地に戻るまでに“天使の聖痕”を隠さなければならない……あれ?今思ったら、ここに第1部隊長がいなかった?
ふと第1部隊長に視線を向けると、木の枝をガン見していた。まぁ、あとは神父様に任せておけば、説教と共に口止めしてくれるだろう。
私は頭の上の光輝く輪を手にとって右目の虹彩の中に戻す。……あれ?あまり魔力が減っていない。
「あ……今は謹慎しているから、力を使っていないのか」
私は意識を失うことなく宙に立っていた。やっぱり月の聖女が問題か。
「アンジュ、大丈夫なのか?」
ルディが抱き寄せて聞いてきた。
「多分、彼女が何もしようとしていなかったのかな?私の魔力は私が使った分しか減っていない」
しかし、抜身の剣を片手に持ったまま私を抱き寄せないで欲しい。その剣、魔剣と言っていいほど、力が溢れているのだけど、これ普通に持っていて大丈夫なのかな?
あ……これは
「ファル様。まだ大木の残骸がその辺に散らばっているよね。それで鞘を3つ作ってくれない?」
大木自体は常闇に呑まれしまったけれど、所々に枝の残骸が残っているので、鞘ぐらい作れると思う。
「アンジュ。簡単に言ってくれるが、直ぐにできるようなものじゃない。っていうか。何で俺の枝は何も変化しないんだ?ヴァルトルクス第12部隊長、どうやって剣に変化したんだ?」
ファルは簡単にできないと言っているけれど、恐らく一振りごとに微妙に調整が必要なのだろう。ルディの剣と神父様の剣は微妙に形と大きさが違う。これは各自の一番使いやすい形になっているのかもしれない。
それから、先程からファルが唸っていると思ったら、木の枝を剣にできないか頑張っていたようだ。しかし、木は所詮木だ。それが剣になるなんて非現実的なことを、するなんて無駄な努力だと思う。
「ファル様。木は所詮木ですよ。ただ、世界の力と神の力を得て成長した木というだけです。ファル様の手にあるのはなんですか?よく見てください」
「木の枝だ。見ればわかるし、俺の聖痕の力で創られて、神の力を栄養にしたというのも理解している。だが……」
ファルはルディの剣を指して言った。
「神の力が宿った剣って欲しいじゃないか!」
ああ、なんとか心をくすぐられるという物ってことか。私は諦めきれないでいるファルにトドメの一言を言う。
「ファル様。よく言うではないですか。剣は斬るものを選びませんが、持ち手を選ぶと」
「ぐふっ!」
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