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198 全ての否定
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「何を求められていると言われても、私はヒュー様とアスト様がどの様な力を持っているか知らないので、これからその辺りを今から詰めるところです」
私は聖女の彼女からヒューとアストがこの戦いには必要だとしか聞いていないので、作戦はこれから立てるのだ。
「アンジュ。このモノの言葉ではないですが、あの聖女の者の言葉を信じすぎていませんか?」
神父様が呆れたように言った。私は作戦などないと言っていることに等しいというのに、双子の彼らを連れてきて欲しいと言ったのだ。そこの矛盾を聖女の彼女の言葉を鵜呑みにしすぎているということのだろう。
別に彼女の言葉を鵜呑みにはしてはいない。彼女は水に対して土属性の力が有効であるといい。彼らの防御力の高さが必要だと言った。ゲームの知識のない私ではその言葉に首を捻る。私が思ったことは、恐らく彼ら双子の力は土属性というよりも、自分たち以外の否定の能力。その一端は以前私自身で体験済だ。
「全てを信じているわけではないですよ。私はこの雨を降らせているモノに対する対抗策を彼女は知っているのかと確認しただけですので、もう既にこの現時点で彼女が知っている未来と齟齬が出てきています。鵜呑みにはしていませんよ」
私は神父様の言葉を否定する。そして、ヒューとアストの方に視線を向ける。
「ヒュー様。アスト様。お二人の能力はお二人以外の存在の否定というものではないのですか?」
私が二人の能力の予想を口にすると、ヒュー様はニヤリと笑い、アスト様は戸惑うようにオロオロと視線を惑わす。彼らの態度から正確ではないにしろ、それに近い能力なのだろうとわかる。
「ですから、ヒュー様とアスト様にしてほしいことは、全ての否定です」
私は彼らにしてほしい事を口にした。それは“全ての否定”。北の地に降り注ぐ生み出され続ける雪も、視界が悪い雪の中から攻撃してくる獣の妖怪も、この雨を降らせ続けている龍神も玄武もその存在を否定して欲しいのだ。
「否定って何?俺たちはそんな器用なことは出来ないな」
ヒューはニヤニヤと笑いながら、私の言葉を否定した。否定する能力の否定。この能力は騎士として危険な能力と判断されるものだろう。だから公には出来ないと。
「ですから、私は言ったではないですか。私はお二人の能力は知らないと。でも
、私はお二人に全てを否定して欲しいのです」
二人の真の能力の否定もということだ。だから、能力の偽装をしてくれていいと。
「ぷっ!クククッ……流石アンジュだなぁ、おかしなことを言う」
「ヒューゲル」
「ああ、アスト。いいだろう?太陽の聖女の意に反することはないと、誓約をしたのだ。意に添えるように努力をするのも誓約を交わしたものの務めだ」
そう言ってヒューは立ち上がった。そして、ルディに抱えられている私の足元に跪く。その横にはアストも同じ様な姿をしていた。
「「我らエヴォリュシオンは太陽の聖女の命に従う」」
「いや、命令はしていないからね」
そっくりな双子が揃っておかしなことを言ったので速攻否定する。私は二人にお願いをしただけで、命令はしていない。
「作戦は弱らせて死の鎖に絡まれて更に弱らせれば、世界が口を開けるらしい。これは聖女の彼女からの情報。だから最後まで戦わずに出現した常闇に落とせばいいと言われた」
問題は二柱同時に弱らせられるかということ。これはかなりキツいと思う。聖女の彼女の言い分だと攻撃力が強そうな感じだし、その攻撃に対処できない人は居ないほうがいい。となると少数精鋭。
しかし、ここにはゲームと違いチートな神父様がいる……けど、神相手にどこまで通じるか……。
「けれど、実物を見ていないから何とも言えないし、時間もない。ぶっつけ本番ってかんじかな?」
所詮、机上の空論だ。ここでブツブツ言っても仕方がない。
「いいねぇ。要はぶっ飛ばせばいいってことだ。簡単で明確だ。それに神殺しはこの世界が担ってくれるときた。ならば、恐れることは何もねぇよな」
酒吞はお酒を飲み切って、豪快に笑いながら言った。その笑いにクスクスという笑いも重なる。
「今回は私は比和に当たるため、お役に立てそうにありませんね。それに水侮土になりそうですので、かなり厳しいでしょうね」
茨木が同じ属性である水神と玄武とでは力の相乗が起こり悪化するため、力になれないと言った。そして、今回は相手が強すぎて土属性の者が居ても厳しいだろうと。
ああ、そういうことか。私は聖女の彼女からの話を聞いて違和感を感じていた。神に双子が勝てる理由が防御力が高いからというだけでは弱いと思っていたのだ。
水属性の水神と玄武が強すぎて土属性の者の力は意味をなさないと。
ならばそれは酒吞にも言えるのではないのだろうか。水剋火。水属性に火の属性は敵わない。いや、きっと酒吞は暴れられればそれでいいのだろう。
私は聖女の彼女からヒューとアストがこの戦いには必要だとしか聞いていないので、作戦はこれから立てるのだ。
「アンジュ。このモノの言葉ではないですが、あの聖女の者の言葉を信じすぎていませんか?」
神父様が呆れたように言った。私は作戦などないと言っていることに等しいというのに、双子の彼らを連れてきて欲しいと言ったのだ。そこの矛盾を聖女の彼女の言葉を鵜呑みにしすぎているということのだろう。
別に彼女の言葉を鵜呑みにはしてはいない。彼女は水に対して土属性の力が有効であるといい。彼らの防御力の高さが必要だと言った。ゲームの知識のない私ではその言葉に首を捻る。私が思ったことは、恐らく彼ら双子の力は土属性というよりも、自分たち以外の否定の能力。その一端は以前私自身で体験済だ。
「全てを信じているわけではないですよ。私はこの雨を降らせているモノに対する対抗策を彼女は知っているのかと確認しただけですので、もう既にこの現時点で彼女が知っている未来と齟齬が出てきています。鵜呑みにはしていませんよ」
私は神父様の言葉を否定する。そして、ヒューとアストの方に視線を向ける。
「ヒュー様。アスト様。お二人の能力はお二人以外の存在の否定というものではないのですか?」
私が二人の能力の予想を口にすると、ヒュー様はニヤリと笑い、アスト様は戸惑うようにオロオロと視線を惑わす。彼らの態度から正確ではないにしろ、それに近い能力なのだろうとわかる。
「ですから、ヒュー様とアスト様にしてほしいことは、全ての否定です」
私は彼らにしてほしい事を口にした。それは“全ての否定”。北の地に降り注ぐ生み出され続ける雪も、視界が悪い雪の中から攻撃してくる獣の妖怪も、この雨を降らせ続けている龍神も玄武もその存在を否定して欲しいのだ。
「否定って何?俺たちはそんな器用なことは出来ないな」
ヒューはニヤニヤと笑いながら、私の言葉を否定した。否定する能力の否定。この能力は騎士として危険な能力と判断されるものだろう。だから公には出来ないと。
「ですから、私は言ったではないですか。私はお二人の能力は知らないと。でも
、私はお二人に全てを否定して欲しいのです」
二人の真の能力の否定もということだ。だから、能力の偽装をしてくれていいと。
「ぷっ!クククッ……流石アンジュだなぁ、おかしなことを言う」
「ヒューゲル」
「ああ、アスト。いいだろう?太陽の聖女の意に反することはないと、誓約をしたのだ。意に添えるように努力をするのも誓約を交わしたものの務めだ」
そう言ってヒューは立ち上がった。そして、ルディに抱えられている私の足元に跪く。その横にはアストも同じ様な姿をしていた。
「「我らエヴォリュシオンは太陽の聖女の命に従う」」
「いや、命令はしていないからね」
そっくりな双子が揃っておかしなことを言ったので速攻否定する。私は二人にお願いをしただけで、命令はしていない。
「作戦は弱らせて死の鎖に絡まれて更に弱らせれば、世界が口を開けるらしい。これは聖女の彼女からの情報。だから最後まで戦わずに出現した常闇に落とせばいいと言われた」
問題は二柱同時に弱らせられるかということ。これはかなりキツいと思う。聖女の彼女の言い分だと攻撃力が強そうな感じだし、その攻撃に対処できない人は居ないほうがいい。となると少数精鋭。
しかし、ここにはゲームと違いチートな神父様がいる……けど、神相手にどこまで通じるか……。
「けれど、実物を見ていないから何とも言えないし、時間もない。ぶっつけ本番ってかんじかな?」
所詮、机上の空論だ。ここでブツブツ言っても仕方がない。
「いいねぇ。要はぶっ飛ばせばいいってことだ。簡単で明確だ。それに神殺しはこの世界が担ってくれるときた。ならば、恐れることは何もねぇよな」
酒吞はお酒を飲み切って、豪快に笑いながら言った。その笑いにクスクスという笑いも重なる。
「今回は私は比和に当たるため、お役に立てそうにありませんね。それに水侮土になりそうですので、かなり厳しいでしょうね」
茨木が同じ属性である水神と玄武とでは力の相乗が起こり悪化するため、力になれないと言った。そして、今回は相手が強すぎて土属性の者が居ても厳しいだろうと。
ああ、そういうことか。私は聖女の彼女からの話を聞いて違和感を感じていた。神に双子が勝てる理由が防御力が高いからというだけでは弱いと思っていたのだ。
水属性の水神と玄武が強すぎて土属性の者の力は意味をなさないと。
ならばそれは酒吞にも言えるのではないのだろうか。水剋火。水属性に火の属性は敵わない。いや、きっと酒吞は暴れられればそれでいいのだろう。
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