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191 言い渡された指令

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「え?俺たちがっすか?」

 テオが驚いたように口を開いた。
 昼食の後、雨の降る中ルディとファルと共に第13部隊のぽつんと一軒家に出勤をした。重役出勤もいいところにファルが四人を集め今回の命令を言い渡したのだ。

「別に大した任務じゃないよね。情報収集ってことだよね?」

 シャールが簡単な仕事にそこまで驚くことはないとテオに言っている。

「で……ですがががが、わわわ私たち…だけっっって大丈夫なのでしょうか?」

 ヴィオの言葉のつまりがいつも以上に酷い。彼女も動揺しているようだ。

「そうですわよね。第1部隊と第7部隊が苦戦しているという状況からいえば、軽く考えないほうがいいですわ」

 ミレーが首を傾げながら状況判断をしている。流石に各部隊が取りこぼした危険な仕事を押し付けられている第13部隊のメンバーだけあって、今回の仕事の危険度はシャール以外は理解しているようだ。

「それでもさぁ。正体不明なモノを討伐しろってことじゃなくて、情報を得て速攻尻尾巻いて逃げればいいってことだよね。僕たちは敵の正体を見極めるだけだよ?」

 いや、シャールも今回の任務を正確に理解していた。そう、敵がどのような存在か見極めることが彼らに求められた任務なのだから、間違いではない。例え尻尾巻いて逃げ帰ったとしても。

「そうだ。騎士シュヴァリエテオ。騎士シュヴァリエミレー。騎士シュヴァリエヴィオーラ。騎士シュヴァリエシャール。君たちへの指令は第1部隊と第7部隊が苦戦をしている雪を操るモノの正体を探ることだ」

 ファルが珍しく副部隊長としての仕事をしている。ルディの押さえ役ではなく、第13部隊の副部隊長として仕事をしている。
 私はルディの膝の上で感心しながらこの光景を眺めている正面では、酒吞が『雪女じゃないのか?』と言っており、茨木が『雪鬼という線もありますよ』と話をしている。そういう単純な話でよければいいのだけど、第9部隊のところに現れたのが飛頭蛮じゃなくて好戦的な生首と霊獣だったからね。侮ると痛い目をみると思う。

「アンジュ。注意事項はあるか?」

 ファルが私に聞いてきたけど、注意事項だなんて聞かれてもわからないよ。まぁ、私が言えることは。

「凍死には気をつけてというぐらいかなぁ。氷漬けにされて食べられないようにね」

「何に食べられるんだよ!」

 シャールが私の言葉に突っ込んできた。

「さぁ?でも雪の中で動けなくなると死ぬから十分に対策はしていた方が良いと思う」

「そうですわよね。冬は身が凍るように寒く視界を奪われて動けなくなりますと、死ぬしかありませんもの。雪の中での行動はどれだけ体力を温存できるかですわね」

 この国より北国の出身であるミレーの言葉には実感が込められて説得力がある。雪の中の行動はミレーが指揮をとれば良さそうだね。

「ゆゆゆ雪。こここ今回……は、戦闘をささ避けたいととと……思いますすすので、たた隊服に防寒着ででもよろしししでしょうか?」

「そうだな。どちらかというと今回は行動力が求められるから、それでいい」

 ヴィオは何気に鎧を着たくないと言っているのだろう。私もそれには同意する。あの鎧は行動を阻害するものだと思う。

「あの?ファル副部隊長。本当に俺たちだけでダイジョブっすか?」

 テオは4人だけで行くのは不安のようだ。何か問題なのだろうか。

「俺、雪と相性悪いっす。寒いとヤル気出ないっす」

 テオの問題だった!寒いとヤル気出ないって何?ただの気分の問題ってこと?それとも炎の聖痕が雪と相性が悪いって言っている?

 うーん?酒吞はどうなんだろう?同じ炎属性だけど?やっぱり鬼だから違う?そもそもガバガバ酒を飲んでいるから身体が冷えることがない?

 冷えるかぁ。

「ファル様。クズの魔石って、4つぐらいない?」

「なんだ?アンジュ、また何かをやらかす気か?」

 失礼だね。だたの温石もどきを作ろうと思っているだけだよ。

「あああ……あの。私、もも持っています」

 そう言って何処かに走って行ったものの、何もない床でコケて『うぎゃ』と叫んでいるヴィオ。走る程急ぐことでもないから、ゆっくりでいいよ。

 そして、少し濁った魔石を4つ、ヴィオが持ってきた。うん、これぐらいの質の悪い魔石なら程々の効果になると思う。

「『常春の世は人に和らぎを与え、凍てつく冬の闇からその身を守るものなり』」

 私が魔力を込めて呪を唱えると、魔石がほんのりと暖かくなった。その魔石をテオに向かって投げ渡す。

「うわっ!」

 テオはいきなり投げられた魔石を落としそうになりながら受け取った。

「それならどう?」

「なんか微妙に温かい魔石っす。これ意味あるっすか?……すいませんでしたっす!ありがたくいただくっす!」

 後ろの機嫌が悪くなったのを素早く察知したテオは張り子の赤べこのようにペコペコ頭を下げて謝ってきた。けれど、別に謝らなくていいよ。質の悪い魔石だからこんなものだと思うから。

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