聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

文字の大きさ
上 下
189 / 374

189 囮に立候補

しおりを挟む
 王族の方々は平民の聖女を蔑ろにしすぎじゃないのだろうか。上の者の考え方なのかもしれないけれど、私はそれは気に食わない。

 だから私は右手を上げる。

「何ですか?アンジュ」

 神父様がこの場で何を言うことがあるのかという視線を向けてきた。

おとり追加に立候補します」

「アンジュ!何を言っているんだ?」

 ルディは抱えている私を反転させて、肩を揺すってきた。

おとりの追加ですか。それが何の意味を成すのですか」

 私が囮になったところで、それに意味があるのかと神父様は聞いてきた。意味があるのかないのかと問われれば、無いと思う。

 だけど、豚貴族が聖女をさらうかと言えば、どうだろうか。注目を浴びる聖女を攫うことは難しいと思う。だから、何度も買い取ろうとした私がいれば、確実に豚貴族は私を攫うだろう。
 私には転移の腕輪があるため、ルディと一定の距離が開けば転移される。居るはずの私がいないことを知った豚貴族がブヒブヒ言うだけだ。
 だから、何もならない。豚貴族が憤るだけ、誰も何も変わらない。

「何も意味はないですよ。そもそも聖女は注目される人物。その聖女を攫う機会があるのですか?ワザと隙を作るとなれば、尚の事おかしいですよね」

「そうでもないよ。プルエルト公爵の聖女に対する想いは逸脱していると思うよ」

「キモっ」

 なに?聖女に対する思いって!気持ち悪過ぎる。王様が笑顔で言うから怖さも追加されてしまっている。

「よく幼いときに言われたのが、私達の母親の髪の色が赤銅の色で無ければだとか、私が女であればとか言われたからね」

 ぎゃー!これ絶対に駄目なやつじゃない!ブター!子供の王様になんていうことを言っているわけ?

「プルエルト公爵は200年前の聖女に狂酔しているから、色合い的に近い聖女の子はルーナの聖女として在ることを望むだろうね」

 聖女として在ることを望む?ルーナの?どういうことだろう?
 聖女に狂酔ってもうキモすぎて豚貴族に対して、忌避感しかない。

「アンジュ。だから囮になるとか言っては駄目だ」

 先程からルディが私を絞め殺しにかかっているので、王様の言葉に私は聞きたいことを聞けないでいる。
 ルディをバシバシ叩いて抵抗してみるけど、解放されない。

「兄上。一つ思ったのですが」

 侍従シャンベランが王様に向かって口を開く。

将校オフィシエアンジュを囮にする件は理に適っているかもしれませんね」

「フリーデンハイド!」

 ルディ、うるさい。しかし、侍従シャンベランは私を囮にすることに賛成らしい。

「シュレイン兄上。聖女シェーンは平民であるため聖騎士団預かりとなっています。それもルーナの聖女でありますが、未だに誰も後ろ盾が付いていないとなると、高位貴族からルーナの聖女としての能力が乏しいということと同意義に捉えられていると思います。恐らくこの度のパーティーで聖女としての力量を見定める意味もあると思われます」

 私にはよくわからないルーナの聖女としてのお役目が果たせるかを、見定めようとしていると侍従シャンベランは言っている。しかし、パーティー会場で見定められるってことはどういうこと?

 私はルディの腕をバシバシ叩いて解放されることを希望していると、少しだけ腕が緩んだので、私は侍従シャンベランの方に向いて聞いてみる。

ルーナは何を求められているの?」

 太陽ソールの聖女がいなければ、力が使えないルーナ太陽ソールが居ない200年間の間は人々に何を求められていたのだろう。

 するとこの場にいる全ての視線が私に突き刺さってきた。

「アンジュは何も気にしなくていい。それに囮にもならなくてもいい」

 そう言ってルディは再び私を絞め殺してきた。こんなに締められるほど聞いてはいけなかったことなのだろうか。

「く……苦しい」

「アンジュ。アンジュがルーナの役目を気にすることはありませんよ。アンジュは今回も役目を果たしているのですから」

 神父様が気にする必要はないと言ってきたけど、言われてしまうとすごく気になってしまう。

「うーん。フリーデンハイドの言い分も一理あるね。お前はどう思う?」

 白銀の王様は後ろに控えているそっくりな偽物の王様の意見を聞いている。

「陛下はこの期にプルエルト公爵を始末されたいと思っているのでしょうか?」

「うん。そうだね。将校オフィシエアンジュのお陰で、アンドレイヤー公爵家がこちらについたし、ファルークスがいるかぎり、コルドアール公爵家も裏切らない。それに第1部隊のロベル部隊長がプルエルト公爵の血筋の者と裏付けがとれたから、サクッとヤッちゃおう」

 王様!そういう事を軽く言わないでよ!“サクッ”てそんなに簡単なことではないよね!

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

心は誰を選ぶのか

アズやっこ
恋愛
この国は人と獣人が暮らしている。 それでも人は人と、獣人は獣人と結婚する。 獣人には、今は幻となった『魂の番』が存在する。魂の番にはとても強い強制力がある。誰にも引き離せない固い絆。 出会えば直ぐに分かると言われている。お互いの魂が共鳴し合うらしい。 だから私は獣人が嫌い。 だって、魂の番は同じ種族にしかいないんだもの。 どれだけ私が貴方を好きでも、 どれだけ貴方が私を好きでも、 いつか貴方は魂の番の手を取るの…。 貴方は本能を取る? それとも… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。 嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。 ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ! ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜

本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」  王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。  偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。  ……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。  それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。  いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。  チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。  ……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。 3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~

瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)  ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。  3歳年下のティーノ様だ。  本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。  行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。  なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。  もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。  そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。  全7話の短編です 完結確約です。

処理中です...