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183 あざ笑う声(とある騎士Side)
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とある騎士Side
「アンジュ。ファルークスが止めている間に終わらせなさい」
神父の姿をした人物が第13部隊長を必死で止めている第13副部隊長を横目で見ながら言っているが、もしかして、俺たちが終わったあとに、第13部隊長を相手にしろということなのだろうか。
言っとくが、ここには第4部隊の精鋭と第9部隊の者たちがいるのに、そう簡単に終わるはずはないだろう!
「じゃ、吹き飛ばしていいですか?」
二匹のペットがいつの間にか居なくなっていた白銀の彼女が首を傾げながら言った。
吹き飛ばす?この重い鎧を着た俺たちをか?
彼女の言葉にあざ笑うような笑いが次々と起こっている。しかし、神父の姿をした者はニコニコとした笑みを浮かべて
「いいですよ」
と言った。その言葉に更に笑いが大きくなる。
「お前ら笑っている場合じゃないぞ!真剣に構えないと死ぬぞ!」
部隊長が笑っている俺たちを見て、焦ったように声を上げた。
「そうだ。受け身を取りそこねると確実に死ぬぞ!」
ディネーロ第9副部隊長も慌てて言葉にするが、何をそんなに焦っているのだろうか。受け身を取るほどのこともないだろう?何故なら相手は細腕の13歳ぐらいにしか見えない少女なのだ。少々ペットに当たりが強いように思えたが、ペットに躾は大切だと思うから、そこは言及しないでおこう。
「6人が再起不能なのですが、リザネイエ第12副部隊長。結界を張れませんか?」
先程、白銀の彼女にやられて意識がない将校たちを一箇所に集めてきた副部隊長が、第12副部隊長に結界を張るようにお願いをしている。しかし、結界ぐらいなら、副部隊長も張れるはずなのに、何故第12副部隊長に頼んでいるのだろう。
「あら、無理よ。私では保たないわ。そういうのは、ロゼが担当なのだけど……」
「この分だと無理そうですね」
第12副部隊長と副部隊長が地面に横たわった一人の人物を見て、項垂れてしまっている。
「今回は特別に私が結界を張ってあげましょう。ですから、アンジュさっさと終わらせなさい」
「え!」
「リュミエール神父が!」
「明日は槍でも降ってくるのだろうか」
「リュミエール神父。助かりますわ」
「何か別の恐ろしいことが起きなければいいのですが」
神父の姿をした人物が結界を張ると言っただけで、部隊長たちが驚きの言葉を口にしたが、あの人物は本当にただの神父のようだ。何が元大将校だ。
「はい、神父様。今回は神父様から言ったことなので、説教は拒否しますからね」
「いいでしょう」
白銀の彼女の言葉にただの神父が了承する旨を伝え、周りに透明な膜を張った。その中には食堂で起立していた人たちと、第12副部隊長に腕を掴まれ嫌そうな顔をしている第12部隊長がいた。あれ?第12部隊長がいる?
「では、始め!」
と、神父が開始の合図を言葉にすれば、白銀の彼女を囲った者たちが一斉に魔術を施行するための呪を唱え始める。が、フッと頬を風が撫でたと感じた瞬間、大気が爆ぜた。白銀の彼女がいる方から強い圧力を感じ、俺の身体は空へと舞い上がった。この重い鎧を着た俺がだ。いや、俺たちがだ。そう、あの場にいた者たちの全てが上空に巻き上げられている。恐らく神父が張った結界の内側にいた者以外がだ。
なんだこれは。既に俺の目には第9部隊の駐屯地が豆つぶのようにしか見えない。俺は……俺達はどこまで飛ばされるのだろうか。
その頃、訓練場までついていかなかった。鬼の二人はというと……。
「やっぱアマテラスの側にいるとあきねぇな。人が空を飛んでいるぞ。茨木」
赤銅色の髪の大男が空を見上げながら、豪快に笑んでいる。他の者たちはきっちりと着こなしている聖騎士団の隊服を窮屈だと言わんばかりに前をはだけさせ、青墨の入れ墨をこれ見よがしに見せつけている。
「きっとご機嫌が悪いのでしょうね。アンジュ様は」
茨木と呼ばれた者は青白磁色のような薄い青緑色の長い髪をかき上げながら、大男と同じ金色の瞳でゴマ粒のように飛んでいく者たちを見ていた。
「あ、酒吞。こちらにも来ます」
茨木が何かが向かてくると言えば、酒吞と呼ばれた大男は右手を前に突き出す構えをとった。
しかし、酒吞の前方には何もない。
突如、荒れ狂う風が酒吞と茨木を襲った。その風を酒吞は押しのけるように右手を突き出している。そんなことでは防ぐことはできないであろう暴風を酒吞はニヤニヤとした笑みを浮かべて防いでいる。荒れ狂う風は酒吞と茨木を避けるように二人の脇を通り抜け、地面の土を巻き上げていた。
風に煽られた青白磁色の長い髪が鬱陶しいと言わんばかりに払い除けた茨木が口を開く。
「酒吞。今回の事をどう思いましたか?」
「ああ?」
茨木の曖昧な質問に何を聞きたいのかわからないと横目で金色の瞳を茨木に向ける酒吞。
意味深な金色の視線が、酒吞の金色の瞳に言わなくてもわかっているはずだと告げている。
しかし、酒吞は茨木に言葉を返すこと無くとある方向に視線を向けたが、その姿に茨木は気分を害した風でもなく、ただ自分の意見を酒吞に告げた。
「我々の選択肢は恐らく正しかったということですよね」
「アンジュ。ファルークスが止めている間に終わらせなさい」
神父の姿をした人物が第13部隊長を必死で止めている第13副部隊長を横目で見ながら言っているが、もしかして、俺たちが終わったあとに、第13部隊長を相手にしろということなのだろうか。
言っとくが、ここには第4部隊の精鋭と第9部隊の者たちがいるのに、そう簡単に終わるはずはないだろう!
「じゃ、吹き飛ばしていいですか?」
二匹のペットがいつの間にか居なくなっていた白銀の彼女が首を傾げながら言った。
吹き飛ばす?この重い鎧を着た俺たちをか?
彼女の言葉にあざ笑うような笑いが次々と起こっている。しかし、神父の姿をした者はニコニコとした笑みを浮かべて
「いいですよ」
と言った。その言葉に更に笑いが大きくなる。
「お前ら笑っている場合じゃないぞ!真剣に構えないと死ぬぞ!」
部隊長が笑っている俺たちを見て、焦ったように声を上げた。
「そうだ。受け身を取りそこねると確実に死ぬぞ!」
ディネーロ第9副部隊長も慌てて言葉にするが、何をそんなに焦っているのだろうか。受け身を取るほどのこともないだろう?何故なら相手は細腕の13歳ぐらいにしか見えない少女なのだ。少々ペットに当たりが強いように思えたが、ペットに躾は大切だと思うから、そこは言及しないでおこう。
「6人が再起不能なのですが、リザネイエ第12副部隊長。結界を張れませんか?」
先程、白銀の彼女にやられて意識がない将校たちを一箇所に集めてきた副部隊長が、第12副部隊長に結界を張るようにお願いをしている。しかし、結界ぐらいなら、副部隊長も張れるはずなのに、何故第12副部隊長に頼んでいるのだろう。
「あら、無理よ。私では保たないわ。そういうのは、ロゼが担当なのだけど……」
「この分だと無理そうですね」
第12副部隊長と副部隊長が地面に横たわった一人の人物を見て、項垂れてしまっている。
「今回は特別に私が結界を張ってあげましょう。ですから、アンジュさっさと終わらせなさい」
「え!」
「リュミエール神父が!」
「明日は槍でも降ってくるのだろうか」
「リュミエール神父。助かりますわ」
「何か別の恐ろしいことが起きなければいいのですが」
神父の姿をした人物が結界を張ると言っただけで、部隊長たちが驚きの言葉を口にしたが、あの人物は本当にただの神父のようだ。何が元大将校だ。
「はい、神父様。今回は神父様から言ったことなので、説教は拒否しますからね」
「いいでしょう」
白銀の彼女の言葉にただの神父が了承する旨を伝え、周りに透明な膜を張った。その中には食堂で起立していた人たちと、第12副部隊長に腕を掴まれ嫌そうな顔をしている第12部隊長がいた。あれ?第12部隊長がいる?
「では、始め!」
と、神父が開始の合図を言葉にすれば、白銀の彼女を囲った者たちが一斉に魔術を施行するための呪を唱え始める。が、フッと頬を風が撫でたと感じた瞬間、大気が爆ぜた。白銀の彼女がいる方から強い圧力を感じ、俺の身体は空へと舞い上がった。この重い鎧を着た俺がだ。いや、俺たちがだ。そう、あの場にいた者たちの全てが上空に巻き上げられている。恐らく神父が張った結界の内側にいた者以外がだ。
なんだこれは。既に俺の目には第9部隊の駐屯地が豆つぶのようにしか見えない。俺は……俺達はどこまで飛ばされるのだろうか。
その頃、訓練場までついていかなかった。鬼の二人はというと……。
「やっぱアマテラスの側にいるとあきねぇな。人が空を飛んでいるぞ。茨木」
赤銅色の髪の大男が空を見上げながら、豪快に笑んでいる。他の者たちはきっちりと着こなしている聖騎士団の隊服を窮屈だと言わんばかりに前をはだけさせ、青墨の入れ墨をこれ見よがしに見せつけている。
「きっとご機嫌が悪いのでしょうね。アンジュ様は」
茨木と呼ばれた者は青白磁色のような薄い青緑色の長い髪をかき上げながら、大男と同じ金色の瞳でゴマ粒のように飛んでいく者たちを見ていた。
「あ、酒吞。こちらにも来ます」
茨木が何かが向かてくると言えば、酒吞と呼ばれた大男は右手を前に突き出す構えをとった。
しかし、酒吞の前方には何もない。
突如、荒れ狂う風が酒吞と茨木を襲った。その風を酒吞は押しのけるように右手を突き出している。そんなことでは防ぐことはできないであろう暴風を酒吞はニヤニヤとした笑みを浮かべて防いでいる。荒れ狂う風は酒吞と茨木を避けるように二人の脇を通り抜け、地面の土を巻き上げていた。
風に煽られた青白磁色の長い髪が鬱陶しいと言わんばかりに払い除けた茨木が口を開く。
「酒吞。今回の事をどう思いましたか?」
「ああ?」
茨木の曖昧な質問に何を聞きたいのかわからないと横目で金色の瞳を茨木に向ける酒吞。
意味深な金色の視線が、酒吞の金色の瞳に言わなくてもわかっているはずだと告げている。
しかし、酒吞は茨木に言葉を返すこと無くとある方向に視線を向けたが、その姿に茨木は気分を害した風でもなく、ただ自分の意見を酒吞に告げた。
「我々の選択肢は恐らく正しかったということですよね」
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