180 / 368
180 貴方達の枷です(とある騎士Side)
しおりを挟む
とある騎士Side
「あと一時間程で元の状態に戻りますから、辛抱してくださいね」
無事だった人たちが倒れている俺たち一人ひとりに声を掛けてくれいる。それも憐れみの視線を向けて。
「なんですかね。この状態は……」
という言葉が耳に入ってきたと思うと、俺に声を掛けてくれていた副部隊長の顔色が一瞬にして変わった。絶望の色にだ。
あの何があっても冷静で笑みを絶やさない副部隊長がだ。
そして、脱兎のごとく俺の側を離れ、姿が見れなくなった。何だ?何が起こったんだ?
今日は理解不能なことばかりが起きている。恐らく部隊長と副部隊長は何かを知っている。この状態異常が解除されたら、部隊長と副部隊長に聞けばいいと思っていた。
この時点で俺はよくわからない状況に思考がついていかず、もう考える事を放棄して、お腹が鳴り、小腹がすいたなぁと気楽な事を考えて、目を閉じたのだった。
……が、俺の希望は何一つ叶わずにいた。
何故か夜通しで走ることとなり、足を止めると、何処からか攻撃をされる。そう、攻撃されるのだ。それも複数方向からだ。この攻撃をしているのは一人ではないのか?
最初は文句を言っていたヤツらも口数が徐々に少なくなり、よろめきながらも足を前に出しているという感じだ。
ちょっと待って欲しい。俺たちは少し前まで戦っていて、鎧を着たままだ。
鎧を着たまま夜通し走るとか有り得ないだろう!
部隊長たちはいつの間には鎧を脱いでおり、隊服のまま走っている。ズルいと思う。
「ふ……ふく……ぶたいちょう……よろい……を脱い……でいる……なんて……ズルい……で…す」
俺はこの理不尽な差を丁度、何周差かをつけられ、俺を追い抜かそうとしている副部隊長に悪態をついた。
「ズルくはないですよ。あの光の矢を避けられなかった貴方達の枷です。まぁ、己の未熟さを痛感しなさいということになりますね」
俺よりも走っているはずの副部隊長は余裕な感じで、俺を追い抜いていった。
その苦行が終わったのは朝日が昇るかという時間だった。先に訓練場にたどり着いていた部隊長から休憩していいという言葉が出てきたことから、俺は再び地面に倒れた。キツイ、キツ過ぎる。もう、心臓が壊れるのではないのかと思うほどだ。
そして、普通の訓練を始める部隊長と副部隊長……と将校クオーレ。俺の憧れている3人はやはり普通ではなかった。しかし、気になるのが副部隊長が顔色を変えた声の持ち主だ。俺の記憶にはあのような声の人は居なかった。
だが、その人物の姿を直に見ることとなった。
着替えるのも億劫なほどクタクタな体を引きずりながら、フルフェイスは外しているものの鎧のまま食堂に行き、やっとありつけた食事を口に運び、これで休めると思っていたときだ。
あのときの声が食堂に響き渡った。と、同時に十数人の人たちが起立する。
それも将校としてよく名が挙がる方々と、もうすぐ将校に昇格すると噂の騎士たちだ。
俺の隣に座っていた将校クオーレもその場に起立してとても緊張しているように思える。どうしたのだろう?
声の主は元大将校と名乗ったが、姿を見る限り、どこでもいるような教会の神父にしか見えない。そもそも大将校という地位なんて存在しない。
それを聞いて鼻で笑っているものもいるし、部外者が口出す場じゃないという無言の視線を送っている者もいる。
「なんでわからないのだ?俺はとばっちりは嫌だ」
という小声が隣から聞こえ、視線を向ければブルブルと震えている将校クオーレがいる。部隊長の様子も副部隊長の様子もおかしく、俺は首を傾げていたところに、手を叩く音が響いた途端、視界がぶれ俺が座っていた椅子の感触がなくなり、床に吸い寄せられるように尻もちをつく。しかし、鎧を着ていたため、衝撃の痛みはなかった。
そして、カツカツという床を鳴らす足音が近づいてきて俺の前で音が止まる。
「そこの者、聖騎士とは何かを答えなさい」
え?おれ?教会の神父の格好をした人物が床に腰を下ろしたままの俺を見下ろしていた。その青い目は冷たく、まるで価値のないモノを見るような視線だ。俺はその視線に耐えきれずうつむいてしまう。
「クオーレ。答えなさい」
「はっ!我々聖騎士は天の日を掲げる聖女様の剣であり、盾であります。しかし、我々の背後には多くの民がおり、民の命を脅かす脅威を討ち滅ぼす為にその力を奮う者であります」
俺の代わりに隣りにいた将校クオーレが指名され答え、その答えに満足したのか神父の格好をした人物は、またカツカツと足音を立て歩き始める。
俺は本能でわかってしまった。
あの人物には決して逆らってはならないと。
震える膝を叱咤し俺は立ち上がった。
(補足)
リュミエール神父は上空から周辺を調査しつつ、サボっている者たちを追い立てていました。流石、悪魔神父ですね(笑)
「あと一時間程で元の状態に戻りますから、辛抱してくださいね」
無事だった人たちが倒れている俺たち一人ひとりに声を掛けてくれいる。それも憐れみの視線を向けて。
「なんですかね。この状態は……」
という言葉が耳に入ってきたと思うと、俺に声を掛けてくれていた副部隊長の顔色が一瞬にして変わった。絶望の色にだ。
あの何があっても冷静で笑みを絶やさない副部隊長がだ。
そして、脱兎のごとく俺の側を離れ、姿が見れなくなった。何だ?何が起こったんだ?
今日は理解不能なことばかりが起きている。恐らく部隊長と副部隊長は何かを知っている。この状態異常が解除されたら、部隊長と副部隊長に聞けばいいと思っていた。
この時点で俺はよくわからない状況に思考がついていかず、もう考える事を放棄して、お腹が鳴り、小腹がすいたなぁと気楽な事を考えて、目を閉じたのだった。
……が、俺の希望は何一つ叶わずにいた。
何故か夜通しで走ることとなり、足を止めると、何処からか攻撃をされる。そう、攻撃されるのだ。それも複数方向からだ。この攻撃をしているのは一人ではないのか?
最初は文句を言っていたヤツらも口数が徐々に少なくなり、よろめきながらも足を前に出しているという感じだ。
ちょっと待って欲しい。俺たちは少し前まで戦っていて、鎧を着たままだ。
鎧を着たまま夜通し走るとか有り得ないだろう!
部隊長たちはいつの間には鎧を脱いでおり、隊服のまま走っている。ズルいと思う。
「ふ……ふく……ぶたいちょう……よろい……を脱い……でいる……なんて……ズルい……で…す」
俺はこの理不尽な差を丁度、何周差かをつけられ、俺を追い抜かそうとしている副部隊長に悪態をついた。
「ズルくはないですよ。あの光の矢を避けられなかった貴方達の枷です。まぁ、己の未熟さを痛感しなさいということになりますね」
俺よりも走っているはずの副部隊長は余裕な感じで、俺を追い抜いていった。
その苦行が終わったのは朝日が昇るかという時間だった。先に訓練場にたどり着いていた部隊長から休憩していいという言葉が出てきたことから、俺は再び地面に倒れた。キツイ、キツ過ぎる。もう、心臓が壊れるのではないのかと思うほどだ。
そして、普通の訓練を始める部隊長と副部隊長……と将校クオーレ。俺の憧れている3人はやはり普通ではなかった。しかし、気になるのが副部隊長が顔色を変えた声の持ち主だ。俺の記憶にはあのような声の人は居なかった。
だが、その人物の姿を直に見ることとなった。
着替えるのも億劫なほどクタクタな体を引きずりながら、フルフェイスは外しているものの鎧のまま食堂に行き、やっとありつけた食事を口に運び、これで休めると思っていたときだ。
あのときの声が食堂に響き渡った。と、同時に十数人の人たちが起立する。
それも将校としてよく名が挙がる方々と、もうすぐ将校に昇格すると噂の騎士たちだ。
俺の隣に座っていた将校クオーレもその場に起立してとても緊張しているように思える。どうしたのだろう?
声の主は元大将校と名乗ったが、姿を見る限り、どこでもいるような教会の神父にしか見えない。そもそも大将校という地位なんて存在しない。
それを聞いて鼻で笑っているものもいるし、部外者が口出す場じゃないという無言の視線を送っている者もいる。
「なんでわからないのだ?俺はとばっちりは嫌だ」
という小声が隣から聞こえ、視線を向ければブルブルと震えている将校クオーレがいる。部隊長の様子も副部隊長の様子もおかしく、俺は首を傾げていたところに、手を叩く音が響いた途端、視界がぶれ俺が座っていた椅子の感触がなくなり、床に吸い寄せられるように尻もちをつく。しかし、鎧を着ていたため、衝撃の痛みはなかった。
そして、カツカツという床を鳴らす足音が近づいてきて俺の前で音が止まる。
「そこの者、聖騎士とは何かを答えなさい」
え?おれ?教会の神父の格好をした人物が床に腰を下ろしたままの俺を見下ろしていた。その青い目は冷たく、まるで価値のないモノを見るような視線だ。俺はその視線に耐えきれずうつむいてしまう。
「クオーレ。答えなさい」
「はっ!我々聖騎士は天の日を掲げる聖女様の剣であり、盾であります。しかし、我々の背後には多くの民がおり、民の命を脅かす脅威を討ち滅ぼす為にその力を奮う者であります」
俺の代わりに隣りにいた将校クオーレが指名され答え、その答えに満足したのか神父の格好をした人物は、またカツカツと足音を立て歩き始める。
俺は本能でわかってしまった。
あの人物には決して逆らってはならないと。
震える膝を叱咤し俺は立ち上がった。
(補足)
リュミエール神父は上空から周辺を調査しつつ、サボっている者たちを追い立てていました。流石、悪魔神父ですね(笑)
20
お気に入りに追加
527
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

今夜で忘れる。
豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」
そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。
黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。
今はお互いに別の方と婚約しています。
「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」
なろう様でも公開中です。

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。
BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。
男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。
いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。
私はドレスですが、同級生の平民でした。
困ります。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる