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175 隠したかった

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 外が騒がしい。……あれ?もしかして……朝の訓練が既に始まっている?朝のお務めすら寝過ごしている!これは……

「お説教部屋行き!!」

 がばりと起き上がろうにも、身体が動かない??もしかして、これが世にいう金縛り!!

 目を開ければ、黒い色が視界を占めていた。

「アンジュ。昨日は散々リュミエール神父から説教をされたのに、夢の中でもされていたのか?」

 ルディがクスクスと笑いながら私を抱きしめてきたが、これ以上絞めないで欲しいのだけど。ルディの胸板に手を置いて抵抗を試みる。……が、徐々に絞まっていくとこに変わりはなかった。

「ルディ。おはよう。もう少し力を緩めて欲しい」

「おはよう。アンジュ」

 そう言ってルディは私の額に口づけをして、力を緩めてくれてた。

「それで、昨日はあれからどうなったの?」

 私は神父様からお説教を受け、そのあと夜食の肉のおすそ分けを貰っていたところに、ルディとファルが戻ってきて、私は聖痕を右の目に中に戻して、眠りについた。

 だから、私はその後のことは記憶にはない。

「何も無かった」

「ん?あの彼女は?」

「あの女のことなど知らん」

 あの女……ルディよりもリザ姉に聞いた方がよさそう。

「じゃ、いつ王都に帰る予定?」

「昼過ぎに出発予定だ。あの女は転移で朝に送り返すから、顔を合わせることもない」

 ん?ああ、そうだね。ワイバーンに乗って死にかけたのだから、彼女的にはワイバーンにはもう乗りたくはないだろう。

「恐らく朝日が昇った早々にリュミエール神父が王都の聖騎士団本部に抗議文付きで転移で送りつけると言っていたから、既にここにはいないだろう」

 あ、何か知らないけれど、神父様を怒らせた彼女のわがままはこれ以上聞かないということだね。本当に彼女は何を言って神父様を怒らせたのだろう。

 抗議文とは今回の彼女のわがままのことかな?あと、侍従シャンベランの管理不足を言われるのかなぁ。

「でもさぁ。第9部隊の訓練って、活気あるね。時々横目で他の部隊の訓練を見ることがあるけど、なんていうかお遊びのような訓練だなぁと思っていたの」

 外から聞こえる声と剣が交わる音は実戦さながらの真剣さが伺えた。

「それは違う。リュミエール神父が夜中に説教を始めた上に、持久走をするように命じたから、そのまま訓練が始まっただけだろう」

 やっぱり、あれから何かあったんじゃない!流石、悪魔神父。キルクスの人たちではなくても説教をして、鬼の持久走をさせるなんて、恐ろしい。それも、休むこともなくそのまま訓練が始まるなんて、絶対にいい笑顔で言い切ったに違いない。

 『敵はどのような状態でも待ってはくれないのですよ。あなた達は疲れたからと言って敵に背をむけるのですか?』と正論すぎる言葉をだ。騎士が敵に背を向けるのか、膝を付くのかと。いい笑顔で言うのだ。それは心がへし折られるか、闘争心が沸き立つかのどちらかだ。
 で、きっと闘争心に火をつけられた状態なのだろうと私は予想した。



 第9部隊の食堂はがらんどうとしていた。居るのは空になった皿を山盛りにしている酒吞と既に食後のお茶を飲んでいる茨木。

 そして、食べ始めたばかりであろうファルと神父のみだ。あ、離れたところに第12部隊長が居る。それだけだ。

「神父様。おはようございます」
「リュミエール神父、おはようございます」

 神父様の前に立って挨拶をする。

「おはよう。シュレイン。アンジュ」

 神父様は手を止めてルディに視線を向けたあとに私の方を見た。

「体調はどうですか?アンジュ」

「一晩寝たら回復したので、問題ないです」

 その言葉にほっとため息をあと、困ったような表情を神父様はした。どうしたのだろう。

「確かにあそこまで魔力の枯渇が何度も起これば、その身に負担がかかることでしょうね。アンジュ。その聖痕の封印はどうやってしているのですか?」

 私はその言葉に首を傾げてしまった。私は封印しようと思って右目に入れたわけではない。ただ隠そうと思っただけだ。

 そこにトレイを持った第12部隊長さんがやってきた。

「ロゼが用意していた食事だが、これで本当によろしいのか?」

 大体私が食べれる量で私が好む物の朝食がトレイの上には存在していた。スープとパンと果物……以上。ロゼはよくわかっている。

「あ、それでいいです。ロゼ姉はよくわかっているので」

 トレイを受け取り、神父様の前の席に腰を下ろした。

「シュレイン。そこでいがみ合っていないで、自分の分の食事を取ってきなさい」

 神父様の言葉に振り向けば、そこにはルディも第12部隊長さんの姿もなかった。何がいがみ合っているのだろう?

「それで、封印はどうしているのですか?」

 再び同じ質問をされた。だけど、私にはわからない。

「別に封印をしようと思ったわけではないです。ただ、隠したかったそれだけです」

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