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173 光の矢はえげつない(第9副部隊長ディネーロ)
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第9部隊 Side2
(第9副部隊長ディネーロ)
「何を言っている?」
突然叫びだした将校ロゼの方を見て隊長は顔を歪めている。普通であれば、突然意味のわからないことを叫びだしたら、気でも狂ったのかと思って当たり前だ。
それに対しリザネイエ第12副部隊長はいつもどおりの軽い感じで答える。
「アンジュちゃんを怒らせる言葉を言ったからお仕置きされるのよ。死にたくなかったら結界を張るか避けるかしてくださいね。第9部隊長」
隊長は未だに上空から攻撃されていることに気がついていない。だから、その事を伝えに行こうと足を踏み出せば、肩を掴まれ将校ロゼの方に何故か連行されていく。
「おい、メリクリウス放せ」
俺の肩を掴んで連行しているのは第4部隊の副部隊長であるメリクリウスだった。
「まぁ、一度は体験しておくべきではないでしょうか?あのアンジュが聖騎士団にいるとなると、何かしらの被害は受けることになるでしょう」
呆れたような声でメリクリウスは言ってくる。否定したいが、第13部隊は基本的に王都に詰めているので、問題の遭遇率は高くなってくるだろう。あの公開演習の日のこともそうだった。アンジュの行動は普通では止められない。
「第9部隊長もあのなんとも言えない嫌がらせのような攻撃を受けておけば、アンジュを怒らす事はないだろう?」
横からカインレイザ第4部隊長も俺の肩を叩き、顔をこちらに向けて恐らく苦笑いでも浮かべているのだろう。苦笑が混じっている。しかし、俺たちはたった今戻ってきたばかりなので、フルフェイスを被ったままなので、その表情はわからない。
そこに将校ロゼの声が響いてきた。流石、アンジュと同じ部屋にいただけあって、瞬時に強固な結界を張っている。
「リザ姉!来た来たよ!早くこっち!」
その結界の中に俺たちは素早く入り、次いでリザネイエ第12副部隊長も入ってきた。
「いやー。この光景も久しぶりだなぁ」
カインレイザ第4部隊長は腕を組んで夜空を見上げている。
「昼間はよく分からなかったですが、夜だとあのエゲツのない数が一目瞭然ですね」
メリクリウスも上を仰ぎ見て言うが、正にその感想は正しい。夜空に輝く星々の様に煌めいてはいるが、その量が半端ない。空一面と言っても過言ではない量だ。
「あらあら、今日は少ないぐらいじゃないのかしら?」
リザネイエ第12副部隊長がそのように言うが、酷いときは第5波まであった。折り重なる光が無いことから、一応アンジュ的には手加減はしているのだろう。
そして、光の雨が降り注ぎ、周りに聞こえていた悲鳴や叫声はかき消えてしまった。
「あれ、攻撃性が皆無なのが、腹立つよな」
何度かこの身に受けた覚えがある俺としては、この攻撃は嫌がらせだと思っている。
「いや、地味に痛かったぞ」
「最初は小石を投げられた程度でしたが、段々と痺れて来るのがエゲツナイですよね」
確かに痛いのは痛いが、小石を軽く投げられた程度の痛さで、なんともない。
「怪我をすることは無かった。ただ、地面に打ち上げられた魚のようにピクピクするしかなかっただけだろう?」
しかし、光の矢は消えずに刺さったまま。そして、徐々に身体が痺れて来て膝を折り、地面に横たわって生き足掻いている物体になるのだ。
その突き刺さったままの光の矢が消え去るまで。
そう、光が収まり俺の目に映された光景そのものだ。ほとんどの者たちが、地面の上でピクピクと痙攣している。
うん。痛くはないのだ。痛くは……ただ、光の矢が当たったところから地味に痺れてきて動けなくなるというだけだ。隊長も漏れずに地面と仲良くなっていた。
すみません、隊長。しかし、リュミエール神父がいれば、これぐらい軽々と避けるか結界を張って避けなさいと静かなる怒りを向けられるのです。未熟者と。
そう、幾人かその場に立っているのは、キルクスの者たちだけだ。それも憐れみの視線を地面に向けている。わかるぞ、その気持。
微妙に屈辱的なんだよ。額に手を当てたファルークスの隣に何も表情が浮かんでいないシュレインがおり、その前で偉そうに腰に手を当ててふんぞり返っているクソガキのアンジュがいる光景が目に浮かんでいるのだろう?
なんであんなクソガキに勝てないのかと。
しかし、この場にリュミエール神父が居なくて良かった。もし、この場にいれば説教の上に痺れている身体で走ってこいと言われていただろう。
地面と仲良くなっている者たちはラッキーだったなと少し羨ましく思ってしまったのは、心の中に留めておこう。
「この惨状はどうしましょうか?」
「放置だ放置。下手に触るとこっちが被害を受ける」
「アンジュちゃんらしい仕掛けよね」
リザネイエ第12副部隊長。そこを笑って許せるのは、ほんの一握りの人だけだ。
しかし、俺の意見も放置の一択だ。そんなことを知らずにメリクリウスを助けるために矢を触った瞬間、俺も丘の上の魚に成り下がってしまった苦い経験があるからな。本当にあのアンジュの頭の中はどうなっているのか、未だに理解不能だ。
(第9副部隊長ディネーロ)
「何を言っている?」
突然叫びだした将校ロゼの方を見て隊長は顔を歪めている。普通であれば、突然意味のわからないことを叫びだしたら、気でも狂ったのかと思って当たり前だ。
それに対しリザネイエ第12副部隊長はいつもどおりの軽い感じで答える。
「アンジュちゃんを怒らせる言葉を言ったからお仕置きされるのよ。死にたくなかったら結界を張るか避けるかしてくださいね。第9部隊長」
隊長は未だに上空から攻撃されていることに気がついていない。だから、その事を伝えに行こうと足を踏み出せば、肩を掴まれ将校ロゼの方に何故か連行されていく。
「おい、メリクリウス放せ」
俺の肩を掴んで連行しているのは第4部隊の副部隊長であるメリクリウスだった。
「まぁ、一度は体験しておくべきではないでしょうか?あのアンジュが聖騎士団にいるとなると、何かしらの被害は受けることになるでしょう」
呆れたような声でメリクリウスは言ってくる。否定したいが、第13部隊は基本的に王都に詰めているので、問題の遭遇率は高くなってくるだろう。あの公開演習の日のこともそうだった。アンジュの行動は普通では止められない。
「第9部隊長もあのなんとも言えない嫌がらせのような攻撃を受けておけば、アンジュを怒らす事はないだろう?」
横からカインレイザ第4部隊長も俺の肩を叩き、顔をこちらに向けて恐らく苦笑いでも浮かべているのだろう。苦笑が混じっている。しかし、俺たちはたった今戻ってきたばかりなので、フルフェイスを被ったままなので、その表情はわからない。
そこに将校ロゼの声が響いてきた。流石、アンジュと同じ部屋にいただけあって、瞬時に強固な結界を張っている。
「リザ姉!来た来たよ!早くこっち!」
その結界の中に俺たちは素早く入り、次いでリザネイエ第12副部隊長も入ってきた。
「いやー。この光景も久しぶりだなぁ」
カインレイザ第4部隊長は腕を組んで夜空を見上げている。
「昼間はよく分からなかったですが、夜だとあのエゲツのない数が一目瞭然ですね」
メリクリウスも上を仰ぎ見て言うが、正にその感想は正しい。夜空に輝く星々の様に煌めいてはいるが、その量が半端ない。空一面と言っても過言ではない量だ。
「あらあら、今日は少ないぐらいじゃないのかしら?」
リザネイエ第12副部隊長がそのように言うが、酷いときは第5波まであった。折り重なる光が無いことから、一応アンジュ的には手加減はしているのだろう。
そして、光の雨が降り注ぎ、周りに聞こえていた悲鳴や叫声はかき消えてしまった。
「あれ、攻撃性が皆無なのが、腹立つよな」
何度かこの身に受けた覚えがある俺としては、この攻撃は嫌がらせだと思っている。
「いや、地味に痛かったぞ」
「最初は小石を投げられた程度でしたが、段々と痺れて来るのがエゲツナイですよね」
確かに痛いのは痛いが、小石を軽く投げられた程度の痛さで、なんともない。
「怪我をすることは無かった。ただ、地面に打ち上げられた魚のようにピクピクするしかなかっただけだろう?」
しかし、光の矢は消えずに刺さったまま。そして、徐々に身体が痺れて来て膝を折り、地面に横たわって生き足掻いている物体になるのだ。
その突き刺さったままの光の矢が消え去るまで。
そう、光が収まり俺の目に映された光景そのものだ。ほとんどの者たちが、地面の上でピクピクと痙攣している。
うん。痛くはないのだ。痛くは……ただ、光の矢が当たったところから地味に痺れてきて動けなくなるというだけだ。隊長も漏れずに地面と仲良くなっていた。
すみません、隊長。しかし、リュミエール神父がいれば、これぐらい軽々と避けるか結界を張って避けなさいと静かなる怒りを向けられるのです。未熟者と。
そう、幾人かその場に立っているのは、キルクスの者たちだけだ。それも憐れみの視線を地面に向けている。わかるぞ、その気持。
微妙に屈辱的なんだよ。額に手を当てたファルークスの隣に何も表情が浮かんでいないシュレインがおり、その前で偉そうに腰に手を当ててふんぞり返っているクソガキのアンジュがいる光景が目に浮かんでいるのだろう?
なんであんなクソガキに勝てないのかと。
しかし、この場にリュミエール神父が居なくて良かった。もし、この場にいれば説教の上に痺れている身体で走ってこいと言われていただろう。
地面と仲良くなっている者たちはラッキーだったなと少し羨ましく思ってしまったのは、心の中に留めておこう。
「この惨状はどうしましょうか?」
「放置だ放置。下手に触るとこっちが被害を受ける」
「アンジュちゃんらしい仕掛けよね」
リザネイエ第12副部隊長。そこを笑って許せるのは、ほんの一握りの人だけだ。
しかし、俺の意見も放置の一択だ。そんなことを知らずにメリクリウスを助けるために矢を触った瞬間、俺も丘の上の魚に成り下がってしまった苦い経験があるからな。本当にあのアンジュの頭の中はどうなっているのか、未だに理解不能だ。
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