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154 約束を破った代償
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ぐふっ。私の心は羞恥心に悶えている。
今日の晩ごはんを部屋のキッチンで作るのは別にいい。夕食はドラゴンのシチューに野菜サラダにドラゴンのステーキだ。あと、食堂からパンを貰ってきたものをテーブルに置けは完成だ。手の込んだ物はシチューだけなので、大した料理ではない。
そして、目の前でファルが食べているのもいつも通りだ。
ただ、私は何故かピンクのフワフワロリータファッションに着替えさせられている。そして、ルディの膝の上に座って、ステーキ肉を突き刺したフォークをルディに差し出している私。腕がふるふる震えているのはフォークが重いからではなく、この状況に私が耐えきれないからだ。
「ルディ。私が着替える必要はなかったと思う」
「アンジュは何を着ても似合う。とても可愛いよ」
いや、似合う似合わないではなく、必要かどうかの話だ。
「それから、私が食べさせる意味ある?」
「可愛いアンジュから食べさせてもらうと、いつも以上に美味しいな」
そんなことで味は変わらない。味見をしたときはいつも通りだった。
「次はスープがいいな」
ルディに言われてフォークからスプーンに持ち替えて、濃厚なドラゴンの出汁が出た透明なスープをすくって、差し出す。
これは約束を破ったことへの戒めなのだろうけど、かなり精神的にクるものがある。私の何かがゴリゴリと削られていっている気がする。
「うん。とても美味しい」
それはありがとうございます。そろそろ、私を解放してもらえないでしょうか?
胡散臭い笑顔ではなく、普通にご機嫌の笑みを浮かべているルディは私からスプーンを取り上げ、スープをすくって私に差し出してきた。
ぐはっ!これは乙女心がえぐられる……間違えた。乙女心がくすぐられるシチュエーションなのだろうけど。私の乙女心は死んでいるので何かがゴリゴリと削られていっている。
「アンジュ。あーん」
これは食べないといけないのだろうか。きっと、いけないのだろう。私はふるふる震えながら口を開ける。
開けた口から流し込まれるスープだけど、味見をした時は美味しいと思っていた。だけど、全く持って味がしない。この羞恥心に味覚が崩壊してしまっているようだ。
「あ、こぼれてしまった」
そう言ってルディは私の口の端に口づけをしてくる。
「ぐふっ。もう約束やぶらないから、勘弁してほしい」
「アンジュには言っても、わかってもらえないから仕方がないよな」
仕方がないってことはない!
「俺がアンジュのことをどれだけ大切に思っているかわかってもらえないのなら、身体でわからせるだけだ」
なんだか、不穏な言葉になっているけど、これ以上は私の精神が耐えきれないから、抵抗させてもらうよ。
「アンジュ。甘んじて受けておけ」
ファルは私とルディのやり取りを無視していると思っていたら、ファルはルディの味方だったようだ。
「何故に!」
私が約束破ったことは認めるけど、ここまでされることはないと思う。この精神を削られる食べさせ合い。
「アンジュが戻ってきていないと知ったシュレインを見てないからそう言えるんだ。明日皆に謝っておけよ」
え?第13部隊の皆に謝るほどのことだったの?ルディはいったい何をしたわけ?
「アンジュ。お肉食べようか」
差し出されたドラゴンステーキを見て私は首を横に振る。それ私用に焼いた肉じゃない。
「そっちのサイコロ状に切った方にしてほしい」
「大きさが違うだけで一緒だろう?」
部位は皆同じなのだけど、焼き方が違う。普通に肉を焼くというと、ウェルダンでほとんど肉に火が通った状態のことを言う。
だけど、私はドラゴン肉はレアが一番美味しいと思っているので、切らなくてもいいサイコロ状にしてレアで焼いているのだ。その昔、中が赤い状態で一度肉を食べていたら冒険者たちに捨てられたことがあるので、細工する時間があるときは見た目ではわからない状態で食べているのだ。
「こっちは私専用!」
するとルディはフォークを置いて、別のフォークを手にして、サイコロ状に切ってあるドラゴンの肉を突き刺した。
そして、一瞬眉をひそめる。そのサイコロ状の肉を突き刺したフォークをルディは私にくれるわけでなく、自分の方に向けようとしたので、慌てて私はルディの腕を掴んで、肉を私の口の中に放り込む。
表面の甘い脂が舌の上に広がり、肉の香ばしい匂いが鼻を抜ける。そして、弾力のある肉を咀嚼するごとに溢れでる肉の旨み。うん。ドラゴンの肉はレアが美味しい。
「アンジュ。何か隠しているのか?」
ルディの言葉に私はへろりと笑う。何も隠していないよ。
するとルディは素早くフォークでサイコロ状の肉を突き刺して、自分の口の中に入れた。
「あー!それは私専用って言ったのに!」
咀嚼して肉を飲み込んだルディが、サイコロ状の肉を差して言ってきた。
「これは何の肉だ?」
あー。普通じゃないとバレてしまった。その後にルディから怒られたのは言うまでもないだろう。
今日の晩ごはんを部屋のキッチンで作るのは別にいい。夕食はドラゴンのシチューに野菜サラダにドラゴンのステーキだ。あと、食堂からパンを貰ってきたものをテーブルに置けは完成だ。手の込んだ物はシチューだけなので、大した料理ではない。
そして、目の前でファルが食べているのもいつも通りだ。
ただ、私は何故かピンクのフワフワロリータファッションに着替えさせられている。そして、ルディの膝の上に座って、ステーキ肉を突き刺したフォークをルディに差し出している私。腕がふるふる震えているのはフォークが重いからではなく、この状況に私が耐えきれないからだ。
「ルディ。私が着替える必要はなかったと思う」
「アンジュは何を着ても似合う。とても可愛いよ」
いや、似合う似合わないではなく、必要かどうかの話だ。
「それから、私が食べさせる意味ある?」
「可愛いアンジュから食べさせてもらうと、いつも以上に美味しいな」
そんなことで味は変わらない。味見をしたときはいつも通りだった。
「次はスープがいいな」
ルディに言われてフォークからスプーンに持ち替えて、濃厚なドラゴンの出汁が出た透明なスープをすくって、差し出す。
これは約束を破ったことへの戒めなのだろうけど、かなり精神的にクるものがある。私の何かがゴリゴリと削られていっている気がする。
「うん。とても美味しい」
それはありがとうございます。そろそろ、私を解放してもらえないでしょうか?
胡散臭い笑顔ではなく、普通にご機嫌の笑みを浮かべているルディは私からスプーンを取り上げ、スープをすくって私に差し出してきた。
ぐはっ!これは乙女心がえぐられる……間違えた。乙女心がくすぐられるシチュエーションなのだろうけど。私の乙女心は死んでいるので何かがゴリゴリと削られていっている。
「アンジュ。あーん」
これは食べないといけないのだろうか。きっと、いけないのだろう。私はふるふる震えながら口を開ける。
開けた口から流し込まれるスープだけど、味見をした時は美味しいと思っていた。だけど、全く持って味がしない。この羞恥心に味覚が崩壊してしまっているようだ。
「あ、こぼれてしまった」
そう言ってルディは私の口の端に口づけをしてくる。
「ぐふっ。もう約束やぶらないから、勘弁してほしい」
「アンジュには言っても、わかってもらえないから仕方がないよな」
仕方がないってことはない!
「俺がアンジュのことをどれだけ大切に思っているかわかってもらえないのなら、身体でわからせるだけだ」
なんだか、不穏な言葉になっているけど、これ以上は私の精神が耐えきれないから、抵抗させてもらうよ。
「アンジュ。甘んじて受けておけ」
ファルは私とルディのやり取りを無視していると思っていたら、ファルはルディの味方だったようだ。
「何故に!」
私が約束破ったことは認めるけど、ここまでされることはないと思う。この精神を削られる食べさせ合い。
「アンジュが戻ってきていないと知ったシュレインを見てないからそう言えるんだ。明日皆に謝っておけよ」
え?第13部隊の皆に謝るほどのことだったの?ルディはいったい何をしたわけ?
「アンジュ。お肉食べようか」
差し出されたドラゴンステーキを見て私は首を横に振る。それ私用に焼いた肉じゃない。
「そっちのサイコロ状に切った方にしてほしい」
「大きさが違うだけで一緒だろう?」
部位は皆同じなのだけど、焼き方が違う。普通に肉を焼くというと、ウェルダンでほとんど肉に火が通った状態のことを言う。
だけど、私はドラゴン肉はレアが一番美味しいと思っているので、切らなくてもいいサイコロ状にしてレアで焼いているのだ。その昔、中が赤い状態で一度肉を食べていたら冒険者たちに捨てられたことがあるので、細工する時間があるときは見た目ではわからない状態で食べているのだ。
「こっちは私専用!」
するとルディはフォークを置いて、別のフォークを手にして、サイコロ状に切ってあるドラゴンの肉を突き刺した。
そして、一瞬眉をひそめる。そのサイコロ状の肉を突き刺したフォークをルディは私にくれるわけでなく、自分の方に向けようとしたので、慌てて私はルディの腕を掴んで、肉を私の口の中に放り込む。
表面の甘い脂が舌の上に広がり、肉の香ばしい匂いが鼻を抜ける。そして、弾力のある肉を咀嚼するごとに溢れでる肉の旨み。うん。ドラゴンの肉はレアが美味しい。
「アンジュ。何か隠しているのか?」
ルディの言葉に私はへろりと笑う。何も隠していないよ。
するとルディは素早くフォークでサイコロ状の肉を突き刺して、自分の口の中に入れた。
「あー!それは私専用って言ったのに!」
咀嚼して肉を飲み込んだルディが、サイコロ状の肉を差して言ってきた。
「これは何の肉だ?」
あー。普通じゃないとバレてしまった。その後にルディから怒られたのは言うまでもないだろう。
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