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145 意志なきモノが意志を持つこと
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「心配して来てみれば、人とは一定の距離を取るように忠告をしていたはずだが?」
いつもと違い、とても低い声が偽物の王様から出ていた。その声にのろのろと顔を上げる朧。
「どういうこと?」
私は意味が分からず首を傾げる。
それにしても、本物の白銀の王様も偽物の王様も暇ですか?聖騎士団は王都の北の端にあるから、かなり距離があるはずなのだけど?
「今まで『個』と認識されずに『集』とあったモノがいきなり『個』とは成れない」
あれ?もしかして遠回しに私が怒られている?強引に朧に詰め寄ったのが駄目だったってことか。
「主の役に立てぬのであれば、その場を別のモノと代わることになるが、どうする?」
偽物の王様のその言葉に朧はすっと立ち上がった。酷い脅しだね。
「それから、太陽の聖女よ。『個』として認められるということは、意志なきモノが意志を持つということだ。あまり、強要されないよう心がけていただきたい」
それだけを偽物の王様は口にし、消え去るように去っていった。あれ?ちょっと待って!さっき私のこと太陽の聖女って言ったよね!ということはあの王様にもバレバレってこと!!
私は頭を抱えて項垂れる。これ、何処まで知れ渡っているのだろう。だから、あの時王様は意味深な視線を私に向けてきたってわけ?
恐らくルディから話をしたわけではないだろう。ルディは黙っていてくれると言ってくれた。
だったら、いつどこで誰に見られた?
太歳と一緒に常闇を封じた時?それとも、酒呑と茨木と一緒にルディから逃げていたとき?
いや、恐らくキルクスだろう。あそこは私が人を遠くに飛ばしたとはいえ、多くの人がいた。ん?ちょっと待って、あそこには神父様がいた。神父様は王族だ。
「ねぇ」
私は頭を起こして、朧を見る。その姿は人の姿に成っており、表情を消した姿だった。
あ、うん。そこまで仕事に忠実でなくてもいいのだけど。
「神父様って王族だけど、黒狼の人って誰か付いているの?」
「はい、常時二人は付くようにしています」
そっちか!神父様には口止めしたけど、神父様に付いている黒狼の人にはそんなこと言っていないよ。そもそも、いるって気づいていないし!
「う゛~。後でいいから、あの偽物の王様に私のことを広めない様に言っておいてよ。知られている人がこれ以上増えるのは嫌だから」
「かしこまりました。頭領に言っておきます」
あれ?ということはルディにも黒狼の人が付いているってこと?
「じゃ、ルディにも誰か付いている?私は今まで全然気が付かなかったけど」
「いいえ、必要ないとのことで、今は誰もついておりません」
「今は?」
朧は何故か視線を反らしながら答えた。
「はい、何人か帰らぬものとなりましたから」
ルディ!!いったい何があったの?!
これは詳しく聞かない方がよさそうだ。私は聞かなかったことにして、足を進める。そう、桜色の髪の人物が消えて行った方向にだ。
少し歩いたところで桜色の髪が見えたので、物陰に隠れる。
彼女はコロッセオの入り口をチラチラ見て、周りをきょろきょろして、何かを探しているようだけど、見つからなかったらしく、別の方向に歩き出した。
その後、水がない噴水があるところ、誰かよくわからない像が立っているところ、何の変哲もない木があるところ。
何をしているのだろう。私のようにふらふらして散歩しているわけでなく、明確な目的をもって移動している。
ん?何か口が動いている。
『何で誰も居ないの!』
誰が、あんなところにいるわけ?誰かと約束があったってこと?
『ウィースもカナルもシュットも居なかった。なぜ?』
誰の事を探しているのだろう。そこで待ち合わせをしていたってこと?
「ねぇ、誰のこと言っているかわかる?」
「わかりかねます」
そうだよね。そして、彼女は宿舎から正門に抜ける人通りの多い場所の端にあるベンチに座った。
私と朧はその背後にある茂みに姿を隠し、彼女を伺い見る。どうもイライラしているようにつま先をカツカツと鳴らしている。何が不満なのだろう。彼女の専用の住まいでの生活は至れり尽くせりらしいとミレーが噂話を話してくれてた。本部に軟禁されていることが不満なのだろうか。
『なんで思い通りに行かないのよ!』
なにか彼女は彼女なりに思う事があるらしいけど、上手く事が運んでいないらしい。しかし、あの白銀の王様の話では、何かと彼女はき上官の人たちから嫌われていると言っていた。もしかして、ルディに言っていたようなことを他の人にも言っていたとか?
『そもそも始めからおかしかったのよ!なんで村に迎えに来たのが第1部隊長だけじゃなく、あのナルシストまで来たのよ』
ナルシスト?誰のことだろう?
『あそこで好感度を上げないと第1部隊長との分岐点が現れないじゃない!』
ん?好感度?あれ?おかしな言葉が混じっているけど?
いつもと違い、とても低い声が偽物の王様から出ていた。その声にのろのろと顔を上げる朧。
「どういうこと?」
私は意味が分からず首を傾げる。
それにしても、本物の白銀の王様も偽物の王様も暇ですか?聖騎士団は王都の北の端にあるから、かなり距離があるはずなのだけど?
「今まで『個』と認識されずに『集』とあったモノがいきなり『個』とは成れない」
あれ?もしかして遠回しに私が怒られている?強引に朧に詰め寄ったのが駄目だったってことか。
「主の役に立てぬのであれば、その場を別のモノと代わることになるが、どうする?」
偽物の王様のその言葉に朧はすっと立ち上がった。酷い脅しだね。
「それから、太陽の聖女よ。『個』として認められるということは、意志なきモノが意志を持つということだ。あまり、強要されないよう心がけていただきたい」
それだけを偽物の王様は口にし、消え去るように去っていった。あれ?ちょっと待って!さっき私のこと太陽の聖女って言ったよね!ということはあの王様にもバレバレってこと!!
私は頭を抱えて項垂れる。これ、何処まで知れ渡っているのだろう。だから、あの時王様は意味深な視線を私に向けてきたってわけ?
恐らくルディから話をしたわけではないだろう。ルディは黙っていてくれると言ってくれた。
だったら、いつどこで誰に見られた?
太歳と一緒に常闇を封じた時?それとも、酒呑と茨木と一緒にルディから逃げていたとき?
いや、恐らくキルクスだろう。あそこは私が人を遠くに飛ばしたとはいえ、多くの人がいた。ん?ちょっと待って、あそこには神父様がいた。神父様は王族だ。
「ねぇ」
私は頭を起こして、朧を見る。その姿は人の姿に成っており、表情を消した姿だった。
あ、うん。そこまで仕事に忠実でなくてもいいのだけど。
「神父様って王族だけど、黒狼の人って誰か付いているの?」
「はい、常時二人は付くようにしています」
そっちか!神父様には口止めしたけど、神父様に付いている黒狼の人にはそんなこと言っていないよ。そもそも、いるって気づいていないし!
「う゛~。後でいいから、あの偽物の王様に私のことを広めない様に言っておいてよ。知られている人がこれ以上増えるのは嫌だから」
「かしこまりました。頭領に言っておきます」
あれ?ということはルディにも黒狼の人が付いているってこと?
「じゃ、ルディにも誰か付いている?私は今まで全然気が付かなかったけど」
「いいえ、必要ないとのことで、今は誰もついておりません」
「今は?」
朧は何故か視線を反らしながら答えた。
「はい、何人か帰らぬものとなりましたから」
ルディ!!いったい何があったの?!
これは詳しく聞かない方がよさそうだ。私は聞かなかったことにして、足を進める。そう、桜色の髪の人物が消えて行った方向にだ。
少し歩いたところで桜色の髪が見えたので、物陰に隠れる。
彼女はコロッセオの入り口をチラチラ見て、周りをきょろきょろして、何かを探しているようだけど、見つからなかったらしく、別の方向に歩き出した。
その後、水がない噴水があるところ、誰かよくわからない像が立っているところ、何の変哲もない木があるところ。
何をしているのだろう。私のようにふらふらして散歩しているわけでなく、明確な目的をもって移動している。
ん?何か口が動いている。
『何で誰も居ないの!』
誰が、あんなところにいるわけ?誰かと約束があったってこと?
『ウィースもカナルもシュットも居なかった。なぜ?』
誰の事を探しているのだろう。そこで待ち合わせをしていたってこと?
「ねぇ、誰のこと言っているかわかる?」
「わかりかねます」
そうだよね。そして、彼女は宿舎から正門に抜ける人通りの多い場所の端にあるベンチに座った。
私と朧はその背後にある茂みに姿を隠し、彼女を伺い見る。どうもイライラしているようにつま先をカツカツと鳴らしている。何が不満なのだろう。彼女の専用の住まいでの生活は至れり尽くせりらしいとミレーが噂話を話してくれてた。本部に軟禁されていることが不満なのだろうか。
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なにか彼女は彼女なりに思う事があるらしいけど、上手く事が運んでいないらしい。しかし、あの白銀の王様の話では、何かと彼女はき上官の人たちから嫌われていると言っていた。もしかして、ルディに言っていたようなことを他の人にも言っていたとか?
『そもそも始めからおかしかったのよ!なんで村に迎えに来たのが第1部隊長だけじゃなく、あのナルシストまで来たのよ』
ナルシスト?誰のことだろう?
『あそこで好感度を上げないと第1部隊長との分岐点が現れないじゃない!』
ん?好感度?あれ?おかしな言葉が混じっているけど?
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