聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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144 お菓子はポケットにある。何も問題無い

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「ねぇ、あそこの場所ってトイレ?」

 本部には2回ほどしか入ったことのない私には本部の間取りはわからないので、隣にいる朧に聞いてみた。

「はい、お手洗いですが、身体を乗り出して、どうやって地面に降りるつもりなのでしょうか?」

 それは思っていた。それなりに大きな窓であるなら、少々はしたないが、身体を乗り出して足を掛けることができるだろう。そして、足から地面に着地できる。
 だけど、上半身を出すことが精一杯の大きさの窓では足を掛けて、足から降りることは困難だ。

「さぁ、そのまま頭から落ちるしかないと思うけど?若しくは身体能力が高ければ、上の窓枠を持って上半身を出した後に足を出すまで、維持ができれば普通に降りられるかも?」

「身体能力高いのであれば、あの様な姿にはなりません」

 まぁ、そうだよね。凄くジタバタして窓から出ようとしている感じ。あ!ベチャッと地面に落ちていった。

『痛いー!もう!何よ!』

 彼女は怒りながら立ち上がった。人の身長程の高さから落ちて、文句だけ言って立ち上がるなんて、タフだね。

 その彼女は真っ直ぐこちらに向かってくる。気配を消して身を木の影に隠すも、流石に二人分の太さはこの木にはない。

「失礼してもよろしいでしょうか?」
「何が?」

 朧が聞いてきたけれど、何が失礼なことなのか説明なく、子供のように抱えられてしまった。何故に?

「私の術で姿が見えなくなっています」

 なんだって!そんな便利な魔術があるわけ?私も何度か作ろうとして結局できなかったというのに!

「その術あとで教えて欲しい!」

「シュレイン様がいいとおっしゃれば」

 ……それは絶対に許可は出ないだろう。この前の空蝉の術でも散々文句を言われたのだから。

『なんで、私が閉じ込められないといけないのよ!』

 彼女は腹立たしさを隠しもせずに、ドスドスと足音を立てて歩いている。ひと目の盗んで抜け出したわりには、お粗末な行動だ。

 ほら、二階から彼女を見ている侍従シャンベランがいるし。それも人が悪そうなニヤリとした笑みを浮かべていた。そして、その視線が私と朧を捉える。

 見えているじゃない!

 その侍従シャンベランが何か手を動かして指示を送ってくるけど、私にはさっぱりわからない。そんなジェスチャー知らないよ。
 何かを伝え終わったのか、侍従シャンベランは建物の奥に姿を消していった。

「朧、あの侍従シャンベランには見えていたみたいだけど?」

 私はジト目で朧を見る。すると、揺れている瞳の揺れが大きくなった。

「王族の方々には我々の術が効かないように誓約が施されています」

 あ、逆らわないようにという意味か。疑ってしまった。透明化の魔術は結局存在しないのかと思ってしまったよ。

「あ、ごめん。で、侍従シャンベランは何を言ってきたわけ?」

「他のモノを呼んで後を付けさせろ、と」

 ん?別に他の人を呼ばなくてもいいんじゃない?私がここにいるのだから。

「じゃ、このまま後をつけようか」

「それは別のモノに任せますので、主様は散歩の続きをしてください」

 えー。彼女が何処に行く気なのか気になるじゃない。

「私の散歩の行先に聖女の彼女がいた。うん、それは仕方がないね」

「それはシュレイン様の言っていたことに違反しますよね」

 え?どこが違反しているわけ?問題はお起こしていない。知らない人ではない。お菓子を与えられたわけではない。

「大丈夫だよ。言われたことには引っかかっていない。私は彼女を聖女シェーンと知っているし、お菓子は私のポケットの中に入っている。何も問題はない。そうだよね?」

 私はニコリと笑って、朧に問題が無いことを言い切った。すると朧は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
 えー。これでも説得できないのか。

 聖女の彼女はその間もドンドン先に進んで行ってしまっている。
 これは素直に頼んでみるか。
 私は朧の俯いてしまった顔を覗き込む様に首を傾け、朧にお願いをした。

「朧。お願い」

 ただそれだけを言葉にした。すると、抱えられていたのが、私は突如降ろされてしまう。そして、朧は私に背を向けしゃがみ込んでしまった。
 何故に!!

 朧はどうしたのだろう。隠していた耳としっぽまで出てしまっている。もしかして、私の笑顔が怖かった?!

 私がオロオロと困っていると視界の端に赤いモノを捉えた。赤いモノ?足元には血の海がある。それとは別の……私がそちらの方に視線を向けると、呆れた顔の白銀の王様が立っていた。
 昨日は本物が来たと思ったら今日は偽物さんですか!

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