聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

文字の大きさ
上 下
112 / 368

112 王家の影

しおりを挟む

「神父様。取り敢えず、ぶっ殺していいですか?」

 私はルディの父親と母親の死を聞いたところで、神父様に聞いてみた。何を殺すか。勿論、狂信者共をだ。

「だめですよ。アンジュの場合は無差別殺人になりますからね。それに、何度も言っていますが、貴族に手を出したらアンジュは死より恐ろしいことになりますよ」

 神父様は恐ろしい脅し文句を言った。R18禁の事態になると言っているのだ。

「ちっ!」

 思わず舌打ちが出てしまった。これは人知れず暗殺するべきじゃないのだろうか。

「アンジュ。闇討ちは王家の影に邪魔をされるのでやめておきなさい」

 私の心を読まないで欲しい。しかし、神父様がなんかおかしな事を言っている。私が始末したいのは高位貴族であって、王族ではない。

「なぜ、王家の影に邪魔されるのかと思っていますか?」

 神父様の問いにコクリと頷く。

「簡単な理由ですよ。侯爵以上の者たちは少なからず、王家の血が入っていますからね」

「それは王位継承権に関わってくるからですか?」

「そうですね」

 言われてみれば、そうなのかも知れない。公爵は王族公爵と臣民公爵があるけど、今現在王族公爵はいないと教えられている。もし神父様が公爵の地位を得れば王族公爵になることだろう。
 ん?でも神父様の息子という人物が居たはず。

「あの神父様に強制的に王都に行くようにされたときに、神父様のご子息という騎士シュヴァリエがいたのですが、その人も王族にはいるのですか?」

「強制的とは失礼な言い方ですね。ラファーガは母方の遠縁の子を引き取っただけですから、王族にはあたりませんよ」

 母方ということは、前王妃様の親戚筋の子だってこと。その遠縁の子を養子にしたってことか。それなら、なんとなく似ていることも頷ける。でも、胡散臭い笑顔は似なくて良かったと思うよ。

「そして、スラヴァールが王位に立ったときに大将校グラントフィシエの地位から降ろされましてね」

「ちょっと待ってください!」

 私は思わず右手を上げて神父様の言葉を止めた。おかしい。おかしすぎる。何故、第二王子であり王太子であった神父様の進退を第三者が決めることになるのだろう。騎士団という組織は王族の権力に屈しないということなのだろうか。

「この国の王族とはなんですか?余りにも貴族の言いなりですよね」

「アンジュ。聖騎士団の最高権力者は誰ですか?」

 神父様が呆れ気味に聞いてきた。聖騎士団の最高権力者····一番トップは教会組織の最高権力者である···

「教皇です」

「そうですね。教皇に命じられれば、一組織に身を置くものとしては、その法に準じなければなりませんよね」

 言われてみれば、そうなのだけど、今現在教皇は存在しない。教会の今の最高権力者は枢機卿が3人存在し、協議した結果を各教会に周知している。

「そういうことで、スラヴァールから離され、キルクスの神父として着任したのですが、スラヴァールも中々の子でしてね。10年間で13家の高位貴族の当主の首を挿げ替え、教皇を退け、その甥だった大将校グラントフィシエを排除したのですよ」

 うわぁ~。あの白銀の王は色々手を下したみたい。だけど、その大将校グラントフィシエは恐らくルディが関わっていたことだろう。
 え?でも、王に立った歳が8歳だと言っていたから、8歳から18歳の間で両手では足りない人数を排除してきたようだ。それはあり得るのだろうか。いや、もしあの白銀の王の偽者の人が、それを実行していたとしたら、あの他の人には見えない血の池もわかる気がする。
 だから、また私は右手を上げて神父様に質問する。

「偽物の王様が手を下した張本人ですか?」

 すると、ルディとファルから息を飲むような引き攣る音が聞こえたが、神父様はニコニコとした笑顔を崩さず、答えてくれた。

「そうですよ。彼が王家の影の長ですからね」

 あ、そこまでの情報はいらない。YesかNoで教えてくれればよかったのだけど。

「しかし、スラヴァールはやり過ぎましてね。きっかけは聖女に頼らない国を作ろうと発言したことでしたが、『警世の毒』を使われまったのですよ。普通であれば、四肢が不自由になる程度の毒なのですが、呼吸もままならない程の量を盛られましてね。動けないスラヴァールの代わりに、その王家の影の者がスラヴァールに成り代わったのです。彼自身かなりの者達を排除してきましたから、いい牽制にはなっていますよ」

 すごくいい笑顔でそんなことを言わないで欲しい。しかし、これで偽物の態度が悪い王様のあの状況が理解できた。
 普通の人が目に見ることができない血の池。その血の海に沈み込んでいるモノ。偽物の王の周りにいるモノ。呪いの言葉でも吐き捨てるかのように、恨みつらみを言い続けている人の形をしたモノたちは殺された貴族の者達だったのだろう。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

今夜で忘れる。

豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」 そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。 黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。 今はお互いに別の方と婚約しています。 「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」 なろう様でも公開中です。

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...