聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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109 知らないよ!!

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「シュレイン、アンジュが少々何か言われても、暴力を振るうことは駄目ですよ」

 聖水作りを中断して、神父様の元に連行された。勿論、その理由は教会の子たちと問題を起こしたからだ。

「アンジュの髪を掴んだ者に同じことをしてあげただけですよ」

 ニコニコとした笑顔の神父様からのお咎めに対して、ルディもニコニコとした胡散臭い笑顔で制裁を加えた理由を答える。

「アンジュもあれだけ貴族と事を構えるのは避けなさいと言っていましたよね。理解していなかったのですか?」

 神父様は今度は私に向かって言ってきた。それに対して私は神父様に反論する。

「神父様。この教会で過ごす者が白い隊服を着ている者に対して敬意を払わないのは、おかしいと思います」

 一応、貴族の子供たちはどの道を選ぶか個人で選択できるようにはなっているけれど、基本的には聖騎士になるべく訓練を受けている子たちが、白い隊服を見て何も思わないのは問題だと言えるだろう。

「それにファル様を見て偉そうにしている···ア··アンド?公爵家の···「アンドレイヤーです」の人も悪いと思います」

 神父様。わざわざ訂正しなくてもいいよ。

「本音は?」

「黒色が悪だという認識を訂正するためです」

 どいつもこいつも本人そのものではなく、外見で人を判断する悪しき習慣を無くすべきだと思う。

「いつも言っていますが、暴力は駄目ですよ。これで何回目ですか?」

「45回目です」

「46回です」

 細かいなぁ。一回の誤差ぐらいで訂正入れなくていいよ。ルディ、神父様の前で抱きかかえないでよ。足がプラプラ浮いてるじゃない。

「それで神父様。太陽の聖痕について詳しく知りたいのだけど?」

 いつもならこの後に罰として反省文と言う名の経済学の論文を書かされるのだけど、教会を出た私には必要ないので、いらないことを言われる前に聞きたいことを神父様に聞いてみた。

「先に食事にしましょうか。来客用の食堂に用意できていますよ」

 ああ、人買い貴族専用の建物にある食堂だね。そこはあまりというか、全くいい思い出がない。10歳になると貴族に買われるために、その建物に出入りすることがあった。あの舐めるような視線に悪寒を感じ、複数の交じる強い香水に頭痛が増し、下手すれば触ってくる変態どもを何度殴ろうかと思ったか。
 因みに私が貴族に買われなかった理由は骨と皮のヒョロヒョロの身体だったことと、幻影の魔術でくすんだ濃いめの灰色の髪にしていたからだ。他の教会の子供たちはきっと室内だから、暗めに見えると勘違いしてくれていたことだろう。

 私が怪訝な顔をしていると、神父様はニコニコとした笑みを私に向けてきた。

「ここで食事を取ることもできますよ?」

 その言葉に私はすぐさま首を横に振る。ここが監禁部屋だってことは嫌でも知っている。ここと来客用の食堂とどちらがいいかと問われれば、まだ出入りしたことがない来客用の食堂の方が断然マシだった。

 神父様自ら案内するという形をとって、ルディとファルと共に、宿舎とあまり変わらない石造りの飾り気もなにもない建物に入り、奥にある食堂に連れて来られた。
 そこには既に、酒呑と茨木が朝食を取っていた。二人が何処にいるのかと思っていたら、来客用の建物で泊まっていたようだ。

「お!先に食べてるぞ!」

 酒呑、それは見ればわかる。その席には朝からよくお腹に入るなという量の食べ終わった皿が積み重ねられている。

「おはようございます。今日もいい天気で良かったですね」

 茨木はもう食べ終わったのか、食後の紅茶を飲んでいる。天気が良くて良かったというのは、今日の内に王都に戻る予定だからだ。

「おはよう。酒呑。茨木」

 私は朝の挨拶をしながら、朝食が並べられたテーブルの席についた。そこは何故か私が座るのを見越していたかのように、私が朝に好んで食べる物が置かれていた。具がほとんど入っていない透き通ったスープと少しのパンと果物だ。

「さて、いただきましょうか」

 そう言って、席につく神父様。え?神父様もここで食べるの?有り得ないのだけど···いや、太陽の聖痕の話をするのであれば、ほとんど使われず、人の出入りがない来客用の建物でしたほうがいいということなのだろう。

「主の恵みに感謝し、今日一日の糧を得られたことに喜びを」

 ここの教会での食事の前の挨拶を神父様が言った。そういえば、教会を離れてからそんな言葉を言うことも無くなった。私に信仰心というモノは皆無だった。いや、元から髪の毛一本も信仰心というものは持ち合わせては居ない。

「アンジュ。先程言っていた。太陽の聖痕のことですが、説明がいるのですか?」

 神父様が食事をしながら私に聞いてきた。なんかその言い方だと、私が知っているのに敢えて聞くのかと言われているみたいだ。

「いります!大体予想はしていますが、予想でしかありませんから!」

「そうですね~。ルーナの聖痕の持ち主は、おおよそ20年間隔で現れているのは、既に知っていると思いますが···」

「知らないよ!!」

 思わず突っ込んでしまった。
 悪魔神父はとんでもない爆弾発言を言ってきた。あの頭に皿を掲げた人が20年に一度存在するなんて、それはもっと人々に認知されることじゃないの!!!



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