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107 可愛すぎるのが悪い
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朝日の光をまぶたの裏に感じ、固いベッドに寝返りをうつ。ん?朝日····。
「朝のお務めが!寝坊した!!」
ガバリと起き上がろうとしたけど、何かに邪魔をされ起き上がれない。目の前には漆黒の色が!!
「クスッ。おはよう、アンジュ。身体の方はどうだ?」
何故、私のベッドにルディがいる!!···ん。違う。え?でも、ここは教会の宿舎だよね。この寒々しい石の壁は···。
「アンジュはまだ寝ぼけているのか?」
私がオロオロと視線を巡らし、状況把握をしようとしていると、ルディの顔が近づいてきて、口づけをしてきた。
「ん!!」
ゾワゾワっとする感覚にルディから距離を取ろうとするけれど、全く距離が開く様子はなく、逆にベッドに押し付けられてしまった。に···逃げ場がない!
その時、扉をノックする音が室内に鳴り響く。
「シュレイン!起きているならリュミエール神父から聖水作りを手伝うように言われているんだが」
どうやら扉の向こう側にいるのはファルのようだ。そして、神父様は使える者は誰であっても使うつもりなのだろう。
覚醒してきた頭で今の自分の状態を確認する。
ルディが離れたことで、ゾワゾワ感から解放され、昨日の搾り取られた魔力は元通りに戻っていることが確認できた。万全の状態だ。
「わかった。準備してから行く」
ルディがファルにそう答え、私に視線を向けて私の頬を撫ぜた。
「おはよう。アンジュ。残念だけど、起きなければならないようだ」
「全く残念じゃないよ。普通に起こしてくれればいいじゃない」
そう、私の頭が覚醒する時間をそのまま待つということをしてくれるだけで良かったのに、何故にそこでキスをするという選択肢になるのかわからない。
「アンジュが可愛すぎるのが悪い」
よくわからない責任転嫁をしてきた!私は身体を起こしてルディを睨みつける。
「それは3歳の頃の私に言ってよね!」
今は子豚に進化中の私にとって似合わない言葉だ。私がそう答えると、ルディはクスクスと笑いながら、起き上がった私を引き寄せ抱きかかえた。
「今も昔もアンジュは可愛い」
ん?もしかして、これは愛玩動物が可愛いと言っていることと同じなのだろうか。それなら、子豚化している私が可愛いと言っていることも理解できる。
「はぁ。ルディ、神父様に呼ばれているなら、早く行った方がいいよ」
このままだと、なし崩しに放してくれなさそうなので、ファルが言っていたことを引き合いに出して、ルディを追い出そうと試みる。
「それはアンジュもだ」
「え?」
私にも聖水作りをさせるつもり?
「ファルークスが起きていればと言っていただろう?アンジュもという意味だ」
あの悪魔神父は昨日倒れた私を扱き使おうとしているのか!いや、ここで歯向かうと聞きたいことを聞き出せないような気がするので、大人しく従っておかないといけない。
「わかったよ。教会の裏の水場を全部聖水に変えれば直ぐに終わるよね」
「それは恐らくリュミエール神父から拳骨が降ってくると思う」
チッ!一つ一つ丁寧に仕上げろってことだよね。前から思っていたけど、一瓶一瓶聖術を掛けて聖水にしていく作業ってまどろっこしいと思っていた。水場を聖水に変えて瓶に詰めていくほうが、絶対に楽なのに!
「わかったよ···」
そう言って私はルディから離れ、着替えるためにベッドから下りる。いや、元々ここで泊まる予定では無かったので、着替えではなく、今着ているキャミソールワンピースの上から白い隊服を着るだけだった。
教会の裏手に行けば、いつも通りの光景が広がっていた。子供用の浅いプールのような水場に群がっている貴族の子供たち。その脇を灰色の衣服をまとった子供たちが水を流し込んでいる。
今日は少し違うのは水汲みをしている子供たちの中にファルが混じっていることだ。何故、ファルが水汲みをしているのだろう。
私はファルが水を水場に流し込んでいる横に行き、声をかける。
「ファル様、おはようございます。何故、ファル様が水汲みをしているの?」
するとファルは私を見て直立不動になった。あれ?ファルが壊れた?
「アンジュ様「キモい!」」
ファルが私の事を様付けで呼びかけてきたので、思わずぶった切ってしまった。
「ファル様、私はただのアンジュです!私を今度様付けで呼んだら、毒の聖痕使うよ。それで、森は元通りになったの?」
「お前、酷い脅し方だな。それにキモいってなんだ!俺は···いや、アンジュはアンジュだよな」
何その呆れたような顔は。それで、私の質問には何も答えてないけど?
「森は元通りにした。それから、水汲みをしているのはリュミエール神父に言われたからだ。『暇してるのでしたら、水汲みでもしてきてください』と言われて桶を2つ渡されたんだ。どうやら、昨日のことで、随分聖水を消費したらしくてな、いつもの倍を作らないといけないらしい」
いつも通りになったファルはそう言って、小川がある森の方に向かって行った。確かに昨日は冒険者たちが動いていたから、いつもより聖水は消費されていたのだろう。
「朝のお務めが!寝坊した!!」
ガバリと起き上がろうとしたけど、何かに邪魔をされ起き上がれない。目の前には漆黒の色が!!
「クスッ。おはよう、アンジュ。身体の方はどうだ?」
何故、私のベッドにルディがいる!!···ん。違う。え?でも、ここは教会の宿舎だよね。この寒々しい石の壁は···。
「アンジュはまだ寝ぼけているのか?」
私がオロオロと視線を巡らし、状況把握をしようとしていると、ルディの顔が近づいてきて、口づけをしてきた。
「ん!!」
ゾワゾワっとする感覚にルディから距離を取ろうとするけれど、全く距離が開く様子はなく、逆にベッドに押し付けられてしまった。に···逃げ場がない!
その時、扉をノックする音が室内に鳴り響く。
「シュレイン!起きているならリュミエール神父から聖水作りを手伝うように言われているんだが」
どうやら扉の向こう側にいるのはファルのようだ。そして、神父様は使える者は誰であっても使うつもりなのだろう。
覚醒してきた頭で今の自分の状態を確認する。
ルディが離れたことで、ゾワゾワ感から解放され、昨日の搾り取られた魔力は元通りに戻っていることが確認できた。万全の状態だ。
「わかった。準備してから行く」
ルディがファルにそう答え、私に視線を向けて私の頬を撫ぜた。
「おはよう。アンジュ。残念だけど、起きなければならないようだ」
「全く残念じゃないよ。普通に起こしてくれればいいじゃない」
そう、私の頭が覚醒する時間をそのまま待つということをしてくれるだけで良かったのに、何故にそこでキスをするという選択肢になるのかわからない。
「アンジュが可愛すぎるのが悪い」
よくわからない責任転嫁をしてきた!私は身体を起こしてルディを睨みつける。
「それは3歳の頃の私に言ってよね!」
今は子豚に進化中の私にとって似合わない言葉だ。私がそう答えると、ルディはクスクスと笑いながら、起き上がった私を引き寄せ抱きかかえた。
「今も昔もアンジュは可愛い」
ん?もしかして、これは愛玩動物が可愛いと言っていることと同じなのだろうか。それなら、子豚化している私が可愛いと言っていることも理解できる。
「はぁ。ルディ、神父様に呼ばれているなら、早く行った方がいいよ」
このままだと、なし崩しに放してくれなさそうなので、ファルが言っていたことを引き合いに出して、ルディを追い出そうと試みる。
「それはアンジュもだ」
「え?」
私にも聖水作りをさせるつもり?
「ファルークスが起きていればと言っていただろう?アンジュもという意味だ」
あの悪魔神父は昨日倒れた私を扱き使おうとしているのか!いや、ここで歯向かうと聞きたいことを聞き出せないような気がするので、大人しく従っておかないといけない。
「わかったよ。教会の裏の水場を全部聖水に変えれば直ぐに終わるよね」
「それは恐らくリュミエール神父から拳骨が降ってくると思う」
チッ!一つ一つ丁寧に仕上げろってことだよね。前から思っていたけど、一瓶一瓶聖術を掛けて聖水にしていく作業ってまどろっこしいと思っていた。水場を聖水に変えて瓶に詰めていくほうが、絶対に楽なのに!
「わかったよ···」
そう言って私はルディから離れ、着替えるためにベッドから下りる。いや、元々ここで泊まる予定では無かったので、着替えではなく、今着ているキャミソールワンピースの上から白い隊服を着るだけだった。
教会の裏手に行けば、いつも通りの光景が広がっていた。子供用の浅いプールのような水場に群がっている貴族の子供たち。その脇を灰色の衣服をまとった子供たちが水を流し込んでいる。
今日は少し違うのは水汲みをしている子供たちの中にファルが混じっていることだ。何故、ファルが水汲みをしているのだろう。
私はファルが水を水場に流し込んでいる横に行き、声をかける。
「ファル様、おはようございます。何故、ファル様が水汲みをしているの?」
するとファルは私を見て直立不動になった。あれ?ファルが壊れた?
「アンジュ様「キモい!」」
ファルが私の事を様付けで呼びかけてきたので、思わずぶった切ってしまった。
「ファル様、私はただのアンジュです!私を今度様付けで呼んだら、毒の聖痕使うよ。それで、森は元通りになったの?」
「お前、酷い脅し方だな。それにキモいってなんだ!俺は···いや、アンジュはアンジュだよな」
何その呆れたような顔は。それで、私の質問には何も答えてないけど?
「森は元通りにした。それから、水汲みをしているのはリュミエール神父に言われたからだ。『暇してるのでしたら、水汲みでもしてきてください』と言われて桶を2つ渡されたんだ。どうやら、昨日のことで、随分聖水を消費したらしくてな、いつもの倍を作らないといけないらしい」
いつも通りになったファルはそう言って、小川がある森の方に向かって行った。確かに昨日は冒険者たちが動いていたから、いつもより聖水は消費されていたのだろう。
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