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101 「我が命と剣を捧げましょう」
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カラス天狗が空を覆うように翼を広げ飛んでる。数にして千は下らないのだろうか。そのカラス天狗たちを二人の鬼たちが相手をしていた。その二人は本来の鬼の姿に戻っており、妖術というものだったか。それを使っている。多勢に無勢と言うべきところだが、一騎当千という働きをしている。
『うぉぉぉぉぉぉぉ』
という耳を切り裂くような喊声。己を鼓舞するような叫声に大気が揺れる。大天狗だ。
その大天狗は木々に巻き付かれ身動きができない状態になっていた。流石ファルである。木の聖痕により大天狗の動きを止めている。アレ程の巨体となれば、簡単に引きちぎるかと思いきや、身動きが出来ないようだ。
そこにルディと神父様が斬り込んでいっている。闇と光。相反する力の攻撃を受けている大天狗。抵抗することもできず、なぶり殺されている。
え?部隊長総出でなくてもいけるじゃない。
いや、この3人の力が逸脱しているのか。
そこに地面から黒い帯が伸びて大天狗に絡みついていく。死の鎖だ。死したモノの魂を引きずって連れ去る鎖。
この姿に私は瞠目した。
大天狗は異界のモノ。彼の魂がこの世界に囚われてしまった。囚われた異界の魂。この目に映っている現象はなに?
なんだか目の前の現象が気に食わない。そもそもだ世界に常闇という穴が開く時点でおかしいのだ。そして、定期的に出現する聖女となる者。何者かの意図的な意志を感じてしまう。それは神と呼ばれるものか、それとも世界と呼ばれるものだろうか。それは私にはわからない。
だけど、個人的に気に食わないのだ。だから、邪魔をしよう。
私は『響声』を使って呼びかける。
「『異界のモノは死の鎖に囚われから、結界に戻ってきて、異界のモノと共に常闇を閉じる。ファル様の聖痕は解かずにそのままでお願い』」
私の言葉にほぼカラス天狗の駆逐が終わっていた酒吞と茨木がすぐさま戻ってきた。だから、私は彼らに尋ねてみる。
「ねぇ。あの大天狗と戻れば、恐らく帰れると思うけど、どうする?」
大天狗は彼らを知っていたのだ。きっと彼らがいた場所の近くに帰れるはずだ。
「あ?こっちの方が面白そうだからいい」
「別に今までいた場所にこだわりはありませんから、戻る必要はないですよ」
鬼の二人から否定の言葉が出てきた。別にそこまで面白いことはないと思うけど?
「こっちにいるつもりなら、角を隠してね」
鬼の姿に戻ってしまった二人に忠告しておく、私は別にいいのだけれど、普通の人が見ればオーガの変異種に見えてしまうことだろう。
「お?あまりにも楽しくて変化が解けてしまったのか。はははは!」
「おや?わざとだと思ったのですけど?」
大量のカラス天狗と戦えたことは酒吞を満足されることにはなったようだ。二人は満足そうな顔をしながら人の姿になっていく。その二人を横目に、右目の中にしまっていた天使の聖痕を私は取り出し、本来の聖痕の位置に戻した。
私の頭上には王冠のような形の聖痕が浮かび、輝きを放っている。そして、今まで見えなかったものまで見えるようになっていた。大天狗に絡みつている黒い鎖が酒吞と茨木にも細く絡みついていたのだ。
私は他愛のない話をしている二人に近づき、糸のような細い鎖を掴み、引きちぎる。
「アマテラス?どうした?」
「アンジュ様?」
私の行動に不可解な表情をする二人。
神は、世界は、彼らの存在に印をつけていのだ。己の獲物はここにあると言わんばかりに。
「なんでもない。ただ、気に食わないモノが見えただけ」
そして、疲れた顔をしているファルに、ニコニコとした笑みを浮かべている神父様、不機嫌な表情をしているルディが結界内に駆け込んできた。
ファルが疲れている表情をしているけど、大物を捕らえていたから疲れたのだろうか。これが終わったら森を元の姿にしてもらわないといけない。ファルの頑張りどころはこれからだ。
「ファル様、お疲れ?回復薬作ってあげようか?」
原液は阿鼻叫喚地獄を作ってしまう劇薬だけれど、薄めれば回復薬を作ろうかとファルに聞いてみた。私を視界に捉えたファルは動きを止めてしまった。何が起こったのだろう。近づいて手を目の前で手を振って見たけれど反応がない。
頑張りすぎてしまった?一緒にいたルディと神父様を見てみる。
「ファルークスはアレぐらいじゃ疲れていないから大丈夫だ」
長年共にいたルディの言葉だ。きっとそうなのだろう。なら、この状態はどうしたのか?バグった?
「実際に目にすれば、これは言葉だけでは表現し難いものですね」
神父様が何かを言っているけど、何が表現が難しいのだろうと私は首を捻る。
その私の右手を取った神父様は私の足元に跪いた。
「ソールのスティグマを掲げるアンジュに我が命と剣を捧げることを誓いましょう」
は?
『うぉぉぉぉぉぉぉ』
という耳を切り裂くような喊声。己を鼓舞するような叫声に大気が揺れる。大天狗だ。
その大天狗は木々に巻き付かれ身動きができない状態になっていた。流石ファルである。木の聖痕により大天狗の動きを止めている。アレ程の巨体となれば、簡単に引きちぎるかと思いきや、身動きが出来ないようだ。
そこにルディと神父様が斬り込んでいっている。闇と光。相反する力の攻撃を受けている大天狗。抵抗することもできず、なぶり殺されている。
え?部隊長総出でなくてもいけるじゃない。
いや、この3人の力が逸脱しているのか。
そこに地面から黒い帯が伸びて大天狗に絡みついていく。死の鎖だ。死したモノの魂を引きずって連れ去る鎖。
この姿に私は瞠目した。
大天狗は異界のモノ。彼の魂がこの世界に囚われてしまった。囚われた異界の魂。この目に映っている現象はなに?
なんだか目の前の現象が気に食わない。そもそもだ世界に常闇という穴が開く時点でおかしいのだ。そして、定期的に出現する聖女となる者。何者かの意図的な意志を感じてしまう。それは神と呼ばれるものか、それとも世界と呼ばれるものだろうか。それは私にはわからない。
だけど、個人的に気に食わないのだ。だから、邪魔をしよう。
私は『響声』を使って呼びかける。
「『異界のモノは死の鎖に囚われから、結界に戻ってきて、異界のモノと共に常闇を閉じる。ファル様の聖痕は解かずにそのままでお願い』」
私の言葉にほぼカラス天狗の駆逐が終わっていた酒吞と茨木がすぐさま戻ってきた。だから、私は彼らに尋ねてみる。
「ねぇ。あの大天狗と戻れば、恐らく帰れると思うけど、どうする?」
大天狗は彼らを知っていたのだ。きっと彼らがいた場所の近くに帰れるはずだ。
「あ?こっちの方が面白そうだからいい」
「別に今までいた場所にこだわりはありませんから、戻る必要はないですよ」
鬼の二人から否定の言葉が出てきた。別にそこまで面白いことはないと思うけど?
「こっちにいるつもりなら、角を隠してね」
鬼の姿に戻ってしまった二人に忠告しておく、私は別にいいのだけれど、普通の人が見ればオーガの変異種に見えてしまうことだろう。
「お?あまりにも楽しくて変化が解けてしまったのか。はははは!」
「おや?わざとだと思ったのですけど?」
大量のカラス天狗と戦えたことは酒吞を満足されることにはなったようだ。二人は満足そうな顔をしながら人の姿になっていく。その二人を横目に、右目の中にしまっていた天使の聖痕を私は取り出し、本来の聖痕の位置に戻した。
私の頭上には王冠のような形の聖痕が浮かび、輝きを放っている。そして、今まで見えなかったものまで見えるようになっていた。大天狗に絡みつている黒い鎖が酒吞と茨木にも細く絡みついていたのだ。
私は他愛のない話をしている二人に近づき、糸のような細い鎖を掴み、引きちぎる。
「アマテラス?どうした?」
「アンジュ様?」
私の行動に不可解な表情をする二人。
神は、世界は、彼らの存在に印をつけていのだ。己の獲物はここにあると言わんばかりに。
「なんでもない。ただ、気に食わないモノが見えただけ」
そして、疲れた顔をしているファルに、ニコニコとした笑みを浮かべている神父様、不機嫌な表情をしているルディが結界内に駆け込んできた。
ファルが疲れている表情をしているけど、大物を捕らえていたから疲れたのだろうか。これが終わったら森を元の姿にしてもらわないといけない。ファルの頑張りどころはこれからだ。
「ファル様、お疲れ?回復薬作ってあげようか?」
原液は阿鼻叫喚地獄を作ってしまう劇薬だけれど、薄めれば回復薬を作ろうかとファルに聞いてみた。私を視界に捉えたファルは動きを止めてしまった。何が起こったのだろう。近づいて手を目の前で手を振って見たけれど反応がない。
頑張りすぎてしまった?一緒にいたルディと神父様を見てみる。
「ファルークスはアレぐらいじゃ疲れていないから大丈夫だ」
長年共にいたルディの言葉だ。きっとそうなのだろう。なら、この状態はどうしたのか?バグった?
「実際に目にすれば、これは言葉だけでは表現し難いものですね」
神父様が何かを言っているけど、何が表現が難しいのだろうと私は首を捻る。
その私の右手を取った神父様は私の足元に跪いた。
「ソールのスティグマを掲げるアンジュに我が命と剣を捧げることを誓いましょう」
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