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97 その極論的な言葉は何だ?
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地面から吹き出す黒い霧の量が増えている気がする。このままだとやばくない?森全体が常闇化したとき、もし森の中にいたらどうなる?常闇に取り込まれる?弾かれる?不確定要素が多すぎる。これは即刻の撤退をすべきだ。
私は全周囲に向けて『響声』を響かせる。
「即刻撤退せよ!撤退だ!常闇が地面から漏れ出ている。動けない者を担いで撤退せよ!常闇に飲まれるぞ!」
これだけ脅せばいいかな?黒い霧が周りに漂っていることに気が付けば、それが後押しになるだろう。
そう、気が付けばだ。これが戦闘中だとすれば、気がつくことが難しかったはずだ。徐々に黒い霧が浸食し、気が付けば周りが常闇化していることが起こり得たかもしれない。
いや、鞍馬のカラス天狗が多くのカラス天狗と共に還らなければ起こっていただろう未来だ。
「アンジュ!」
あ、ルディとファルが戻ってきた。
「今のはどういう事だ。あの怪しい鳥は何処かに消えたよな」
「あれは元の世界に還って行ったけれど、また、別の者が来ている。その声が近づいてくる度に霧が濃くなって来ているから、撤退した方が無難かなって」
ルディは私を抱えて、走り出した。
「また、俺が居ない間に何かしたのか!何かあれば転移で来るように言っていたよな」
お菓子をあげただけだけど?
「アマテラス!カラス天狗の奴らは何処かに消えたが、今度は鞍馬山の大天狗の声が聞こえてきだしたぞ!」
あ、酒吞と茨木も合流してきた。ん?酒吞は大天狗って言っているということは、知り合いってこと?
「酒吞、その大天狗と知り合い?恐らく若って呼んでいるカラス天狗は還したのだけど、入れ違いになってしまったみたいだから、還るように説得できる?」
「いや、口うるせー頑固ジジイだから、ヒトの話は聞かねーヤツだ」
「そうですね。私達じゃないと言っていたにも関わらず、ぶっ飛ばされましたからね」
酒吞も茨木も大天狗の説得は無理だと判断しているようだ。しまったなぁ。牛若丸(仮)を還さなければよかったのだろうか。しかし、牛若丸(仮)を還さなければ、撤退もままならなかったはずだ。
「おや、君たちは何が常闇から顕われるのか分かっているのですか?」
ふぉ!神父様の幻聴が!!
横を見ると抜き身の剣を肩に担いで並走している神父様がいた。恐ろしすぎる。
「あ?さっきの黒いカラスの親玉だ」
酒呑が神父様の質問に答えた。大天狗はカラス天狗の親玉なのだろうか。牛若丸(仮)の翼がカラス天狗だったのだけど?
「そうですか。アンジュは常闇が開くと感じた理由はなんですか?」
今度は神父様が私に質問をしてきた。理由?理由なんて目の前に広がっているじゃない?
「こんなに黒い霧で森中が満たされているのに?」
「え?」
「確かに霧が濃くなっていると言っていましたね?」
「あ?何処が霧ってんだ?」
「黒い霧ですか?」
は?こんなに地面から黒い霧が溢れているのに、みんな見えていないの?私は何も返答しなかった神父様に視線を向ける。
「黒い霧が濃くなっているからというのは、理由としては弱いですね。この森の中にいったいどれだけの人がいると思うのです?その者達を撤退させる時間にどれぐらいかかると思っているのです?」
やはり、神父様だけは黒い霧が見えているようだ。
確かに、いつ完全に常闇が開くのか予想は出来ないけれど、先程よりも『若ー!どこにおるのじゃー!』という声がかなり近くに感じられる。
このまま常闇を封じるのが一番いい。それがこの森にいる人達を守る為にはベストな選択肢だと理解できる。
だけど、だけど、だけど、私は私自身の未来を守りたい。複数の命か私の未来かを天秤にかけなければならないのか。
ん?要は森の外に出ていってもらえばいいのだ。
「ルディ。止まって私を下ろして欲しい」
「何をするのか先に言うように」
え?私の信頼度はルディにとって皆無に等しいのだろうか。
「全部まとめて森の外にふっ飛ばせばいいってことだよね」
「アンジュ。その極論的な言葉は何だ?俺はその言葉に不安しか感じないぞ」
ファル。失敬だね。
「鬼ごっこの時にみんなを吹き飛ばした技を広範囲にすればいいってこと」
「ああ、あれですか。それはいい考えですね。それで死人がでても、己が未熟だったということですから」
死人!あの時みんなかすり傷だけで済んだよ?神父様は大げさだね。
ルディも納得したのか足を止めてくれた。···だけど地面に下ろしてくれる様子がない。
「ルディ。下ろして欲しい」
「アンジュならこのままでも同じことぐらいできますよね」
できるけれども····ちょっと安定性が悪いよね。それに、私の信頼度が底辺だと言うことは問題だよね。いや、過保護が行き過ぎていると言えばいいのだろうか。どちらにしろ、もう少し私の行動の自由を認めてほしいかな?
私は全周囲に向けて『響声』を響かせる。
「即刻撤退せよ!撤退だ!常闇が地面から漏れ出ている。動けない者を担いで撤退せよ!常闇に飲まれるぞ!」
これだけ脅せばいいかな?黒い霧が周りに漂っていることに気が付けば、それが後押しになるだろう。
そう、気が付けばだ。これが戦闘中だとすれば、気がつくことが難しかったはずだ。徐々に黒い霧が浸食し、気が付けば周りが常闇化していることが起こり得たかもしれない。
いや、鞍馬のカラス天狗が多くのカラス天狗と共に還らなければ起こっていただろう未来だ。
「アンジュ!」
あ、ルディとファルが戻ってきた。
「今のはどういう事だ。あの怪しい鳥は何処かに消えたよな」
「あれは元の世界に還って行ったけれど、また、別の者が来ている。その声が近づいてくる度に霧が濃くなって来ているから、撤退した方が無難かなって」
ルディは私を抱えて、走り出した。
「また、俺が居ない間に何かしたのか!何かあれば転移で来るように言っていたよな」
お菓子をあげただけだけど?
「アマテラス!カラス天狗の奴らは何処かに消えたが、今度は鞍馬山の大天狗の声が聞こえてきだしたぞ!」
あ、酒吞と茨木も合流してきた。ん?酒吞は大天狗って言っているということは、知り合いってこと?
「酒吞、その大天狗と知り合い?恐らく若って呼んでいるカラス天狗は還したのだけど、入れ違いになってしまったみたいだから、還るように説得できる?」
「いや、口うるせー頑固ジジイだから、ヒトの話は聞かねーヤツだ」
「そうですね。私達じゃないと言っていたにも関わらず、ぶっ飛ばされましたからね」
酒吞も茨木も大天狗の説得は無理だと判断しているようだ。しまったなぁ。牛若丸(仮)を還さなければよかったのだろうか。しかし、牛若丸(仮)を還さなければ、撤退もままならなかったはずだ。
「おや、君たちは何が常闇から顕われるのか分かっているのですか?」
ふぉ!神父様の幻聴が!!
横を見ると抜き身の剣を肩に担いで並走している神父様がいた。恐ろしすぎる。
「あ?さっきの黒いカラスの親玉だ」
酒呑が神父様の質問に答えた。大天狗はカラス天狗の親玉なのだろうか。牛若丸(仮)の翼がカラス天狗だったのだけど?
「そうですか。アンジュは常闇が開くと感じた理由はなんですか?」
今度は神父様が私に質問をしてきた。理由?理由なんて目の前に広がっているじゃない?
「こんなに黒い霧で森中が満たされているのに?」
「え?」
「確かに霧が濃くなっていると言っていましたね?」
「あ?何処が霧ってんだ?」
「黒い霧ですか?」
は?こんなに地面から黒い霧が溢れているのに、みんな見えていないの?私は何も返答しなかった神父様に視線を向ける。
「黒い霧が濃くなっているからというのは、理由としては弱いですね。この森の中にいったいどれだけの人がいると思うのです?その者達を撤退させる時間にどれぐらいかかると思っているのです?」
やはり、神父様だけは黒い霧が見えているようだ。
確かに、いつ完全に常闇が開くのか予想は出来ないけれど、先程よりも『若ー!どこにおるのじゃー!』という声がかなり近くに感じられる。
このまま常闇を封じるのが一番いい。それがこの森にいる人達を守る為にはベストな選択肢だと理解できる。
だけど、だけど、だけど、私は私自身の未来を守りたい。複数の命か私の未来かを天秤にかけなければならないのか。
ん?要は森の外に出ていってもらえばいいのだ。
「ルディ。止まって私を下ろして欲しい」
「何をするのか先に言うように」
え?私の信頼度はルディにとって皆無に等しいのだろうか。
「全部まとめて森の外にふっ飛ばせばいいってことだよね」
「アンジュ。その極論的な言葉は何だ?俺はその言葉に不安しか感じないぞ」
ファル。失敬だね。
「鬼ごっこの時にみんなを吹き飛ばした技を広範囲にすればいいってこと」
「ああ、あれですか。それはいい考えですね。それで死人がでても、己が未熟だったということですから」
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ルディも納得したのか足を止めてくれた。···だけど地面に下ろしてくれる様子がない。
「ルディ。下ろして欲しい」
「アンジュならこのままでも同じことぐらいできますよね」
できるけれども····ちょっと安定性が悪いよね。それに、私の信頼度が底辺だと言うことは問題だよね。いや、過保護が行き過ぎていると言えばいいのだろうか。どちらにしろ、もう少し私の行動の自由を認めてほしいかな?
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