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84 ドラゴンのお肉食べる?
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肉の塊を担いで、キッチンに押し入る。大きなキッチンの作業台にドンと肉の塊を置いて、魔石を熱源とした魔道コンロにフライパンを乗せて、スイッチを入れて熱しておく。その間に脂身を少し切り取ってフライパンの上に乗せておき、一切れだけ肉を削ぐ。
脂が溶けたら肉をフライパンの上に乗せ、表面にさっと火を通し、口の中に···うまっ!!
流石ドラゴンの肉。脂の甘みが舌に広がっていき、噛めば噛むほど肉の旨味が溢れてくる。そして、高魔力肉ならではの全身に広がる魔力浸透。くーっ!!!たまらない!!!
これをどう料理しようか。大人数いるなら焼肉パーティーがいいのだけど、残念なことに、ここには焼肉を焼く網もなければ、炭もない。
うーん。と、考えながらも肉塊から肉を削ぎ落とし、さっと火を通して口に入れる。うまっ!!
モ○ハンの肉料理みたいに直火でぐるぐると肉塊を回しながら焼く?あんな音楽が鳴っている短時間じゃ絶対に生焼けだし····。うーん。
「アンジュ!聞いているのか!」
「え?聞いてない」
近くからファルの声が聞こえて思わず反応してしまった。後ろを振り返ると呆れた顔のファルがいた。
「国王陛下がお呼びだ」
あの白銀の人?
「まだ居たんだ」
「アンジュ!!陛下の前ではちゃんとしろ!」
ちゃんとって何?でも、お肉が···。私はじっと肉の塊を見つめる。今日の騒ぎの所為で(私が悪いのだけど···)あの後ファルにグチグチとお説教されたから、朝ごはんを食べ損なってしまった。そして、私は未だに無一文のため(私のお金はルディの口座に入ったまま)買い食いもできず、ルディがいない間にアルーと話をつけなければならなかったので、水とクッキーを食べて出てきたのだ。
そんな私の前に好物の肉があるというのに『待て』と言われるなんて!!こうなれば···
「ファル。王様もドラゴンのお肉食べる?それとも私だけ食べていい?」
すると呆れた顔のファルに言われた。
「お前つまみ食いしていただろ?見ていたぞ。早く来い!陛下を待たせるな」
「つまみ食いじゃないよ!味見!もう、お昼ごはんの時間になるから!みんなでご飯食べてから!」
「アンジュ。お前がドラゴンの肉を食べたいからだけだろ?」
ファルのその言葉に私はへらりと笑った。
そして、私は勝った。私の目の前にはドドンと私の手のひらサイズのステーキ肉が鎮座している。
思ったより小さいって?私の胃のサイズからいけば、これで十分。
ティオたち4人と鬼の二人のところには、山積みになった焼いた肉をドンっと置いて来た。早いもの勝ちで好きなだけ食べるように言い残して。
ダイニングにいるいつもの2人と白銀の人には好みの大きさと焼き加減を聞いて、付け合せも置いて1人一皿でちゃんと出している。
そして、ルディはいつの間にか白い見慣れた隊服に着替えており、何故か侍従も席についていた。なぜ、ここにいる?それも見慣れない銀の衣服を身にまとって。キラキラが眩しい。
「それで、なんでまだ王様がここにいるわけ?」
私に用があるという白銀の人にドラゴンの肉を食べながら尋ねる。
「アンジュ!口の聞き方!」
ファル。うるさい。白銀の人はクスクスと笑っているが、この場にいる3兄弟は本当に全く似ていないな。
白銀の人は終始穏やかな顔をしている。私が高貴な人に対する態度ではないのにも関わらず、叱咤しているのはファルの方だ。
侍従は澄ました顔で自分はここにいて当たり前な感じで、肉に舌鼓みを打っている。
隣のルディはイライラ感がもう目に見えるほど機嫌が悪い。背景が歪んで見えるのは気の所為だろうか。
「私がここにいる理由ね。クスッ。シュレインが話の途中で消えようとするからだね」
「ですから、もう、話すことはないと言いましたよね」
「そうかな?あの少女の不可解な行動とかね」
あの少女?誰のことだろう?はっ!私?!いや、王城と思われる大きな建物からはかなり距離があったから、私の姿はわからなかったはずだ。
え?でも、ルディが怒って私の前に転移で現れたということは、私がドラゴンをブチのめしたことが丸見えだったってこと!!
「兄上、あの後は滞り無く全て無事に終了しました。ええ、何もかも順調に」
侍従は順調にと言いながらも、澄ました顔を歪めて言葉にしている。
今日の聖女の少女の式典のことだろうか。
それはおめでたいことだろうに、なんでそんな顔になるのだろう。
「まぁ、そうだろうね。クスクス。シュレインは不満気だね。いいじゃないか。彼女の姿は人目を引くには丁度いい。私が彼女を使うわけじゃないけれどね」
白銀の人は笑いながらそういった。王様なのに、聖女を国で掲げる為に使わない?じゃ、誰が使うと?ああ、狂信者共か。
この国は王様よりも権力があるというのだろうか。狂信者共の方が····。
脂が溶けたら肉をフライパンの上に乗せ、表面にさっと火を通し、口の中に···うまっ!!
流石ドラゴンの肉。脂の甘みが舌に広がっていき、噛めば噛むほど肉の旨味が溢れてくる。そして、高魔力肉ならではの全身に広がる魔力浸透。くーっ!!!たまらない!!!
これをどう料理しようか。大人数いるなら焼肉パーティーがいいのだけど、残念なことに、ここには焼肉を焼く網もなければ、炭もない。
うーん。と、考えながらも肉塊から肉を削ぎ落とし、さっと火を通して口に入れる。うまっ!!
モ○ハンの肉料理みたいに直火でぐるぐると肉塊を回しながら焼く?あんな音楽が鳴っている短時間じゃ絶対に生焼けだし····。うーん。
「アンジュ!聞いているのか!」
「え?聞いてない」
近くからファルの声が聞こえて思わず反応してしまった。後ろを振り返ると呆れた顔のファルがいた。
「国王陛下がお呼びだ」
あの白銀の人?
「まだ居たんだ」
「アンジュ!!陛下の前ではちゃんとしろ!」
ちゃんとって何?でも、お肉が···。私はじっと肉の塊を見つめる。今日の騒ぎの所為で(私が悪いのだけど···)あの後ファルにグチグチとお説教されたから、朝ごはんを食べ損なってしまった。そして、私は未だに無一文のため(私のお金はルディの口座に入ったまま)買い食いもできず、ルディがいない間にアルーと話をつけなければならなかったので、水とクッキーを食べて出てきたのだ。
そんな私の前に好物の肉があるというのに『待て』と言われるなんて!!こうなれば···
「ファル。王様もドラゴンのお肉食べる?それとも私だけ食べていい?」
すると呆れた顔のファルに言われた。
「お前つまみ食いしていただろ?見ていたぞ。早く来い!陛下を待たせるな」
「つまみ食いじゃないよ!味見!もう、お昼ごはんの時間になるから!みんなでご飯食べてから!」
「アンジュ。お前がドラゴンの肉を食べたいからだけだろ?」
ファルのその言葉に私はへらりと笑った。
そして、私は勝った。私の目の前にはドドンと私の手のひらサイズのステーキ肉が鎮座している。
思ったより小さいって?私の胃のサイズからいけば、これで十分。
ティオたち4人と鬼の二人のところには、山積みになった焼いた肉をドンっと置いて来た。早いもの勝ちで好きなだけ食べるように言い残して。
ダイニングにいるいつもの2人と白銀の人には好みの大きさと焼き加減を聞いて、付け合せも置いて1人一皿でちゃんと出している。
そして、ルディはいつの間にか白い見慣れた隊服に着替えており、何故か侍従も席についていた。なぜ、ここにいる?それも見慣れない銀の衣服を身にまとって。キラキラが眩しい。
「それで、なんでまだ王様がここにいるわけ?」
私に用があるという白銀の人にドラゴンの肉を食べながら尋ねる。
「アンジュ!口の聞き方!」
ファル。うるさい。白銀の人はクスクスと笑っているが、この場にいる3兄弟は本当に全く似ていないな。
白銀の人は終始穏やかな顔をしている。私が高貴な人に対する態度ではないのにも関わらず、叱咤しているのはファルの方だ。
侍従は澄ました顔で自分はここにいて当たり前な感じで、肉に舌鼓みを打っている。
隣のルディはイライラ感がもう目に見えるほど機嫌が悪い。背景が歪んで見えるのは気の所為だろうか。
「私がここにいる理由ね。クスッ。シュレインが話の途中で消えようとするからだね」
「ですから、もう、話すことはないと言いましたよね」
「そうかな?あの少女の不可解な行動とかね」
あの少女?誰のことだろう?はっ!私?!いや、王城と思われる大きな建物からはかなり距離があったから、私の姿はわからなかったはずだ。
え?でも、ルディが怒って私の前に転移で現れたということは、私がドラゴンをブチのめしたことが丸見えだったってこと!!
「兄上、あの後は滞り無く全て無事に終了しました。ええ、何もかも順調に」
侍従は順調にと言いながらも、澄ました顔を歪めて言葉にしている。
今日の聖女の少女の式典のことだろうか。
それはおめでたいことだろうに、なんでそんな顔になるのだろう。
「まぁ、そうだろうね。クスクス。シュレインは不満気だね。いいじゃないか。彼女の姿は人目を引くには丁度いい。私が彼女を使うわけじゃないけれどね」
白銀の人は笑いながらそういった。王様なのに、聖女を国で掲げる為に使わない?じゃ、誰が使うと?ああ、狂信者共か。
この国は王様よりも権力があるというのだろうか。狂信者共の方が····。
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