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73 ウキョー鳥に起こされる日常
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『ウッキョー!ウッキョー!』
ウキョー鳥の鳴き声で目を覚ます日常が始まってしまった。仕事とはいえ、あのウキョー鳥に起こされない朝は清々しい朝だった。
「やっぱり、ウキョー鳥をブッ殺す」
「クスッ。朝から物騒な事を言っているな。アンジュ」
ルディも起きていたようだ。そのルディはクスクスと笑いながら、私の額に口づけをしてきた。
ウキョー鳥はやっぱり神父様から許可を取って、絞め殺すべきだと思う。
さて、今日は何をして過ごそうか。どうせ開店休業状態の第13部隊に仕事なんて割り振られていないだろう。
昨日は食事が終わったら私はファルに連行され、自分の部屋に戻ってきたのだ。
あの後、ルディと侍従との間で何が話し合われたかはわからないが、きっと第13部隊に仕事が無いのは変わりないだろう。
「アンジュ。昨日事はフリーデンハイドは問題視しないと言っていた。しかし、本当は許されないことだからな。あと、今日は王城に出向かなければならなくなった」
侍従は上官だからね。謹慎とか罰は受ける覚悟はしていたよ。
···ん?王城?
「あの聖女を聖女として承認するらしい」
まぁ、妥当でしょう。現に西の辺境の常闇を封じたのを目撃されているのだから。
あれ?王城?
「ルディ。私は王城に入るなと言われているから、転移の腕輪が発動してしまうよ?」
私はあの白銀の王から王城には入ることを禁じられているため、お留守番をしなければならない。留守番は大いに構わない。しかし、王城は勿論聖騎士団の敷地外にあるため、転移の腕輪が反応してしまうはずなのだ。
「ああ、それは転移の発動を阻害する物があるから問題ない」
え?そんなものがあるの!あるのならさっさと手に入れるべきだった。
「アンジュ。阻害する物も互いの魔力を込めないと駄目な物だから、その辺に売っているわけじゃない」
「人の心を読まないでくれる?」
「別に読めるわけじゃない。アンジュがわかりやすいだけだ。それに使い捨てだから頻繁には使用できない」
くー!残念だ。転移の腕輪がなければ、もっと自由に行動ができるはずなのに···と、言うことは、今日は自由行動!!!
「アンジュ。今日は部屋から出なくていい」
「何故に!!」
「アンジュを自由にすると、直ぐに何処かへふらふらと行くだろう?」
「毎回言うけどそんなにフラフラしていない!強いて言うなら、ウキョー鳥をぶちのめしに行きたい」
未だに『ウッキョー!ウッキョー!』と耳を劈くような鳴き声が響き渡っている。あれは一度シメるべきだと思う。
「はぁ、あれはリュミエール神父の物だから手を出してはいけない」
ここには居ない神父様の権力があり過ぎる。やはり一度直談判をすべきだろう。
「わかった。ウキョー鳥は神父様に文句を言ってから、シメることにする」
私は渋々諦めることにした。
うっ!ルディ!何故に諦めた私を絞めにきたのだ。毎回思うけど、力加減を間違ってない?
抗議の意味を込めてルディをバシバシ叩いてみるけど、緩めてくれる様子がない。
「昨日、フリーデンハイドから聞いたのだが、例の聖女が奇跡を起こしたらしい」
まぁ、聖女なのだから、それぐらいできるのでしょう。それが、どうしたの?
「一昨日の夜に輝く聖獣を操って、雷雲を呼び雨を降らして雲を消し去ったと言っていた」
あれ?雷雲と雨?どこかで覚えがあるような?
「それを見た者たちが聖女の祝福なんて言っているらしい」
痛い痛い痛い!ちょっと力が強いよ!
「アンジュが精霊を使って行ったことを、あの聖女は自分の手柄のように言っていたらしい。アンジュの魔力を奪っただけでなく、嘘まで平気でつく女が、聖女だなんて俺は認めないからな!」
「ルディ。痛い。力強すぎ」
あ、力が緩んだ。やっと息がまともに吸える。ウキョー鳥をシメると言ったバツだろうか。私がしめ殺されかけた。
でも、あの聖女の子はどうして、やってもいないことを、自分でしたって言ったのだろう。そんな嘘はすぐにバレるのに。
もう一度やってと言われたらどうするつもりなのだろう。
でも···それでも、彼女には聖女でいてもらわないと私が困る。切実に困る。
「ルディ。別に私はいいと思うよ?」
「何故だ!」
うっ!なんだか、私が怒られているみたい。
「だって、嘘をついてまで力を示したいっていうことは、聖女の役目をやる気満々ってことでしょ?そんな人にこそやってもらわないとね。私は絶対に嫌だから」
聖女の役目の本質をわかっているのか知らないけれど、私は聖女なんてモノは御免被りたい。
「そうか、それなら対外的には認めてやってもいいが、俺は絶対にアレを聖女だなんて認めない」
まぁ、それは個人の意見だからね。人に合わせることはない。あ!そうだ。今のうちに聞いておこう。
「ねぇ、そう言えば。この前、聖騎士団の敷地に侵入してきたキルクスの子たちって何処で治療を受けているの?」
バニーのお見舞いぐらいは行っておきたい。
「アンジュ。そんなことに答えたら、絶対にそこに行く気だろ?今日は部屋から出るなと言った事をもう忘れたのか?」
わ···忘れてはないよ?だけど、散歩ぐらいは許してもらえるかな?
私はごまかすように、へらりと笑った。
ウキョー鳥の鳴き声で目を覚ます日常が始まってしまった。仕事とはいえ、あのウキョー鳥に起こされない朝は清々しい朝だった。
「やっぱり、ウキョー鳥をブッ殺す」
「クスッ。朝から物騒な事を言っているな。アンジュ」
ルディも起きていたようだ。そのルディはクスクスと笑いながら、私の額に口づけをしてきた。
ウキョー鳥はやっぱり神父様から許可を取って、絞め殺すべきだと思う。
さて、今日は何をして過ごそうか。どうせ開店休業状態の第13部隊に仕事なんて割り振られていないだろう。
昨日は食事が終わったら私はファルに連行され、自分の部屋に戻ってきたのだ。
あの後、ルディと侍従との間で何が話し合われたかはわからないが、きっと第13部隊に仕事が無いのは変わりないだろう。
「アンジュ。昨日事はフリーデンハイドは問題視しないと言っていた。しかし、本当は許されないことだからな。あと、今日は王城に出向かなければならなくなった」
侍従は上官だからね。謹慎とか罰は受ける覚悟はしていたよ。
···ん?王城?
「あの聖女を聖女として承認するらしい」
まぁ、妥当でしょう。現に西の辺境の常闇を封じたのを目撃されているのだから。
あれ?王城?
「ルディ。私は王城に入るなと言われているから、転移の腕輪が発動してしまうよ?」
私はあの白銀の王から王城には入ることを禁じられているため、お留守番をしなければならない。留守番は大いに構わない。しかし、王城は勿論聖騎士団の敷地外にあるため、転移の腕輪が反応してしまうはずなのだ。
「ああ、それは転移の発動を阻害する物があるから問題ない」
え?そんなものがあるの!あるのならさっさと手に入れるべきだった。
「アンジュ。阻害する物も互いの魔力を込めないと駄目な物だから、その辺に売っているわけじゃない」
「人の心を読まないでくれる?」
「別に読めるわけじゃない。アンジュがわかりやすいだけだ。それに使い捨てだから頻繁には使用できない」
くー!残念だ。転移の腕輪がなければ、もっと自由に行動ができるはずなのに···と、言うことは、今日は自由行動!!!
「アンジュ。今日は部屋から出なくていい」
「何故に!!」
「アンジュを自由にすると、直ぐに何処かへふらふらと行くだろう?」
「毎回言うけどそんなにフラフラしていない!強いて言うなら、ウキョー鳥をぶちのめしに行きたい」
未だに『ウッキョー!ウッキョー!』と耳を劈くような鳴き声が響き渡っている。あれは一度シメるべきだと思う。
「はぁ、あれはリュミエール神父の物だから手を出してはいけない」
ここには居ない神父様の権力があり過ぎる。やはり一度直談判をすべきだろう。
「わかった。ウキョー鳥は神父様に文句を言ってから、シメることにする」
私は渋々諦めることにした。
うっ!ルディ!何故に諦めた私を絞めにきたのだ。毎回思うけど、力加減を間違ってない?
抗議の意味を込めてルディをバシバシ叩いてみるけど、緩めてくれる様子がない。
「昨日、フリーデンハイドから聞いたのだが、例の聖女が奇跡を起こしたらしい」
まぁ、聖女なのだから、それぐらいできるのでしょう。それが、どうしたの?
「一昨日の夜に輝く聖獣を操って、雷雲を呼び雨を降らして雲を消し去ったと言っていた」
あれ?雷雲と雨?どこかで覚えがあるような?
「それを見た者たちが聖女の祝福なんて言っているらしい」
痛い痛い痛い!ちょっと力が強いよ!
「アンジュが精霊を使って行ったことを、あの聖女は自分の手柄のように言っていたらしい。アンジュの魔力を奪っただけでなく、嘘まで平気でつく女が、聖女だなんて俺は認めないからな!」
「ルディ。痛い。力強すぎ」
あ、力が緩んだ。やっと息がまともに吸える。ウキョー鳥をシメると言ったバツだろうか。私がしめ殺されかけた。
でも、あの聖女の子はどうして、やってもいないことを、自分でしたって言ったのだろう。そんな嘘はすぐにバレるのに。
もう一度やってと言われたらどうするつもりなのだろう。
でも···それでも、彼女には聖女でいてもらわないと私が困る。切実に困る。
「ルディ。別に私はいいと思うよ?」
「何故だ!」
うっ!なんだか、私が怒られているみたい。
「だって、嘘をついてまで力を示したいっていうことは、聖女の役目をやる気満々ってことでしょ?そんな人にこそやってもらわないとね。私は絶対に嫌だから」
聖女の役目の本質をわかっているのか知らないけれど、私は聖女なんてモノは御免被りたい。
「そうか、それなら対外的には認めてやってもいいが、俺は絶対にアレを聖女だなんて認めない」
まぁ、それは個人の意見だからね。人に合わせることはない。あ!そうだ。今のうちに聞いておこう。
「ねぇ、そう言えば。この前、聖騎士団の敷地に侵入してきたキルクスの子たちって何処で治療を受けているの?」
バニーのお見舞いぐらいは行っておきたい。
「アンジュ。そんなことに答えたら、絶対にそこに行く気だろ?今日は部屋から出るなと言った事をもう忘れたのか?」
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