66 / 354
66 レイグラーシアの指輪
しおりを挟む
「アンジュは何を言っているんだ?」
とんぼ返りでファルを置いていった街に戻ってきた。初日に泊まったジジェル?の街ほど大きくないけれど、ワイバーンを預かってくれる牧場がある街だ。うーん、ワイバーンは速くて移動には便利だけど、中々預かってくれるところが無いようで、そこが不便だよね。
そのファルが眉間にシワを寄せて、お前馬鹿という視線を私に向けている。
「だから、酒吞と茨木を第13部隊で面倒みれない?」
再度、私は同じ事を言ってみる。
「そもそも、俺はこいつらが何者か理解出来ていない。だから、反対だ!」
「それは、今回依頼を受けていた討伐対象。第10部隊の人たちからオーガの変異種だと言われている鬼たち」
その鬼達は人の姿のまま、夕食を食べている。酒吞は酒が主食かと言わんばかりに、酒を飲み、つまみに肉を食べている。朝とは大違いだ。茨木は使い慣れていないだろうに、器用にフォークとナイフを使って食べている。箸はこの世界に無いからね。
ファルのこめかみがピクピクと動いている。どうしたのだろう?
「ちょっと待て!オニというモノはオーガの事だったのか!」
うーん?オーガと同じかと問われれば、どうだろう。見た目はオーガに似ているかもしれないけれど····
「オーガって炎を操ったり、氷を操ったりできる?」
「そんな事になれば、それはもうオーガじゃないだろう···え?魔術が使えるのか?」
「我々は妖術と言っていますね」
食事に舌鼓を打っている茨木が答えた。
「一般的には鬼火が有名ですかね」
そう言って手の平を上に向けた茨木が青白い炎を出した。あ、うん。鬼火だね。
その炎を見たルディとファルが一斉に私の方を見た。え?私は何もしていないよ?
「鬼火だよ?私は何もしていないよ?」
「アンジュ、本当に何もしていないのか?」
ファル、疑り深いね。私は両手をヒラヒラさせて、何もしていないアピールをする。
「あと、気になったことがあるのだが、アレは聖痕なのか?」
ファルは酒を水の様に飲んでいる酒吞を指し示した。いや、正確には右側のこれみよがしに見せつけている青い入れ墨だ。
「あれは入れ墨。元々は罪人の証だったかな?相手を威圧するためだったり、ファッションの一部だったり多様化はしているけれど?」
因みに酒吞の入れ墨は虎のように見える。眼力がすごい虎だ。
「ああ、これのことですか?」
茨木は襟元を緩めて、左腕をそこからぐぐっと出した。遠○の金さんですか!桜吹雪であることを期待していると、左の胸から腕にかけて鱗だった。正確には龍の入れ墨だ。
虎と龍!!信玄と謙···失礼しました。
こちらも眼力が威圧的な龍の絵柄だった。
「ただの自己満足ですよ」
そう言って、茨木は微笑んだ。その微笑みと龍の図柄があっていない。恐らく茨木も怒らすと怖い鬼なのだろう。
「その絵」
ルディが茨木の入れ墨を見て言った。
「コレと同じだ」
ルディが懐から一枚のハンカチを出した。私が刺繍をした攻撃力が倍化するアイテムだ。
それを見た茨木は苦笑いを浮かべる。うっ。下手な刺繍でごめんなさい。
「正確には違いますよ。それは昇竜ですよね。私の図柄は八方睨みですよ」
茨木は図柄にこだわりがあったようだが、恐らくルディは生物的に同じだと聞きたいのだろう。まぁ、これも想像上の架空生物だけどね。
「龍も種類がいっぱいいるからね。有名どころは青龍かな?『出でよ青龍』なんちゃって」
どこぞかの7つの玉を集める漫画風にふざけて言ってみたら、私の左の方からバフッと音がした。恐る恐るそちらに視線を向けていみると、左手の小指の呪いの指輪から青い蛇がうねうねと飛び出ていた。
「ぎゃー!!呪いの指輪から!神父様の呪いの指輪から変なのが出てきた!!」
思わず遠ざけるように手を前に出してみたけど、指輪が抜けないから意味がなかった。
「おい、アマテラスが呼び出すから青龍が出てきただけだろ?すっげー項垂れているいるぞ」
酒を水のように飲んでいた、酒吞が呆れたように言う。酒吞が言ったように青い蛇は指輪から、でろーんと垂れ下がっていた。
「だから、私の名前はそんな大層な名前じゃない!アンジュだって言っているし!」
いくら酒吞に言っても名前を覚えてくれない。
「同じだろ?」
という風に毎回言われてしまうのだ。私はそんな神の名を騙ったことはない!
「呼び出しておいて、それはないと思いますよ、アンジュ様」
私に様付けしないでよ、茨木!私はそんな偉い人物じゃないから!
「グフッ。レイグラーシアの指輪から精霊を呼び出しておいて否定するなんて、アンジュは酷いな····ブフッ」
この笑い上戸が!!私は断じて呼び出していない!
「なぜ、リュミエール神父のレイグラーシアの指輪からなんだ?なぜ、俺の方の指輪じゃないんだ?」
私の隣から不穏な気配が醸し出されていた。ルディ。だから、私は呼び出したわけじゃない。黒い何かを出してブツブツ言わないでほしいのだけど?周りがなんだか歪んで見えるのだけど?
「アンジュ!何でもいいから呼び出してシュレインの機嫌を取ってくれ」
先程まで肩をピクピクさせて笑っていたファルが慌てて私に無理難題を言ってきた。だから、呼び出そうとして呼び出したわけじゃないから!!!
とんぼ返りでファルを置いていった街に戻ってきた。初日に泊まったジジェル?の街ほど大きくないけれど、ワイバーンを預かってくれる牧場がある街だ。うーん、ワイバーンは速くて移動には便利だけど、中々預かってくれるところが無いようで、そこが不便だよね。
そのファルが眉間にシワを寄せて、お前馬鹿という視線を私に向けている。
「だから、酒吞と茨木を第13部隊で面倒みれない?」
再度、私は同じ事を言ってみる。
「そもそも、俺はこいつらが何者か理解出来ていない。だから、反対だ!」
「それは、今回依頼を受けていた討伐対象。第10部隊の人たちからオーガの変異種だと言われている鬼たち」
その鬼達は人の姿のまま、夕食を食べている。酒吞は酒が主食かと言わんばかりに、酒を飲み、つまみに肉を食べている。朝とは大違いだ。茨木は使い慣れていないだろうに、器用にフォークとナイフを使って食べている。箸はこの世界に無いからね。
ファルのこめかみがピクピクと動いている。どうしたのだろう?
「ちょっと待て!オニというモノはオーガの事だったのか!」
うーん?オーガと同じかと問われれば、どうだろう。見た目はオーガに似ているかもしれないけれど····
「オーガって炎を操ったり、氷を操ったりできる?」
「そんな事になれば、それはもうオーガじゃないだろう···え?魔術が使えるのか?」
「我々は妖術と言っていますね」
食事に舌鼓を打っている茨木が答えた。
「一般的には鬼火が有名ですかね」
そう言って手の平を上に向けた茨木が青白い炎を出した。あ、うん。鬼火だね。
その炎を見たルディとファルが一斉に私の方を見た。え?私は何もしていないよ?
「鬼火だよ?私は何もしていないよ?」
「アンジュ、本当に何もしていないのか?」
ファル、疑り深いね。私は両手をヒラヒラさせて、何もしていないアピールをする。
「あと、気になったことがあるのだが、アレは聖痕なのか?」
ファルは酒を水の様に飲んでいる酒吞を指し示した。いや、正確には右側のこれみよがしに見せつけている青い入れ墨だ。
「あれは入れ墨。元々は罪人の証だったかな?相手を威圧するためだったり、ファッションの一部だったり多様化はしているけれど?」
因みに酒吞の入れ墨は虎のように見える。眼力がすごい虎だ。
「ああ、これのことですか?」
茨木は襟元を緩めて、左腕をそこからぐぐっと出した。遠○の金さんですか!桜吹雪であることを期待していると、左の胸から腕にかけて鱗だった。正確には龍の入れ墨だ。
虎と龍!!信玄と謙···失礼しました。
こちらも眼力が威圧的な龍の絵柄だった。
「ただの自己満足ですよ」
そう言って、茨木は微笑んだ。その微笑みと龍の図柄があっていない。恐らく茨木も怒らすと怖い鬼なのだろう。
「その絵」
ルディが茨木の入れ墨を見て言った。
「コレと同じだ」
ルディが懐から一枚のハンカチを出した。私が刺繍をした攻撃力が倍化するアイテムだ。
それを見た茨木は苦笑いを浮かべる。うっ。下手な刺繍でごめんなさい。
「正確には違いますよ。それは昇竜ですよね。私の図柄は八方睨みですよ」
茨木は図柄にこだわりがあったようだが、恐らくルディは生物的に同じだと聞きたいのだろう。まぁ、これも想像上の架空生物だけどね。
「龍も種類がいっぱいいるからね。有名どころは青龍かな?『出でよ青龍』なんちゃって」
どこぞかの7つの玉を集める漫画風にふざけて言ってみたら、私の左の方からバフッと音がした。恐る恐るそちらに視線を向けていみると、左手の小指の呪いの指輪から青い蛇がうねうねと飛び出ていた。
「ぎゃー!!呪いの指輪から!神父様の呪いの指輪から変なのが出てきた!!」
思わず遠ざけるように手を前に出してみたけど、指輪が抜けないから意味がなかった。
「おい、アマテラスが呼び出すから青龍が出てきただけだろ?すっげー項垂れているいるぞ」
酒を水のように飲んでいた、酒吞が呆れたように言う。酒吞が言ったように青い蛇は指輪から、でろーんと垂れ下がっていた。
「だから、私の名前はそんな大層な名前じゃない!アンジュだって言っているし!」
いくら酒吞に言っても名前を覚えてくれない。
「同じだろ?」
という風に毎回言われてしまうのだ。私はそんな神の名を騙ったことはない!
「呼び出しておいて、それはないと思いますよ、アンジュ様」
私に様付けしないでよ、茨木!私はそんな偉い人物じゃないから!
「グフッ。レイグラーシアの指輪から精霊を呼び出しておいて否定するなんて、アンジュは酷いな····ブフッ」
この笑い上戸が!!私は断じて呼び出していない!
「なぜ、リュミエール神父のレイグラーシアの指輪からなんだ?なぜ、俺の方の指輪じゃないんだ?」
私の隣から不穏な気配が醸し出されていた。ルディ。だから、私は呼び出したわけじゃない。黒い何かを出してブツブツ言わないでほしいのだけど?周りがなんだか歪んで見えるのだけど?
「アンジュ!何でもいいから呼び出してシュレインの機嫌を取ってくれ」
先程まで肩をピクピクさせて笑っていたファルが慌てて私に無理難題を言ってきた。だから、呼び出そうとして呼び出したわけじゃないから!!!
10
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿の両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
塩対応の公子様と二度と会わないつもりでした
奏多
恋愛
子爵令嬢リシーラは、チェンジリングに遭ったせいで、両親から嫌われていた。
そのため、隣国の侵略があった時に置き去りにされたのだが、妖精の友人達のおかげで生き延びることができた。
その時、一人の騎士を助けたリシーラ。
妖精界へ行くつもりで求婚に曖昧な返事をしていた後、名前を教えずに別れたのだが、後日開催されたアルシオン公爵子息の婚約者選びのお茶会で再会してしまう。
問題の公子がその騎士だったのだ。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない
たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。
何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる