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49 人聞きが悪い
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口から出てしまったものは仕方がない。全体会議でプレゼンしていた前世を思い出すのだ。質問に答えられなければ鼻で笑われ、予算が合わないとけなされ、最後には君の頭には豆腐でも詰まっているのかとの言葉が投げかけられるのだ。
私は団長から意見を求められたので、立ち上がろうとするけれど、ルディが私のお腹を抱え込んでいるため、立ち上がることはあきらめ、そのまま発言する。
「話を聞いている限りでは、どこの部隊が聖女様?を引き取るという風に聞こえたのですが、間違いはないでしょうか?」
否定する言葉が出てこなかったので、そのまま話を続ける。
「私は詳しい話を聞いてはいないのですが、聖女様?は騎士の訓練を受けた方なのですか?」
「いいえ。王都から西に半日ほどで行ける村の娘ですね」
団長の背後に控えていた先日私に辞令書を渡してきた侍従が答えた。
「ということは、騎士として過ごしてもらうには問題があるのではないのでしょうか?」
「だったらどうしろと?」
赤い髪の部隊長の後ろに控えている人物から言われた。
「これは、一つの提案です。聖女様?の暮らすところは色々国の思惑もあるでしょうから、言及しませんが、各部隊が任されている地域を順番に回ってもらえばいいのではないのですか?
順番にというと、また先程の状態の繰り返しですので、聖女様?にクジでも引いてもらえば、皆さんも納得されるでしょう?ああ、それから我々には休みという概念がありませんが、10日に2日から3日は休むという事を入れたほうがいいですね。
慣れないところで一人というものは気疲れもするでしょうから」
私は一気に話をした。事前に言うことを考えていたなら、もう少し言い回しもあったかもしれないけれど、多少のおかしなところは見逃して欲しい。
すると、黙って聞いていた団長が自分の膝を叩いた。
「ふむ。一理ある。聖女様の住まいはこの敷地内に新たに用意することが決められている。身の回りの世話も王宮から侍女を派遣されることで賄うことになっている」
はぁ?決まっていることあるじゃない。その情報を先に提示してよ。
「ここに聖女様を呼んで来てくれ」
これは後ろにいる侍従に言ったようだ。水色の長い髪を翻して、会議室を出ていく背中を見て、マジで私の適当な意見を採用するつもりなんだと、今更ながら冷や汗が出てきた。
「20分休憩だ。解散」
そう言って団長は立ち上がり、侍従を追うように会議室を出ていった。
20分休憩か。そう思いながら、腰から携帯用の水筒をとり出し、蓋を開け喉の乾きを潤す。
「随分用意がいいですね」
私はさっさと蓋をして、腰に戻そうとするが、その右手を後ろから取られてしまった。
「備えあれば患いなしだからね···くっ。私から焼菓子を強奪したばかりか、お茶まで奪う気?」
「強奪とは人聞きが悪いですね。アンジュの所為で朝食を食べそこなったのですから」
「それこそ人聞きが悪い」
抵抗も虚しく私の手から水筒は抜き取られてしまった。後ろを振り向きルディを睨みつける····が。お腹を抱え肩を揺らしているファルと、手を口元に当てて視線は斜め上に向けているが、ぷるぷる震えているリザ姉が視界に入ってきた。
何?
「冷たい?」
ルディに視線を戻す。人から飲み物を奪っておいて、文句でもあるの?
「水出しのお茶だからね。何か文句ある?」
暑い日には水出しのアイスティーが飲みたくなるからね。冷蔵庫が来た早々作ったよ。
「いや、熱くはなくても、ぬるいかと思っていたから驚いただけだ」
人前なのに素で話しているってことは、本当に驚いたのだろう。そして、お茶は普通は熱いものという固定概念があるのだろう。
ふと、水色の色が視界をかすめた。視線を向けると、侍従が戻ってきていた。あれ?聖女らしき人は見当たらないけれど?
ああ、ここに来る準備でもしているのか。
そして、水色の目と視線があった。
「ありがとうございます」
何故か侍従からお礼を言われてしまった。意味が分からず、首を傾げてしまう。
「この馬鹿げた会議に終止符を打っていただいて」
ば、馬鹿げた?!いや、そう思っているなら、団長という鶴の一声でどうにでもなるのでは?
「ほら、脳筋共は気に入らないと直ぐに武力で解決しようとするでしょう?大まかな事は国から指示を受けていたのですが、馬鹿を黙らすのは無駄な労力ですからね」
この人、顔はいいけど、性格真っ黒だな。妹よ。この人物の何処にキュンキュンしたのかお姉ちゃんさっぱりわからないよ。
「後は、団長に餌を与えて機嫌をとってくれたことですかね。あの人甘いものに目がないですから」
団長に餌!!あげたのは焼き菓子だからね!
いや、きっとこの人の中でも団長はリスなのかもしれない。
私は団長から意見を求められたので、立ち上がろうとするけれど、ルディが私のお腹を抱え込んでいるため、立ち上がることはあきらめ、そのまま発言する。
「話を聞いている限りでは、どこの部隊が聖女様?を引き取るという風に聞こえたのですが、間違いはないでしょうか?」
否定する言葉が出てこなかったので、そのまま話を続ける。
「私は詳しい話を聞いてはいないのですが、聖女様?は騎士の訓練を受けた方なのですか?」
「いいえ。王都から西に半日ほどで行ける村の娘ですね」
団長の背後に控えていた先日私に辞令書を渡してきた侍従が答えた。
「ということは、騎士として過ごしてもらうには問題があるのではないのでしょうか?」
「だったらどうしろと?」
赤い髪の部隊長の後ろに控えている人物から言われた。
「これは、一つの提案です。聖女様?の暮らすところは色々国の思惑もあるでしょうから、言及しませんが、各部隊が任されている地域を順番に回ってもらえばいいのではないのですか?
順番にというと、また先程の状態の繰り返しですので、聖女様?にクジでも引いてもらえば、皆さんも納得されるでしょう?ああ、それから我々には休みという概念がありませんが、10日に2日から3日は休むという事を入れたほうがいいですね。
慣れないところで一人というものは気疲れもするでしょうから」
私は一気に話をした。事前に言うことを考えていたなら、もう少し言い回しもあったかもしれないけれど、多少のおかしなところは見逃して欲しい。
すると、黙って聞いていた団長が自分の膝を叩いた。
「ふむ。一理ある。聖女様の住まいはこの敷地内に新たに用意することが決められている。身の回りの世話も王宮から侍女を派遣されることで賄うことになっている」
はぁ?決まっていることあるじゃない。その情報を先に提示してよ。
「ここに聖女様を呼んで来てくれ」
これは後ろにいる侍従に言ったようだ。水色の長い髪を翻して、会議室を出ていく背中を見て、マジで私の適当な意見を採用するつもりなんだと、今更ながら冷や汗が出てきた。
「20分休憩だ。解散」
そう言って団長は立ち上がり、侍従を追うように会議室を出ていった。
20分休憩か。そう思いながら、腰から携帯用の水筒をとり出し、蓋を開け喉の乾きを潤す。
「随分用意がいいですね」
私はさっさと蓋をして、腰に戻そうとするが、その右手を後ろから取られてしまった。
「備えあれば患いなしだからね···くっ。私から焼菓子を強奪したばかりか、お茶まで奪う気?」
「強奪とは人聞きが悪いですね。アンジュの所為で朝食を食べそこなったのですから」
「それこそ人聞きが悪い」
抵抗も虚しく私の手から水筒は抜き取られてしまった。後ろを振り向きルディを睨みつける····が。お腹を抱え肩を揺らしているファルと、手を口元に当てて視線は斜め上に向けているが、ぷるぷる震えているリザ姉が視界に入ってきた。
何?
「冷たい?」
ルディに視線を戻す。人から飲み物を奪っておいて、文句でもあるの?
「水出しのお茶だからね。何か文句ある?」
暑い日には水出しのアイスティーが飲みたくなるからね。冷蔵庫が来た早々作ったよ。
「いや、熱くはなくても、ぬるいかと思っていたから驚いただけだ」
人前なのに素で話しているってことは、本当に驚いたのだろう。そして、お茶は普通は熱いものという固定概念があるのだろう。
ふと、水色の色が視界をかすめた。視線を向けると、侍従が戻ってきていた。あれ?聖女らしき人は見当たらないけれど?
ああ、ここに来る準備でもしているのか。
そして、水色の目と視線があった。
「ありがとうございます」
何故か侍従からお礼を言われてしまった。意味が分からず、首を傾げてしまう。
「この馬鹿げた会議に終止符を打っていただいて」
ば、馬鹿げた?!いや、そう思っているなら、団長という鶴の一声でどうにでもなるのでは?
「ほら、脳筋共は気に入らないと直ぐに武力で解決しようとするでしょう?大まかな事は国から指示を受けていたのですが、馬鹿を黙らすのは無駄な労力ですからね」
この人、顔はいいけど、性格真っ黒だな。妹よ。この人物の何処にキュンキュンしたのかお姉ちゃんさっぱりわからないよ。
「後は、団長に餌を与えて機嫌をとってくれたことですかね。あの人甘いものに目がないですから」
団長に餌!!あげたのは焼き菓子だからね!
いや、きっとこの人の中でも団長はリスなのかもしれない。
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