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46 辞令
しおりを挟む「これよ!これ!いいと思わない?」
傷んだ金髪を私にアイロンを掛けさせながら、妹のユイがスマホの画面を見せてくる。
水色の長髪を背中に流し、冬の空のような色の瞳を持った白い軍服を着た男性が桜色の髪の女性の髪に口づけをしているスチルだった。
ごめん。お姉ちゃんこれのどこが良いか、わからないなぁ。
「キュンキュン来ない?」
来ない。
「えー。じゃあ」
そう言いながらユイは集めたスチルをスライドさせていく。
「あっ」
「え?なになに?何かお姉ちゃんの感性に引っかかった?」
「コレ」
そう言って私は一枚のスチルを指し示した。
「青龍だね。これ、ペット枠だよ?」
ペット枠?中国の武将の様な格好をした深い海の様な髪と目を持った男性に青い龍がまとわりついている絵だった。ただ、私は龍の目に惹かれた。金色に光る目に。
「ということは、四神がペット枠?」
「んーそうでもないかな?じゃなくて、人だよ人」
人かー。
「それ猫又。それ鬼神。それ野狐····お姉ちゃんそれ全部妖怪側だから」
お姉ちゃんに乙女ゲームは無理かな?
という、夢を今朝見たからだろうか。私の目にスチルで見せられた実物がいる。
今日も朝から疲れる攻防に加え、聖痕という媚薬が気に入ってしまったルディに口づけをされ、砕けた腰を自分の聖痕で治し、第13部隊の詰め所に行けば、水色の髪と目をした人物がファルがいつも座っているソファに座って、優雅にお茶を飲んでいた。
誰だよ。
「遅かったですね」
まだ、始業時間前だけど?貴方が早いだけじゃないのですかね。と言いたいが、私が口を出すことじゃないので、黙っておく。
「さて、異例ですが辞令が下りましてね。団長からの辞令です。将校アンジュ。第13副部隊長に任命します」
····え?何か聞き間違い?私まだこの聖騎士団に来てひと月たったかなぁっていうぐらいなんだけど?
しかし、目の前の男性は辞令書を私に差し出してきている。
「あの、何かの間違いではないのでしょうか?私は聖騎士団に入ったばかりなので、副部隊長の任を賜るのは流石におかしいと思います」
切実におかしいと目の前人物に訴える。しかし、目の前の人物は首を横に振り、辞令書の真ん中を指し示す。
「このとおり、貴女の名前が書かれています。間違いではありません。団長も昨日の事がとどめで、決定されました。死人を出すわけにはいかないと」
昨日のこと?私は何も問題を起こしてはいない。ただ、言われたとおり昼まで散策をして部屋に戻って大人しく、魔術作成をしていただけ。
「貴女を第13部隊長の側につけておくのが一番問題ないことが辞令理由になります」
そっちー!!私はジト目でルディを仰ぎ見る。昨日、私に部屋を出るなと言っておきながら、何問題を起こしているんだ!
水色の髪と目の男性は私に辞令書を握らせ、部屋を出ていった。
いや、だから誰だよ。
「で、アレ誰?」
「侍従フリーデンハイドですよ」
上官だった。そして、私は胡散臭い笑顔を浮かべたルディに向かって尋ねる。
「昨日、会議だって言っていたけど、何をしたわけ?」
「大したことはしていませんよ」
いや、大したことをしでかしたから、団長も辞令を出したんだよね。私、団長見たこと無いけれど。
私は、俺関係ないしという顔で、侍従が飲んでいた茶器を片付けているファルに詰め寄る。
「ファル様。ルディは何をしたのですか!」
ファルはニヤニヤと笑って教えてくれた。
「アンジュと同じ事をしようとしただけだ」
ん?私?
「ロベルにアンジュ特性回復薬を薄めた物と原液の2つを差し出して、折れた骨を治す薬だと言っただけだ」
原液!確かに一昨日小瓶を渡されて、コレに回復薬原液を入れて欲しいとは言われた。けれど、私は渋った。原液は危険だと。阿鼻叫喚地獄を作ってしまうと。
しかし、ルディは薄めて使うと言ったので、仕方がなく小瓶半分程に紫の液体を入れたものをルディに渡した。
「原液はダメって言ったよね!」
私は振り返ってルディに言う。しかし、ルディは胡散臭い笑顔のまま、反論する。
「まさか、あそこまでとは思いませんでした。あれは流石に飲んではダメですよ」
「ま、まさか人に飲ませたの?原液を?」
それは死人が出るわ!私、殺人教唆で捕まらない?
「いやいや、原液は絨毯と床を溶かしただけだから、人に被害は出てないから安心しろ。っていうか、なんてものを俺に飲ませたんだ!」
未だにファルから文句が出てくる。
そこ怒るところ?何度も説明したし、すーっごーく薄めたって。
「私は何度も説明したよ。原液ダメ!百倍に薄めて使ってと!」
私の心からの叫びが部屋中に響いた。
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