聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

文字の大きさ
上 下
45 / 368

45 聖痕の相性

しおりを挟む

「アンジュ。今日は朝から会議があるから、絶対に部屋から出るな」

 あれから2日がたった朝。朝食を部屋で食べたあと、ソファで食後のお茶を飲んでいる時にルディから言われた。どうやら昨日の夜中に聖女様が王都に到着したようだ。だから、これからの事を話し合うのだろう。

「え?散歩は?」

「部屋から出るな」

 瞳孔が開いた目で見ないで欲しい。ルディが居ないのなら、この前の聖騎士団の敷地の散策の続きをしたいのだけどなぁ。

「散歩」

「アンジュ。この前の事が、懲りてないのか?」

 いや、あれは腕輪の転移される範囲を把握していなかったことが問題だったのだ。あれでおおよその範囲はわかったから、今度は大丈夫のはず。

「アンジュ。いい天気だから散歩したいなぁ」

 そう言ってへらりと笑う。

 ····うーん。大抵、このおねだりで、ルディが折れるのだけど、今回は無理そうか。
 左腕もまともに使えないから、今回は諦めよう。

 仕方がない、今日は人前ではできない魔術の作成でもすることにしよう。まだ、試していないものはたくさんあるからね。

「アンジュが」

 ん?

「アンジュがキスして、おねだりしてくれるのなら、午前中の散歩は許可する」

 そうきたかー。どうしても散歩がしたいかと言われれば、ノーだ。うん。今回は大人しく部屋にいよう。

「アンジュ。大人しく部屋にいるから、会議に行ってきていいよ」

 私はそっとルディの隣から離れる。しかし、腰をガシッと抱えられ引き寄せられた。

「私、今日は大人しくするよ」

 右手をルディの胸板に置いて突っ張って距離を保とうと頑張る。

「憂鬱な、どうでもいい会議に行かなければならない俺にはアンジュが足りない」

 足りなくはない。朝もぐずぐずと1刻も朝の攻防をしたのだ。足りなくはない!
 ファル!いい加減にルディを迎えに来てよ!

 距離を保つために頑張っている右手を握られ、引っ張られ抱き寄せられた。

「今日の会議は10時からだから、ファルークスはまだこない」

 私の心を読まなくていい!っていうか会議が10時から!午前中の散歩ってことは2時間しか散歩できないじゃない!まだ、見てないところはたくさんあるのに、今日だけで見ることできる?違った。おねだりはしないからね。

 顎を上に向けさせられ、ルディに口づけされる。

「ん゛!」

 私はおねだりはしないと決めたのに!
 唇を割ってぬるりとルディの舌が入り込んでくる。私はそれを舌で追い出そうと

「「!!!」」

 互いが目を見開き、舌を絡めたまま固まった。

 そっと唇が離れ、ルディは舌を出す。そこには青い色の水の精霊を象った紋様が浮き出ていた。ルディは舌に聖痕を隠していた。
 だから、私も口を開け舌にある物を見せる。私の毒の聖痕。毒々しい赤紫の花の紋様だ。そう、私も聖痕を舌に隠していたのだ。

「クククク」

 ルディはこの状況が面白いと言わんばかりに笑い。私を押し倒し覆いかぶさった。






 最悪だ。とてもとても最悪だ。
 今の私の状態は、ソファの上で仰向けのまま動けない状態だ。
 結果から言おう。ルディの水の癒やしの聖痕と私の毒の聖痕の相性は良かった。いや、良すぎた。媚薬だと言っていいほどだった。
 ファルが早めに迎えに来なければ、やばかったかもしれない。

 そして、なにが最悪か。18禁乙女ゲームなめてた。キスだけで腰が砕けて動けなくなるなんて。
 妹よ。お姉ちゃんこの世界で生きていけるだろうか。

 砕けた腰に、天使の癒しを使う。こんな事で治癒を使うなんて、ため息しか出ない。

 起き上がって、シワになった隊服を整え、乱れた髪を直す。はぁ。散歩にいきますか。



_____________

会議室 Side

 会議が始まるにはまだ時間があるが、全部隊の半数ほどの隊長と副隊長がすでに集まっていた。談笑している者、席についている者様々だ。

 その会議室にまた新たに入っていくるものがいる。ニコニコと人の良さそうな顔をした第13部隊長とニヤニヤという感じの笑みを浮かべた第13副部隊長だ。

 いつもは直ぐに席に着く第13部隊長が、今日は珍しく己の席ではない方向に向かっている。周りの者達はその第13部隊長の行動を遠巻きに見ている。なぜなら、彼に関わるとろくな事にならないからだ。
 最近の出来事でいうと、聖騎士団の敷地の北に広がっている森が王都の外壁を超えて消滅したことだ。正に触らぬ神に祟りなしというものだ。できれば関わりたくない人物No.1に名が上がると言っていい。

 その人物が誰に用があるのかと、ここにいる者達は戦々恐々せんせんきょうきょうだ。

「ロベル第1部隊長」

 呼びかけられた人物は大柄で薄い緑の短髪が印象的な人物だった。

「な、なんだ?シュレイン第13部隊長」

 呼びかけられた第1部隊長はビクビクして返事をする。そして、思わず左の肋骨に手を添えた。彼の部下である副隊長の2人しか知らないことだが、第13部隊長の怒りに触れ、肋骨を折られたばかりだった。

「先日のことは申し訳ないと思いましてね。実はとある筋から薬をいただいたのです」

 ニコニコと人の良さそうな顔をして詫びを入れている。肋骨を折ったことを反省しているようだ。

 第13部隊長はポケットから小指程の小さな小瓶を2本取り出した。

「どちらかが、折れた骨も治すことのできる薬で、どちらかが全身から血を吹き出しながら死ぬ薬です。どちらか一本差し上げますよ」

「いらんわ!!だから、俺は知らなかったと説明したよな!不可抗力だ!俺を殺そうとするな!」

 第13部隊長の怒りはまだ収まっていなさそうだと、遠巻きに見ていた者達は、更に彼らから距離を取る。

「そうですか。ではこちらを差し上げますよ」

 第13部隊長は二本の内一本を第1部隊長に差し出す。

「いらんと言っているだろ!」

 第1部隊長が思わずそう言って手振るうと、小指ほどの小瓶を叩き落とされ、床で小瓶の蓋が外れ、中身がこぼれ出る。こぼれ出た液体が赤い絨毯を濡らして····いや、絨毯とその下の床でさえ煙を上げて溶かしだした。

 ここにいる全員が心が一つになる。絶対に第13部隊長を怒らせてはならないと。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

今夜で忘れる。

豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」 そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。 黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。 今はお互いに別の方と婚約しています。 「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」 なろう様でも公開中です。

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...