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44 用法用量を守れば回復薬
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流石、将校の二人だ。私の拙い説明で簡単に魔力循環をやってのけた。
そして、魔力を循環すれば、漏れ出ている魔力がなくなり、圧迫感も感じなくなった。
ルディは突然、首から下げていたコイン程の大きさの石とピアスと右手にはめていた腕輪は外しだした。え?もしかして、それ全部魔力抑制の装飾品だったの?
「ファルークス。どうだ?」
「大丈夫そうだ。シュレイン」
私はテーブルの上に置かれたコイン程の大きさの魔力抑制の魔道具を手に取る。おお、私の半分程の魔力が抑えこまれた。こんな物が4つあって、漏れ出てるってルディの魔力量って多すぎない?
それは、側にいるファルも困ったことだろう。
「それでアンジュ」
ん?隣を仰ぎ見る。····何を言われるかわからないけれど、嫌な予感が感じる。座っている椅子を少し引く。いつでも逃げれるようにだ。
「ファルークスに渡したモノとはなんだ?」
ああ、そのことか。何を言われるかビビった。
「私、お手性の回復薬をすーっごく薄めた物をお茶の中に混ぜただけ」
「凄く薄めた?原液はどこにあるんだ?」
私の中ですが?原液はヤバいから外に出しませんよ。
私はへらりと笑ってごまかす。
「アンジュ!」
「原液は出さないよ」
「何故だ」
「うーん。多分全身から血を吹き出して死ぬかな?」
一度、ゴブリンのコロニーの駆逐に使ったら、阿鼻叫喚地獄を再現してしまったので、それ以来原液は使用していない。
「「····」」
無言ですか。そして、二人からの視線がとても痛い。ブスブス刺さってくるかのように痛い。
「アンジュは俺を殺す気だったのか?」
ファルが、とてもとても低い声で言ってきた。そして、殺気も混じっている。
「だから、すーっごーく薄めたって言ったし。用法用量を守れば回復薬だからね」
「「はぁ」」
二人から呆れたようなため息が出てきた。二人は仲がいいね。もう、この話はいいだろうかと、茶器を片付ける為に椅子を引き立ち上がろうとすれば、ルディに右手を捕まれ引き止められてしまった。
「なに?」
「ここにその薄めたモノでいいから、出してみろ」
そう言いながら、ルディはテーブルをコツコツと指で叩いた。
え?無理かな?
ルディから、掴まれた右手を抜こうとするけれど、外れなさそうにない。
「アンジュ」
「内緒です」
「アンジュ!毒物の持ち込みは原則禁じられている。しかし、必要があれば、許可を取ればいいだけだ」
あー。やっぱり使うんじゃなかったな。ファルが大変そうだからと思ってしまったのが駄目だったよね。
私の前にある飲み終わったティーカップをぐるぐる巻に固定された左手を使って持ち上げる。
「『狂瀾を既倒に廻らす』」
どうにもならなくなったモノでも元の状態に戻すそんな意味だ。ただ、これは日本語で言っているので、効きすぎる薬となり毒となる物だ。
空だったティーカップに毒々しい紫の液体が満たされる。
「聖痕の力か」
ルディが確認したので、そのまま左手を持ち上げ、カップに口をつけ一気に飲み干す。
「「アンジュ!!」」
私の力で作り出したものだのだから、私の中に取り込んでも解毒できる。
右手を力強く引っ張られ、バランスを崩しルディの方に倒れ込む。
「アンジュ!早く出せ」
ルディが私の口の中に指を突っ込んで胃の中の物を出させようとしてきたので、左手でルディの右腕を掴む。ここで、毒混じりのキラキラエフェクトを出すつもりはないよ。
「自分で作ったものぐらい解毒ぐらいできる」
私がルディを睨んで言うと力を緩めてくれた。はぁ。カレーと毒物が混じったキラキラエフェクトを出すのは、なんとか免れた。
「ちょっと待て」
私がほっと一息ついていると、ファルが待つように言う。なにを待つの?私、ルディの上に倒れ込んでいる状態なんだけど?
「アンジュ。いくつ聖痕を持っているんだ?」
「····それ言わないと駄目?」
手の内を晒すのは、なるべくしたくないのだけど。私はルディから離れようと体を起こすが、ルディに腰を抱えられ、いつもどおり膝の上に座らされてしまった。
「いや、報告には聖痕は1つだとあったから、この感じだと複数持っているよな」
確かに人が寝ているときに裸にされて全身をチェックされたようだけど、複数の聖痕持ちだと早々バレるようなところには聖痕を置いてない。
「黙秘します」
「いや、聖痕の複数持ちはいるから別にそこを責めているんじゃない。最初の検査官を騙せたことに疑問があるんだ。ここに来てから聖痕が発現したのならわかるが、アンジュの様子からみるとそうじゃないだろう?」
疑問ね。まぁ。一般的な考え方でいけば、聖痕は大きればいいという感じだから、わざわざ小さくしようだなって考えも及ばないことなんだろうね。
「それは、見つけられなかった検査官の職務怠慢を指摘していると?」
「違う!はぁ。アンジュはそんなやつだよな。聞いた俺が馬鹿だった」
ファル。失礼な!
そして、魔力を循環すれば、漏れ出ている魔力がなくなり、圧迫感も感じなくなった。
ルディは突然、首から下げていたコイン程の大きさの石とピアスと右手にはめていた腕輪は外しだした。え?もしかして、それ全部魔力抑制の装飾品だったの?
「ファルークス。どうだ?」
「大丈夫そうだ。シュレイン」
私はテーブルの上に置かれたコイン程の大きさの魔力抑制の魔道具を手に取る。おお、私の半分程の魔力が抑えこまれた。こんな物が4つあって、漏れ出てるってルディの魔力量って多すぎない?
それは、側にいるファルも困ったことだろう。
「それでアンジュ」
ん?隣を仰ぎ見る。····何を言われるかわからないけれど、嫌な予感が感じる。座っている椅子を少し引く。いつでも逃げれるようにだ。
「ファルークスに渡したモノとはなんだ?」
ああ、そのことか。何を言われるかビビった。
「私、お手性の回復薬をすーっごく薄めた物をお茶の中に混ぜただけ」
「凄く薄めた?原液はどこにあるんだ?」
私の中ですが?原液はヤバいから外に出しませんよ。
私はへらりと笑ってごまかす。
「アンジュ!」
「原液は出さないよ」
「何故だ」
「うーん。多分全身から血を吹き出して死ぬかな?」
一度、ゴブリンのコロニーの駆逐に使ったら、阿鼻叫喚地獄を再現してしまったので、それ以来原液は使用していない。
「「····」」
無言ですか。そして、二人からの視線がとても痛い。ブスブス刺さってくるかのように痛い。
「アンジュは俺を殺す気だったのか?」
ファルが、とてもとても低い声で言ってきた。そして、殺気も混じっている。
「だから、すーっごーく薄めたって言ったし。用法用量を守れば回復薬だからね」
「「はぁ」」
二人から呆れたようなため息が出てきた。二人は仲がいいね。もう、この話はいいだろうかと、茶器を片付ける為に椅子を引き立ち上がろうとすれば、ルディに右手を捕まれ引き止められてしまった。
「なに?」
「ここにその薄めたモノでいいから、出してみろ」
そう言いながら、ルディはテーブルをコツコツと指で叩いた。
え?無理かな?
ルディから、掴まれた右手を抜こうとするけれど、外れなさそうにない。
「アンジュ」
「内緒です」
「アンジュ!毒物の持ち込みは原則禁じられている。しかし、必要があれば、許可を取ればいいだけだ」
あー。やっぱり使うんじゃなかったな。ファルが大変そうだからと思ってしまったのが駄目だったよね。
私の前にある飲み終わったティーカップをぐるぐる巻に固定された左手を使って持ち上げる。
「『狂瀾を既倒に廻らす』」
どうにもならなくなったモノでも元の状態に戻すそんな意味だ。ただ、これは日本語で言っているので、効きすぎる薬となり毒となる物だ。
空だったティーカップに毒々しい紫の液体が満たされる。
「聖痕の力か」
ルディが確認したので、そのまま左手を持ち上げ、カップに口をつけ一気に飲み干す。
「「アンジュ!!」」
私の力で作り出したものだのだから、私の中に取り込んでも解毒できる。
右手を力強く引っ張られ、バランスを崩しルディの方に倒れ込む。
「アンジュ!早く出せ」
ルディが私の口の中に指を突っ込んで胃の中の物を出させようとしてきたので、左手でルディの右腕を掴む。ここで、毒混じりのキラキラエフェクトを出すつもりはないよ。
「自分で作ったものぐらい解毒ぐらいできる」
私がルディを睨んで言うと力を緩めてくれた。はぁ。カレーと毒物が混じったキラキラエフェクトを出すのは、なんとか免れた。
「ちょっと待て」
私がほっと一息ついていると、ファルが待つように言う。なにを待つの?私、ルディの上に倒れ込んでいる状態なんだけど?
「アンジュ。いくつ聖痕を持っているんだ?」
「····それ言わないと駄目?」
手の内を晒すのは、なるべくしたくないのだけど。私はルディから離れようと体を起こすが、ルディに腰を抱えられ、いつもどおり膝の上に座らされてしまった。
「いや、報告には聖痕は1つだとあったから、この感じだと複数持っているよな」
確かに人が寝ているときに裸にされて全身をチェックされたようだけど、複数の聖痕持ちだと早々バレるようなところには聖痕を置いてない。
「黙秘します」
「いや、聖痕の複数持ちはいるから別にそこを責めているんじゃない。最初の検査官を騙せたことに疑問があるんだ。ここに来てから聖痕が発現したのならわかるが、アンジュの様子からみるとそうじゃないだろう?」
疑問ね。まぁ。一般的な考え方でいけば、聖痕は大きればいいという感じだから、わざわざ小さくしようだなって考えも及ばないことなんだろうね。
「それは、見つけられなかった検査官の職務怠慢を指摘していると?」
「違う!はぁ。アンジュはそんなやつだよな。聞いた俺が馬鹿だった」
ファル。失礼な!
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