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37 乙女ゲームは無理だわ
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地震!!この世界で生まれて初めての地震だ。寝ていた体を起こし辺りを見渡す。ど、どこに逃げる?この建物って大丈夫?
ん?あれ?
突き上げる衝撃の後に、ガタガタとした振動がこない。地震じゃない?
取り敢えず、外に出て周りの様子を見てみる?
ベッドから降りて立ち上がれば、立ちくらみがして思わず座り込む。血を流しすぎたかな。
やばい。世界が回っている。
目眩いが収まるのを床でかがんで待っていると、部屋の扉が開く音がした。
「アンジュ!どうした?」
慌てて駆け寄ってくるルディの声が聞こえてきたが、まだ、動ける余裕がない。
「貧血」
そう答えるのに精一杯だ。すると、抱えられ、ベッドの上に寝かされた。横になっていても世界って回っているんだね。
馬鹿なことを考えていると左腕に激痛が走った。くー!!腕を固定してくれているのだろうけど、痛い。
「ねぇ。さっきの振動ってなに?」
痛みをまぎらわすために、先程の地震らしき振動のことを聞いてみた。
「アンジュが気にすることじゃない」
いや、あんな突き上げるような振動を気にするなっていう方が無理でしょ。左手の固定が終わったのか激痛が収まった。脈を打つように痛いのは変わりないけど、我慢できる痛さなので問題ない。
しかし、また左腕が使えない状態になってしまった。やっぱり栄養不足で骨がもろくなっているのかなぁ。最近は食べるようになってきたから、栄養不足が解消されたかと思っていたけれど、骨が作られるまでには至ってなかったのか。
目眩いと痛みがおさまって、再びウトウトと眠りの淵を漂っていると、ベッドがギシリと軋んだ。なんだと薄めを開ければ、目と鼻の先にで瞳孔が開いた目があった。····見なかったことにしよう。
「なぜ、部屋を勝手に出た」
見なかったことにはできなさそうだ。私は勇気を振り絞って目を開ける。ここは『私悪くない』アピールをきっちりしておかないといけない。
今の私の心境はひのきの棒を片手に魔王に立ち向かっている気分だ。
「朝ごはんを食べたかったから、食堂へ行くために部屋を出た」
「場所も知らないのにか?」
それはルディの所為だ。いや、知らないのに行こうとしたのかといいたいのだろうが、朝は食べる習慣が教会にいるときからあるので、朝ごはんは食べるよ。
「私の部屋に食材がないから仕方がないよね」
「じゃ、食材を用意させよう」
ん?この流れはやばい。監禁されそうだ。
「あと、今日は天気がいいから、散歩がしたかった」
「部屋から出るなと言っていたのにか?」
「行動の自由は認められるべきだと思う」
「俺は部屋から出るなと言った」
はぁ。やはり、ひのきの棒では魔王と話し合いの席につけないのか。私にこの目の前に降臨した魔王に対抗する武器はないものか。
「私は守られるだけの子供じゃないよ?ルディは何が不安なのかな?」
「不安?俺が不安?」
あれ?違った?てっきり何かすごく不安に思っていることから、私を外に出さないことで解消しようとしているのだと思ったのだけれど。
なんだか、ルディが考え込んでしまった。私、いらないことを言ってしまったかな?右手を伸ばしてルディの頭をよしよしと撫でる。
自分でも自分の事がわからない事もある。いっぱい悩むといい。若い子の特権だ。仕事と家の往復しかしないマンネリの生活では悩むことすらしなくなってしまうものなのだから。あ、おばちゃん臭いことを考えてしまった。
しかし、眠い。もう寝てもいいかな。そして、そのまま私は眠りの海に沈んでいった。深く。深く。
「お姉ちゃん!また、彼氏と別れたんだって?」
ん?いつの彼氏の話?何度も髪を染めて傷んだ金髪の妹が聞いてきた。もう少し落ち着いた色にすればいいのに。
「今度は超エリートの彼氏だって言っていたじゃない」
ああ、某会社の懇親会で出逢った彼のことか。
「別れたっていうか。自然消滅。お互い忙しかったからね」
私は私の部屋に来て私の服を物色している妹のユイに言った。今日は夢の国ランドでダブルデートとか言っていたはず。
「いつもそうだよね。お姉ちゃん女子力が足りないんじゃない?」
女子力?女子力って何?身なりには気を使っているし、雑誌を見て流行りを取り入れているし、エステにも行っているし、見た目は美人ではないけれど、愛嬌があるとは言われている。何も問題ないと思うけど?
「乙女心っていうやつ!」
乙女心?
「お姉ちゃんの性格って男前すぎるの!」
お、男前。私の性別は女性だけど。
「そんなお姉ちゃんにはコレがオススメ!『エンジェルレリック』よ」
ユイはスマホの画面を見せてくれた。
天使の聖遺物って意味?何?このゲーム?
「ねぇ。ユイ。これR18って書いてあるけど?」
「そう、エロゲー。主人公の聖女がイケメンたちにあんなことやこんな事をされるゲーム」
私は頭を押さえる。こんなもので乙女心なんて養われないと思う。成人している妹の趣味をとやかく言うことはないけれど、姉にエロゲーを勧める妹はどうかと思う。
「私のオススメは第1部隊長のロベル様!筋肉ムキムキが萌えるの!」
ん?その名前最近聞いた気がする。
「2番目にオススメが第6副部隊長の双子のヒューゲル様とアスト様!二人のボイスがめっちゃ腰にくるの」
ヒューにアスト!!
「ユイ。お姉ちゃんに18禁の乙女ゲームは無理だわ」
ん?あれ?
突き上げる衝撃の後に、ガタガタとした振動がこない。地震じゃない?
取り敢えず、外に出て周りの様子を見てみる?
ベッドから降りて立ち上がれば、立ちくらみがして思わず座り込む。血を流しすぎたかな。
やばい。世界が回っている。
目眩いが収まるのを床でかがんで待っていると、部屋の扉が開く音がした。
「アンジュ!どうした?」
慌てて駆け寄ってくるルディの声が聞こえてきたが、まだ、動ける余裕がない。
「貧血」
そう答えるのに精一杯だ。すると、抱えられ、ベッドの上に寝かされた。横になっていても世界って回っているんだね。
馬鹿なことを考えていると左腕に激痛が走った。くー!!腕を固定してくれているのだろうけど、痛い。
「ねぇ。さっきの振動ってなに?」
痛みをまぎらわすために、先程の地震らしき振動のことを聞いてみた。
「アンジュが気にすることじゃない」
いや、あんな突き上げるような振動を気にするなっていう方が無理でしょ。左手の固定が終わったのか激痛が収まった。脈を打つように痛いのは変わりないけど、我慢できる痛さなので問題ない。
しかし、また左腕が使えない状態になってしまった。やっぱり栄養不足で骨がもろくなっているのかなぁ。最近は食べるようになってきたから、栄養不足が解消されたかと思っていたけれど、骨が作られるまでには至ってなかったのか。
目眩いと痛みがおさまって、再びウトウトと眠りの淵を漂っていると、ベッドがギシリと軋んだ。なんだと薄めを開ければ、目と鼻の先にで瞳孔が開いた目があった。····見なかったことにしよう。
「なぜ、部屋を勝手に出た」
見なかったことにはできなさそうだ。私は勇気を振り絞って目を開ける。ここは『私悪くない』アピールをきっちりしておかないといけない。
今の私の心境はひのきの棒を片手に魔王に立ち向かっている気分だ。
「朝ごはんを食べたかったから、食堂へ行くために部屋を出た」
「場所も知らないのにか?」
それはルディの所為だ。いや、知らないのに行こうとしたのかといいたいのだろうが、朝は食べる習慣が教会にいるときからあるので、朝ごはんは食べるよ。
「私の部屋に食材がないから仕方がないよね」
「じゃ、食材を用意させよう」
ん?この流れはやばい。監禁されそうだ。
「あと、今日は天気がいいから、散歩がしたかった」
「部屋から出るなと言っていたのにか?」
「行動の自由は認められるべきだと思う」
「俺は部屋から出るなと言った」
はぁ。やはり、ひのきの棒では魔王と話し合いの席につけないのか。私にこの目の前に降臨した魔王に対抗する武器はないものか。
「私は守られるだけの子供じゃないよ?ルディは何が不安なのかな?」
「不安?俺が不安?」
あれ?違った?てっきり何かすごく不安に思っていることから、私を外に出さないことで解消しようとしているのだと思ったのだけれど。
なんだか、ルディが考え込んでしまった。私、いらないことを言ってしまったかな?右手を伸ばしてルディの頭をよしよしと撫でる。
自分でも自分の事がわからない事もある。いっぱい悩むといい。若い子の特権だ。仕事と家の往復しかしないマンネリの生活では悩むことすらしなくなってしまうものなのだから。あ、おばちゃん臭いことを考えてしまった。
しかし、眠い。もう寝てもいいかな。そして、そのまま私は眠りの海に沈んでいった。深く。深く。
「お姉ちゃん!また、彼氏と別れたんだって?」
ん?いつの彼氏の話?何度も髪を染めて傷んだ金髪の妹が聞いてきた。もう少し落ち着いた色にすればいいのに。
「今度は超エリートの彼氏だって言っていたじゃない」
ああ、某会社の懇親会で出逢った彼のことか。
「別れたっていうか。自然消滅。お互い忙しかったからね」
私は私の部屋に来て私の服を物色している妹のユイに言った。今日は夢の国ランドでダブルデートとか言っていたはず。
「いつもそうだよね。お姉ちゃん女子力が足りないんじゃない?」
女子力?女子力って何?身なりには気を使っているし、雑誌を見て流行りを取り入れているし、エステにも行っているし、見た目は美人ではないけれど、愛嬌があるとは言われている。何も問題ないと思うけど?
「乙女心っていうやつ!」
乙女心?
「お姉ちゃんの性格って男前すぎるの!」
お、男前。私の性別は女性だけど。
「そんなお姉ちゃんにはコレがオススメ!『エンジェルレリック』よ」
ユイはスマホの画面を見せてくれた。
天使の聖遺物って意味?何?このゲーム?
「ねぇ。ユイ。これR18って書いてあるけど?」
「そう、エロゲー。主人公の聖女がイケメンたちにあんなことやこんな事をされるゲーム」
私は頭を押さえる。こんなもので乙女心なんて養われないと思う。成人している妹の趣味をとやかく言うことはないけれど、姉にエロゲーを勧める妹はどうかと思う。
「私のオススメは第1部隊長のロベル様!筋肉ムキムキが萌えるの!」
ん?その名前最近聞いた気がする。
「2番目にオススメが第6副部隊長の双子のヒューゲル様とアスト様!二人のボイスがめっちゃ腰にくるの」
ヒューにアスト!!
「ユイ。お姉ちゃんに18禁の乙女ゲームは無理だわ」
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