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36 転移の腕輪
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左腕でイスラの拳を受け止めるも、バキっという音が私の内側から聞こえてきた。そして、そのまま木々の中を吹き飛ばされる。
が、左腕につけている腕輪が震えだす。
え゛?めっちゃヤバい。今ここで!!
私は別の浮遊感を感じた直後に、体中に衝撃が走る。恐らく、どこかの壁に叩きつけられたようだ。呪いの腕輪が転移を発動してしまったのだろう。
流石にこの状況で受け身は無理だった。頭が痛い。
あー。複数の痛い視線を感じる。私はスクッと立ち上がる。
「お騒がせしました」
と、頭を下げると、額から赤い液体が流れてきて、赤い絨毯を更に赤く染めてしまった。
さっき壁に打ち付けたことで頭を切ってしまったようだ。
わらわらと人が私の周りに集まってしまった。え?私どうすればいい?
「何がありました?」
ルディの声に顔を上げるが、後頭部が痛んで思わず顔が歪む。
「アンジュちゃん。頭をこれで押さえて」
女性の声がして頭に何かの布が当てられた。声の方を見ると明るいオレンジ色の髪を顎の辺りで揃え、夏の空のような明るい青色の目を心配そうに向けている女性がいた。
「リザ姉」
リザ姉も私と同じ10人部屋だった一人だ。確か5歳上だったはずだ。
「アンジュ。この左腕はどうしました」
先程から、口調は丁寧だけど、瞳孔が開いた目で見てくるルディが恐ろしい。
「折れた」
「何があったのですか?」
「····」
えー。素直に言うと私が部屋にいなかった事がバレる。いや、もうこの時点でばれているか。
「アンジュ」
「どこぞかの貴族の使いの人が、主と会って欲しいと言われて、断ったら20人から攻撃された」
私の言葉にざわめきが起こる。そして、ルディの機嫌が急降下してくるのか手にとるようにわかってしまった。
「アンジュが怪我をしたということは、知っている顔がいましたか」
「····」
それ、言わないと駄目かなぁ。
「アンジュ」
「アンジュちゃん」
うっ。なんだか複数の視線が突き刺さる。
「キルクスの同期が5人」
この言葉に数人が室内から出ていったのがわかった。侵入者の確認をしにいったのだろう。皆、ごめん。私に言わない選択肢はなかった。頑張って生き延びて欲しい。
「アンジュは剣を抜きましたか?」
ん?この質問はなんだろう?
「そもそも今日は休むように言われていたから持ち歩いていない」
「魔術での攻撃はどうですか?」
攻撃魔術ということだろうか。それは使わないように心がけていた。私が多量に魔力を使えば、ルディに何かしら感知されそうだから、極力最小の魔力消費ですむようにしていた。
「使ったのは攻撃性のない魔術だけ。結界とか身体強化とか」
その代わり呪いの指輪は多用したけれどね。
「凄いわ。完璧よ。アンジュちゃん」
「何が?リザ姉」
「後はこちらが対処するから大丈夫よ。早く怪我の手当をしてね」
怪我で一番酷いのは、そこの壁で打ち付けた頭だけどね。先程からズキズキ痛い。折れた腕も痛い。
私はルディに抱えられ、会議室と思われる部屋を出るが、恐くてルディの顔が見れないので目を瞑っている。もう、ひしひしと機嫌の悪さを肌で感じている。
感じているが、優しい何かに包まれている感覚もある。なんだろう?天使の聖痕で治癒をしている感じに近い。
「ルディ。何か力を使っている?」
「···」
無言か。これは相当機嫌が悪そうだ。やっぱり外に出たのが悪かったのかなぁ。
いや、会議中に転移しながらぶっ飛ばされたのが、悪かったよね。結局、会議を中断させてしまったし。
宿舎まで戻ってきたようだが、この時間にこの宿舎に人の気配はない。·····あれ?医務室は?
ルディは2段飛ばしくらいで階段を上っていき、4階にたどり着いてさっさと鍵を開けて、部屋に入っていき、私をベッドの上に置いた。だから、医務室は?
私は体を起こし、怪我がひどい後頭部を治癒する。はぁ。やっとズキズキと酷い痛みが収まった。折れた左腕はどうしようか。あそこにいた人たちに私の腕が折れたことを知られているので、これは治さない方がいいだろう。
取り敢えず、着替えて腕を固定しないと。まさか、白い隊服を初っ端から自分の血で汚してしまうなんて、後で修復と洗浄の魔術を使っておこう。そう思いながらベッドから下りようとすると
「どこに行く気だ」
ルディのとてもとても機嫌の悪そうな声が降ってきた。
「着替えて、折れた腕の固定をしようと」
視線を合わせる勇気は私は持ち合わせていない。すると、私の部屋着がベッド上に置かれた。
「腕の固定をするものを取ってくるから、着替えて待っていろ。絶対にそこから動くな。絶対にだ!」
私には頷く選択肢しかない。だから、素直に頷く。
ルディが部屋を出ていったので、汚れた隊服を脱いで着替える。真っ白な隊服にポツポツと赤いシミが出来てしまっているので修復と洗浄の魔術で元の状態にする。
そして、正に血を被った状態であろう私にも、魔術で綺麗にしておく。
本当はシャワーを浴びたいけれど、流石に折れてパンパンに腫れた腕では洗えないだろう。
ルディが戻ってくるまで、その腫れた腕を冷やしておこう。ベッドに横になり、左腕に冷気をまとわす。ルディが戻って来たらきっとお小言を言われるのだろうな。
ウトウトと眠気が降りてきた。ルディが戻ってくるまで寝ていてもいいだろうか。
覚醒と眠りの狭間を漂っていると、下から突き上げるような衝撃が襲ってきた。
地震!!
が、左腕につけている腕輪が震えだす。
え゛?めっちゃヤバい。今ここで!!
私は別の浮遊感を感じた直後に、体中に衝撃が走る。恐らく、どこかの壁に叩きつけられたようだ。呪いの腕輪が転移を発動してしまったのだろう。
流石にこの状況で受け身は無理だった。頭が痛い。
あー。複数の痛い視線を感じる。私はスクッと立ち上がる。
「お騒がせしました」
と、頭を下げると、額から赤い液体が流れてきて、赤い絨毯を更に赤く染めてしまった。
さっき壁に打ち付けたことで頭を切ってしまったようだ。
わらわらと人が私の周りに集まってしまった。え?私どうすればいい?
「何がありました?」
ルディの声に顔を上げるが、後頭部が痛んで思わず顔が歪む。
「アンジュちゃん。頭をこれで押さえて」
女性の声がして頭に何かの布が当てられた。声の方を見ると明るいオレンジ色の髪を顎の辺りで揃え、夏の空のような明るい青色の目を心配そうに向けている女性がいた。
「リザ姉」
リザ姉も私と同じ10人部屋だった一人だ。確か5歳上だったはずだ。
「アンジュ。この左腕はどうしました」
先程から、口調は丁寧だけど、瞳孔が開いた目で見てくるルディが恐ろしい。
「折れた」
「何があったのですか?」
「····」
えー。素直に言うと私が部屋にいなかった事がバレる。いや、もうこの時点でばれているか。
「アンジュ」
「どこぞかの貴族の使いの人が、主と会って欲しいと言われて、断ったら20人から攻撃された」
私の言葉にざわめきが起こる。そして、ルディの機嫌が急降下してくるのか手にとるようにわかってしまった。
「アンジュが怪我をしたということは、知っている顔がいましたか」
「····」
それ、言わないと駄目かなぁ。
「アンジュ」
「アンジュちゃん」
うっ。なんだか複数の視線が突き刺さる。
「キルクスの同期が5人」
この言葉に数人が室内から出ていったのがわかった。侵入者の確認をしにいったのだろう。皆、ごめん。私に言わない選択肢はなかった。頑張って生き延びて欲しい。
「アンジュは剣を抜きましたか?」
ん?この質問はなんだろう?
「そもそも今日は休むように言われていたから持ち歩いていない」
「魔術での攻撃はどうですか?」
攻撃魔術ということだろうか。それは使わないように心がけていた。私が多量に魔力を使えば、ルディに何かしら感知されそうだから、極力最小の魔力消費ですむようにしていた。
「使ったのは攻撃性のない魔術だけ。結界とか身体強化とか」
その代わり呪いの指輪は多用したけれどね。
「凄いわ。完璧よ。アンジュちゃん」
「何が?リザ姉」
「後はこちらが対処するから大丈夫よ。早く怪我の手当をしてね」
怪我で一番酷いのは、そこの壁で打ち付けた頭だけどね。先程からズキズキ痛い。折れた腕も痛い。
私はルディに抱えられ、会議室と思われる部屋を出るが、恐くてルディの顔が見れないので目を瞑っている。もう、ひしひしと機嫌の悪さを肌で感じている。
感じているが、優しい何かに包まれている感覚もある。なんだろう?天使の聖痕で治癒をしている感じに近い。
「ルディ。何か力を使っている?」
「···」
無言か。これは相当機嫌が悪そうだ。やっぱり外に出たのが悪かったのかなぁ。
いや、会議中に転移しながらぶっ飛ばされたのが、悪かったよね。結局、会議を中断させてしまったし。
宿舎まで戻ってきたようだが、この時間にこの宿舎に人の気配はない。·····あれ?医務室は?
ルディは2段飛ばしくらいで階段を上っていき、4階にたどり着いてさっさと鍵を開けて、部屋に入っていき、私をベッドの上に置いた。だから、医務室は?
私は体を起こし、怪我がひどい後頭部を治癒する。はぁ。やっとズキズキと酷い痛みが収まった。折れた左腕はどうしようか。あそこにいた人たちに私の腕が折れたことを知られているので、これは治さない方がいいだろう。
取り敢えず、着替えて腕を固定しないと。まさか、白い隊服を初っ端から自分の血で汚してしまうなんて、後で修復と洗浄の魔術を使っておこう。そう思いながらベッドから下りようとすると
「どこに行く気だ」
ルディのとてもとても機嫌の悪そうな声が降ってきた。
「着替えて、折れた腕の固定をしようと」
視線を合わせる勇気は私は持ち合わせていない。すると、私の部屋着がベッド上に置かれた。
「腕の固定をするものを取ってくるから、着替えて待っていろ。絶対にそこから動くな。絶対にだ!」
私には頷く選択肢しかない。だから、素直に頷く。
ルディが部屋を出ていったので、汚れた隊服を脱いで着替える。真っ白な隊服にポツポツと赤いシミが出来てしまっているので修復と洗浄の魔術で元の状態にする。
そして、正に血を被った状態であろう私にも、魔術で綺麗にしておく。
本当はシャワーを浴びたいけれど、流石に折れてパンパンに腫れた腕では洗えないだろう。
ルディが戻ってくるまで、その腫れた腕を冷やしておこう。ベッドに横になり、左腕に冷気をまとわす。ルディが戻って来たらきっとお小言を言われるのだろうな。
ウトウトと眠気が降りてきた。ルディが戻ってくるまで寝ていてもいいだろうか。
覚醒と眠りの狭間を漂っていると、下から突き上げるような衝撃が襲ってきた。
地震!!
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