57 / 78
炎国への旅路編
23話 英雄は殺された?
しおりを挟む
「マルス帝国では帝国の歴史というものとグローリア国とラース公国との関係性の話はありましたが、あの・・えっと・・・獣人の方がいる国の事は・・・なんと言えばいいのか。」
「獣人の国は畜生の国だと教えられたか?」
「え?ええ。私はそんなことを思っていないですからね。」
人族主義。マルス帝国が第一に掲げる言葉です。そうなってしまったことも、エルフ神聖王国が関わってきます。エルフに人々がどのように扱われてきたのか教えられました。
千年前にグローリア国の人族である暴君にエルフ神聖王国は滅ぼされ、そこで、人々がエルフに迫害されない強国を作ろうと人々が集まり作った国だと教えられてきました。
人族だけの国。エルフには魔力では敵わないために魔武器というものを作り出し、人でもエルフに対抗できるということを示し、軍事国家となっていったマルス帝国の話を刷り込まされるのです。
獣人は畜生だと、奴隷だと。獣人の国は畜生の国であり、奴隷を生産する国だと洗脳されるのです。
私も前世の記憶がなければ、その話を信じてしまっていたでしょう。しかし、その話に疑問を感じ、旅人から話を聞いたり、いつもお同じ歌しか歌わない吟遊詩人に聞いてみたりして、それが真実では無いことを知りました。
はっきり言えば、マルス帝国以外の国を知らないと言っていいのかもしれません。
今回、私の行きたいという思いだけが先走り、その国を知るということが抜けていました。
あの時クストが持って来てくれた旅行資料に目を通しておけば違ったのかもしれません。結局、魔道馬車を作ることで頭が一杯で旅行資料を開くことはありませんでした。
それにあの少女にもう少し詳しく聞いておけば良かったのです。行き方を聞いて旅行期間が短縮したことに舞い上がってしまっていました。
炎国が鬼の国と言うことも知りませんでした。経由地であるギラン共和国のこともただの経由地でしかないと思っていました。そして、15年仕えてくれていたマリアのことを何も知らなかったのです。ダメダメです。
「奥様。セーラの入れたお茶を飲んでくださいな。料理長が持たせてくれたマフィンも食べてください。マリアさんが戻ってくれば甲板に行ってみましょう。ウネウネの腕なんてセーラが全部焼いてみせます。」
そう言いながら、セーラがお茶とマフィンを出してくれます。気をつかわれてしましました。
「ユーフィア。マリアに聞いてみるといい。俺よりもギラン共和国のことを良く知っている。それに、失敗してもいいのだろ?次に失敗しなかったらいいのだろ?じゃ、炎国のことは斑猫に聞けばいい。それで大丈夫だ。」
クストに私がセーラに言った言葉を言われてしましました。そうですね。炎国のことをキョウさんに聞けばいいのです。マリアが戻ってくればキョウさんを探しに行きましょう。
「キョウですか?」
マリアが戻ってきましたので、炎国の話をキョウさんに聞きたいとマリアに言ったのですが。マリアはあまりいい顔をしません。どうしたのでしょう。
「キョウさんに聞くことはダメなことなの?」
「いいえ。ダメとかではなく。船上ではキョウは仕事をしておりますので、話してくれるかわかりません。」
はっ!そうでした。炎国に着いてから案内につけてもいいと言われていたのでした。
「では、マリアに聞きたい事があります。マリアの事について教えてください。」
「え?私のことですか?」
「私、マリアの事について何も知らないと思ってしまったのです。マリアの事もこの国の事も知らなかったのです。なぜ、英雄が王になってはいけないのかも。」
「私の話など面白くもないですよ。この国を守るための力を付けるようにと訓練を幼い頃からしていたと言うことぐらいでしょうか。そこであの兄弟と共に過ごしたというだけです。それはこの国の金狼獣人と白猫獣人が通る道ですね。」
マリアは苦笑いをしながらそう話してくれました。英雄の子孫というものも大変なのですね。
「それから、この国に王が居ない理由ですが、英雄の龍人が言ったそうです。『身分差のない国を作ろうと、最低限生きることを保証してくれる国を作ろうと、この国に王は必要はない。必要なのは民を導くための指導者。だから、その指導者は民が自ら選べばいい。』と。その英雄はこの国の礎を築き上げたあと、国の為に一人で死んで逝きました。」
あれ?この話何処かで聞いたことがあります。そう、あのエルフ達が言っていた。
『今のギラン共和国を作り上げた者がいました。王族を頂点ととする制度を撤廃し、民が決めた者がその国を支配する。民の汚れた血を持つものに国を任せようなどと、頭の狂ったもののやることですよ。』
と・・・まさかそれが英雄の龍人のことですか?それならその龍人は
「エルフに殺された?」
「獣人の国は畜生の国だと教えられたか?」
「え?ええ。私はそんなことを思っていないですからね。」
人族主義。マルス帝国が第一に掲げる言葉です。そうなってしまったことも、エルフ神聖王国が関わってきます。エルフに人々がどのように扱われてきたのか教えられました。
千年前にグローリア国の人族である暴君にエルフ神聖王国は滅ぼされ、そこで、人々がエルフに迫害されない強国を作ろうと人々が集まり作った国だと教えられてきました。
人族だけの国。エルフには魔力では敵わないために魔武器というものを作り出し、人でもエルフに対抗できるということを示し、軍事国家となっていったマルス帝国の話を刷り込まされるのです。
獣人は畜生だと、奴隷だと。獣人の国は畜生の国であり、奴隷を生産する国だと洗脳されるのです。
私も前世の記憶がなければ、その話を信じてしまっていたでしょう。しかし、その話に疑問を感じ、旅人から話を聞いたり、いつもお同じ歌しか歌わない吟遊詩人に聞いてみたりして、それが真実では無いことを知りました。
はっきり言えば、マルス帝国以外の国を知らないと言っていいのかもしれません。
今回、私の行きたいという思いだけが先走り、その国を知るということが抜けていました。
あの時クストが持って来てくれた旅行資料に目を通しておけば違ったのかもしれません。結局、魔道馬車を作ることで頭が一杯で旅行資料を開くことはありませんでした。
それにあの少女にもう少し詳しく聞いておけば良かったのです。行き方を聞いて旅行期間が短縮したことに舞い上がってしまっていました。
炎国が鬼の国と言うことも知りませんでした。経由地であるギラン共和国のこともただの経由地でしかないと思っていました。そして、15年仕えてくれていたマリアのことを何も知らなかったのです。ダメダメです。
「奥様。セーラの入れたお茶を飲んでくださいな。料理長が持たせてくれたマフィンも食べてください。マリアさんが戻ってくれば甲板に行ってみましょう。ウネウネの腕なんてセーラが全部焼いてみせます。」
そう言いながら、セーラがお茶とマフィンを出してくれます。気をつかわれてしましました。
「ユーフィア。マリアに聞いてみるといい。俺よりもギラン共和国のことを良く知っている。それに、失敗してもいいのだろ?次に失敗しなかったらいいのだろ?じゃ、炎国のことは斑猫に聞けばいい。それで大丈夫だ。」
クストに私がセーラに言った言葉を言われてしましました。そうですね。炎国のことをキョウさんに聞けばいいのです。マリアが戻ってくればキョウさんを探しに行きましょう。
「キョウですか?」
マリアが戻ってきましたので、炎国の話をキョウさんに聞きたいとマリアに言ったのですが。マリアはあまりいい顔をしません。どうしたのでしょう。
「キョウさんに聞くことはダメなことなの?」
「いいえ。ダメとかではなく。船上ではキョウは仕事をしておりますので、話してくれるかわかりません。」
はっ!そうでした。炎国に着いてから案内につけてもいいと言われていたのでした。
「では、マリアに聞きたい事があります。マリアの事について教えてください。」
「え?私のことですか?」
「私、マリアの事について何も知らないと思ってしまったのです。マリアの事もこの国の事も知らなかったのです。なぜ、英雄が王になってはいけないのかも。」
「私の話など面白くもないですよ。この国を守るための力を付けるようにと訓練を幼い頃からしていたと言うことぐらいでしょうか。そこであの兄弟と共に過ごしたというだけです。それはこの国の金狼獣人と白猫獣人が通る道ですね。」
マリアは苦笑いをしながらそう話してくれました。英雄の子孫というものも大変なのですね。
「それから、この国に王が居ない理由ですが、英雄の龍人が言ったそうです。『身分差のない国を作ろうと、最低限生きることを保証してくれる国を作ろうと、この国に王は必要はない。必要なのは民を導くための指導者。だから、その指導者は民が自ら選べばいい。』と。その英雄はこの国の礎を築き上げたあと、国の為に一人で死んで逝きました。」
あれ?この話何処かで聞いたことがあります。そう、あのエルフ達が言っていた。
『今のギラン共和国を作り上げた者がいました。王族を頂点ととする制度を撤廃し、民が決めた者がその国を支配する。民の汚れた血を持つものに国を任せようなどと、頭の狂ったもののやることですよ。』
と・・・まさかそれが英雄の龍人のことですか?それならその龍人は
「エルフに殺された?」
45
お気に入りに追加
3,897
あなたにおすすめの小説
恋人が聖女のものになりました
キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」
聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。
それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。
聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。
多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。
ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……?
慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。
従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。
菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。
Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。
それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。
そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。
しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。
命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
私の療養中に、婚約者と幼馴染が駆け落ちしました──。
Nao*
恋愛
素適な婚約者と近く結婚する私を病魔が襲った。
彼の為にも早く元気になろうと療養する私だったが、一通の手紙を残し彼と私の幼馴染が揃って姿を消してしまう。
どうやら私、彼と幼馴染に裏切られて居たようです──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。最終回の一部、改正してあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる