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炎国への旅路編

23話 英雄は殺された?

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「マルス帝国では帝国の歴史というものとグローリア国とラース公国との関係性の話はありましたが、あの・・えっと・・・獣人の方がいる国の事は・・・なんと言えばいいのか。」

「獣人の国は畜生の国だと教えられたか?」

「え?ええ。私はそんなことを思っていないですからね。」

 人族主義。マルス帝国が第一に掲げる言葉です。そうなってしまったことも、エルフ神聖王国が関わってきます。エルフに人々がどのように扱われてきたのか教えられました。
 千年前にグローリア国の人族である暴君にエルフ神聖王国は滅ぼされ、そこで、人々がエルフに迫害されない強国を作ろうと人々が集まり作った国だと教えられてきました。

 人族だけの国。エルフには魔力では敵わないために魔武器というものを作り出し、人でもエルフに対抗できるということを示し、軍事国家となっていったマルス帝国の話を刷り込まされるのです。
 獣人は畜生だと、奴隷だと。獣人の国は畜生の国であり、奴隷を生産する国だと洗脳されるのです。

 私も前世の記憶がなければ、その話を信じてしまっていたでしょう。しかし、その話に疑問を感じ、旅人から話を聞いたり、いつもお同じ歌しか歌わない吟遊詩人に聞いてみたりして、それが真実では無いことを知りました。

 はっきり言えば、マルス帝国以外の国を知らないと言っていいのかもしれません。
 今回、私の行きたいという思いだけが先走り、その国を知るということが抜けていました。

 あの時クストが持って来てくれた旅行資料に目を通しておけば違ったのかもしれません。結局、魔道馬車を作ることで頭が一杯で旅行資料を開くことはありませんでした。
 それにあの少女にもう少し詳しく聞いておけば良かったのです。行き方を聞いて旅行期間が短縮したことに舞い上がってしまっていました。

 炎国が鬼の国と言うことも知りませんでした。経由地であるギラン共和国のこともただの経由地でしかないと思っていました。そして、15年仕えてくれていたマリアのことを何も知らなかったのです。ダメダメです。

「奥様。セーラの入れたお茶を飲んでくださいな。料理長が持たせてくれたマフィンも食べてください。マリアさんが戻ってくれば甲板に行ってみましょう。ウネウネの腕なんてセーラが全部焼いてみせます。」

 そう言いながら、セーラがお茶とマフィンを出してくれます。気をつかわれてしましました。

「ユーフィア。マリアに聞いてみるといい。俺よりもギラン共和国のことを良く知っている。それに、失敗してもいいのだろ?次に失敗しなかったらいいのだろ?じゃ、炎国のことは斑猫に聞けばいい。それで大丈夫だ。」

 クストに私がセーラに言った言葉を言われてしましました。そうですね。炎国のことをキョウさんに聞けばいいのです。マリアが戻ってくればキョウさんを探しに行きましょう。


「キョウですか?」

 マリアが戻ってきましたので、炎国の話をキョウさんに聞きたいとマリアに言ったのですが。マリアはあまりいい顔をしません。どうしたのでしょう。

「キョウさんに聞くことはダメなことなの?」

「いいえ。ダメとかではなく。船上ではキョウは仕事をしておりますので、話してくれるかわかりません。」

 はっ!そうでした。炎国に着いてから案内につけてもいいと言われていたのでした。

「では、マリアに聞きたい事があります。マリアの事について教えてください。」

「え?私のことですか?」

「私、マリアの事について何も知らないと思ってしまったのです。マリアの事もこの国の事も知らなかったのです。なぜ、英雄が王になってはいけないのかも。」

「私の話など面白くもないですよ。この国を守るための力を付けるようにと訓練を幼い頃からしていたと言うことぐらいでしょうか。そこであの兄弟と共に過ごしたというだけです。それはこの国の金狼獣人と白猫獣人が通る道ですね。」

 マリアは苦笑いをしながらそう話してくれました。英雄の子孫というものも大変なのですね。

「それから、この国に王が居ない理由ですが、英雄の龍人が言ったそうです。『身分差のない国を作ろうと、最低限生きることを保証してくれる国を作ろうと、この国に王は必要はない。必要なのは民を導くための指導者。だから、その指導者は民が自ら選べばいい。』と。その英雄はこの国の礎を築き上げたあと、国の為に一人で死んで逝きました。」

 あれ?この話何処かで聞いたことがあります。そう、あのエルフ達が言っていた。

『今のギラン共和国を作り上げた者がいました。王族を頂点ととする制度を撤廃し、民が決めた者がその国を支配する。民の汚れた血を持つものに国を任せようなどと、頭の狂ったもののやることですよ。』

 と・・・まさかそれが英雄の龍人のことですか?それならその龍人は

「エルフに殺された?」
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