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炎国への旅路編
18話 変わった人族ね
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馬車に乗ったまま港町に入っていきます。セーラは馬車の端っこで丸まってしまいました。そんなに気にしなくてもいいのに。
そして、一軒の建物の前で止まりました。フィーディス商会に着いたのでしょう。マリアが馬車の扉を開け、地面に降り立ちます。そこには大きな店構えのお店が目の前にあります。大きな窓ガラスの向こうには、衣服や帽子、それを作る為の生地などが多く並んでいるのが見られます。
「こちらは衣服を専門に扱っているところになります。」
マリアが説明をしてくれましたが、衣服を専門に?では、他の物を扱うところもあるということですか?
「こちらには、このエルトの支店長が居ます。もし、気になる物があるようなら他の場所も案内をいたします。」
ああ、ここを任されている支店長がいらっしゃるのですね。確かに港町の支店長というのは重要ポストですよね。
マリアが店の中に入って行き、その後にクストと私が続きます。セーラは騎獣の世話をするために外に残りました。
「いらっしゃいませ。」
白い髪から白い三角の耳がぴょこりと見えている猫獣人の女性が出迎えてくれました。
「あれ?マリアじゃない?久しぶり!シーランに嫁に行ったと聞いたけど、暴力女のマリアに愛想をつかされて追い出された?」
「嫁には行っていません。これが父からの紹介状です。伏して受け取りなさい。」
「聞いているけど、なんで炎国に行くの?マリアはあの国には居辛いと思うけど?」
居辛い?どういうことでしょう。
「私が今仕えている奥様がお望みだからです。」
「奥様?もしかして、後ろの金髪の人族?」
「そうです。」
「ふーん。」
そう言いながら猫獣人の女性は私を上から下まで見ていますが、クストが私の前に立ってしまいました。これは挨拶ができないではありませんか。
「まぁ。行きたいっていうなら船には乗せてあげるけど、炎国で問題をおこした場合、コッチは関与しないから。本当に何も後ろ盾無く炎国に行きたいなんて変わった人族ね。」
どう言う事でしょう?
猫獣人の女性がこちらに歩いてきたので、挨拶をしようとしましたら通り過ぎて行き、店の入り口の扉を開けながら
「明日の3刻に出国予定だから、4半刻前には港に来てくれたらいいわ。」
何故か追い出されるように店の外に出されてしまいました。確かに営業時間内であったかもしれませんが、少しモヤモヤします。
「奥様。サラの態度が不愉快に思われたかもしれませんが、あれがいつもの対応なのです。申し訳ございません。」
え?私、顔に出ていたのですか!
「マリアが謝ることはありません。彼女が言っていた後ろ盾が無いことダメな理由は何だったのかと思っただけだから。」
「そうですね。私も炎国に行くのは初めてですから、その辺りはセーラに調べておくように言ってありますので大丈夫でしょう。」
マリア。セーラはよくわからない情報を教えられていましたよ。
本日泊まる宿に入ったのですが、そこでマリアの怒りが爆発していました。
「セーラ!貴女なんといいました?任せておきなさいと言っていませんでしたか?」
「はい、言いました。」
「では、何ですかその全く意味のない情報は!」
「だって、炎国に行ったことのある愚兄が『これは重要事項だ。』と念押ししてきましたし、引きずられて海の水を飲むと死ぬと聞きました。」
「はぁ。あの御方に聞いたこと自体が間違いなのです。近くにレイモンド様はいらっしゃらなかったのですか?」
「レイモンドは居たけど・・・。」
「なぜ、そちらに聞かなかったのですか!レイモンド様なら真面目に答えてくれていたはずです!」
レイモンド?私の知らない名前の人が出てきました。誰のことなのでしょう。
「クスト。マリアが言っているレイモンドと言う人は誰ですか?」
「あ?レイモンドか?スラーヴァル公爵だ。近衛騎士隊長も兼任している。」
なんと今日話に名前が上がっていた、シーラン王国を作った一人のスラーヴァル公爵家の現当主ですか。セーラが愚兄と呼んでいる人はそんな近衛騎士隊長が側に居るような役職に付いているのですね。
王族なので、それぐらいの護衛は必要なのでしょう。しかし、その近衛騎士隊長の人もセーラがおかしな情報を掴まされていると忠告ぐらいしてくれてもよかったのではないのですか?
そして、一軒の建物の前で止まりました。フィーディス商会に着いたのでしょう。マリアが馬車の扉を開け、地面に降り立ちます。そこには大きな店構えのお店が目の前にあります。大きな窓ガラスの向こうには、衣服や帽子、それを作る為の生地などが多く並んでいるのが見られます。
「こちらは衣服を専門に扱っているところになります。」
マリアが説明をしてくれましたが、衣服を専門に?では、他の物を扱うところもあるということですか?
「こちらには、このエルトの支店長が居ます。もし、気になる物があるようなら他の場所も案内をいたします。」
ああ、ここを任されている支店長がいらっしゃるのですね。確かに港町の支店長というのは重要ポストですよね。
マリアが店の中に入って行き、その後にクストと私が続きます。セーラは騎獣の世話をするために外に残りました。
「いらっしゃいませ。」
白い髪から白い三角の耳がぴょこりと見えている猫獣人の女性が出迎えてくれました。
「あれ?マリアじゃない?久しぶり!シーランに嫁に行ったと聞いたけど、暴力女のマリアに愛想をつかされて追い出された?」
「嫁には行っていません。これが父からの紹介状です。伏して受け取りなさい。」
「聞いているけど、なんで炎国に行くの?マリアはあの国には居辛いと思うけど?」
居辛い?どういうことでしょう。
「私が今仕えている奥様がお望みだからです。」
「奥様?もしかして、後ろの金髪の人族?」
「そうです。」
「ふーん。」
そう言いながら猫獣人の女性は私を上から下まで見ていますが、クストが私の前に立ってしまいました。これは挨拶ができないではありませんか。
「まぁ。行きたいっていうなら船には乗せてあげるけど、炎国で問題をおこした場合、コッチは関与しないから。本当に何も後ろ盾無く炎国に行きたいなんて変わった人族ね。」
どう言う事でしょう?
猫獣人の女性がこちらに歩いてきたので、挨拶をしようとしましたら通り過ぎて行き、店の入り口の扉を開けながら
「明日の3刻に出国予定だから、4半刻前には港に来てくれたらいいわ。」
何故か追い出されるように店の外に出されてしまいました。確かに営業時間内であったかもしれませんが、少しモヤモヤします。
「奥様。サラの態度が不愉快に思われたかもしれませんが、あれがいつもの対応なのです。申し訳ございません。」
え?私、顔に出ていたのですか!
「マリアが謝ることはありません。彼女が言っていた後ろ盾が無いことダメな理由は何だったのかと思っただけだから。」
「そうですね。私も炎国に行くのは初めてですから、その辺りはセーラに調べておくように言ってありますので大丈夫でしょう。」
マリア。セーラはよくわからない情報を教えられていましたよ。
本日泊まる宿に入ったのですが、そこでマリアの怒りが爆発していました。
「セーラ!貴女なんといいました?任せておきなさいと言っていませんでしたか?」
「はい、言いました。」
「では、何ですかその全く意味のない情報は!」
「だって、炎国に行ったことのある愚兄が『これは重要事項だ。』と念押ししてきましたし、引きずられて海の水を飲むと死ぬと聞きました。」
「はぁ。あの御方に聞いたこと自体が間違いなのです。近くにレイモンド様はいらっしゃらなかったのですか?」
「レイモンドは居たけど・・・。」
「なぜ、そちらに聞かなかったのですか!レイモンド様なら真面目に答えてくれていたはずです!」
レイモンド?私の知らない名前の人が出てきました。誰のことなのでしょう。
「クスト。マリアが言っているレイモンドと言う人は誰ですか?」
「あ?レイモンドか?スラーヴァル公爵だ。近衛騎士隊長も兼任している。」
なんと今日話に名前が上がっていた、シーラン王国を作った一人のスラーヴァル公爵家の現当主ですか。セーラが愚兄と呼んでいる人はそんな近衛騎士隊長が側に居るような役職に付いているのですね。
王族なので、それぐらいの護衛は必要なのでしょう。しかし、その近衛騎士隊長の人もセーラがおかしな情報を掴まされていると忠告ぐらいしてくれてもよかったのではないのですか?
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