42 / 78
炎国への旅路編
8話 魔物討伐デートのはずが・・・
しおりを挟む
今日はクストのお仕事がお休みの日です。以前から約束していた、魔物討伐デートです。朝からクスト張り切っており、体を慣らしてくると言って庭で剣を振るっています。その姿を遠くから子供たちが見ていますが、子供たちに声を掛けてあげないのでしょうか。
はぁ、以前あの少女が言っていたとおり、一緒に住んでいるおじさん化していませんか?
私は、その姿をヤキモキしながら見ながら、馬車の最終調整をしています。今回の討伐場所に行くために馬車の試運転も兼ねているのです。
馬車に施す魔術は結局、浮遊と状態維持の魔術のみにしました。推進力を合わせた3つの魔術の陣を維持をするには魔石の消費が激しかったために諦めました。ですので、馬車の浮遊に重点をおき、騎獣に馬車を引いてもらうことにしたのです。
今回、馬車を引く騎獣はトカゲに翼が生えた竜トカゲという種類にしてみました。ここシーラン王国にはあまりいない種類なのですが、マルス帝国では体力あり、力が強いことから重宝されている種類になります。
そして、陣には以前使っていた古来からの魔術を元としたものではなく、反重力場の作用を用いたものにしました。あの平坦な時空には重力が存在しない論です。
重力場が作り出す歪みをキャンセリングすることで生み出される反重力場を作用させて、馬車を重力という枷から解放しました。
そうですね。これは魔道馬車と名付けましょう。
準備が整ったようで、セーラがクストを呼びに行っています。今回は試運転なので、馬車の中には誰も乗らずに御者は私が行い、クストとマリアが騎獣で並走する形になります。
この試運転で問題がなければ次からは子供たちも一緒に魔物討伐に行けることでしょう。
「え?何でユーフィアと一緒に乗れないんだ?」
出発前になって、突然クストがそんな事を言い出し始めました。3日前にきちんと説明をしたはずですが。
「ユーフィアと一緒に騎獣に乗ると思っていたのに!」
「ですから奥様は馬車の試運転の為に御者を自ら行うと言われたではありませんか。」
ええ、マリアの言うとおり、そのように言いましたよ。
「そんなもの何時ものウルに任せればいい。」
「ウルだと不具合で空中に放り出された時の対処ができません。」
そうです。いつもの御者は蜥蜴人の方で護衛も兼ねているのですが、流石に空を飛ぶことはできません。しかし、マリアの言葉がクストの感に触ったのか、低く唸りながら
「マリア。それはユーフィアは放り出されても良いってことか?」
「そうではなく。奥様は微調整が必要か見なければならないと言われたではありませんか。それに何かあればいつもの魔道具に乗り換えると言われています。」
「駄目だ。絶対に駄目だ!」
困りました。こんなことにならないように事前に説明をしていましたのに。
私の横に控えていたセーラがマリアの横に立ちました。クストを説得してくれるのでしょうか。
「駄犬!そんなにグチグチ文句を言うなら留守番をしていなさい。代わりにこのセーラが奥様とデートします。」
セーラ、それはちょっと違うような気がします。
「駄目だ。今日はユーフィアとデートをするのは俺だ!」
はぁ。試運転は別の日にしましょう。
「今日は馬車の試運転はやめにします。クストが居ない日なら問題ないですよね。もう、転移で行けばいいですよね。」
しかし、クストは私の側に寄ってきて
「駄目だ。俺が居ないときに何かあったらどうするんだ。」
と言ってきました。私は自分で使用して調整をしたいのに、それをクストに邪魔されるなんて
「私の物作りの邪魔をするのですか?」
せっかく試せると楽しみにしていましたのに、このムシャクシャした感じをどこにぶつければいいのでしょう?
「今日はやめましょう。」
私はそう言って、屋敷に戻りそのまま工房に向かいます。クストが後ろから何か言ってますが、知りません。工房に入り、奥の倉庫から今まで作ってきた武器を亜空間収納のバッグに詰めていきます。そして、転移の魔導術を発動します。それと同時にマリアが倉庫に入ってきたのですが、少し狩りに行っていますと言い忘れました。
マリアside
今日は、奥様が作られている魔道具の試運転をされるということで、朝から奥様は張り切っておられていました。馬車を浮かせて騎獣に引かせるなんて素晴らしいものを作られたのです。
実は私は馬車が苦手でありまして、あのガタガタと揺れる振動を我慢するぐらいなら自分で駆けていった方がいいと思うぐらいです。
そして、旦那様も奥様と今日は一日中一緒に居ても誰にも咎められないということで、尻尾が取れんばかりに振りながら、剣を振っています。遠目から見ると馬鹿っぽいです。
出発直前になっていつもの旦那様のダダが始まりました。こうなってしまうと大抵が奥様に諌められ旦那様が折れるのですが、奥様は馬車の側で魔道具の状態を見ています。
私が諌めるのですが、やはり聞く耳を持ちません。セーラ、置いていくと他の家人が大変なのでやめなさい。
やっと奥様が旦那様を諌めてくださり、試運転をやめて、いつも通りのデートに行きましょうと言ってくださいました。これなら、旦那様も納得されると思いきや、自分がないときに試運転をするのは駄目だとおっしゃるではないですか。
これは困りました。
どうしようかと考えていたところ奥様の雰囲気が変わり、地を這うような声で『私の物作りの邪魔をするのですか?』と旦那様に問うのです。いつも穏やかな奥様があのように怒っているのは初めて見ました。
奥様は『今日はやめにしましょう。』と言われ屋敷の方に歩いて行きました。旦那様が『ユーフィア、待ってくれ!』と言っておられますが、奥様は無視をして扉の奥に消えてしまわれました。
地面に横たわる旦那様は放置してもよろしいのですが、仕える者としては支障をきたしますので、他の家人に旦那様を部屋に連れて行くように指示を出し、セーラと共に奥様の工房に向かいます。工房に入り倉庫の扉が開いていましたので、そこに行きますと奥様が転移で消えて行くのが微かに目で捉えられただけでした。
奥様。家出をするなら、このマリアも一緒に連れて行って欲しいです。
はぁ、以前あの少女が言っていたとおり、一緒に住んでいるおじさん化していませんか?
私は、その姿をヤキモキしながら見ながら、馬車の最終調整をしています。今回の討伐場所に行くために馬車の試運転も兼ねているのです。
馬車に施す魔術は結局、浮遊と状態維持の魔術のみにしました。推進力を合わせた3つの魔術の陣を維持をするには魔石の消費が激しかったために諦めました。ですので、馬車の浮遊に重点をおき、騎獣に馬車を引いてもらうことにしたのです。
今回、馬車を引く騎獣はトカゲに翼が生えた竜トカゲという種類にしてみました。ここシーラン王国にはあまりいない種類なのですが、マルス帝国では体力あり、力が強いことから重宝されている種類になります。
そして、陣には以前使っていた古来からの魔術を元としたものではなく、反重力場の作用を用いたものにしました。あの平坦な時空には重力が存在しない論です。
重力場が作り出す歪みをキャンセリングすることで生み出される反重力場を作用させて、馬車を重力という枷から解放しました。
そうですね。これは魔道馬車と名付けましょう。
準備が整ったようで、セーラがクストを呼びに行っています。今回は試運転なので、馬車の中には誰も乗らずに御者は私が行い、クストとマリアが騎獣で並走する形になります。
この試運転で問題がなければ次からは子供たちも一緒に魔物討伐に行けることでしょう。
「え?何でユーフィアと一緒に乗れないんだ?」
出発前になって、突然クストがそんな事を言い出し始めました。3日前にきちんと説明をしたはずですが。
「ユーフィアと一緒に騎獣に乗ると思っていたのに!」
「ですから奥様は馬車の試運転の為に御者を自ら行うと言われたではありませんか。」
ええ、マリアの言うとおり、そのように言いましたよ。
「そんなもの何時ものウルに任せればいい。」
「ウルだと不具合で空中に放り出された時の対処ができません。」
そうです。いつもの御者は蜥蜴人の方で護衛も兼ねているのですが、流石に空を飛ぶことはできません。しかし、マリアの言葉がクストの感に触ったのか、低く唸りながら
「マリア。それはユーフィアは放り出されても良いってことか?」
「そうではなく。奥様は微調整が必要か見なければならないと言われたではありませんか。それに何かあればいつもの魔道具に乗り換えると言われています。」
「駄目だ。絶対に駄目だ!」
困りました。こんなことにならないように事前に説明をしていましたのに。
私の横に控えていたセーラがマリアの横に立ちました。クストを説得してくれるのでしょうか。
「駄犬!そんなにグチグチ文句を言うなら留守番をしていなさい。代わりにこのセーラが奥様とデートします。」
セーラ、それはちょっと違うような気がします。
「駄目だ。今日はユーフィアとデートをするのは俺だ!」
はぁ。試運転は別の日にしましょう。
「今日は馬車の試運転はやめにします。クストが居ない日なら問題ないですよね。もう、転移で行けばいいですよね。」
しかし、クストは私の側に寄ってきて
「駄目だ。俺が居ないときに何かあったらどうするんだ。」
と言ってきました。私は自分で使用して調整をしたいのに、それをクストに邪魔されるなんて
「私の物作りの邪魔をするのですか?」
せっかく試せると楽しみにしていましたのに、このムシャクシャした感じをどこにぶつければいいのでしょう?
「今日はやめましょう。」
私はそう言って、屋敷に戻りそのまま工房に向かいます。クストが後ろから何か言ってますが、知りません。工房に入り、奥の倉庫から今まで作ってきた武器を亜空間収納のバッグに詰めていきます。そして、転移の魔導術を発動します。それと同時にマリアが倉庫に入ってきたのですが、少し狩りに行っていますと言い忘れました。
マリアside
今日は、奥様が作られている魔道具の試運転をされるということで、朝から奥様は張り切っておられていました。馬車を浮かせて騎獣に引かせるなんて素晴らしいものを作られたのです。
実は私は馬車が苦手でありまして、あのガタガタと揺れる振動を我慢するぐらいなら自分で駆けていった方がいいと思うぐらいです。
そして、旦那様も奥様と今日は一日中一緒に居ても誰にも咎められないということで、尻尾が取れんばかりに振りながら、剣を振っています。遠目から見ると馬鹿っぽいです。
出発直前になっていつもの旦那様のダダが始まりました。こうなってしまうと大抵が奥様に諌められ旦那様が折れるのですが、奥様は馬車の側で魔道具の状態を見ています。
私が諌めるのですが、やはり聞く耳を持ちません。セーラ、置いていくと他の家人が大変なのでやめなさい。
やっと奥様が旦那様を諌めてくださり、試運転をやめて、いつも通りのデートに行きましょうと言ってくださいました。これなら、旦那様も納得されると思いきや、自分がないときに試運転をするのは駄目だとおっしゃるではないですか。
これは困りました。
どうしようかと考えていたところ奥様の雰囲気が変わり、地を這うような声で『私の物作りの邪魔をするのですか?』と旦那様に問うのです。いつも穏やかな奥様があのように怒っているのは初めて見ました。
奥様は『今日はやめにしましょう。』と言われ屋敷の方に歩いて行きました。旦那様が『ユーフィア、待ってくれ!』と言っておられますが、奥様は無視をして扉の奥に消えてしまわれました。
地面に横たわる旦那様は放置してもよろしいのですが、仕える者としては支障をきたしますので、他の家人に旦那様を部屋に連れて行くように指示を出し、セーラと共に奥様の工房に向かいます。工房に入り倉庫の扉が開いていましたので、そこに行きますと奥様が転移で消えて行くのが微かに目で捉えられただけでした。
奥様。家出をするなら、このマリアも一緒に連れて行って欲しいです。
56
お気に入りに追加
3,896
あなたにおすすめの小説
夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。
Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。
それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。
そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。
しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。
命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。
Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。
彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。
そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。
この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。
その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
私の療養中に、婚約者と幼馴染が駆け落ちしました──。
Nao*
恋愛
素適な婚約者と近く結婚する私を病魔が襲った。
彼の為にも早く元気になろうと療養する私だったが、一通の手紙を残し彼と私の幼馴染が揃って姿を消してしまう。
どうやら私、彼と幼馴染に裏切られて居たようです──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。最終回の一部、改正してあります。)
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
恋人が聖女のものになりました
キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」
聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。
それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。
聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。
多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。
ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……?
慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。
従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。
菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
婚約者に心変わりされた私は、悪女が巣食う学園から姿を消す事にします──。
Nao*
恋愛
ある役目を終え、学園に戻ったシルビア。
すると友人から、自分が居ない間に婚約者のライオスが別の女に心変わりしたと教えられる。
その相手は元平民のナナリーで、可愛く可憐な彼女はライオスだけでなく友人の婚約者や他の男達をも虜にして居るらしい。
事情を知ったシルビアはライオスに会いに行くが、やがて婚約破棄を言い渡される。
しかしその後、ナナリーのある驚きの行動を目にして──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる