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炎国への旅路編

8話 魔物討伐デートのはずが・・・

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 今日はクストのお仕事がお休みの日です。以前から約束していた、魔物討伐デートです。朝からクスト張り切っており、体を慣らしてくると言って庭で剣を振るっています。その姿を遠くから子供たちが見ていますが、子供たちに声を掛けてあげないのでしょうか。
 はぁ、以前あの少女が言っていたとおり、一緒に住んでいるおじさん化していませんか?

 私は、その姿をヤキモキしながら見ながら、馬車の最終調整をしています。今回の討伐場所に行くために馬車の試運転も兼ねているのです。

 馬車に施す魔術は結局、浮遊と状態維持の魔術のみにしました。推進力を合わせた3つの魔術の陣を維持をするには魔石の消費が激しかったために諦めました。ですので、馬車の浮遊に重点をおき、騎獣に馬車を引いてもらうことにしたのです。

 今回、馬車を引く騎獣はトカゲに翼が生えた竜トカゲという種類にしてみました。ここシーラン王国にはあまりいない種類なのですが、マルス帝国では体力あり、力が強いことから重宝されている種類になります。

 そして、陣には以前使っていた古来からの魔術を元としたものではなく、反重力場の作用を用いたものにしました。あの平坦な時空には重力が存在しない論です。
 重力場が作り出す歪みをキャンセリングすることで生み出される反重力場を作用させて、馬車を重力という枷から解放しました。
 そうですね。これは魔道馬車と名付けましょう。

 準備が整ったようで、セーラがクストを呼びに行っています。今回は試運転なので、馬車の中には誰も乗らずに御者は私が行い、クストとマリアが騎獣で並走する形になります。
 この試運転で問題がなければ次からは子供たちも一緒に魔物討伐に行けることでしょう。

「え?何でユーフィアと一緒に乗れないんだ?」

 出発前になって、突然クストがそんな事を言い出し始めました。3日前にきちんと説明をしたはずですが。

「ユーフィアと一緒に騎獣に乗ると思っていたのに!」

「ですから奥様は馬車の試運転の為に御者を自ら行うと言われたではありませんか。」

 ええ、マリアの言うとおり、そのように言いましたよ。

「そんなもの何時ものウルに任せればいい。」

「ウルだと不具合で空中に放り出された時の対処ができません。」

 そうです。いつもの御者は蜥蜴人の方で護衛も兼ねているのですが、流石に空を飛ぶことはできません。しかし、マリアの言葉がクストの感に触ったのか、低く唸りながら

「マリア。それはユーフィアは放り出されても良いってことか?」

「そうではなく。奥様は微調整が必要か見なければならないと言われたではありませんか。それに何かあればいつもの魔道具に乗り換えると言われています。」

「駄目だ。絶対に駄目だ!」

 困りました。こんなことにならないように事前に説明をしていましたのに。
 私の横に控えていたセーラがマリアの横に立ちました。クストを説得してくれるのでしょうか。

「駄犬!そんなにグチグチ文句を言うなら留守番をしていなさい。代わりにこのセーラが奥様とデートします。」

 セーラ、それはちょっと違うような気がします。

「駄目だ。今日はユーフィアとデートをするのは俺だ!」

 はぁ。試運転は別の日にしましょう。

「今日は馬車の試運転はやめにします。クストが居ない日なら問題ないですよね。もう、転移で行けばいいですよね。」

 しかし、クストは私の側に寄ってきて

「駄目だ。俺が居ないときに何かあったらどうするんだ。」

 と言ってきました。私は自分で使用して調整をしたいのに、それをクストに邪魔されるなんて

「私の物作りの邪魔をするのですか?」

 せっかく試せると楽しみにしていましたのに、このムシャクシャした感じをどこにぶつければいいのでしょう?

「今日はやめましょう。」

 私はそう言って、屋敷に戻りそのまま工房に向かいます。クストが後ろから何か言ってますが、知りません。工房に入り、奥の倉庫から今まで作ってきた武器を亜空間収納のバッグに詰めていきます。そして、転移の魔導術を発動します。それと同時にマリアが倉庫に入ってきたのですが、少し狩りに行っていますと言い忘れました。


マリアside
 今日は、奥様が作られている魔道具の試運転をされるということで、朝から奥様は張り切っておられていました。馬車を浮かせて騎獣に引かせるなんて素晴らしいものを作られたのです。
 実は私は馬車が苦手でありまして、あのガタガタと揺れる振動を我慢するぐらいなら自分で駆けていった方がいいと思うぐらいです。

 そして、旦那様も奥様と今日は一日中一緒に居ても誰にも咎められないということで、尻尾が取れんばかりに振りながら、剣を振っています。遠目から見ると馬鹿っぽいです。

 出発直前になっていつもの旦那様のダダが始まりました。こうなってしまうと大抵が奥様に諌められ旦那様が折れるのですが、奥様は馬車の側で魔道具の状態を見ています。
 私が諌めるのですが、やはり聞く耳を持ちません。セーラ、置いていくと他の家人が大変なのでやめなさい。

 やっと奥様が旦那様を諌めてくださり、試運転をやめて、いつも通りのデート魔物討伐に行きましょうと言ってくださいました。これなら、旦那様も納得されると思いきや、自分がないときに試運転をするのは駄目だとおっしゃるではないですか。
 これは困りました。

 どうしようかと考えていたところ奥様の雰囲気が変わり、地を這うような声で『私の物作りの邪魔をするのですか?』と旦那様に問うのです。いつも穏やかな奥様があのように怒っているのは初めて見ました。

 奥様は『今日はやめにしましょう。』と言われ屋敷の方に歩いて行きました。旦那様が『ユーフィア、待ってくれ!』と言っておられますが、奥様は無視をして扉の奥に消えてしまわれました。

 地面に横たわる旦那様は放置してもよろしいのですが、仕える者としては支障をきたしますので、他の家人に旦那様を部屋に連れて行くように指示を出し、セーラと共に奥様の工房に向かいます。工房に入り倉庫の扉が開いていましたので、そこに行きますと奥様が転移で消えて行くのが微かに目で捉えられただけでした。

 奥様。家出をするなら、このマリアも一緒に連れて行って欲しいです。

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