6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴

文字の大きさ
上 下
24 / 78
本編

21話 またしても、やってしまった。

しおりを挟む
 私の手にした武器はこの前ドラゴンの首をぶっとばした電磁誘導砲レールガンです。私の魔力を足してあの威力なら、備え付けてある魔石だけても足元の石の台を壊すには十分でしょう。
 銃口を足元の石の台に向け引き金を引くと、発砲音と共に足元の石は砕け散り足場は脆く崩れ去った。発砲の余波と足場が無くなったことで体が浮遊した瞬間、肩に衝撃を受けた。浮遊して体の位置がずれなければ、首が飛んでいただろうという殺意の込められた攻撃魔術だった。

 魔力が自由に使えるのであれば問題はない。私の周りに浮遊している『治癒の腕輪』『身体能力向上の腕輪』『魔術耐性の盾』を装備する。

『異分子の逃亡を阻止し仕留めよ』

 魔術での拡声を使っているのか青い髪の女性の声が辺り一帯に響きわたっています。
 どこに潜んでいたのかというぐらいのエルフが出てきました。え?ここまでするの?潜んでいたエルフたちが一斉に攻撃魔術を放ってきました。
 流石のユーフィアさんもここまでの魔術師から攻撃を受ける想定はしていませんでしたよ。盾はもつでしょうか。
 
 攻撃を受けてどれぐらい経ったでしょうか。魔術耐性の盾もそろそろ限界がきそうです。ミシミシと嫌な音が響いています。
 盾の両側にガトリングガンを設置して自動照射していますが、物理防御もされているのでしょうね。
 これはもうやっちゃっていいですかね。ここまでされたらいいですよね。全部で100個あります。すべてを使用しましょう。専用の筒に入れ50個ずつ2回に分けて発射。そして、私は地面に伏して数枚の耐熱・耐物の盾で自分の周囲を囲み衝撃に備えます。
 
「すべて撃ち落とせ」

 と声が聞こえますが、こっちは内心ドキドキが止まりません。やっぱり100個はやり過ぎたかな?
 発射した魔道具に次々と攻撃魔術が当てられているようで、爆音が響いています。最後の方は連鎖爆発起きていませんか?爆音と悲鳴が響き、盾の隙間から熱風と衝撃が伝わってきました。
 ヤバイヤバイ。やっぱりやり過ぎました。耐熱の盾を通り越してこんなに熱いなんて想定外。



 音が止み、盾から這い出てみれば・・・ああ、夕日が目にしみます。目の前の惨状に私は現実逃避をしてしまいたいです。やはり、100個は多すぎました。ニトログリセリンの科学式を魔石に書き込んだ物を100個投げてみましたが、建物は壊れ、エルフたちがその下に埋もれてしまったようですが、生きていますでしょうか・・・。

「ユーフィア!」

 現実逃避しすぎてクストさんの声まで幻聴で聞こえるようになりました。

「ユーフィア。無事か」

 あれ?目の前にクストさんがいます。

「クストさん?本物?」

「ユーフィア。よかった無事でよかった。」

 クストさんに抱きつかれました。

「どうやってここへ。」

「このシャーレン精霊王国に確実にこれて転移をできる人物に頼み込んだのだ。あの、クソ勇者がゴネテ説得するのにこんなに時間がかかってしまってすまない。怖かっただろう?」

「勇者?」

「聖女様に頼み込んだのだ。」

「聖女様が来ているのどこに!」

「え。あっちに・・・」

「聖女様お願いが!」

「俺より聖女の方がよかったのか?」

 あ、またすねそう。

「クストさんが迎えに来てくれてとても嬉しいです。この私のやらかしてしまった惨状を聖女さまに助けて欲しいのです。」

「え。これをユーフィアが・・・いったい何をしたのか聞いていいか?」

「爆発する魔道具を100個程投げてみました。」

「まじで、俺役立たず。」

「クストさん。」

 落ち込むクストさんの手を取り

「クストさんは私を幸せにしてくれるのですよね。それが出来るのは、クストさんだけですよ。」

「ユーフィ「クストー。めっちゃすっげー惨状やな。」クソ勇者。今いいところだから邪魔すんじゃね!」

 瓦礫を乗り越えてやって来たのは桜色の髪に桜色の目をしたとても美しい女性と、どこか懐かしい感じを思わせる黒髪黒目の青年でした。

「あとは任せとき、こっちでなんとかしとくわ。結婚式に水を差すなんて、相変わらずエルフちゅうのは好かんな。」

 なぜ、関西弁・・・。

「マルスの魔武器作ったねーちゃん、あれには助けられたからな。これで貸し借りなしや。そんじゃ、幸せにな。」

 勇者は言いたいことだけ言って背を向け聖女と共に瓦礫の山となったところへ向かって行きました。

「ユーフィア戻ろう。」

「わかりました。『転移』」

 景色は一変し、懐かしいナヴァル公爵家の玄関に転移してきました。一日も経っていないけどやっと帰ってきた来たという安堵感で一杯です。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。

Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。 彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。 そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。 この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。 その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します

矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜 言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。 お互いに気持ちは同じだと信じていたから。 それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。 『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』 サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。 愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

処理中です...