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27章 魔人と神人

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「そうだね。全てが白き神の威が反映されているということかな?」
「それは理不尽ではなく、この世界にとっての常識にあたるのでは?」

 ラースは、白き神が作った箱庭に白き神の威が反映されていることが理不尽だと答えた。だが、シェリーはそんな当たり前なことは理不尽ではなく常識だと切り捨てる。
 そう、理不尽が常識だと。

「そうかもしれない。だけど種はばらまくが、どのように成長するか見ているだけどは、如何なものか。手入れを怠れば植物は実りを得ない」

 ラースは赤い目を歪ませながら言う。種を撒いたのであれば、水を撒いて世話をしろと。

「私の感覚ではこの世界の神々は人々に干渉しすぎだと思います」
「そうかな?勝手に世界を変えられるよりましではないかな」
「世界を変える?」

 それは変革者のことを言っているのかとシェリーはオウム返しの用に言葉を返す。

「そう、シェリー。君の聖女だなんていい例だよね。今まで存在しなかったのに、ポッと現れて人々から受け入れられた。しかし白き神が種だけ落として放置したがために、どれもが酷い結末を迎えた。君以外はだ」

 その言葉にシェリーは首を傾げる。確かに二代目から四代目まではそうとも言えるだろう。
 ただラフテリアはまだ魔人の姿で生き続けている。いや魔人化が『酷い』に当てはまるかは、本人に確認してみないとわからない。

 それにシェリーの母親のビアンカは、番である勇者ナオフミと真綿に包まれたような、家族だけの世界に引きこもったはずだ。それも結末など迎えてはいない。

「それはどうでしょうか?」

 シェリーはラースの言葉を具体的に否定はせずに濁した。ここで言い合いをして、女神ナディアが介入してくることになると、一気に状況が面倒くさくなるからだ。

「まぁそのうち、私が言っている意味がわかるよ」
「そうですか⋯⋯もしかしてラース様は、ご自分がその理不尽に巻き込まれていると言っていますか?」

 ここで聖女に例を上げたのは、歴代の聖女は番の所為で、幸せとはかけ離れた結末を迎えた者たちだと言いたいと、シェリーは当たりを付けた。

 結局のところラフテリアもロビンの死がきっかけで魔人化し、ビアンカは番が複数いることで、オリバーに囚われ、今はナオフミに囚われている。

 ということはだ。ラースは女神ナディアの愛憎を向ける者として、白き神に用意されたものだと本人は言いたいのだろう。

 だが、女神ナディアが支配するラース公国内で、女神ナディア自ら管理するダンジョン内で、そのようなことを口が裂けても言えるはずは無い。

「それは君の想像にお任せするよ」

 だからラースも言葉を濁す。別に女神ナディアから与えられた物を奪われるなど、5千年も生きたラースにとってどうでもいいことだろう。
 しかし女神ナディアの怒りを着実に買うことになるのは、関係がない子孫の者たちであり、ラース公国の民だ。

 だからラースも言葉を濁すしか無い。

「そうですか。それで種族差を埋める方法とは何ですか?」

 だが、シェリーにとっては、ラースが白き神の采配で存在する者だったとしても、どうでもいいことなので、さっさと本題に移る。

「シェリー。この話を聞いて君は君の在り方に疑問を持たないのかな?」

 しかしラースはシェリーの聖女としての役目に対して揺さぶりをかけてきた。
 今までの聖女がろくな生き方をしていないのに、聖女としてあり続けように思うのかと。

「疑問ですか?持つだけ無駄です。私はルーちゃんが幸せに暮らせる未来の為に、役目を果たすのです。そこに私の幸せを混同しません」
「おや?ルークの幸せの未来に君が居ないのはルークにとって幸せなのかな?」
「大丈夫です。炎王の子孫がルーちゃんを支えてくれますから。それに2つの目的を持つことは感覚を鈍らせます。私は魔王を倒す。それだけです」

 シェリーにとって生きがいであるルークの幸せは目的の先にあり、そこにシェリーの幸せを入れることは、どちらの目的も果たせないことになる。
 そうシェリーの幸せを考えるには五体満足で生き残ることが前提である。しかし、黒のエルフの予言にあったように、シェリーの死は回避される要因は今のところ無い。

「目的と己の幸せを混同するな……か。耳が痛いね」

 ラースは苦笑いをシェリーに向けて呟いた。きっとラースは何かに失敗してしまったのだろう。

「さて種族を超える力の話だったね」

 ラースは気を取り直したかのように、陽気な声が辺りに響く。

「僕の魔眼を一個あげよう」
「いりません!」

 シェリーは即答で断った。確かに神眼のオリジナルを扱えるようになれば、相手を意のままに操るなど用意だろう。
 だが、そういうことではない。


「ははははは!冗談だよ。それは流石にナディアが許さないと思うからね」

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