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27章 魔人と神人
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「白き神から指名された聖女ですが、人々から認識はされていないという意味です」
シェリーは別に虚偽を言っているのではないと説明する。
「ふーん。で、さぁ魔人ってなんだ?」
「元凶であるシュロスさんは黙っていてください」
「全部俺の所為にしていないか?」
「全部、シュロス王の所為ですから」
「ひどっ!……うぉ!佐々木さんの彼氏怖いし!」
シェリーと軽口を叩いているシュロスに向かってカイルが氷の刃を撃ち放つ。
「なぁ。アレが本当に王なのか?」
クストがカイルに聞いていた。それはイーリスクロムに対していてではないだろう。
「古よりアーク族をまとめる王だそうだ。愚かにも竜人族に戦いを仕掛けた愚王だ」
「お前、酷いな」
「因みに白き神の呪いを受けて、魂の死がない状態になっている」
「神に呪われているのか!」
カイルとクストの話が耳に入ってきたイーリスクロムは、ますます項垂れていく。
「これ本当にどうすればいいのかな?説明するの無理だよ。絶対に受け入れられないよ」
イーリスクロムは各国に説明するのは無理だと嘆き始めた。シェリーが名を上げた者達は、普通は人から忌避される者たちばかり。
狂王モルテ王しかり、魔人しかり、そして今まで姿も名も出てこなかったアーク族の王。その者たちを受け入れられる許容は普通の人にはない。
「そうですか。この世界で一番権力がある王は誰ですか?」
シェリーが突然おかしなことを言いだした。
「この王には逆らうことは許されないという王は誰ですか?」
「何を言い出すのかな?そんな王は居ないよ。もし生きているのであれば、大陸中を戦場にしたエルフ王と暴君レイアルティス王か、世界を統一しようとしていた猛将プラエフェクト将軍か……ああ、王ではないが、レイグレシア・シュエーレン猊下かな?」
「レイグレシア・シュエーレン猊下は以前ボコボコ(オリバーが)にしたので、ご要望にはお応えしてもらえなさそうですね」
今、この大陸で一番発言権があるのはやはり教会のトップであり、エルフ族の王族の血筋であるレイグレシア・シュエーレンだろう。
しかし、彼らの一族は暴君レイアルティス王との戦いで疲弊し、更に鬼族との戦いで衰退していった。ただ宗教国家として権力を保持しているにすぎない。
いや、それだけでもかなりの発言権はあるだろう。
世界を統一しようとした猛将プラエフェクト将軍が国の基盤を造り、一気に世界を蹂躙していったのだ。その影響は現在まで続き、エルフ族は種族として一線を画していた。
「そうですね。プラエフェクト将軍は個人的に嫌いなので、魔導術が使えるレイアルティス王にしましょうか?」
「何を突然言い出したのかな?嫌な予感がするから、止めて欲し……」
「『亡者招来』」
止めるように言うイーリスクロムの言葉を無視して、シェリーはスキルを発動させる。
するとシェリーは背後から腕を捕まれ、座っていた格好のままカイルに抱えられていた。
カイルが警戒した理由。それは一人の人物に向けられている。
銀髪に赤い瞳の長身の男にだ。その者はここがどこかと言わんばかりに周りに視線を巡らせている。
「カイルさん。下ろしてください」
「しかしシェリー。彼は……」
「ラフテリア様と違って、話は通じる方です」
シェリーが比較対象として出してきた人物の名と比べるのは、おこがましいというものだろう。一国を治めていた王だ。それなりの良識は持っているものだ。
シェリーの言葉にカイルは渋々という感じでシェリーを床の上に下ろすが、そのいつでも剣を抜けるようにカイルは気を張っている。
そしてクストも突然現れた強者に戦闘の意思を見せ唸り声を上げている。
「ラースの娘。ここはどこだ?」
「突然、喚び出してすみません」
「それは、いつもだろう?」
世界の記憶から構成された存在に記憶が残るのか。彼らはシェリーに召喚されることを受け入れていた。
「それで、今日はなんだ?いつもと雰囲気が違うが?」
カイルとクストが警戒している中、銀髪の男はくすくすと笑いながら、先程までシェリーが座っていた椅子に腰を下ろす。
「それから、アレは魔導生物か?とても興味深い」
銀髪の男はひと目でシュロスの正体を見破った。普通の生き物ではないと。
「アーク族の王です」
「ほぅ。お祖母様がクソ鳥と言っていたアーク族に王なんていたのか?」
「佐々木さん。突然でてきたこの色男誰だ?凄く面白れー存在だな」
シュロスはシュロスで銀髪の男を面白い存在だと表現した。互い同士で普通ではない存在だと感じとっているのだ。
「魔導術の本を残した魔女の孫の方です」
「あのすげー本を書いた人の孫か。それならわかるな」
シュロスはシェリーの遠回しの言い方で納得したようだ。しかし納得しない者もいる。
「もう、死人を喚び出すのは勘弁して欲しい。千五百年前の王を喚び出してどうするんだよ」
イーリスクロムであった。
シェリーは別に虚偽を言っているのではないと説明する。
「ふーん。で、さぁ魔人ってなんだ?」
「元凶であるシュロスさんは黙っていてください」
「全部俺の所為にしていないか?」
「全部、シュロス王の所為ですから」
「ひどっ!……うぉ!佐々木さんの彼氏怖いし!」
シェリーと軽口を叩いているシュロスに向かってカイルが氷の刃を撃ち放つ。
「なぁ。アレが本当に王なのか?」
クストがカイルに聞いていた。それはイーリスクロムに対していてではないだろう。
「古よりアーク族をまとめる王だそうだ。愚かにも竜人族に戦いを仕掛けた愚王だ」
「お前、酷いな」
「因みに白き神の呪いを受けて、魂の死がない状態になっている」
「神に呪われているのか!」
カイルとクストの話が耳に入ってきたイーリスクロムは、ますます項垂れていく。
「これ本当にどうすればいいのかな?説明するの無理だよ。絶対に受け入れられないよ」
イーリスクロムは各国に説明するのは無理だと嘆き始めた。シェリーが名を上げた者達は、普通は人から忌避される者たちばかり。
狂王モルテ王しかり、魔人しかり、そして今まで姿も名も出てこなかったアーク族の王。その者たちを受け入れられる許容は普通の人にはない。
「そうですか。この世界で一番権力がある王は誰ですか?」
シェリーが突然おかしなことを言いだした。
「この王には逆らうことは許されないという王は誰ですか?」
「何を言い出すのかな?そんな王は居ないよ。もし生きているのであれば、大陸中を戦場にしたエルフ王と暴君レイアルティス王か、世界を統一しようとしていた猛将プラエフェクト将軍か……ああ、王ではないが、レイグレシア・シュエーレン猊下かな?」
「レイグレシア・シュエーレン猊下は以前ボコボコ(オリバーが)にしたので、ご要望にはお応えしてもらえなさそうですね」
今、この大陸で一番発言権があるのはやはり教会のトップであり、エルフ族の王族の血筋であるレイグレシア・シュエーレンだろう。
しかし、彼らの一族は暴君レイアルティス王との戦いで疲弊し、更に鬼族との戦いで衰退していった。ただ宗教国家として権力を保持しているにすぎない。
いや、それだけでもかなりの発言権はあるだろう。
世界を統一しようとした猛将プラエフェクト将軍が国の基盤を造り、一気に世界を蹂躙していったのだ。その影響は現在まで続き、エルフ族は種族として一線を画していた。
「そうですね。プラエフェクト将軍は個人的に嫌いなので、魔導術が使えるレイアルティス王にしましょうか?」
「何を突然言い出したのかな?嫌な予感がするから、止めて欲し……」
「『亡者招来』」
止めるように言うイーリスクロムの言葉を無視して、シェリーはスキルを発動させる。
するとシェリーは背後から腕を捕まれ、座っていた格好のままカイルに抱えられていた。
カイルが警戒した理由。それは一人の人物に向けられている。
銀髪に赤い瞳の長身の男にだ。その者はここがどこかと言わんばかりに周りに視線を巡らせている。
「カイルさん。下ろしてください」
「しかしシェリー。彼は……」
「ラフテリア様と違って、話は通じる方です」
シェリーが比較対象として出してきた人物の名と比べるのは、おこがましいというものだろう。一国を治めていた王だ。それなりの良識は持っているものだ。
シェリーの言葉にカイルは渋々という感じでシェリーを床の上に下ろすが、そのいつでも剣を抜けるようにカイルは気を張っている。
そしてクストも突然現れた強者に戦闘の意思を見せ唸り声を上げている。
「ラースの娘。ここはどこだ?」
「突然、喚び出してすみません」
「それは、いつもだろう?」
世界の記憶から構成された存在に記憶が残るのか。彼らはシェリーに召喚されることを受け入れていた。
「それで、今日はなんだ?いつもと雰囲気が違うが?」
カイルとクストが警戒している中、銀髪の男はくすくすと笑いながら、先程までシェリーが座っていた椅子に腰を下ろす。
「それから、アレは魔導生物か?とても興味深い」
銀髪の男はひと目でシュロスの正体を見破った。普通の生き物ではないと。
「アーク族の王です」
「ほぅ。お祖母様がクソ鳥と言っていたアーク族に王なんていたのか?」
「佐々木さん。突然でてきたこの色男誰だ?凄く面白れー存在だな」
シュロスはシュロスで銀髪の男を面白い存在だと表現した。互い同士で普通ではない存在だと感じとっているのだ。
「魔導術の本を残した魔女の孫の方です」
「あのすげー本を書いた人の孫か。それならわかるな」
シュロスはシェリーの遠回しの言い方で納得したようだ。しかし納得しない者もいる。
「もう、死人を喚び出すのは勘弁して欲しい。千五百年前の王を喚び出してどうするんだよ」
イーリスクロムであった。
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