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27章 魔人と神人
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「ついでに、そこの見た目は人だけど、人ではない存在の正体も聞いていいかな」
円卓にうつ伏せになったままのイーリスクロムが言う。どう見ても普通ではない存在にだ。
もう突拍子もない言葉が続き、どうせなら、その人物も普通でないなら、聞くことはできるかもしれないと。
いや、もう現実逃避を始めているのかもしれない。
「名前はシュロスですね。地位的にはアーク族の王ですが、朽ちた物体として、あつかってもらっていいです」
「あーくぞく……のおう……アーク族の王だって!」
あまりにもの予想外の言葉にイーリスクロムはシェリーの言葉を理解できなかったようだが、それがとんでもない存在だと知って、席から立ち上がってシュロスを見た。
足が動かいないとブツブツと言っている人物がアーク族の王だと。
「……なぜ、この国に?」
イーリスクロムの疑問はもっともだ。他国の王が非公式に訪れるにしても、このような状況はあり得ない。
「空島に帰すと、くっそ面倒なことが絶対に起こるので監視するためです」
「え?そんな面倒なことはしない……」
「色々しでかしている自覚がないシュロスさんに発言権はありません」
シェリーの言葉を否定するシュロスだが、ゲームの世界だと思い込んでいるが故に、己がしでかしたことに自覚がないのだろう。
シュロスは首を捻って何かやったのかと考えだしている。
「はっきり言って創造主並に厄介です。だからアーク族が傲慢になれたのでしょう。シュロス王をこっちで抑える。それが戦いの鍵となりますね」
「ちょっと、僕には君の言っている意味がわからないのだけど、それは彼がここにいれば、アーク族は手を出してこないっていう意味なのかな?」
話の流れから行けば、王を人質にとっているので、手を出してくるなという意味合いに取れなくもない。
しかし、シュロスの存在は複雑かつ、危険だ。どこまで説明しようかとシェリーは言葉をつまらせる。
「あいつらはさぁ、鳥頭なんだよなぁ。俺が言ったことをその時はわかったと言うのに、直ぐに忘れてしまうのか全然理解してくれないんだ。だから、そんなに気にしなくてもいい……」
「黙ってください。それから直ぐに忘れるのではなくて、シュロス王の独特の考えが伝わっていないだけです。いわゆる説明が下手」
「佐々木さん。辛辣」
アーク族は別に馬鹿というものではないだろう。でなければ、白き神の呪いと言っていい呪から抜け出す方法など考えつかなかったに違いない。
種族の名を与え、地に落ちれば、空に戻れないというアーク族のプライドをへし折る呪を覆そうなどとは。
「シュロス王はこちらで面倒をみますので、クソ狐の手を煩わせることはありません。あ、一つ言っておくことがありました」
「それよりも、僕のさっきの質問に答えていないけど?」
「ちっ!」
シェリーはシュロス王に関して、面倒になってきたため、説明をスルーしようと思っていたのだが、イーリスクロムはそれを許さなかった。
「神殺しの王。神という概念を人々に示した王。世界を混沌に陥れた王。という説明で納得してもらえませんか?」
「全くできないし、帰ってもらっていいと思う。なに?その神殺しの王って、それで説明をしていると言えないよ」
イーリスクロムの中でシュロスの危険度が一気に上がっていった瞬間だった。流石に神殺しは受け入れ難かったのだろう。微妙に後退りをしている。後方は逃げ道がなく、壁しかないというのに、シュロスと少しでも距離を取りたいという心理がイーリスクロムを逃げ腰にさせていた。
「神殺しと言っても、英雄の魔導師より弱いので、問題視することはありません」
「そこと比べるのもおかしいよね!もう、なぜ君は僕に常識範囲外のことを次々言ってくるのかなぁ。頭が痛いよ」
オリバーと比べると弱いと言っても、そのオリバーが強すぎて基準にならないのだ。その基準がおかしいことをイーリスクロムは指摘し、ここではないどこか遠くに視線を向けている。
「モルテ王と魔人化したラース大公の招待だけでも、常識から逸脱していると理解している?それに普通には地上にいるはずのないアーク族の王。これ以上僕に無理難題を吹っ掛けないで欲しいよ」
イーリスクロムはいつものようにシェリーの前でグチグチと言い始めた。王という威厳などどこかに落としてきてしまった姿だ。
その姿を近衛騎士団長であるレイモンドは、また始まったと苦笑いを浮かべている。
「なぁ、どこが無理なんだ?」
シュロスの声が聞こえた。それはシェリーの背後からではなく、前方、イーリスクロムのすぐ側からだった。
カイルに足を凍らされていたはずだが、その足は円卓を踏みつけている。そう、円卓の上に立ち、イーリスクロムを見下ろしていた。
「魔人っていうにのは、会ったことがないからわからねぇけど、死の王には会ったぞ。強いヤツだなっていうのは凄くわかった。流石死の王だなってやつだ。だけど、普通に言葉が通じたぞ。あんたも王ならドンと構えておけよ。失敗したら失敗したでいいじゃねぇか。失敗しても佐々木さんの……ん?聖女のお披露目って佐々木さんって聖女じゃなかったのか?」
シュロスが王らしいことを口にしたと思えば、結局は失敗してもシェリーに押し付けようという結論だった。
シュロスの中ではサポーター聖女佐々木であり、サポーターなら上手くできるであろうという考えがありありと見て取れる。しかし途中でシェリーに自称聖女疑いが頭に浮かんだようだった。
円卓にうつ伏せになったままのイーリスクロムが言う。どう見ても普通ではない存在にだ。
もう突拍子もない言葉が続き、どうせなら、その人物も普通でないなら、聞くことはできるかもしれないと。
いや、もう現実逃避を始めているのかもしれない。
「名前はシュロスですね。地位的にはアーク族の王ですが、朽ちた物体として、あつかってもらっていいです」
「あーくぞく……のおう……アーク族の王だって!」
あまりにもの予想外の言葉にイーリスクロムはシェリーの言葉を理解できなかったようだが、それがとんでもない存在だと知って、席から立ち上がってシュロスを見た。
足が動かいないとブツブツと言っている人物がアーク族の王だと。
「……なぜ、この国に?」
イーリスクロムの疑問はもっともだ。他国の王が非公式に訪れるにしても、このような状況はあり得ない。
「空島に帰すと、くっそ面倒なことが絶対に起こるので監視するためです」
「え?そんな面倒なことはしない……」
「色々しでかしている自覚がないシュロスさんに発言権はありません」
シェリーの言葉を否定するシュロスだが、ゲームの世界だと思い込んでいるが故に、己がしでかしたことに自覚がないのだろう。
シュロスは首を捻って何かやったのかと考えだしている。
「はっきり言って創造主並に厄介です。だからアーク族が傲慢になれたのでしょう。シュロス王をこっちで抑える。それが戦いの鍵となりますね」
「ちょっと、僕には君の言っている意味がわからないのだけど、それは彼がここにいれば、アーク族は手を出してこないっていう意味なのかな?」
話の流れから行けば、王を人質にとっているので、手を出してくるなという意味合いに取れなくもない。
しかし、シュロスの存在は複雑かつ、危険だ。どこまで説明しようかとシェリーは言葉をつまらせる。
「あいつらはさぁ、鳥頭なんだよなぁ。俺が言ったことをその時はわかったと言うのに、直ぐに忘れてしまうのか全然理解してくれないんだ。だから、そんなに気にしなくてもいい……」
「黙ってください。それから直ぐに忘れるのではなくて、シュロス王の独特の考えが伝わっていないだけです。いわゆる説明が下手」
「佐々木さん。辛辣」
アーク族は別に馬鹿というものではないだろう。でなければ、白き神の呪いと言っていい呪から抜け出す方法など考えつかなかったに違いない。
種族の名を与え、地に落ちれば、空に戻れないというアーク族のプライドをへし折る呪を覆そうなどとは。
「シュロス王はこちらで面倒をみますので、クソ狐の手を煩わせることはありません。あ、一つ言っておくことがありました」
「それよりも、僕のさっきの質問に答えていないけど?」
「ちっ!」
シェリーはシュロス王に関して、面倒になってきたため、説明をスルーしようと思っていたのだが、イーリスクロムはそれを許さなかった。
「神殺しの王。神という概念を人々に示した王。世界を混沌に陥れた王。という説明で納得してもらえませんか?」
「全くできないし、帰ってもらっていいと思う。なに?その神殺しの王って、それで説明をしていると言えないよ」
イーリスクロムの中でシュロスの危険度が一気に上がっていった瞬間だった。流石に神殺しは受け入れ難かったのだろう。微妙に後退りをしている。後方は逃げ道がなく、壁しかないというのに、シュロスと少しでも距離を取りたいという心理がイーリスクロムを逃げ腰にさせていた。
「神殺しと言っても、英雄の魔導師より弱いので、問題視することはありません」
「そこと比べるのもおかしいよね!もう、なぜ君は僕に常識範囲外のことを次々言ってくるのかなぁ。頭が痛いよ」
オリバーと比べると弱いと言っても、そのオリバーが強すぎて基準にならないのだ。その基準がおかしいことをイーリスクロムは指摘し、ここではないどこか遠くに視線を向けている。
「モルテ王と魔人化したラース大公の招待だけでも、常識から逸脱していると理解している?それに普通には地上にいるはずのないアーク族の王。これ以上僕に無理難題を吹っ掛けないで欲しいよ」
イーリスクロムはいつものようにシェリーの前でグチグチと言い始めた。王という威厳などどこかに落としてきてしまった姿だ。
その姿を近衛騎士団長であるレイモンドは、また始まったと苦笑いを浮かべている。
「なぁ、どこが無理なんだ?」
シュロスの声が聞こえた。それはシェリーの背後からではなく、前方、イーリスクロムのすぐ側からだった。
カイルに足を凍らされていたはずだが、その足は円卓を踏みつけている。そう、円卓の上に立ち、イーリスクロムを見下ろしていた。
「魔人っていうにのは、会ったことがないからわからねぇけど、死の王には会ったぞ。強いヤツだなっていうのは凄くわかった。流石死の王だなってやつだ。だけど、普通に言葉が通じたぞ。あんたも王ならドンと構えておけよ。失敗したら失敗したでいいじゃねぇか。失敗しても佐々木さんの……ん?聖女のお披露目って佐々木さんって聖女じゃなかったのか?」
シュロスが王らしいことを口にしたと思えば、結局は失敗してもシェリーに押し付けようという結論だった。
シュロスの中ではサポーター聖女佐々木であり、サポーターなら上手くできるであろうという考えがありありと見て取れる。しかし途中でシェリーに自称聖女疑いが頭に浮かんだようだった。
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