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27章 魔人と神人

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「それって陽子さんは仲間はずれっていうこと?」
「さぁ?ユーフィアさんのは持ち歩ける石板でしたから、ないことは無いと思います」

 陽子は以前から気になっていたことに対して、ダンジョンマスターという普通ではない立場だからかと解釈してしまった。
 それに対してシェリーはダンジョンに足を運ばないだろうユーフィアのために、ダンジョン自体に刻みつけない方法を用いることもあると答える。

「ああ、本に書いてあることもあったぞ」

 それに対して炎王も同意する。確かにダンジョンに行くと悪影響しか及ぼさない炎王も、自らダンジョンに行こうとはしないだろう。陽子のダンジョンは別だが。

「さっきから何の話をしているんだ?」

 その話にシュロスが混じってくる。と同時に下の階層に着いたのか、エレベーターから電子音が響き『扉が開きます』とアナウンスが流れた。

 到着したというのに、黒を纏う三人のなんとも言えない視線が、シュロスに突き刺さる。

「え?俺には教えてくれないって、いじめか?」
「いいえ。ただ、シュロス王には当てはまるのかと思ってしまったので」

 シェリーがシュロスにアリスのことを教えることを戸惑った理由を言う。そもそもアリスは、シュロス王がいた時代のかなり後に存在した変革者だ。
 アリスの未来視は、これからこの世界に招かれるであろう変革者たちのために向けられた未来視だ。シュロス王が、それに含まれるのかは微妙だった。

 言い訳をするシェリーを横目に、炎王はエレベーターを降りながら説明をする。

「未来視の能力を持つ変革者がいたんだ。そいつは、未来の変革者に向けて、究極の未来の選択を迫るんだ。己の死か大切な者の死かってな」
「うわぁ。俺はそういうのはいいや」

 そう言いながら、シュロスもエレベーターを降りていった。

「破滅系のストーリーな」
「あ、そういう感じの解釈するんだ」

 シュロスのゲーム脳はイベントの一つと捉えられたようだ。それに対して、陽子は呆れながらついていく。

 そして、未だにカイルに抱えられたままのシェリーもエレベーターから降りる。そこは既視感のような目眩を覚える光景だった。

 白い花が地面に生え、青い空が見える。少し離れたところには、見覚えがあるガラス張りのような青い建物がある。
 シェリーが上を見上げると、太陽らしきものも見える。

 そう、白き神によって連れて行かれた過去の空島の風景が広がっていたのだ。

「ここはなんです?」
「んー。島を制御するところだな。水はどうしても作らないといけないし、季節が一定だと面白くないから、四季も作らないといけないし、それに合わせて、雨や雪も降らせるだろう?ここはその調整が出来ているか確認する場所だな」

 高度が高く、生き物が住むというには厳しい環境に空島はある。そこでシュロスは人として暮らしていくための環境を、島ごとに維持する機能を持たせていたようだ。
それも結界内で雨や雪も降らせられたらしい。

「へー、ダンジョンを作るのと似ている」

 シュロスの言葉に陽子が共感する。

「え?あのダンジョンに四季ってあったのか?」
「あるよ。大魔導師様の薬草畑の為に気温調節しているんだからね!」

 驚きを示す炎王。それに対して、陽子は何を言っているのだと言い返す。
 それもオリバーに言われて管理している薬草畑のためだった。ダンジョンとしては全く関係ない。

「建物はあそこだけですか?」

 シェリーはあの青い建物だけがここにはあるのかと尋ねる。それに対してシュロスは首を横に振った。

「あそこは制御塔だから普通は入れない。入るとしたら、この下だ」

 まだ下の階層があるらしい。

「だったら、なぜここに寄ったのですか?そのまま下に行けばいいではないですか」
「いや、この下は翼を持たない者が住んでいるから、ここからじゃないと行けない」

 そのままエレベーターで降りれば良かったのではというシェリーに対して、シュロスは一旦ここで降りないと行けない場所だと説明する。

「俺は一緒に上の街で住めばいいと思うのだが、どうも折り合いが悪くてな、住むところを分けたんだ」

 そのシュロスの言葉に、アーク族がどういう者たちか知っている全員が納得した。直接はアーク族を知らない陽子でさえ、頷いている。
 悪魔の元がアーク族であるなら、そうだろうと。

「だったら、そもそも空島に住まわなければ良かったのではないのですか?」

 折り合いが悪ければ、翼を持つものだけを住まわせればよかったのだ。始めは民がいない国だったのだから。

「いやー。佐々木さんが国民を集めろっていうからさぁ。俺が元々いた島を沈めて、俺の国に迎え入れたから、そこで住んでいた者たちを全員を国民にしたんだ」

 その言葉にシェリーは、クソ虫を見る目をシュロスに向ける。

「私は強制的に民になるように誘導しろとは言っていません」

 有無を言わせない強制的な方法で、シュロスは民というものを作り出していたのだった。

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