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27章 魔人と神人

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「ちょっと俺の扱いが酷いんじゃないのか?」

 陽子にむかってシュロスが文句を言っている。
 しかも鎖から解放されたのは上半身のみで、足元は動けないように未だに鎖に巻き付かれていた。

「それに何で動けないんだ!おかしいだろう!」

 神殺しをしてまで上げたレベルでも身動きが取れないなんて、ありえないとも言っている。

「ねぇ。ここに来ている理由を確認していい?」
「地下の街に行きたいんだろう?」

 それは目的の一つであり、全てではない。
 シュロスの言葉に陽子は腰に手を当てて、ズバッと言う。

「陽子さんのダンジョンを広げるが正解!」

 陽子の言っていることは目的ではなく、成り行きだ。オリバーがそこに行くなら国の中枢をも支配下に収めろと言ったからにすぎない。

「あ!そうか!」
「そこ、納得しないでください。目的は第0師団が使っていたという地下施設に行って、黒狼クロードの資料を回収することです」

 黒狼クロードの資料。それは現存するものはほぼない。子孫にあたるクストすら目にしたことがないのだ。
 それは己が死地に向うことになったときにクロード自身が全て処分してしまったのが原因だった。

 だから、第0師団に関する資料が残っているとすれば、第0師団が詰め所として使用していたこの地下にしか無いということだ。

「そしてシュロス王はだたの通行手形です。勘違いしないでください」
「やっぱり俺の扱いがひどくないか?佐々木さん」
「ということで、通行手形な役目を果たしてください」
「酷い」

 シェリーの言葉に項垂れているシュロスは、やっと陽子が束縛していた鎖から解放されて、下行きの三角のボタンを押す。

「そう言えば、黒いカードが必要だと聞いたのですが?」
「ああ、ブラックカードな」

 何か別の意味に捉えられそうな名前をシュロスは言った。

「本来なら、ここの隙間にカードを通すことで行き先が変わるんだ」
「は? 行き先は下行きだけではないのですか?」
「いや、ここも地下だ。上の地上行きもあるし、一番下の水源湖にも行ける。まぁ水源湖はよっぽどのことが無い限り行く必要がないからな」

 なにやら聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。地上行きはいい。確かにここは地下であり、地上から行き来するには不便だから、必然的に更に上行きが存在しただろうということは予想できる。
 しかし、現在はそこに城が建っているため、出口が存在しない。だから、上行きが表示されないのだろう。

 だが、気になるのは水源湖のことだ。第三師団を半分引き抜くことでモメた時に出てきた水を生成する魔道具があるという話だ。
 シュロスが言うには水源湖には足を運ばなくてもいいと。では、その水を生成する魔道具が自動で動いていることになる。

 シェリーがその疑問を口に出そうとしたところで、この世界では不釣り合いな電子音が鳴り響いた。

 エレベーターが到着する音だ。

 そして自動で目の前の円柱の柱が口を開く。

 その光景を見てシェリーを抱えているカイルがビクッと肩を震わせた。
 カイル以外はこの摩訶不思議な構造物が何であるか瞬時に理解出来たが、この世界の者であるカイルには想像できる扉の開き方ではなかったようだ。

「カイルさん。これは階段を使わずに上下に移動できる箱です。その箱が到着して扉が開いただけです」

 シェリーは簡単にカイルにエレベーターの説明をする。

「もしかして、この柱の中は空洞なのか?」
「さぁ?シュロス王が作っているので何で動いているかは不明ですね」
「普通はワイヤーで吊るすんだけどな」
「油圧式もあるよね」

 シェリーの言葉を補足するように炎王と陽子が言いながらエレベーターの中に入って行く。
 何もその存在に疑問を持つこと無くだ。

 だが、カイルはその場から動こうとしない。

 これはカイル自身が空を飛ぶものであり、他のモノに強制的に移動させられるという考えが無いからだろう。

「シュロス王。そもそもなのですが、鳥人は空を飛べますのに、エレベーターが必要だったのですか?」

 シェリーは動こうとしないカイルの腕から降りようとしながらシュロスに尋ねる。だが、ガシリと抱えられたシェリーはカイルの腕から降りることができない。

「ちっ!カイルさん。私は下に行きたいのですが?」
「あれって問題ないのか?なんか、扉が閉じたらどこに連れて行かれるかわからないってことだろう?」
「地下施設です!」

 カイルとシェリーの言い合いにシュロス王は吹き出して笑い出した。
 笑い声のままシュロスは説明しだす。

「地下って案外飛ぶの難しんだ。壁や天井に当たる可能性があるしな。それに飛べない奴らも住んでいるからな。最初は棺みたいだって怖がられたのを思い出した」

 円柱の形の柱であるものの、一部屋というほど大きくはない。せいぜい10人が乗れればいいぐらいの大きさだ。その狭い空間に閉じ込められるという忌避感がカイルの足を止めさせているのだろう。

「だったらこれでどうだ?」 

 シュロスはパチンと指を鳴らした。すると眩いほどの光が辺り一帯に満たされたのだった。
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